
第912回:どのEQがどのCQを伸ばす? 日本人駐在員184名で判明した“感情的知性 → 文化的知性”の関係(前編)
前回までは、中小企業の両利きやグリーンイノベーションについてお話しました。中小企業は、持続可能性のための理想の追求と、自社の能力に合わせた現実の追求との間で、両手利きを活用して慎重にバランスを取る必要があります。
さて、今回からは、筆者が発表する論文の内容を順番に紹介したいと思います。今回は、駐在員の「文化的知性(CQ)」 と「感情的知性(EQ)」についてです。
現代の企業では海外赴任や国際的な仕事が増えており、 異文化の中でも上手く働くために必要なCQ と、人の感情を理解してうまく扱うEQ が注目されています。しかし、「どのようなEQの力が、 どのCQの力を高めるのか」 という具体的な関係はこれまでほとんど分かっていません。そこで、 米国およびカや東アジアで働く日本人駐在員184名を対象に調査を行 い、EQとCQのそれぞれの“側面”に着目して、 両者がどのようにつながっているのかを詳しく分析しました。
EQには、主に次の4つの力があります。
- 自分の感情に気づく力(自己情動評価)
- 他人の感情を読み取る力(他者情動評価)
- 感情を前向きに活かす力(情動活用)
- 感情をうまくコントロールする力(情動調整)
一方、CQにも4つの力があります。
- 状況を振り返って気づきを得る力(メタ認知CQ)
- 異文化に関する知識(認知CQ)
- 異文化で学びたい・関わりたいという意欲(動機づけCQ)
- 文化に合わせて行動を変える力(行動CQ)
次回に続きます。
☆調査概要
WEBアンケートが2023年10月24日から2024年3月2 5日にかけて行われました。東西8カ国・地域(中国、インドネシア、マレーシア、 シンガポール、台湾、タイ、アメリカ、ベトナム)に駐在する23歳から76歳までの女性12 人、男性172人の計184人が参加し、全員のデータが有効回答とされました。調査にご協力くださった方々にこの場を借りて心より感謝申し上げます。
Kokubun, K., Nemoto, K., & Yamakawa, Y. (2025).
What kind of emotional intelligence enhances what kind of cultural intelligence: Analysis using emotional and cultural intelligence facets of expatriates. International Journal of Intercultural Relations, Volume 110, 102332.
2026年1月16日まで、 以下のURLで全文をご覧いただけます。https://authors.elsevier.com/a/1mApwXTj0QRRa
| 國分圭介(こくぶん・けいすけ) 京都大学経営管理大学院特定准教授、 |