第596回 イスラム銀行利用のカギは周囲からの影響と宗教性
Q: イスラム銀行を利用するようになった要因は?
A: なぜイスラム銀行を利用するようになったのか。利用者のきっかけをめぐり、これまで多くの研究が行われており、本連載でも度々取り上げてきた。今回はパレスチナ・アハリア大学のアムジャド博士らの研究チームが2024年に発表した論文「顧客のイスラム銀行への動機付けに影響を与える社会的要因」の議論を取り上げてみたい。
パレスチナのイスラム銀行の歴史は30年ほどで、利用率は2020年現在で17.6%にとどまっている。そこで調査研究チームは、220名を対象としたアンケート調査を行った。分析の結果、利用のきっかけとして大きな要因には、友人・親戚・同僚など周囲の人びとからの影響(ピア効果)と宗教的動機の二つがあると指摘している。周囲からの影響とは、周りがイスラム銀行に好印象をもって利用していると、本人もその影響を受け利用するに至ることを指す。パレスチナ社会には、社会的関係の中で暮らすうちに集団主義的な意志決定を個人が行う傾向が強いとも指摘しており、この傾向が他国で生じるとは限らないとしている。
他方、宗教的動機とは、銀行のサービス内容などの点でイスラムに対しての印象のことで、銀行の利用者は従来型銀行とイスラム銀行の違いを理解した上で、その宗教的特徴を重んじてイスラム銀行を選択しているとしている。また逆に、これらの違いを理解していない消費者ほど、「イスラム銀行が本当にイスラムに準拠しているのか信じられない」として、イスラム銀行の選択は消極的であるとしている。
研究チームによれば、この研究結果のうち特に周囲からの影響の強さは、パレスチナ社会の特徴であり、とりわけ特定のイスラム団体や政党の言説の影響を受けてイスラム銀行を利用する人が増えている一方、それゆえにこうした勢力への反発の結果として利用率が17%にとどまっていると分析している。
| 福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |

