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【総点検・マレーシア経済】第557回:2027年予算案はかなり「堅実」

第557回:2027年予算案はかなり「堅実」

10月9日、マレーシアの2027年予算案が下院に上程されました。歳入は2026年見込みより4.7%増の3808億リンギとなる見通しです。経常支出は3.8%増に抑え、開発支出も830億リンギと前年の810億リンギから若干の積み増し、結果として財政赤字のGDP比は2026年の3.5%から3.3%に縮小する見込みです。

税収の伸びは、SST(9.5%増)、所得税(6.2%増)、法人税(4.8%増)の増収に支えられています。また、ペトロナスによる配当も前年の270億リンギ(改訂後)から320億リンギへと増加が見込まれています。歳入に占める石油・ガス関連の収入は16.1%で、2009年に40%を超えていたことからすると、健全な範囲に収まっています。

経常支出は3768億リンギと前年の3631億リンギから3.8%増に抑えられていますが、2026年実績は当初見込みから大幅に増加し、前年比で9.8%増となっていました。これは、原油価格高騰に伴って燃料補助金が膨らんだためです。2025年の補助金支出は改革によって前年比18%減の553億リンギに抑えていましたが、2026年には34.7%増の745億リンギにまで増加、2027年は2.3%減の727億リンギとなることが見込まれています。

開発支出は2.5%増と微増に留まります。前年比で大きく増えているのは住宅(15.4%増)で、予算演説でもいくつかのプロジェクトに触れられています。続いてエネルギー・水道分野の10.5%増、その他一般管理費が10.4%増で、政府のデジタル化などに使われるとみられます。

低・中所得層への給付金(STR)は、低所得層で用途が限定される電子配布(SARA)へと一部付け替えられましたが、STRとSARAの合計は、ほぼ横ばいです(月収2501〜5000リンギの世帯は変更なし)。ただし、2026年にあった全国民向けの100リンギの1回払いは、2027年はSTR非受給者だけが対象となるため、STR受給者の受取額はやや減額となる一方、STRとSARAを受給していない18歳以上にとっては、100リンギの特別配布が1回から2回になり、100リンギの増加となります。いずれにせよ、総額に大きな変更はありません。

2027年予算案は原油価格高騰で燃料補助金が膨らむ中、総じて堅実な予算であると言えます。2027年には総選挙が行われる可能性が高いことを考えれば、公務員や高齢者向けの給付を除けば「大盤振る舞い」とは言えないでしょう。

一方で、最低賃金は現在の月額1700リンギから2000リンギへと2027年6月より大幅に引き上げられます。準熟練職と大卒者に月2500リンギの「最低初任給」が設定され、GLC/GLICの職員については最低賃金目標が3100リンギから3400リンギに引き上げられます。

財政状況が厳しい中で予算を抑制する一方で、最低賃金を上げるので許して、というのが本音かもしれません。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

 

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