米国製品の98%の関税引き下げ・撤廃、投資貿易相が説明

【クアラルンプール】 米国のマレーシアに対する相互関税の税率が19%に設定されたことを受け、テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は1日、記者会見で交渉内容について説明。関税対象の米国製品全体の98.4%について税率引き下げまたは撤廃で合意したほか、米ボーイング製航空機30機(95億米ドル相当)を追加購入するとした。

ザフルル氏によると、米国製品1万1,444品目のうち1万1,260品目の関税引き下げ・撤廃で合意。内訳は、4,349品目が関税引き下げ、6,911品目(合意品目の61%)が完全撤廃だが、すでに撤廃しているものが6,567品目あるため、新たに撤廃となるのは344品目になると説明した。米国は、191品目の農産物と1,347品目の工業製品に対し、新たに関税撤廃を求めていたと補足した。

ザフルル氏は、同省と米通商代表部は近く共同声明を発表する予定で、新たな関税品目の全リストも別途公表されるという。

ボーイング機に関しては、今年3月にマレーシア航空(MAS)の親会社、マレーシア・アビエーション・グループ(MAG)が30機の購入を発表していたが、さらに30機を追加購入するとした。

またザフルル氏は米国が問題視していたハラル(イスラムの戒律に則った)認証やブミプトラ(マレー人と先住民の総称)優遇の政策の見直し、自動車などへの物品税撤廃には応じなかったと強調。「マレーシアのレッドラインは越えておらず、主権も侵害されていない」と述べた。

さらに希土類元素(レアアース)の独占供給についても否定。一方、半導体および医薬品の米国への輸出税率は0%が引き続き維持される。さらにゴム、パーム油などを中心に関税撤廃を求め交渉を続けるとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、8月1日)

【イスラム金融の基礎知識】第573回 ターキッシュ・エアラインズ、イスラム銀行経由でエアバス機を調達

【イスラム金融の基礎知識】第573回 ターキッシュ・エアラインズ、イスラム銀行経由でエアバス機を調達

Q: ターキッシュ・エアラインズがエアバス社の新機体を調達するようですが?

A: トルコのターキッシュ・エアラインズ(TK)とドバイ・イスラム銀行(DIB)は7月28日に記者会見を行い、TKがエアバス社よりA350を調達、その際DIBからリース契約を結ぶことを明らかにした。TKがイスラム銀行を利用することと、DIBがトルコで航空機のリースをてがけることは、いずれも今回が初めてとなる。

航空業界においては、単価の高い航空機の購入やリースをめぐり、中東や東南アジアの航空会社がイスラム銀行を活用する事例がしばしばみられる。中でも、航空会社がエアバス社やボーイング社から機体を購入する際、イスラム銀行から融資を受ける事例が多い。また、航空会社がスクークを起債して資金を調達し、機体購入を行った例もある。他方、コロナ禍で冷え込んだ業界に応えて、2021年にシンガポール航空(SQ)が機体を航空機リース会社に売却、さらにそれをSQがリースバックする一連の手続きをDIBがてがけた例もある(本連載396回参照)。

報道によると、TKとDIBは「リース契約を結んだ」としているので、おそらく活用されるのはイジャーラ契約であろう。融資は米ドル、ユーロ、トルコ・リラのいずれでもなくスイス・フラン建てで行われる。資金調達手段とともに用いる通貨も多様化させることも、今回の融資の目的となっている。なお、今回の契約では何機分の機体が契約の対象かは明らかになっていない。ただTKは2023年12月にエアバスA350を70機発注する計画を明らかにしており、おそらく今回はその一環であると考えられる。

記者会見でDIBのアドナン・チルワンCEOは、「世界でもっとも多くの国に路線を持つことでギネス・ワールド・レコードを有するTKがイスラム銀行を利用するのは、トルコの航空業界にとって大きな節目だ」と意義を強調した。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

