【従業員の勤労意欲を高めるために】第885回:高齢化社会との向き合い方(12)学びたければ、人に教えよう

第885回:高齢化社会との向き合い方(12)学びたければ、人に教えよう

前回は、高齢者へのICTの普及に向けて、習得した知識を他人に教えることによる自己効力感を活用することを提案しました。

他人に教えることは、それ自体、教える側の学習効果を高める可能性があります。認知科学者は、人々が情報を理解し、それを他の人が理解できるようにしなければならない状況に置かれたときに学習が強化されることを主張しています。

例えば、Nestojkoら(2014)による実験では、56人の大学生が無作為に2つのグループに分けられ、あるテキストを読んで暗記するように求められました。実験に先立ち、2つのグループは、テストが近づいているかのように勉強するか(グループ1)、他の生徒に教えるかのように勉強するか(グループ2)のどちらかの指示を受けました。実験の結果、グループ2はグループ1よりも正確に内容を記憶することができました。

この論文の著者は、結果の違いが、人々が他人に教えなければならないと思うときに、自然に物事を要約しようとするために生じたものかもしれないと考察しています。同様の結果は、124人の大学生の参加者を対象としたKohら(2018)の研究でも示されました。著者らは、以前に記憶した情報を他の人が理解できる形で思い出すことが記憶を強化するのに役立つ可能性があると主張しています。

このように、高齢者が高齢者を教えるという循環の確立は、費用対効果に優れるだけでなく、学習効果の点でも高い成果をあげる可能性があります。

 

Koh, A. W. L., Lee, S. C., & Lim, S. W. H. (2018). The learning benefits of teaching: A retrieval practice hypothesis. Applied Cognitive Psychology, 32(3), 401-410. https://doi.org/10.1002/acp.3410

Nestojko, J. F., Bui, D. C., Kornell, N., & Bjork, E. L. (2014). Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages. Memory & Cognition, 42, 1038-1048. https://doi.org/10.3758/s13421-014-0416-z

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
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三菱自(M)、新型ピックアップトラック「トライトン」発表

【クアラルンプール】 三菱モーターズ・マレーシア(MMM)は16日、9年ぶりにフルモデルチェンジとなった2024年型ピックアップトラック「トライトン」を発表した。

第6世代「トライトン」のバリエーションと保険なし価格は、それぞれ▽シングルキャブ(10万1,980リンギ)▽MT GL(11万4,980リンギ)▽AT GL(11万6,980リンギ)▽ATプレミアム(14万5,980リンギ)▽アスリート(16万5,980リンギ)――。最上位バージョンの「アスリート」は12月までに予約した場合は5年間、走行距離無制限の保証、他の4バリエーションは5年間、走行距離20万キロメートルの保証が付く。

パワートレインは、「アスリート」が直列4気筒2.4リットル4N16型2ステージ・ターボディーゼルエンジンを搭載。最大出力204PS(150kW)、最大トルク470Nmを発揮する。他のバリエーションは直列4気筒2.4リットル4N16型ターボディーゼルエンジンを搭載。最大出力184PS(135kW)、最大トルク430Nmを発揮する。

車体カラーは「アスリート」が、ヤマブキオレンジ、ジェットブラックマイカ、ホワイトダイヤモンドの3色。「プレミアム」がホワイトダイヤモンドとグラフィックグレーの2色、「GL」2車種がソリッドホワイトとブレードシルバーの2色。
(ポールタン、モタオート、10月16日)

サンウエイREIT、モントキアラのショッピング施設買収完了

【クアラルンプール】 ショッピングモール、オフィス、ホテル、大学キャンパスなどを所有するサンウエイ不動産投資信託(REIT)は、クアラルンプール北西部の高級住宅街、モント・キアラのショッピングモール「163リテール・パーク」の買収手続きを完了した。「サンウエイ163モール」の名称に変更し運営する。

入居率は99%で、100余りの店舗・ブランドが入居している。サンウエイは2億1,500万リンギで購入した。投資利益率は6.5%を見込んでいる。将来建設される大量高速輸送(MRT)環状3号線のスリ・ハルタマス駅はサンウエイ163から徒歩圏内に建設される予定だ

同REITを管理するサンウエイREITマネジメントのクレメント・チェン最高経営責任者(CEO)は「長期計画としてテナント構成やフロア構成を変更する」と語った。
(ザ・スター電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、10月11日)

来年度は拡大予算の見通し、初の4千億リンギ超も=専門家予想

【クアラルンプール】 18日にアンワル・イブラヒム首相が下院議会で発表する予定の2025年度予算案について、多くのエコノミストは順調な経済成長を背景に歳出規模が拡大すると予想しており、初めて4,000億リンギを超えるとの見方も浮上している。
経済紙「エッジ」がエコノミストを対象に行ったアンケート調査によると、政府は経常支出を増やす一方で、開発支出を抑制する方針をとるとみられ、貧困対策をメインとした多額の現金給付、既存および新規インフラプロジェクトへの支出、公務員給与の増額が盛り込まれるとみられている。

