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【イスラム金融の基礎知識】第587回 イスラム銀行で発生するイスラム法に反する事項(前編)

第587回 イスラム銀行で発生するイスラム法に反する事項(前編)

Q: イスラム銀行ではイスラム法に反する事項は発生しますか?

A: イスラム銀行はイスラム法(シャリア)に基づいて銀行業を営むビジネス主体である。ただ、マレーシアのような従来型金融システムが併存する多民族・多宗教社会では、思わぬ形でイスラム法に違反してしまうことがある。

イスラム銀行にとってイスラム法に違反する事項は、大きく三つに分類される。すなわち、①広告やチラシに人為的ミスで「利子」の文言やブタのイラストが挿入されるような案件で、ビジネス契約や個別の融資案件には影響を及ぼさない事項。②イスラム銀行が他の金融機関との取引を通じて利子を受け取ってしまうような案件で、契約に影響を及ぼす可能性がある事項。③融資の対象が酒造業や養豚業であるような案件で、契約そのものが無効となる事項の3種類である。イスラム銀行は、自らのビジネスが適切であるかをイスラムの観点から確認する監査機構であるシャリア・ボードを設置しており、このような事項が発生しないか監視するとともに、発生した場合は年次報告書でその旨を報告する義務を負うと、中央銀行によって定められている。

イスラム銀行ではイスラム法に反する事項がどの程度認識・発生されているかを分析した興味深い研究論文が、2023年に発表された。ヌグリスンビラン州のイスラム科学大学経済学部のマリーナ・モハメド氏とヌルハズリナ・イブラヒム氏による「マレーシアのイスラム銀行によるシャリアを遵守しない出来事の情報開示」と題する論文で、16のイスラム銀行による2015年から2020年まで6年分の年次報告書の分析を行った。これによると、6年間で合計159件のイスラム法違反事例が発生・認識されていた。イスラム銀行ごとに年間数件から20件ほど問題が発生したが、場合によっては100万リンギ以上の損失が生じていたことが明らかになった。【後編に続く】

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

 

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