都心型アウトレット開業、ららぽーとBBCC改装で日系続々開店

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 マレーシア初となる都心型アウトレット「三井アウトレットパークBBCC」が1日、クアラルンプール(KL)に開業した。

アウトレットは、2022年1月に開業した三井ショッピングパークららぽーとブキッ・ビンタンシティセンター(ららぽーとBBCC)の改装に合わせ、レベル3の約半分を占める形で開設された。三井不動産がマレーシアで手掛けるアウトレットとしては、クアラルンプール国際空港セパン(MOP KLIA)に続く2店舗目で、より気軽にアウトレットを楽しみたいというニーズに応えた。

スポーツブランドや、MOP KLIAにはない韓国コスメブランドなど、若者に人気の約40のブランドが出店する。

そのほか、ららぽーとBBCCでは今回の改装で、7月以降、新たに日系企業を中心にさまざまな店舗が開業している。カジュアル衣料「グローバルワーク」は、7月に開業したタイ・バンコク店に続き海外8店舗目としてマレーシア初進出。オンライン販売を中心とするストリートブランド「Over Print」は、初の常設店を構え、人気アニメとコラボしたTシャツなどを販売する。イオンを中心に展開するファミリー向けアミューズメント「モーリーファンタジー」では、ポケットモンスターとのコラボや、人気リズムゲーム「太鼓の達人道場」の東南アジア初の公式認定コーナーを併設している。

2025年第4四半期にかけても、アニメ、コミック、ゲームの「ACG」と呼ばれるポップカルチャーファン向けのゾーンや、シンガポール行きのバスなど「トランスポーテーションハブ」ゾーンなどを充実させていく。

「健康増進税」の対象をたばこなどに拡大、健康生活を後押し

【クアラルンプール】 政府は第13次マレーシア計画(13MP、対象期間2026ー30年)で、砂糖含有飲料に課している「健康増進税」の対象を、たばこ、蒸気を吸引する電子タバコ、アルコール飲料に拡大する。アンワル・イブラヒム首相は31日、13MPの国会提出に際し「健康リスクには断固たる態度で臨む。悪行税の対象拡大は税収増だけが目的ではなく、より健康的な生活スタイルを奨励し、非感染性疾患(NCD)を抑制するためだ」と説明した。

砂糖税の導入は2019年で、100ミリリットル当たり5グラム以上の砂糖を含有する飲料に物品税として課している。現在の税額は1リットル当たり90セン。

アンワル氏は、医療費の高騰や病気の増加、高齢化が社会の重圧になっていると指摘。質の高い医療を妥当な料金でより多くの国民が利用できるようにすると述べた。薬品の国内製造、ジェネリック医薬品の利用を奨励する。

13MPでの医療配分は400億リンギで、医療を利用する際の国民の支出を少なくする。また公共医療機関の新設・改修を進める。
(ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、フリー・マレーシア・トゥデー、7月31日)

13次計画、2031年までの原子力発電開始を盛り込む

【クアラルンプール】 政府は2031年までに原子力発電を開始し、国のエネルギーミックスの一部に組み込むことを目指す方針を明らかにし、原子力エネルギー開発計画が正式に復活した。7月31日に発表された第13次マレーシア計画(13MP、対象期間2026ー30年)に盛り込まれた。

原子力エネルギー開発計画は、国際原子力機関(IAEA)の規定に基づき、エネルギー移行・水利転換省管轄下の電力供給改革を調整する特別目的機関、マイパワー・コープ(MyPower)がガバナンスを監督する形で2031年の稼働開始を目指す。マイパワー・コープは、広報、教育、啓発プログラムの実施、新たなインフラへの投資、研究開発と専門家研修の強化、そして原子力エネルギーに関する国際協力の調整を行う。

