中銀が金融安定化報告、金融市場は秩序を維持

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は3日、金融安定化報告書を公表。家計、金融機関の強靭さ、健全性についての調査を概説した。

今年第2、3四半期に世界の金融市場は大きな変動を見たが、国内金融市場は秩序を維持した。通貨リンギは9月30日の時点で今年、米ドルに対し11.4%上昇した。経済の先行き見通しが明るいことから、リンギは強さを維持する見込み。

輸出の回復、内需の増加で上半期の事業活動は拡大した。事業向けローンの減損処理率は2.6%と低水準を維持した。

経済活動の拡大が見込めるため、下半期の事業活動の強靭さは下半期にさらに改善が期待できる。一次産品の値下がりで投入原価は下落が予想される。

家計は、経済、雇用状況が良好なため強靭さを維持する見通しだ。家計債務の対国内総生産(GDP)比は83.8%で、以前と同水準だった。債務不履行の恐れのある家計借り入れの割合は4.4%に低下した。

銀行、保険会社の資本バッファー(不測の事態に備えた、自己資本に上乗せする資本)は潤沢で、不測の事態に対する強靭さは引き続き維持される。

日本ハム、養鶏業レイホンとの資本提携を縮小

【クアラルンプール】 日本ハム(本社・大阪府大阪市)は、ハラル(イスラム法に準拠した)食品で合弁を組んでいた養鶏業のレイ・ホンに対する持ち株の一部を売却し、持ち株比率が発行済み株式の13.06%から4.82%に縮小した。

市場外取引による売却で、売買価格は明らかにされていないが、2日のレイ・ホンの終値に基づけば、2,493万リンギの取引になる。

レイ・ホンと日本ハムは16年に、49対51の比率で日本の技術を用いたハラル食品生産会社NHFマニュファクチャリング(M)を設けたが、両社は昨年、合弁を解消。NHFの純資産(総資産から負債を差し引いたもの)が2,120万リンギのマイナスだったことから、レイ・ホンは日本ハムの出資分を1リンギで買い取った。

レイ・ホンが最近発表した第1四半期(4-6月)決算の純利益は前年同期比233%増の1,339万リンギだった。売り上げ増に加え、政府補助が増益に貢献した。
(ザ・スター、10月4日、エッジ、10月3日)

来年度予算、経済セクターに重点=アミル第2財務相

【クアラルンプール】 10月18日に下院議会に上程される2025年度予算案の基本方針について、アミル・ハムザ第2財務相は「経済セクターに重点を置き、経済の基盤強化につながる構造改革路線を継続する」と述べた。

その上でアミル氏は、「政府の方針は国民に還元することであり、保健・教育など国民にとって重要な部門への投資を増やすことを通じて国民を守ることができる。重要なことは国家経済を新しい構造に引き上げることだ」と述べた。

アミル氏はまた、堅調な経済成長を背景により多くの高品質の投資機会が国内にもたらされるようにして、国民に雇用機会が生まれるようにすると言明。マレーシアの政治的安定が、外国投資家が対マレーシア投資を継続する大きな要因となっていると指摘した。

アミル氏はさらに、政府系投資会社(GLIC)による国内直接投資(DDI)の促進に向けた取り組みにより、マレーシアで事業を展開する外国企業、特に半導体セクターを下支えする優れたエコシステムが構築できると強調。「こうした取り組みは、投資家がマレーシアで事業を継続できるようにしながら、地元の業界プレーヤーが競争し、外国市場に参入する余地を開くために重要だ」と述べた。
(マレーシアン・リザーブ、エッジ、ベルナマ通信、10月3日)

住友ベークライト、液状フェノール樹脂の供給を拡大

【クアラルンプール】 住友ベークライト (本社・東京都品川区)は2日、マレーシア子会社のSNCインダストリアル・ラミネーツが手掛けている液状フェノール樹脂の供給を拡大すると発表した。需要拡大が続くアジアにおいて、供給能力強化を通じてプレゼンスを高めていく。

住友ベークライトは、東南アジアではインドネシアに主に固形製品と粉末製品を生産する拠点がある。このたびSNCからの液状フェノール樹脂の供給を拡大・強化することで、東南アジア・西南アジア・オセアニア地域の顧客に対して安定供給を行う体制が整った。

