【従業員の勤労意欲を高めるために】第917回:不安な時代、人はまず何を求めるのか? ――コロナ禍で変わった若者のキャリア意識(前編)――

第917回:不安な時代、人はまず何を求めるのか? ――コロナ禍で変わった若者のキャリア意識(前編)――

前回は、海外駐在員の適応とパフォーマンスにおける「順序」についてお話ししました。今回は視点を変え、コロナ禍が若者のキャリア意識にどのような変化をもたらしたのかを取り上げます。

拙稿(Kokubun, 2025)では、2020年末から2021年初頭にかけて、日本の大学生516名を対象に、パンデミック前後で「仕事に何を重視するようになったのか」を分析しました。

まず確認されたのは、学生全体が「安定」や「人とのつながり」を、以前よりも重視するようになったという点です。ただし興味深いことに、その現れ方には都市と地方で明確な違いがありました。

地方の大学に通う学生ほど、安定した収入、福利厚生、無理のない働き方、勤務地といった「働く条件」への関心を強めていました。一方、都市部の大学に通う学生では、自己成長ややりがい、自分らしさといった「自己価値(セルフワース)」への関心がより強まっていたのです。

つまり、同じ不安定な環境に直面しながらも、地方の学生は「まず安心できる環境」を、都市の学生は「自分は何者として働くのか」を、それぞれ強く問い直していたといえます。

重要なのは、どちらが正しいかではありません。危機の中で、人はまず自分にとって欠けているものから意識を向けるという点です。

この違いは、企業の中でもしばしば見られます。不確実性が高い局面では、若手社員の中にも「まず安心できる環境」を求める層と、「それでも成長や自己実現を求める層」が同時に生まれ、同じ施策でも響き方が大きく分かれるのです。

では、こうした違いは、働く意欲や行動にどのようにつながっていくのでしょうか。
次回は、人間関係・地元志向・内発的動機づけの関係から、企業や管理職への示唆を考えます。

次回に続きます。

調査にご協力くださった方々にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

論文情報は以下。末尾のURLから全文をご覧いただけます。

Kokubun, K. (2025). During the COVID-19 Pandemic, the Gap in Career Awareness Between Urban and Rural Students Widened. Psychology International, 7(4), 103.
https://doi.org/10.3390/psycholint7040103

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

 

【総点検・マレーシア経済】第539回 マレーシアの2025年第4四半期の経済成長率(事前予測値)は5.7%

第539回 マレーシアの2025年第4四半期の経済成長率(事前予測値)は5.7%

1月16日に発表されたマレーシアの2025年第4四半期の経済成長率(事前予測値)は前年同期比5.7%で、第3四半期の5.2%からさらに加速しました。その結果、2025年通年の経済成長率は4.9%程度になると見込まれ、その結果、2025年通年の経済成長率は4.9%程度になる見込みです。これは現在の政府予測である4.0〜4.8%の上限を上回り、昨年7月に下方修正される前の政府予測4.5〜5.5%に近い水準です。これは、トランプ関税の悪影響を受けると懸念されていたマレーシアが、実際にはその影響を免れたことを示しています。

 

2025年第4四半期の経済が好調だった理由は、製造業が6.0%増(第3四半期は4.1%増)、サービス業が5.4%増(同5.0%増)と、ともに伸びたためです。年前半は振るわなかった自動車販売も年後半に伸び、82万752台と過去最高を更新しました。これによりインドネシアを上回り、ASEAN最大の自動車販売台数を記録したと報じられています。

図は2024〜25年のマレーシアの四半期GDP成長率の推移です。 2024年第2四半期にピークを付けた後、減速傾向にあったマレーシア経済が、2025年後半に持ち直したことが分かります。

 

本連載の第512回、2025年初の時点で、筆者はマレーシアの2025年の経済成長率は当時の政府予測の下限(4.5%)を下回るのではないかと書いていました。実際、年前半はそのような推移でした。しかし、年後半になった経済は予想外に大きく持ち直しました。さまざまな要因がありますが、筆者は国内外でのAI・データセンター特需が影響しているとみています。事実、半導体が経済の中心を担っている台湾の2025年の経済成長率は8.63%と過去15年で最高を記録しました。

 

 

同時に、外国為替市場では対ドルでリンギ高が進んでいます。2025年1月には1ドル=4.5リンギ前後であったものが、2025年を通じてリンギ高が進み、2026年1月23日には遂に1ドル4.0リンギの壁を突破しました。

 

経済が好調で為替レートが上昇しているということは、ドル建ての一人当たり国民所得(GNI)を基準とする世界銀行の定義による「高所得国入り」にマレーシアが近づいたことを意味します。筆者の概算によれば、1ドル=4.0リンギで計算した場合、マレーシアの2025年のドル建て一人当たりGNIは14,500ドル前後になります。これは、2024年の世銀の基準における高所得国の下限である13,937ドルを上回ります。ただし、2025年の平均為替レートは1ドル=4.28リンギ程度であり、このレートで計算すると一人当たりGNIは13,500ドル程度にとどまります。

 

また、世界銀行が高所得国入りの判断に使う為替レートは3年移動平均であり、2023年と2024年は1ドル=4.5リンギを超える水準で推移していました。さらに、高所得国入りの基準は毎年変動しており、例年数%ずつ上昇しています。したがって、現在のリンギ高が反映され、世銀の基準で公式にマレーシアが高所得国入りしたと発表されるのは、2028年頃になると予想されます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【イスラム金融の基礎知識】第585回 MBSBのCEOがAIBIMの新会長に就任

【イスラム金融の基礎知識】第585回 MBSBのCEOがAIBIMの新会長に就任

Q: AIBIMの会長が交代したそうですが、新会長はどのような人物ですか?