2023年に発表された国家エネルギー転換ロードマップ(NETR)では、2050年までにマレーシアのエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー比率を70%とし、2044年までに石炭火力発電の段階的廃止を目指しているが、再生可能エネルギーではないものの原子力がなければ2050年までのネットゼロ目標達成は難しいとの意見も多い。マレーシアは以前、原子力発電をエネルギー源として利用する計画だったが、放射性廃棄物への懸念から2018年にマハティール・モハマド政権下でこの計画は断念されていた。
(エッジ、ローヤット・ドットネット、7月31日)

米国が対マレーシア関税を19%に引き下げ、7日に発効

【クアラルンプール】 トランプ米大統領は7月31日、数十カ国からの輸入品に対して10―41%の最終的な関税率を課す大統領令に署名した。マレーシアからの輸入品に対しては、新たな関税率を以前発表されていた25%から6ポイント低い19%に引き下げた。新関税率は米国東部夏時間7日零時1分に発効する。

トランプ米大統領の発表に先立ってアンワル・イブラヒム首相はトランプ氏と電話会談で関税問題に関する協議を行い、内容は明かされなかったものの8月1日に新関税率を発表することで合意していた。

トランプ氏はマレーシア企業が米国内で製品を製造または生産することを選択した場合、関税は課されないと述べた。対米交渉においてマレーシア側がどのような譲歩を行ったかは明らかにされていない。なお大統領令に含まれてない国からの輸入品には10%の関税が課される。

トランプ氏はまた、クアラルンプール(KL)で10月に開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に出席する意向を示した。

米国は7月7日、貿易相手国に新たな課税措置の通知を開始。マレーシアからの輸入品については8月1日から25%の関税を課すとし、4月に発表した24%の相互関税率から1ポイント引き上げられていた。

マレーシアと同じ25%の関税を通告されていた日本については、米国は22日、関税率を15%に引き下げると発表。同様に36%と通告していたタイ、32%と通告していたインドネシア、20%と通告していたフィリピンに対してもそれぞれ19%に引き下げると発表していた。
(マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、8月1日)

ファイアフライ、ジェット機の国内線をスバンからKLIA1へ移転

【クアラルンプール】 マレーシア・アビエーション・グループ(MAG)傘下の航空会社ファイアフライは30日、セランゴール州のスルタン・アブドル・アジズ・シャー空港(スバン空港)を利用していたジェット機での国内線をクアラルンプール新国際空港(KLIA)ターミナル1に移転すると発表した。

変更は8月19日からで、グループのネットワーク最適化計画の一環という。ターボプロップ機での路線は引き続きスバンから運行される。

具体的には、タワウ線が19日、クチン線とコタキナバル線が21日、シンガポール(セレター)線22日、ジョホールバル線23日から、それぞれ変更になる。影響を受ける予約客には変更や払い戻しに応じる。

また新たに、コタバル線とトレンガヌ線を30日から、シブ線を9月3日から開設する。ペナン線については23日から、従来の週2便から週6便に増便。11月までに週10便への増便を計画している。

同社は現在、ナローボディ・ジェット機(ボーイング737-800型機)5機と、ターボプロップ機(ATR72-5009型機)9機を運航している。昨年8月、ペナンとコタキナバルを結ぶ2路線でスバン空港でのジェット機運航を始めたが、1年での見直しとなった。

スバン空港に関しては、エアアジアも4月に撤退。騒音対策として午後10時―午前6時の深夜帯は飛行禁止となっているほか、ターミナルの混雑を防ぐため1時間あたり1機のジェット機しか発着できないなどの制約があるため、赤字を招き、MAGにとって大きな負担になっていたとみられる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、7月30日)

IMFがGDP成長予想を上方修正、関税措置に言及

【クアラルンプール】 国際通貨基金(IMF)は29日公表の世界経済見通し報告で、マレーシアの今年の国内総生産(GDP)増加率予想を、4月に示した数値より0.4ポイント高い4.5%に修正した。来年のGDP成長についても4.0%へ0.2ポイント上方修正した。

