来年から印紙税が申告制度へ移行、税制上の重要な技術革新

【クアラルンプール】 内国歳入庁(IRB)は4日、技術革新と誠実さを推進するイベントを開催し、組織としての方向性をまとめた5カ年計画(2026―30年)を発表した。計画の一環として26年1月から印紙税を申告納税制度に移行させるが、リム・フイイン副財務相は、税制改革における重要な進展だと強調した。

申告制度では、納税者が自身で税率を判断し、税額を算出し申告する。当局の手続きが短時間で済み、制度への信頼につながる。払いすぎた税の還付もより迅速になるという。

デジタルインボイスも2026年中に100%施行される。リム氏によると、デジタルインボイスを導入した事業体は10万6,000で、領収額は計6億7,500万リンギに上った。デジタルインボイスは効率改善に役立つだけでなく、透明性が高まるため、IRBおよび行政サービス全般に対する国民の信頼強化につながるという。
(マレーシアン・リザーブ、11月4日)

EV道路税、来年から出力別制度を導入し優遇措置を継続

【クアラルンプール】 投資貿易産業省(MITI)は、電気自動車(EV)の道路税免除が今年いっぱいで終了するのを受け、2026年1月1日から新たな道路税制度を導入し、EV普及を促進していく方針だ。

MITIによると、新制度ではモーター出力(kW)に応じた税率を適用する。税率を内燃機関車より低く設定することで、実質的なEV優遇にする見通しだ。

また普及に欠かせないEV用公共充電施設は9月30日時点で、5,149基に達した。内訳は、直流(DC)充電器が1,709基、交流(AC)充電器が3,440基となっている。DC充電器は急速充電が可能で、高速道路での需要増などを背景に、当初目標の1,500基を114%上回る結果となった。MITIは、現在登録されている約4万2,000台のバッテリー式電気自動車(BEV)に対応するのに十分としている。

一方で、今年中に1万基という政府の目標の51%にとどまっている。テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、DC充電器の設置やメンテナンスに多額の費用がかかることや、設置許可に時間を要していることなどを課題として指摘。承認期間短縮に向けた全国的なガイドラインの作成など、すでに対策を進めていることを強調した。
(マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、10月30日)

ジョホールバルのモール「シティスクエア」、大規模再開発へ

【クアラルンプール】 ジョホール州で四半世紀あまり親しまれてきたショッピングモール「ジョホールバル・シティスクエア」(JBCS)は新ホテル開設など大規模再開発を実施する。完成は2027年第4四半期の予定で、営業を続けながらの改修になる。

JBCSの運営会社によると、再開発後の床面積は現在の4%増の56万8,927平方フィートになる。4万1,300平方フィートのヘルス&ウェルネス施設や、1万5,000平方フィートの子供向けアドベンチャーパークなど50以上の新規テナントの誘致を目指す。また、2028年にはモール上部にホテル併設型アパートメントの開業を予定している。

JBCSは1990年代半ばに建設され、マレーシア国鉄(KTMB)のJBセントラル駅に近接。さらにシンガポールを結ぶ高速鉄道輸送システム・リンク(RTSリンク)の新駅も近くに開設予定で、アクセスに優れた立地となっている。

JBCSは、マレーシアの大富豪として知られるロバート・クオック氏のグループ企業がもともと所有していたが、約20年前にシンガポール政府系資産運用会社のGICリアルエステートに売却。しかし、昨年になりクオック氏のグループ企業、オールグリーン・プロパティーズが約8億5,000万リンギで株式を買い戻していた。
(ザ・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、エッジ、11月3日)

フルタイム配車運転手へのガソリン補助金割当量を800リットルに

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は4日、レギュラーガソリン「RON95」の新補助金制度「ブディ・マダニRON95(BUDI95)」に基づくフルタイムの配車サービス運転手の月間割当量を、規定の走行条件を満たすことを条件に800リットルに引き上げると発表した。

空港タクシーも補助金支給対象に加える。下院議会の答弁に立ったアンワル首相は、月間割当量が600リットルでは不十分だというフルタイム運転手の意見を考慮したものだと説明。800リットルは走行距離5,000キロメートルに相当すると述べた。

フルタイム配車運転手の割当量引き上げは今回で2度目。政府は既に10月13日に約5万8,000人を対象に月間割当量を月300リットルから600リットルに引き上げていた。

アンワル首相はまた、ガソリン補助金統制制度(SKPS)に基づくRON95の補助金対象車両に空港タクシーを含めることを決定したと明らかにした。

アンワル首相によると、一般受給者の補助金付きRON95の月平均使用量はわずか98リットルで月間割当量の300リットルのわずか33%に過ぎず、上限を超えたのは受給者のわずか0.7%程度にとどまっている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、11月4日)