A: マレーシアでイスラム銀行業をてがける銀行が加盟する業界団体であるマレーシア・イスラム銀行金融機関協会(AIBIM)の発表によると、昨年12月に退任したモハメド・ムアッザム・モハメド前会長の後任として、MBSB銀行のラフェ・ハニーフ社長が、1月に新会長に就任した。任期は2026-2028年の3年間。

ウェブサイトの情報によると、新会長はマレーシア国際イスラム大学で世俗法とイスラム法を学んだ後、ハーバード大学の大学院で法学修士を取得した。1999年にロンドンのHSBCに就職してUAEなど中東を担当し、同銀行のイスラム銀行業部門であるHSBCアマーナのCEOを務めた。マレーシアに戻ると、2019年から23年までCIMBの幹部職を歴任、2023年からは独立系イスラム銀行であるMBSB銀行の社長を務めている。

他方、昨年いっぱいで退任したモハメド氏は、同じく独立系イスラム銀行のバンク・イスラムのCEOを務めた人物で、同銀行のCEOを辞すと同時に会長職からも身を引いた恰好となる。なお今回のAIBIMの役員人事について、異動は会長職のみで、他の幹部職(副会長・事務局長・会計)には変更がない。

AIBIMは新会長について、金融のガバナンス、イノベーション、サステイナブルの各分野で優れた実績を有することと、幅広いリーダーシップや深い業界専門知識を持っていると指摘したまた、同協会の2025-27年の3カ年計画において、協会がマレーシアのイスラム金融産業においてリーダーシップを強化すること、業界の仲介を積極的に行うこと、そしてマレーシアが世界的なイスラム金融のハブになることを目指しており、新会長はこの取り組みを進めていくとしている。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

未払い印紙税の履行に罰金を免除、自発的申告を奨励

【クアラルンプール】 内国歳入庁は、未払い印紙税に関する自発的開示プログラムを開始したと発表した。アンワル首相の新年メッセージに基づく措置で、2023年1月1日から2025年12月31日までの期間に取り交わされた、印紙税が未払いの取引文書が対象。自発的な法令順守を促すのが狙い。

6月末までに申告し、税を納めた者には延滞に対する罰金を免除する。納税した時点で罰金は自動的に削除されるため、罰金免除の申請書類提出は不要。

またこのプログラムに基づき納税が済んだ文書は監査対象から外される。しかし詐欺が絡む事案の文書は監査対象になる。
(マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、エッジ、1月28日)

ジェトロ、日マレーシアファストトラックピッチをKLで開催へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本貿易振興機構(ジェトロ)は、日本・マレーシア間のオープンイノベーションを推進する取り組みとして、2月5日にクアラルンプール(KL)でピッチイベントを開催すると発表した。

日本経済産業省とジェトロが実施してきた「日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)共創ファストトラック・ピッチ・イニシアティブ」事業の一環で、マレーシアでの開催は今回が初めて。ジェトロ、経産省、在マレーシア日本国大使館、マレーシア投資貿易産業省(MITI)、マレーシア投資開発庁(MIDA)の共催となる。

日本の三菱商事、IHI、三井化学、マレーシアのADA(通信大手アシアタ・グループ)、YTL(建設大手財閥)がチャレンジオーナーとして参加し、最終選考を通った日系スタートアップ5社とマレーシアスタートアップ5社を含む14社が最終プレゼンを行う。

経済産業省とジェトロは、2023年の日・ASEAN友好協力50周年を機にASEAN各国との新たなイノベーション創出に向けた取り組みとして各国政府関係者との共同で、「日ASEAN共創ファストトラック・ピッチ・イニシアティブ」を実施してきた。

バティックエアが年内に10機を追加導入、保有機数を63機に

【クアラルンプール】 バティック・エア・マレーシアは、運航頻度の向上、待機機材の増強による運航の回復力向上、スバン空港からの接続強化の一環として、年内に10機を追加導入し、保有機数を63機に増やす計画だ。同航空は現在53機の機材を保有し、20カ国65都市に就航している。

チャンドラン・ラマ・ムティ最高経営責任者(CEO)は、「機材の新たな導入により、待機用の機材が増加し、悪天候などの混乱をより適切に管理し、連鎖的な遅延を削減できるようになる」と言明。旅行需要の増加と季節的な混乱がある中、運航の信頼性向上に努めており、年央までに定時運航率(OTP)を85%にすることを目標としていると述べた。OTPは過去3カ月で既に顕著に改善しており、70%を超える安定した業績を記録しているという。