政府は年間80億リンギの削減効果が期待されるディーゼル燃料補助金合理化を打ち出す一方で、公務員給与引き上げで100億リンギの支出を見込んでいる。エコノミストらは、物価上昇を背景とした低所得者向け一時金支出などもあり、来年度の経常支出は前年度の3,038億リンギを上回る3,140億リンギになると予想している。
一方で開発支出については、エコノミストらは前年度の900億リンギから870億リンギ程度に削減されると予想している。ただ注目度の高い東海岸鉄道線(ECRL)などのインフラ事業は継続されるとみている。

歳出拡大にともなう財政赤字の対国内総生産(GDP)比については、開発支出削減にも関わらず経常支出増額により上昇するとみられており、エコノミスト11人の予想平均は3.8%で、第12次マレーシア計画(12MP)中間見直し時の目標である3.0―3.5%を上回っている。

こうしたことからエコノミストらは、支出増を賄うための財源として新税導入の代わりに、砂糖入り飲料への課税引き上げなど、既存の税の範囲を拡大するとみている。また物品・サービス税(GST)再導入も来年はないとみている。
(エッジ、10月15日)

三重県、水産物商談会をクアラルンプールで開催

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 三重県は15日、クアラルンプール(KL)市内で三重県の水産物関連会社と地元バイヤーによる水産物商談会「みえの水産物輸出商談会」を開催した。

三重県がマレーシアとシンガポールの両国で企画している水産物商談会の一環として行ったもので、三重県農林水産物・食品輸出促進協議会水産部会と弊紙発行元であるアジアインフォネットの共催。11月に予定されているオンライン商談会に先駆けて、日本産水産物の輸入実績が豊富なマレーシア側のバイヤー5社を招いて対面で行った。

日本側の売り込み商品は、小売り及び飲食店向けの▽冷凍伊勢エビ▽冷凍タツイカ▽冷凍ブリチーズカツ▽乾燥ノリ▽冷凍カキ・加工品▽アコヤ貝柱▽マダイ生ハム▽焼き串ひもの▽海鮮魚串▽さつま揚げ▽ブリトロ▽フレーバーオイル(わさび、ゆず)――など20数品目。

同日の対面による商談会の三重県側の参加者は▽A-LINE▽福井▽丸善水産▽山藤▽TA西村▽交洋――の6社で、▽若松屋▽尾鷲物産▽辻製油――の3社はオンラインで参加することになっている。

JOGMEC、ペトロナスとメタン排出管理実証設備設立で連携

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC、本部・東京都港区)は15日、マレーシアの国営石油会社、ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)との東南アジア諸国連合(ASEAN)メタン排出管理実証設備設立に向けた連携を発表した。

マレーシアで開催されたASEANエネルギー・セクター・メタン・リーダーシップ・プログラム(ASEAN MLP) 2.0」の公表の場で明らかにした。ASEAN地域初のメタン排出管理実証設備となる東南アジアMETECを設立する。ASEAN MLP2.0は2023年6月から実施されていたASEAN MLP1.0に続くプログラムで、メタン排出管理におけるASEAN地域での連携を実施している。

ASEAN地域でのメタン排出管理は、地域の気候やASEANに多くみられる海上の天然ガス生産設備に適した手法を検討する必要がある。東南アジアMETECでは、ペトロナスおよびペトロナス工科大学(UTP)、ペトロナス石油技術研究所(INSTEP)と連携し、ASEAN地域の天然ガス生産設備の特徴を踏まえた排出実証設備の設立を目指す。

同設備では各地域の企業と連携し、メタン排出の測定・モニタリング・報告・検証プロセスについて検討し、ASEAN地域全体のメタン排出量削減を支援する。これにより石油ガス開発の事業者がメタン排出対策を行う際に、事前にメタン測定技術を評価する場を設けることで、計画策定の効率化を図ることができるようになる。

マレーシア航空、来年3月に米国線を共同運航で再開

【クアラルンプール】 マレーシア航空(MAS)は、アメリカン航空とのコードシェアを通じて2025年3月から米国線を約11年ぶりに再開する。両社は共にワンワールド・アライアンスのメンバーで、パリ経由となる。

航空運航情報のエアロルーツによると、マレーシア航空は来年3月22日からエアバスA350-900型機を使用して、クアラルンプール新国際空港(KLIA)―パリ(シャルル・ド・ゴール空港)線を運航する。3月28日までは週4便運航し、3月29日からは毎日運航に増やす予定。