マレーシアの主要貿易相手国である中国の今年のGDPについても4.0%から4.8%へ上方修正。上半期の成長が予想以上だったことと、対米関税が引き下げられたことが理由だ。

IMFは、世界的に不確実性がみられるが、各国は透明な貿易の枠組みを推進することで、政策が原因の不確実性を減らすべきと米国の関税措置に言及。国際貿易システムが現状の形態では機能しない場合、現実に即した協力が望ましいとした。

さらに、2国間交渉は貿易上の緊張を和らげることができ、貿易障壁の引き下げを目指すのが望ましいが、そうした交渉は国内政策が原因の対外収支の過剰な不均衡など、緊張の根本原因に対処することが最終目的であるべきとの見解を示した。
(ビジネス・トゥデー、7月30日、ザ・スター電子版、ベルナマ通信、7月29日)

セカンドハートがリバネスから資金調達、マレーシアの基盤を強化

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 糖尿病合併症である足病変の重症化予防に取り組むヘルステック・スタートアップのセカンドハート(本社・京都府長岡京市)は、リバネスキャピタル(本社・東京都新宿区)から資金調達し、マレーシアでの事業基盤を強化すると発表した。

リバネスが運営する「ジャーミネーションファンド1号投資事業有限責任組合」を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施した。今回の資金調達により、当社が開発・提供する足病診療支援プラットフォーム「Steplife(ステップライフ)」の機能強化を加速させるとともに、喫緊の課題である東南アジア諸国連合(ASEAN)地域、特にマレーシアにおける事業基盤の構築と臨床的価値実証(PoC)を本格化させ、糖尿病による足切断ゼロ社会の実現に向けた歩みを強めていく。

具体的には▽マレーシアにおけるPoC(臨床的価値実証)の推進▽ASEAN市場向けプロダクト開発の加速▽グローバル事業開発体制の強化――を図っていく。

第13次5カ年計画を発表、年4.5―5.5%の経済成長目指す

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は31日、下院議会で次期5カ年計画である「第13次マレーシア計画」(13MP、対象期間:2026ー2030年)の概要を発表した。

向こう5年で年率4.5―5.5%の国内総生産(GDP)成長を目指す。財政赤字の対GDP比は2024年の4.1%から3%以下に抑えること、政府債務の対GDP比を60%以下とすることを目指す。

向こう5年の政府の開発支出は4,300億リンギ、年平均860億リンギと見積もっている。政府の開発支出の仕向け先は、経済部門が2,270億リンギ、社会部門が1,330億リンギ(うち教育部門が670億リンギ、保健部門が390億リンギ)、安全保障部門が510億リンギ、行政部門が170億リンギ――となっている。

なお政府は13MPを実現するためには総額6,110億リンギの開発資金が必要とみており、政府の開発予算のほか、政府系企業(GLC)と政府系投資会社(GLIC)から1,200億リンギ、官民連携(PPP)イニシアチブを通じた民間部門から610億リンギの調達を見込んでいる。

13MPではまた、民間投資については年平均6%成長、公共投資については同3.6%成長を予想。総輸出については年平均5.8%成長、インフレ率については年平均2―3%と予測している。

アンワル首相は、マレーシアは2030年までに「包括的かつ持続可能な」人工知能(AI)国家になることを目指し、13MPに基づき政府は同国をデジタル技術革新と「マレーシア製」の製品・サービスの生産の地域拠点化すると述べた。

製造業については、特に半導体産業を改革して高付加価値ハイテク(HVHT)製品の生産を増やすなど、電気・電子(E&E)サブセクターを強化する取り組みを通じて引き続き強化するとした

労働者の給与と非金銭的報酬の両方を含む従業員報酬については、現在のGDPの3分の1強の水準から40%への引き上げを目指す。 世帯平均月収については2030年までに1万2,000リンギに引き上げ、絶対的貧困率については4.7%に引き下げることを目指すという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、7月31日)