ペトロナスが坑井廃止の分野で人材育成、学園創設

【クアラルンプール】 国営石油会社ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)は、坑井(井戸)の閉鎖・廃止に当たる技術者を育成するための学園、液圧改修ユニット(HWU)を設立した。この領域における国としての能力を高める。石油・ガス資源をペトロナスに代わり管理するマレーシア・ペトロリアム・マネジメント(MPM)が実際の業務に当たる。

採掘が終了した油井やガス井を、安全かつ環境に配慮して永久的に閉鎖・撤去する作業に当たる人材の育成で、石油・ガス上流部門に不可欠の要素だ。

MPMのバチョ・ピロン上級副社長は「マレーシア人技術者が主導的役割を果たすための学園で、ガス・石油産業エコシステムの強化にもなる」と述べた。

掘削業者のベレスト・エナジーが使用していた退役設備などを利用し、実践的訓練を施すほか、仮想現実シミュレーターなどデジタル技術も活用する。マレーシア・サバ大学、マレーシア工科大学、ペトロナス工科大学など有力大学とも連携する。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、11月3日)

プレミアム高速バスサービス「エアロライン」に1カ月の運行停止処分

【クアラルンプール】 公共陸運局(APAD)は、運行会社のズルコによる度重なる違反を受けて、プレミアム高速バスサービス「エアロライン」の運行を116から125日までの1カ月間停止すると発表した。運行免許停止・取消委員会が1021日の会合で、運行免許と車両許可の30日間停止を決めた。

APADによると、同社は運行免許を不正に使用し、許可されていない場所で乗客の乗降を行い、事前の承認を得ずに認可されたターミナル外で運行していた。今年初めに複数回の警告が出されていたにもかかわらず、23521日、1010日にも違反が発覚した。同社は認可されたターミナルへの移転を複数回勧告されていたものの、これに従わなかったため、APAD3月から10月の間に3通の説明要求書を発行していた。報道によると、ズルコは公式文書で違反を認めているという。

エアロラインは、クアラルンプール、ペタリンジャヤ、ペナン、ジョホールバル、シンガポール間で長距離バスを運行している。首都圏クランバレーではクアラルンプール(KL)の「コーラスホテル」、バンダル・ウタマの「ワン・ウタマ・モール」、ペタリンジャヤの「サンウェイ・ピラミッド」を乗降場所としており、交通ハブであるTBSターミナルへの移転を拒んだためだという。

(フリー・マレーシア・トゥデー、ビジネス・トゥデー、112日)

拡大ASEAN国防相会議、小泉大臣らが協力深化を確認

【クアラルンプール】 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)が1日、クアラルンプールで開催され、カレド・ノルディン国防相や、日本からは小泉進次郎防衛相らが出席。ASEANと日本の防衛協力を深化させることなどを確認した。

会議冒頭で、カレド氏が「防衛協力においても、日本はASEANにとって最も重要な国の一つ」と強調。小泉氏は、自然災害時の人道支援や、海洋安全保障などに重点を置き、「繁栄し続けるインド太平洋という未来に向け、ともに取り組んでいきたい」と述べた。

また小泉氏は、12日のマレーシア滞在中、中国の董軍国防相や、米国のヘグセス国防長官、韓国の安圭伯国防相ら計8カ国の防衛相らと相次いで個別会談を実施した。董氏には、中国軍による東シナ海や太平洋での活動活発化に深刻な懸念を伝える一方、日米韓の3氏で記念撮影を行い、結束をアピールした。

一方、カレド氏も会議の合間にヘグセス国防長官と二国間協議に臨んだ。40年以上にわたる二国間防衛関係と地域平和と安定への共通のコミットメントを再確認し、南シナ海などでの協力をさらに強化する新たな覚書(MOUに署名した。

(マレーシアン・リザーブ、1031日、111日、防衛省発表資料)

コスモス、マレーシア初の日系不動産仲介業免許取得業者に

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 コスモスリアルテイが、マレーシア初の日系不動産仲介業(REA)ライセンス取得業者として営業を開始した。同ライセンスを日本人で初めて取得した創立者の石原彰太郎代表が1031日の記者会見で明らかにした。

 マレーシアで不動産仲介業を営むためには、財務省傘下の不動産鑑定士・仲介業者委員会(BOVAEPが認定する国家資格であるREAライセンス取得が必要。多数いる仲介代理人(REN)は2日間の講習で誰でも取得でき、何人もの日本人が取得しているが、正式書類への署名や個人名での代金集金はできず、ライセンスを持つREAに所属しなければならない。1人のREAライセンス取得者は最大50人のRENを雇用することができる。

マレーシア国内にはREAライセンス取得者は3,000人ほどしかおらず、平均7年もかかる超難関の資格となっている。石原氏は同ライセンスを今年6月に日本人で初めて取得していた。

石原氏は1999年にマレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2Hビザ取得代行など日本人のマレーシア移住をサポートするトロピカルリゾートライフを設立。2008年に不動産取引業務を開始し、2012年に不動産コンサル会社、コスモスプランを設立した。

【総点検・マレーシア経済】第533回 マレーシアの2025年第3四半期GDPの事前予測値は5.2%、予想を大幅に上回る。なぜ?

