サイトアイコン asia infonet.com

【従業員の勤労意欲を高めるために】第916回:海外で成果を出す人に共通する、たった一つの順序

第916回:海外で成果を出す人に共通する、たった一つの順序

今回は駐在員の知性とパフォーマンスについてです。拙稿(Kokubun et al., 2025)は、日本人駐在員184名を対象に、感情的知能(EQ)と文化的知性(CQ)が、海外適応や仕事の成果にどのように関係するかを分析しました。その結果、駐在員の成長には明確な「段階」があることが明らかになりました。

目次

最初に必要なのは「温かい心」

海外赴任の初期段階で重要なのは、次のような“心のあり方”でした。

研究では特に、「動機づけ型の文化的知性(Motivational CQ)」と、「感情を活用する力(Use of Emotion EQ)」が、現地適応やワークエンゲージメントを強く支えていることが示されました。

つまり、最初に求められるのは「正確さ」や「合理性」ではなく、関わろうとする姿勢そのものでした。

興味深いのは、冷静な判断力や高度な分析力は、この段階ではまだ決定打にならない点です。論文ではこの段階を、「ウォームハート(温かい心)」が必要な時期と表現しています。相手を理解しようとする姿勢、失敗を恐れずに踏み出す勇気――それこそが、グローバル環境での第一歩といえそうです。

成果を分けるのは「冷静さ」だった

では、現地に慣れ、仕事が本格化した後はどうでしょうか。ここで求められる能力は、大きく変化します。研究が示したのは、成果を左右するのは次のような力でした。

つまり、感情に流されず、冷静に対応できる力が、パフォーマンスと強く結びついていたのです。

論文は、この変化を、次のように表現しています。

Cool head after warm heart
(温かい心のあとに、冷たい頭)

最初は共感と意欲で飛び込み、次第に冷静な判断力で成果を出す。この順序が逆になると、かえってうまくいかない可能性があります。

グローバル人材育成への示唆

この研究は、企業の人材育成に重要な示唆を与えます。

多くの組織では、早い段階から「成果」や「合理性」を求めがちです。しかしそれでは、現地適応が追いつかず、結果としてパフォーマンスも伸びにくい可能性があります。

むしろ必要なのは、

  1. まず関係構築と心理的余白をつくる
  2. 次に判断力・調整力を育てる
  3. その上で成果を求める

という順序です。

海外駐在に限らず、多様な人と働く現代の職場でも同じことが言えるでしょう。

最初に必要なのは、「うまくやる力」ではなく、相手と向き合い、関係を築こうとする力です。そしてその先にこそ、はじめて本当の成果が生まれます。

 

 

調査にご協力くださった方々にこの場を借りて心より感謝申し上げます。
論文情報は以下。末尾のURLから全文をご覧いただけます。

Kokubun, K., Nemoto, K., & Yamakawa, Y. (2025). Cool head after warm heart. Hypothesis and verification of a developmental phase model showing the relationship between emotional and cultural intelligence, intercultural adjustment, work engagement, and performance of expatriates. Personality and Individual Differences, 246, 113288.
https://doi.org/10.1016/j.paid.2025.113288

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

 

モバイルバージョンを終了