SNCでは世界各地の拠点で開発された差別化製品についても、顧客の要望に応じて供給が可能であり、今後、SNCはフェノール樹脂事業の競争力強化の一翼を担っていく。

SNCは主に回路製品の生産・販売拠点として、1990年にジョホール州ジョホールバルに設立された。設立当初から、内製用にフェノール樹脂生産を行ってきたが、2023年から本格的に外部販売を開始している。

【従業員の勤労意欲を高めるために】第884回:高齢化社会との向き合い方(11)教え合いと自己効力感

第884回:高齢化社会との向き合い方(11)教え合いと自己効力感

前回は、マンツーマンで時間をかけて丁寧に指導を行うことで、高齢者のICTスキルの向上が期待できるというお話でした。

しかし、社会実装を視野に入れれば、当然、費用対効果の点で実現可能なものでなくてはいけません。そこで注目したいのが、高齢者の自己効力感です。これまでに多くの研究で、他人を助けることが自己効力感の向上につながることが確認されています。例えば、Barlow & Hainsworth(2001)は、22人の高齢ボランティアがリーダーになるためのトレーニングを受けたときの動機を探るためにインタビューを行いました。その結果、ボランティア活動は、①退職によって残された人生の空白を埋めること、②他人を助けることで社会の役に立つこと、そして③仲間を見つけることという3つの主要なニーズによって動機づけられていることが明らかになりました。この結果は、高齢者のボランティア活動が、退職や健康の低下に伴う損失を相殺するのに役立つことを示唆しています。

そこで、私の最近の論文(Kokubun, 2024)では、高齢者へのICTの普及に向けて、図に示すように、習得した知識を他人に教えることによる自己効力感を活用することを提案しています。

まず、高齢者は好きなICTの機能を学び始めます(興味のあることから始める)。これにより、ICTが楽しくて便利であることを、より早く、簡単に実感することができます(楽しさや実用性を実感)。ICTが楽しいほど、早く学ぶことができます(早い習得)。そして、彼らは、自分たちが学んだICTを他の高齢者に教えます(人に教える)。他人に教えるという行為は、自分の能力に対する自信を高めます(自己効力感)。自分の能力に対する自信が高まると、ICTに対する抵抗感が減り、他の機能を学ぶモチベーションが高まります(興味のあることから始める)。

このように、高齢者の自己効力感を活用した、高齢者が高齢者を教えるという循環の確立は、高齢化社会におけるICT等の新技術の普及のために有効な手段の一つとなる可能性があります。

 

Barlow, J., & Hainsworth, J. (2001). Volunteerism among older people with arthritis. Ageing & Society, 21(2), 203-217. https://doi.org/10.1017/S0144686X01008145

Kokubun, K. (2024). How to Popularize Smartphones among Older Adults: A Narrative Review and a New Perspective with Self-Efficacy, Social Capital, and Individualized Instruction as Key Drivers. Psychology International, 6(3), 769-778. https://doi.org/10.3390/psycholint6030048

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

カフェ併設のAmバンク支店、ペタリンジャヤで開業

【クアラルンプール/ペタリンジャヤ】 商業銀行のAmバンクとカフェチェーンのバスク・ベアは1日、カフェを併設したAmバンク支店をセランゴール州ペタリンジャヤのPJニュータウンで開業した。両社がカフェ併設店のコンセプトを打ち出したのは2023年で、既に3支店を開設している。年内に10店まで増やす。

Amバンクのアーロン・ルー代表は、バスク・ベアとの提携を通じ、斬新な顧客体験を提供すると述べた。地域共同体のような環境であり、顧客は銀行サービスを受けながら、コーヒーやトーストを楽しむことができるという。

バスク・ベアを運営するルーブ・ホールディングスのブライアン・ルー最高経営責任者(CEO)は「金融サービスとカフェを融合させることで支店の風景を作り変える」と述べた。

この先、毎年10店のペースで開設する計画で、サバ、サラワク両州を含め全国で展開するという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・サン電子版、10月1日)

フォーイットのマレーシア現法、シンガポールのYOYOを子会社化

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 フォーイット(本社・東京都渋谷区)は2日、マレーシア現地法人、フォーイット・デジタルを通じて、シンガポールのYOYOホールディングスの発行済み株式の過半数を9月3日付けで取得し、子会社化したと発表した。