アメリカン航空は同日からパリ―米国線を運航する。コードシェアとなるパリ―米国路線にはシカゴ・オヘア国際空港、ダラス・フォースワース国際空港、マイアミ国際空港、ニューヨーク・ケネディ国際空港線が含まれる。

マレーシア航空は1980年代からロサンゼルスやニューヨークなど米国の複数の目的地に飛んでいたが、経営難に陥ったことから2014年に事業再編計画の一環として米国線から撤退していた。ロサンゼルスへは2012年まで台北経由で、その後2014年まで東京経由で、ニューヨークのニューアーク・リバティー国際空港へは2004年までドバイ経由で、その後2014年までストックホルム経由で飛んでいた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、10月14日、エアロルーツ、10月11日)

2023年度の政府会計は改善=会計検査院報告

【クアラルンプール】 会計検査院(AG)は14日、2023年度政府会計の監査報告を下院に提出した。予算収支の赤字は前年度より約86億リンギ減少し、国内総生産(GDP)比での赤字の比率は5.5%から5.0%に低下した。一方、政府債務は1兆4,920億リンギに6.6%増加しており、AGは懸念を表明した。

政府系企業など13社の債務に対する政府保証も前年度比1.5%増の227億4,000万リンギになった。受け取った配当は460億リンギで、同17.5%の減少だった。

国債発行残高は対GDP比で60.2%から64.3%へ増加。ほかの返済責任も含めた政府債務はGDP比で78.0%から81.8%へ増加した。

受取勘定は約983億6,700万リンギで、内国歳入庁(IRB)の分が35.2%を占めた。うち6年間、未収だった額は284億リンギで、全体の28.9%を占めた。償却分は16億3,500万リンギ。

政府会計の改善に向けAGは、▽税収源の多様化を通じた歳入増と支出監視の強化▽新規借り入れの自制▽政府系企業の財務改善――などを勧告した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月15日、エッジ、ベルナマ通信、ボルネオ・ポスト電子版、10月14日)

RON95ガソリン補助金実施を遅らせる可能性=経済相

【クアラルンプール】 ラフィジ・ラムリ経済相は、予想を上回る経済成長とリンギ高により財政にゆとりが生じていることから、懸案となっているレギュラーガソリン「RON95」の補助金合理化計画の実施を遅らせる可能性があると述べた。

ラフィジ氏は18日に国会に提出される2025年度予算案の中に「RON95」の補助金合理化計画が盛り込まれるかとのメディアの質問に対し、マレーシアの予想を上回る経済成長とリンギ高により、財政再建目標を達成するための政策の柔軟性が高まったと言明。詳細は予算案発表を待つべきだとした上で、いくつかの状況が変わったため数カ月猶予期間をもつことが可能になったと述べた。

ラフィジ氏は、「経済成長が加速すれば、財政健全化目標を達成するための余裕が若干増える」、「リンギ上昇は補助金圧力が減ることも意味する」と述べ、「究極の目標は我が国の財政をより持続可能なものにすることだ。そして政府が採用できる政策オプションはいくつかあると思う」と、経済成長との間でバランスをとりながら財政再建が可能との考えを示した。

政府は6月にマレーシア半島部を対象にディーゼル燃料に対する一括補助金を廃止したが、世界銀行は先ごろ、マレーシア政府が2024年の国内総生産(GDP)の4.3%という財政赤字目標を達成するために、今年までにガソリン補助金支出を削減する必要があると指摘していた。
(エッジ、10月14日)

GST再導入は3-4年後に検討、所得増を優先=首相

【ペタリンジャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は13日、「物品・サービス税(GST)は最も透明で効率的な税システムだと認識している」と再導入に前向きの姿勢を示した上で、現時点では時期尚早との考えを表明。「3-4年の時間が必要との考えを示した。

アンワル氏はマレーシア華人商工会議所(中華工商聯合会、ACCCIM)年次総会のあいさつで、「GSTを施行すれば税収は増える。しかし富裕層も貧しい人も課税対象になる。今は導入の時期でない」と指摘。「まず最低所得を3,000リンギ、4,000リンギにすることが先決で、その時点で段階的導入が可能になる」と述べた。現在の最低賃金は1,500リンギ。GSTを導入したほかの国を見ても、まず最低賃金を引き上げているという。なおマレーシアでは最低賃金は2年に1度見直されることになっているが、改定の年である今年はまだ発表されていない。

マレーシアではGSTは税率6%で2015年に当時のナジブ・ラザク政権が導入したが、3年後、希望同盟(PH)連立政権が廃止し、売上・サービス税を導入した。税収だけを比較すると、2021年の売上・サービス税収入は279億リンギで、2017年のGST収入440億リンギを大きく下回っている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、10月13日)