デジタルナショナルとエリクソン、110億リンギ投じて5G構築

【クアラルンプール】 5G(第5世代移動通信)基盤を構築するため政府が設けた特別目的事業体(SPV)、デジタル・ナショナル(DNB)は1日、スウェーデン系エリクソン(マレーシア)と協力して、5Gのネットワーク整備とエコシステムの展開を実施すると発表した。投資額は110億リンギ。
DNBは今年3月、5G基盤構築を目指して、公開入札を実施。ファーウェイ(華為技術)やZTE、シスコ、日本電機(NEC)、ノキア、サムスン、ファイバーホームなどが参加していた。
DNBが発表した声明によると、エリクソンが通信塔のレンタルや光ファイバーのリースなど全国の5G基盤構築のためにシステムの設計やネットワーク開発を行う。110億リンギのうち60%以上のプロジェクトがブミプトラ(マレー系および先住民)企業に発注されることになるという。国内のベンダー向けにも能力育成などの機会を設ける他、5Gの利用促進に向けた取り組みも実施するという。
DNBのアスリ・ハミドン会長は、5Gを通じて国民的に包括的な繁栄をもたらすことを1つ目の目標に掲げていると説明、エリクソンにより技術移転などが行われるとした。また、2021年末までにクアラルンプールやプトラジャヤ、サイバージャヤで5Gサービスを開始することを2つ目の目標に掲げていると表明。2022年にセランゴール、ペナン、ジョホール、サバ、サラワク5州、2023年以降は17の都市でサービスを開始し、2024年までに人口カバー率80%を目指すとした。
(ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、7月1日)

首都圏のロックダウン強化、エコノミストが懸念

【クアラルンプール】 7月3日から16日まで首都圏であるセランゴール州の大部分とクアラルンプール(KL)の一部が強化行動制限令(EMCO)に指定されることを受け、エコノミストからはすでに厳しい状況に置かれている経済への更なる影響を懸念する声が上がっている。
市場研究センターのカリメロ・フェリト最高責任者(CEO)は、セランゴール州とKLがマレーシアの総人口の25.5%、国内総生産(GDP)の40%を占めている点を指摘。マレーシアの経済回復力は永久に損なわれ、傷跡が長期間にわたると懸念されるとし、イデオロギー主導の政策によって孫子の代が高いコストを支払わされることになると述べた。
フェリト氏は政策は健全なトレードオフ分析に基づいて決定する必要があるとした上で、ロックダウンによる年間コストが1,750億リンギに上る一方で、新型コロナウイルス「Covid-19」患者の治療費はわずか80億リンギでしかないとの最新研究を引用。「予防・対策と速やかな治療のための医療システムへの投資はロックダウン費用のほんの一部でしかないのに、成果が期待できない多額のコストのかかる政策を推進するのはおかしいとし、もっと医療向けに資金を投じるべきだと指摘した。
またフェリト氏は、生活がかかっている点では必需品・サービスとそれ以外のセクターも同様であり、分けて対応するのをするのは止めるべきと主張。たとえ食品製造が可能であっても包装材がなかったり物流や生産機械の保守がなければ意味がなく、複雑な経済の仕組みの中で要不要の区別をつけることは無意味だと指摘した。
一方、サンウェイ大学経済学部のイア・キムレン教授は、EMCOを14日間に限って行なうならば地域経済への継続的影響を抑えられるとした上で、重要なのは政府が自立できない世帯のために救援物資、特に食料やその他の必需品を準備することだと指摘。感染が増加していることを考えると、救命救急施設が機能不全に陥るのを防ぐためにターゲットを絞った封鎖、移動の監視、ワクチン接種の迅速化が必要だとした。
マレーシア経営者連盟(MEF)のサイド・フセイン会長は、6月1日に始まった完全ロックダウンですでに苦しんでいる雇用主がEMCOによってさらに困難に直面するだろうと指摘。特に必需品・サービス以外の中小企業や零細企業にとって厳しい状況になるだろうとした。
(フリー・マレーシア・トゥデー、7月1日)