第533回 マレーシアの2025年第3四半期GDPの事前予測値は5.2%、予想を大幅に上回る。なぜ?

 

10月17日、統計局はマレーシアの2025年第3四半期GDPの事前予測値を5.2%と発表しました。これは、第2四半期の4.4%から大幅な上昇で、ブルームバーグは「最も強気な予想よりも良かった」と伝えました。筆者も第3四半期のGDPは意外に底堅く、4.6%程度までは持ち直す可能性があると考えていましたが、5%を超えるような成長は予想外でした。

筆者が持ち直しを予想していたのは、卸売・小売数量指数が底堅く推移していたのと製造業生産指数も横ばいのなかで、8月の鉱業生産指数が大幅に上昇したために、これによる上振れがあると考えていたためです。ところが、蓋を開けてみると予想していたよりもずっと大幅な上昇になりました。なぜでしょうか。

図はマレーシアの2025年第2四半期と第3四半期の経済成長率を産業別の寄与度に分解したものです。両期間とも、サービス業が3%程度、製造業が1%程度、建設業が0.5%程度の成長を担っています。それに農業を足してみると、第2四半期は4.7%成長、第3四半期は4.6%成長という数字が出てきます。

問題は鉱業で、実は鉱業はマレーシアのGDPのうち今でも5〜6%を占めています。第2四半期は鉱業が5.2%減となったため、GDP全体を0.3%押し下げていました。これが、第3四半期は鉱業が10.9%の上昇に転じたため、計算するとGDP全体を0.6%も押し上げていたのです。つまり、鉱業がマレーシアのGDP全体に与える影響をきちんと計算していれば、今回の5%を超える成長率も予想できたことになります。

それでは、なぜ鉱業のGDPが第2四半期は5.2%減、第3四半期は10.9%増と極端に振れたのでしょうか。バンクネガラの第2四半期のGDPについてのコメントを見ると、鉱業の落ち込みは「計画されたメンテナンス(planned maintenance)」のため、とされています。

調べてみると、ビンツルのLNGプラントが4月30日から5月29日まで計画的なメンテナンスのための操業停止を行っています。実際、これを反映するかたちで5月の鉱業生産指数は前年同月比で10.2%減となっています。第3四半期については、このメンテナンスが終了したため、バックオーダーを解消するために増産を行ったと推測され、その影響でGDPが大幅増になったものと推測します。

ということで、5%台のGDP成長率は(まだ仮ですが)よく調べれば分かったことで、これを誰も予想できなかったということは、自分も含めていかにきちんと数字を見ていないか、ということで反省が必要です。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【イスラム金融の基礎知識】第579回 イスラム式クラウドファンディングの可能性

第579回 イスラム式クラウドファンディングの可能性

Q: マレーシアでイスラム式クラウドファンディングが普及するためには?

A: 企業や個人が資金調達を行う手段であるクラウドファンディングの普及が進んでいるが、中にはイスラム式を謳うプラットフォームも存在する。イスラム式とは、「モスクの建設費用を集める」など目的がイスラムに適うとともに、調達した資金をイジャーラ(リース)方式で運用して出資者に分配するなど手段がイスラムに則ったものを指す。このようなイスラム式クラウドファンディングは、マレーシアではどのように発展していくかについて、2024年に研究論文が発表された。

トレンガヌ州のスルタン・ザイナル・アビディン大学のムハンマド・シャフルル・イフワート・イシャク准教授らの研究チームは、クラウドファンディングやイスラム銀行等で働く7名の実務家・専門家に対して聞き取り調査を行い、マレーシアにおけるイスラム銀行とクラウドファンドの発展を探った。調査結果から明らかになったことは、調査対象者がイスラム式クラウドファンディングを通じて多くの資金がイスラム金融市場に流入していると認識している、という点だ。また、両者は競合関係になるとはみておらず、むしろ補完関係だとみなしている。

根拠としては、クラウドファンディングを利用するスタートアップ企業や中小企業の中は、イスラム銀行から融資を受けられなかった事例が多いため、クラウドファンディングとイスラム銀行が借り手を奪い合ってはいないとしている。また、クラウドファンディング自体がイスラム銀行を利用していることから、足りないものを互いに補いあっているといえる。

クラウドファンディングの課題は、銀行融資ならば必須の企業へのモニタリングや、イスラム法によるガバナンスが徹底されていない恐れがあるため、この点をどう強化するかが、クラウドファンディングへの信頼に繋がると、専門家らは見ている。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。