YOYOは東南アジアを中心としたインフルエンサー・マーケティングプラットフォーム「PopStar」の開発・運営を手掛けているほか、デジタルマーケティング事業を手掛けている。シンガポールのほか、インドネシア、フィリピンに拠点を持ち、「PopStar」はインドネシアとフィリピンでは国内最大規模のインフルエンサープラットフォームとなっている。

フォーイットは、YOYOの子会社化を通じて、成長市場への早期参入、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域におけるパフォーマンスマーケティング市場およびインフルエンサーマーケティング市場での地位強化を図る。

マレーシア含む4カ国から輸入の太陽光製品、米国が制裁関税

【クアラルンプール】 米商務省は1日、マレーシアなど東南アジア4カ国から輸入する太陽電池モジュールに対する補助金相殺関税を仮決定したと発表した。韓国系ハンファQセルズ、アリゾナ州に拠点を置くファースト・ソーラー、および中小企業数社による申し立てを受けたもので、商務省が今年計画している2つの予備的決定のうちの最初のケース。ロイター通信などが伝えた。

ハンファQセルズなどは太陽製造貿易委員会米国同盟と呼ばれる組織を結成し、東南アジア4カ国で工場を経営する中国企業は不当な補助を進出先の国で受け、生産コスト以下で米国に輸出していると訴えていた。

米商務省はマレーシアからの輸入品に対して9.13%、カンボジアからの輸入品に対して8.25%、タイからの輸入品に対して23.06%、ベトナムからの輸入品に対して2.85%の補助金率を算出した。

マレーシアからの輸入では、中国系ジンコソーラーに3.47%、ハンワQセルズ・マレーシアに14.72%、バオジア・ニュー・エナジーなど3社に123.94%の相殺関税を仮決定した。この調査結果に対し訴えた側のハンワQセルズはコメントを回避した。商務省は4月に最終決定を発表する。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月3日)

水力発電事業推進でジェンタユ、住友商事と協業

【クアラルンプール】 再生可能エネルギー、建材流通、不動産開発を手掛けるジェンタユ・サステナブルズは、住友商事(本社・東京都中央区)とプロジェクト開発協業協定を交わした。サバ州シピタンで川の流れを利用した流水式水力発電施設を建設する。

事業名は「プロジェクト・オリオール」で、ジェンタユ子会社のオリオ―ル・パワーが手掛ける。シピタン地区のマリンガン川とフル・パダス川に水力発電施設を建設する。発電能力は162メガワットで、投資額は27億7,000万リンギ。協業協定には開発費用の一部(最大1,240万リンギ)を住友が拠出するオプションが含まれている。2027年末もしくは2028年初頭の完成を予定している。

ジェンタユと住友は2023年7月、同事業に関する覚書を交わしており、水力発電所建設など協業について具体的協議に入ることで合意していた。
(ビジネス・トゥデー、10月2日)

サンウェイ、チェラスで32億リンギ規模の複合開発を計画

【クアラルンプール】 大手デベロッパーのサンウェイは2日、クアラルンプール市チェラスのタマン・テイントンにある面積17.58エーカーの自由土地保有権付き用地を買収すると発表した。総開発価値(GDV)32億リンギ規模の複合開発プロジェクト用地に充てる。

所有者のビバ・インピアンとサンウェイ子会社のサンウェイ・メラワティの間で、用地を3億2,000万リンギで買収することで合意した。ウェルネス中心のコミュニティの構築を目指すサンウェイの持続可能性への継続的な取り組みに沿ったもので、サンウェイの「サンウェイ・デザイン・アンド・デベロップメント・アーキテクチャ (SDDA)」の哲学に基づいた高級サービスアパートとウェルネス重視の小売施設を建設する。

建設地は第2中央環状道路(MRR2)に直結するなど、シャアラム高速道(KESAS)やマジュ高速道路(MEX)などの主要高速道路への接続が良好であるほか、首都圏大量高速輸送(MRT)タマンムティアラ駅から800メートルという公共交通機関へのアクセスが優れた戦略的な場所にある。
(ビジネス・トゥデー、マレーシアン・リザーブ、10月2日)