
第586回 タイとサウジアラビア、イスラム金融など分野で協力に合意
Q: タイとサウジがイスラム金融の関係強化を図るようですが?
A: 1月にタイとサウジアラビアの経済閣僚が会談し、双方向での投資関係を強化することで一致した。注力する分野の一つとしてイスラム金融が含まれており、今後の発展が期待される。
報道等によれば、1月に世界経済フォーラムの年次総会(いわゆるダボス会議)にあわせて、タイのエクニティ財務相とサウジのハリド・アル=ファリーハ投資相が会談、二国間の資本移動と産業の協力を実行するための「双方向投資回廊」を正式に発足することを明らかにした。タイ政府は、2024年4月にリアドにタイ投資委員会の事務所を設立しており、これまでに11件の産業協定を締結するとともに、多くのビジネスを成立させた実績がある。同回廊発足にあたっては、サウジ政府が「ビジョン2030」として掲げている分野のうちタイに対して優先度が高い分野として、①自動車産業のサプライチェーン、②医療と公衆衛生、③イスラム金融の3分野を取り上げた。
タイのイスラム金融は、2002年にタイ・イスラム銀行が政府によって創設されて以来約20年の歴史があるものの、現在まで同行1行のみの状況だ。市場規模は30億米ドル弱で、同銀行はマレーシアの国境に近くムスリム人口が多い深南部各県に支店が集中している。イスラム金融を通じた二国間の関係強化の具体的な方策は、現時点では詳らかにはなっていない。考えられる方向性としては、一つは貿易金融業務にイスラム銀行が参入することによって輸出入を活性化させることが目的と考えられる。もう一つは、経済発展が遅れている深南部地域の振興のため、イスラム銀行を資金のチャンネルにすることでサウジの資金を活用することが考えられる。同じ東南アジアにおいてムスリムが少数派のフィリピンがイスラム金融に力を入れ始めている中、タイでも同様の動きがみられるといえよう。
| 福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |
