リンギ下落、「相場は経済の明るい展望を反映せず」=中銀総裁

【クアラルンプール】 リンギ相場がアジア通貨危機時に近い水準まで下落したことについて、中央銀行バンク・ネガラ(BNM)のアブドル・ラシード総裁は20日、マレーシア経済の先行き展望を反映していないとの声明を発表した。

アブドル・ラシード氏は、リンギはほかの域内通貨同様、外的要因で値下がりしていると指摘。要因として、米国の金利予想の変化への調整、地政学上の懸念、中国経済の先行き不透明を挙げた。国内の状況については、今年の経済は外需の改善と強固な内需が牽引すると説明した。

また「昨年第4四半期以降、輸出は確実に改善している。今年1月の輸出は増加に転じた。観光業も回復しており、今年の観光客の来訪はコロナ以前の2,600万人を上回る見込みだ」と述べた。

さらにアブドル・ラシード氏は、認可投資の実施で投資に弾みが付いており、こうしたことに加え、政府が進める構造改革、先進国で予想される利下げの動きを背景に、エコノミスト、アナリストはリンギ値上がりを予想していると述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、2月21日、エッジ、マレーシアン・リザーブ、2月20日)

1米ドル=4.7956リンギ、リンギが通貨危機以来の低水準に

【クアラルンプール】 リンギ相場は20日、1米ドル=4.7956リンギと、1998年のアジア通貨危機時の4.8850リンギに迫る水準まで下落した。低迷を続ける中国経済がマレーシア経済の暗雲となっているためだ。20日の下落幅は0.2%で、今年に入ってからの下落幅は4%近く。過去3年、リンギは米ドルに対し値下がりしている。

当局は16日、昨年第4四半期の経済統計を発表したが、対中輸出の減少が響き経済成長はエコノミストの予想を下回った。製造業も不振が続いており、製造業の景況感を示す1月の購買担当者指数(PMI)は49と、17カ月連続で分岐点である50を下回った。

スタンダード・チャータード銀行のストラテジスト、ニコラス・チア氏は「米国との金利差が資金の国外流出と企業による米ドル蓄積をもたらし、リンギ下落圧力が強まった」とコメントした。

域内のほかの国の動きでは、タイ経済が「危機的状況」(スレッタ・タビシン同国首相)にありメイバンクは、タイ中央銀行は米国に先立ち利下げを開始する可能性があるとした。
(ザ・スター、2月21日、フリー・マレーシア・トゥデー、2月20日)

マイデジタルと東芝が協力契約を締結、ザヒド副首相も臨席

【東京】 2030年までのデジタル経済促進を図る青写真「マイデジタル」の実行主体であるマイデジタル・コーポレーションは、東芝デジタルソリューションズ(本社・神奈川県川崎市)との間で、ビッグデータ技術の応用に関する契約を締結した。アハマド・ザヒド副首相の日本公式訪問に合わせたもの。

契約締結式は東芝本社で行われ、ザヒド副首相と東芝の島田太郎社長CEO(最高経営責任者)が立ち会った。

ザヒド副首相は締結式のスピーチで、東芝とマイデジタルは、気象レーダーのデータを活用し、家畜管理や旅行・活動計画促進を行う実験プロジェクトに取り組むとし、マレーシアと日本の両国の組織が、個人情報を含まないオープンデータの活用で協力していくことを期待していると述べた。

ザヒド副首相は日本電気(NEC)本社ビルにも訪問し、「マレーシアのデジタル・スキルの発展に立ち会えることを楽しみにしている」と述べた。

NECのマレーシア現地法人NECマレーシアは2021年5月にジョホール州サンウェイ・シティ・イスカンダル・プテリにイノベーションセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を開設しており、マイデジタルとの間でも2022年10月にデジタル・インフラ開発の促進および人材育成分野における協力に関して契約を締結している。
(ザ・スター電子版、マレー・メイル、ベルナマ通信、2月20日)

スマホ修理のセカンドライフアジア、タイ市場に参入

【クアラルンプール】 スマートフォン修理のセカンドライフアジアが、タイに参入する。ポーランドのソフトウエア開発会社アプアイデアとの合弁を通じた進出で、当初投資額は25万米ドル。

セカンドライフアジアの発表によると、年内に実店舗3カ所を開設する。「ガード・ジーニアス」の名称で修理・保守サービスを提供する。人工知能(AI)を活用した技術によるサービスで、保証期限の切れた商品も対象。

セカンドライフアジアは2019年の創業で、アップルの「iPhone」と「MacBook」に特化したサービスを提供している。アップルの認証を受けており、また中国系リアルミーの認定サービスセンターとしてIoT(モノのインターネット)製品なども修理している。

ジェローム・テー最高経営責任者(CEO)によれば、従来のスマホ修理サービスと異なり、機器の保守、保護を含む包括的サービスを提供しており、部品の再利用で廃棄物を減らすことにも貢献している。

機器の寿命を延ばすことで貴重な資源の消費抑制にも貢献しており、これまでに140万キログラム相当の二酸化炭素排出削減を実現したという。
(ソヤチンチャウ、2月19日、テクノード・グローバル、2月16日)

セランゴール州、2025年観光年で観光客700万人を誘致へ

【クアラルンプール】 セランゴール州政府は、「2025年セランゴール観光年」に合わせ、2025年に国内外観光客数700万人を目標に掲げ、エコツーリズムの振興に力を入れると明らかにした。

州地方政府・観光委員会のン・スーリム委員長は、観光業を含むサービス部門は2022年の国内総生産(GDP)の26.5%に貢献しており、セランゴール州への観光客数は、2023年には目標の500万人に対し、654万人となったと説明。2024年の観光客数は560万人と予想しており、国内観光客数が450万人、海外観光客数が110万人を占める予想だと述べた。セランゴール州内には、クアラルンプール国際空港(KLIA)やスバン空港があるため、地の利を活かして観光客の増加を図るという。

同氏はまた、エコツーリズムの強化に向け、州内北部、南部へのパッケージ旅行商品を提供していくとし、セランゴール州政府観光局とも協力し、国内外向けキャンペーンやセランゴールフェアを開催するなど、販売促進活動を積極的に行っていくとした。
(マレー・メイル、マレーシアン・リザーブ、2月19日)

日馬間ハラル貿易の大幅増加を予想=ハラル開発公社

【クアラルンプール】 投資貿易産業省(MITI)傘下のハラル開発公社(HDC)は、今年マレーシアと日本間のハラル(イスラムの戒律に則った)貿易が大幅に増加すると予想している。

HDCのカイルル・アズワン・ハルン会長は、ハラル製品への認識や受容の向上、政治的安定、有利な投資条件、ハラル・サプライチェーンの技術進歩、2025年の大阪・関西万博などが貿易の成長に寄与すると述べた。特に食品・飲料、化粧品、観光などの分野において、ハラルへの認識が高まっているとしている。

アズワン会長は、マレーシアの2022年の輸出総額は594.6億リンギで、そのうち日本へのハラル輸出は2018年以来最高額となる36億リンギに達したとし、今後の成長も見込まれると強調。また、大阪・関西万博はマレーシアのハラル専門知識を世界に紹介し、マレーシアと日本の貿易関係を強化する機会にもなるとした。

HDCでは、マレーシア企業、特に中小企業(SME)が両国間のハラル貿易の機会を活用できるよう支援している。マレーシア製品の日本への輸出を促進するのみではなく、マレーシアが世界のイスラム教徒市場(18億人規模)にアクセスするためのハラル拠点となることを目指すとしている。
(ザ・サン電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、2月19日)

新規事業開発のI&CO、ITのトランベリアと資本業務提携

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 新規事業開発のI&CO東京(本社・東京都渋谷区)は19日、医療・ウェルネスツーリズムの予約プラットフォームを提供するマレーシア企業トランベリアと資本業務提携を行ったと発表した。
両社の専門性とリソースの相乗効果を通じてアジア市場における事業の拡大を加速する。提携にともない、I&COアジア太平洋(APAC)代表の高宮範有氏がトランベリアのCDO(最高デザイン責任者)に就任し、デザイン面でのトランベリアの企業価値向上やビジネスの加速を支援する。

トランベリアは、マレーシア在住の日本人とマレーシア人が立ち上げたITスタートアップ企業で、世界22カ国35都市で2,000以上の医療・美容・ウェルネスサービスを取り扱っている。2022年にはマレーシア保健省傘下の医療ツーリズム促進機構マレーシア・ヘルスケア・トラベル・カウンシルのデジタルパートナーとなり、医療ツーリズムのデジタルトランスフォーメーション(DX)とアクセシビリティ向上に取り組んでいる。

I&COは、グローバル視点の戦略策定やデザイン開発に強みを持ち、これまで国内外企業のブランディングプロジェクトを多数手がけてきた。今回の提携では、トランベリアが提供するプラットフォームのユーザーエクスペリエンス(UX)デザインや、同社のビジネスアセットなどのデザイン監修を手がける。

「世界と日本の接点を作る」という両社共通の目的のもと、I&COは今回の提携をアジアへの架け橋として、これまでニューヨークおよび東京を拠点としていた事業をアジア各地に展開する。アジア進出に際してI&CO APACは、これまでにアジアを拠点とするスタートアップ200社以上と連携を進めており、今後もパートナーシップを順次拡大していく計画だ。

中国電力、マレーシアでのCCS事業で三井物産と共同検討

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中国電力(本社・広島県広島市)は、三井物産(本社・東京都千代田区)がマレーシアで進めている二酸化炭素(CO2)を回収して地下へ貯留する「CCS」事業について、共同検討を行う。19日に三井物産と覚書を締結した。

三井物産が進めるマレーシア沖でのCCS事業は、先進的CCSにも採択されるなど、早期実現の可能性が高い。中国電力はCCSの早期導入に向けた検討を進める中で、2030年度CO2排出削減目標(2013年度比で半減)の達成や2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みとも合致すると判断した。

共同検討では、中国電力グループの石炭火力発電所で排出されるCO2の分離・回収から、液化・貯蔵、マレーシアへの液化CO2の海上輸送、マレーシア沖でのCO2地下貯留まで、一連のバリューチェーン構築について、調査・検討を行っていく。

中国電力は、発電所で排出されるCO2の分離・回収、液化・貯蔵、輸送事業者への引き渡しまでを担う意向で、今後、海上浮体式貯蔵設備の採用など先進的な取り組みも視野に、設備コストなどの検討を進めていくとしている。

三井物産は、国営石油会社ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)のCCS事業会社であるペトロナスCCSソリューションズ、仏トタル・エナジーズのCCS事業会社トタル・エナジーズ・カーボン・ニュートラリティ・ベンチャーズと共同で、マレーシア沖でCCS開発を進めている。

欧州森林破壊防止規則の順守を支援、政府が技術委員会設置

【クアラルンプール】 農園一次産業省と天然資源・環境持続可能性省は一次産品を生産する企業を守るための技術委員会を設置した。欧州連合(EU)が昨年6月、森林破壊と森林劣化に関する決まり「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」を発効させたことに対応する。

EUDRは、EU市場で販売される、あるいはEUから輸出される対象品が、森林破壊にかかわっていないと証明することを義務づけるもので、大企業に対しては今年12月30日から、中小企業には2025年6月30日から適用を開始する。

ジョハリ・アブドル・ガニ農園一次産品相のX(旧ツイッター)への投稿によると、マレーシアから輸出される一次産品がEUDRに抵触しないよう、順守を徹底する。

一次産品のうち農産物は国内総生産(GDP)の5.2%を占めており、100万人以上の労働者を雇用している。

ジョハリ氏は「国として森林伐採、環境の持続性の問題に直接かかわらないと、国際社会から否定的に見られる恐れがある」とした。

委員会は、森林伐採に関する規則、トレーサビリティー(商品の生産から消費までの追跡可能性)、ジオロケーション(地理的位置測定)の課題に取り組む。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ボルネオポスト、2月17日、ベルナマ通信、2月16日)

LRTアンパン線の乗客数目標は1日20万人、全線運行再開で

【クアラルンプール】 軽便鉄道(LRT)を運営するラピッド・レールは、17日午前6時にLRTアンパン線マスジッド・ジャメーバンダラヤ駅間の運行が再開したことを受け、同線の今年の1日平均乗客数目標を20万人と発表した。昨年の乗客数は15万5,000人だった。

同区間は昨年1月にバンダラヤ駅付近で起きた線路損傷のため、運行が休止されていた。線路および高架橋の修理は昨年12月末に完了していたが、今年1月1日から2月16日まで試験や検査・検証が実施され、公共陸運局(APAD)の承認を得て再開が決定されたという。再開後の運行本数はピーク時で37本と休止前の本数に戻り、中央ビジネス地区(CBD)で3分ごと、中央ビジネス地区以外(非CBD)で6分ごとの運行となっている。

ラピッド・レールは、運行再開により、通勤客が増加し、乗客の移動が促進されることで、沿線の経済活動が再び活発になることを期待しているとし、休止期間中の乗客の忍耐に感謝の意を表したいと述べた。
(マレーシアン・リザーブ、エッジ、ベルナマ通信、2月17日)