バティック・エア・マレーシアは、旧正月に向けて固定運賃キャンペーンを実施しており、家族連れが安心して旅行できる確定運賃を提供している。予約受付は2月13日までで、旅行期間は2月13日から16日までとなっている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、ベルナマ通信、1月27日)

車齢20年以上の車両買い替え支援制度開始、最大4千リンギ支給

【クアラルンプール】 運輸省は、車齢20年以上の老朽車の買い替えを支援するマッチング助成金プログラムを開始した。危険な老朽車を減らすのが目的で、老朽車所有者に対し国産車メーカー製の新型で安全かつ燃費の良い車両への買い替えを促す。

運輸省によると、2026年度は約5,000台に対応する予算1,000万リンギが計上されており、対象となる受給者には最大2,000リンギの助成金が支給され、さらに参加する国産車メーカーから同額が上乗せ支給される。

最新型「サガ」と「e.Mas5」については政府から1,000リンギ、プロトンが同額を上乗せした合計2,000リンギの補助金を受けることができる。これら2車種を除くプロトンモデルは、政府から2,000リンギ、プロトンが同額を上乗せした合計4,000リンギの補助金を受けることができる。プロドゥアのモデルに関する詳細は、後日プロドゥアから発表される。

老朽車両は、環境基準を遵守し、管理された専門的な方法で車両が廃車されることを保証する認可自動車処理施設(AATF)を通じて合法的に処分される。サバ州とサラワク州にはまだAATFがないものの、包括性の観点から東マレーシア州にも適用される。

道路交通局(JPJ)のデータによると、2025年12月31日現在、登録車両は約1,969万台となっているが、うち407万台(全体の20%に相当)は3年以上道路税を滞納しているという。
(ポールタン、マレーシアン・リザーブ、マレー・メイル、1月27日)

補助金付きガソリンの違法購入、購入者側も罰則対象に

【クアラルンプール】 政府は、「1961年供給統制法」に基づき、補助金付き「RON95」ガソリンの違法な購入を禁止するための外国登録車の所有者や使用者を対象とする新たな規則を4月1日付で導入する。アルミザン・モハメド・アリ国内取引物価相が28日の下院議会質疑で明らかにした。

「1974年供給統制規則」第12A条などの既存の規則では、罰則対象は外国登録車に対する「RON95」ガソリンの違法販売者側、つまりガソリンスタンド側に限定されており、外国登録車の所有者や使用者に対しては罰則規定はなかった。

アルミザン氏は、新補助金制度「ブディ・マダニRON95(BUDI95)」の導入にもかかわらず、国境地帯のガソリンスタンドで「RON95」の補助金制度悪用が続いていることに対処するための追加的な監視措置に関し、補助金付き燃料の販売に関するデータ分析を活用し、多機能身分証カード「MyKad」を利用した繰り返し行われる燃料購入を追跡すると述べた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、1月28日)

「石川県フェア」を再び開催、28日から「マックスバリュ」などで

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 石川県は1月28日から2月15日まで半月以上にわたって、県産品を即売する「石川フェア」を首都圏クランバレーで開催する。「石川フェア」は日本レストランで行った昨年1月に続く開催で、今回はショッピングセンターに入居したイオン・グループ店舗で行う。

日本産食品の輸入販売に定評のあるJAFフード・インダストリーズが協力し、石川県の食品メーカー5社の21品目を、イオン・グループの店舗に設けた専用スペースで販売する。開催店舗は▽デサパーク・シティ▽バングサ・サウス▽サンウェイ・ヴェロシティ――に入居する「マックスバリュ」3店と「セティア・エコヒル・モール・セメニエ」に入居する「イオンスタイル」店。

烏骨鶏の「烏骨鶏プリン」、四十萬谷の「梅」、オハラの「葛切り」6種、加賀建設の「金棒茶」3種、昭宝製菓の「カニ面煎餅」、「梅香るレーズンバター饅頭」など10種を石川県専用コーナーで販売する。

JPJとポス、2月1日から道路税の物理的納税証明発行を停止

【クアラルンプール】 道路交通局 (JPJ) は2月1日から、道路税の物理的納税証明の発行を停止する。これに伴い、郵便サービスのポス・マレーシアでの発行も取り止められる。モバイルアプリ「MyJPJ」を通じた完全デジタル化となる。

JPJは2023年2月から、車両手続きのデジタル化を段階的に導入。車のフロントガラスへの道路税ステッカー掲示義務を廃止し、希望者にのみ紙で納税証明を発行していた。紙の証明の発行停止後も、納税状況はMyJPJアプリで確認できるほか、警察は車のナンバープレートからも確認できる仕組みになっている

また運転免許証(LMM)についてもすでに基本はアプリでの表示となっており、マレーシア国民でカード式の免許証が必要な場合は、海外渡航の証明などが必要だったが、今回合わせて申請制度を見直し、追加の書類は不要となった。
(マレー・メイル、ポールタン、ザ・バイブス、1月27日)