「第4次産業革命に関する国家政策」を発表

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 政府は1日、「第4次産業革命(4IR)に関する国家政策(国家4IR政策)」を発表した。マレーシアをテクノロジーとデジタル化によって高所得国へと変革することを目的とする。
ムスタパ・モハメド首相府相(経済担当)は、テクノロジーは生活の質と経済成長の向上に重要かつコロナ後の生活様式にも必要不可欠であることから、技術立国を目指して「国家4IR政策」を起草したと述べた。
▽国民が4IRに関する知識とスキルを身につける▽デジタルインフラの整備を通じて接続性のある国家を作る▽技術の変化に柔軟に対応できるよう、将来のニーズを想定した適切なルールを策定する▽イノベーションと4IR技術の導入を加速する——という4つの目標が掲げられ、これらは今後省庁が4IR関連プログラムを策定する際の指針とされる。プログラムは、政府により指定された16の戦略、32の全国的イニシアチブ、60の部門別イニシアチブによって推進される。
カイリー・ジャマルディン科学技術革新相は、強化する5つのコア・テクノロジーとして▽人工知能(AI)▽モノのインターネット(IoT)▽ブロックチェーンと分散型台帳技術(DLT)▽クラウド・コンピューティングを活用した先端材料の開発▽ビッグデータ分析(BDA)——を定めたと発表した。同省はこれらのテクノロジーに関連する政策やロードマップの策定に取り組んでいるという。
「国家4IR政策」はムヒディン・ヤシン首相が2月に発表したデジタル経済促進のための青写真「マイデジタル」を補完するもの。2030年までにすべての分野で生産性を2020年比30%向上させることを目標としている。

新型コロナの新規感染者数は6982人、セランゴール州が最多

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は2日、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が6,982人となったと発表した。アクティブ感染者数は6万6,084人で、累計感染者数は76万5,949人となった。

州・地域別の感染者数はセランゴール州が最も多く2,907人だった。それに▽クアラルンプール(KL、637人)▽ネグリ・センビラン州(606人)▽ジョホール州(517人)▽サラワク州(440人)▽パハン州(329人)▽ペナン州(351人)▽ケダ州(257人)▽サバ州(230人)▽マラッカ州(202人)▽ペラ州(182人)▽ラブアン(131人)▽クランタン州(129人)▽トレンガヌ州(44人)▽プトラジャヤ(20人)ーーが続いた。ペルリス州はゼロだった。新たに6,278人が回復し、累計治癒者は69万4,538人となった。死者数は73人増えて、累計で5,327人となった。

保健省のノール・ヒシャム事務次官は1日、21カ所のクラスターを新たに確認したと明らかにした。
職場で11カ所、コミュニティで9カ所、医療センターで1カ所のクラスターが発生した。
州別では、クランタン州が5カ所で最も多かった。またケダ州で4カ所、ペナン州で3カ所、セランゴール州、KL、ジョホール州でそれぞれ2カ所、ペラ州、ペナン州、サバ州でそれぞれ1カ所発生した。

セランゴール州の制限令厳格化、「場当たり的」との批判の声

【クアラルンプール】 7月3日付けでセランゴール州の大部分で強化行動制限令(EMCO)が発令されることを受け、同州選出の野党系下院議員は「無知すぎる」、「場当たり的」と与党連合・国民同盟(PN)政権を厳しく批判している。
野党・民主行動党(DAP)所属のチャールズ・サンチアゴ下院議員は、一部の企業や労働者をロックダウンで苦しめながら、多くの必需セクターで営業継続が認められるのであればEMCOは無意味だと指摘。標準的運用手順(SOP)が緩められたEMCO発令は場当たり的であり、6月1日の完全ロックダウン時にもっと厳しい制限を課すべきだったとした。
その上でサンチアゴ氏は、連邦政府はむしろ州内における集団検診と予防接種を推進すべきと指摘、例えば工場に3日に一度のスピード検査キットを使った感染検査を義務づけるべきだとした。またワクチン接種のために人々を待たせるのではなく、こちらからワクチンを届けるべきとした。
野党・国民信任党(Amanah)所属のカリド・サマド下院議員は、連邦政府が発表したEMCOの概要をみると十分にターゲットを絞り切れておらず、クラスターがどこにあるかを特定できていないようだと指摘。州内のクラスターの80%が工場からのものだが、連邦政府はこうした見解を考慮していないようだと述べた。
またカリド氏は、EMCO実施発表が2日前だったことに言及。住民がパニック買いをしないで済むよう十分な猶予を与えるべきだったと述べた。営業時間の短縮についても、短時間に多くの人が殺到し「密」な状態を作ってしまうと批判。対策をしているとアピールするだけのための場当たり的政策が多すぎるとし、もっと州政府と連携して問題点を分析すべきだとした。
(フリー・マレーシア・トゥデー、7月1日)