【イスラム金融の基礎知識】第603回 ウズベキスタン、初のイスラム銀行ライセンスを発行

第603回 ウズベキスタン、初のイスラム銀行ライセンスを発行

Q: ウズベキスタンで初めてのイスラム銀行が誕生しましたが、詳細は?

A: ウズベキスタンの現地報道によると、ウズベキスタン中央銀行は10月23日に同国のオープン銀行にイスラム銀行業のライセンスを与えた。今夏に施行されたイスラム銀行に関する法律に基づき、ライセンスが発行された初めての事例となった。

ウズベキスタンのイスラム銀行制度をめぐっては、本連載でも触れたように(第591回)今年3月にイスラム銀行に関する法律に大統領が署名、その後6月に施行されたばかりだ。この法律に基づいて初めてライセンスを取得したオープン銀行は、フューチャー・オープン・テクノロジー・グループが株式を保有する民間銀行で、2025年にスマート銀行から名称を変更した。

法律によれば、ウズベキスタンでイスラム銀行を営むためには、全面的にイスラム式であるフルフレッチ型のイスラム銀行と、従来型銀行内に設置された専門の部署であるイスラム窓口(イスラム・ウィンドウ)の二つ方法・ライセンスがあるが、オープン銀行はフルフレッチ型を採用する。同じく、この法律が認める金融商品に使用される契約形態は、ムダーラバ、ワカーラ、ムラーバハ、サラーム、ムシャーラカ、イジャーラなどで、この点はマレーシアと同様である。同銀行のウェブサイトによれば、ライセンスを取得したニュースが第一報として掲載されているものの、具体的にどの契約形態を用いた預金や融資が提供されるかは、まだ明らかにしていない。

中央銀行は、今後5年間でフルフレッジ型のイスラム銀行が2行誕生し、これまで宗教上の理由で銀行の利用を避けていた人びとのタンス預金から、10億ドルの資金がイスラム銀行にもたらされると見込んでいる。今回のオープン銀行が同国のイスラム銀行に先鞭をつける形となり、今後の制度や市場の発展に大きな期待がかかっている。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

 

【従業員の勤労意欲を高めるために】第930回:良い会社でも、不満はなくならない

第930回:良い会社でも、不満はなくならない

前回は、同じ性格でも、どんな仕事をしているかによって、その意味が変わる可能性について紹介しました。今回は、従業員が会社に抱く「不満」について考えてみます。

従業員の不満が多い会社は、問題のある会社なのでしょうか。

普通はそう考えがちです。給与や待遇への不満が少なく、会社への愛着が強いほど、良い職場だと評価されます。

しかし、働きやすい会社になれば、従業員の不満はなくなるのでしょうか。

この疑問を調べるため、拙稿では中国にある日系製造業の現地法人を対象に、2021年、2023年、2025年の3回にわたって実施した従業員調査を分析しました。回答者は延べ284人です。

この会社では、心理的安全性と組織コミットメントが比較的高い水準にありました。心理的安全性とは、自分の意見を安心して言えること、組織コミットメントとは、会社への愛着や帰属意識のことです。

ところが、従業員の自由記述には、さまざまな不満や要望が書かれていました。

2021年には、給与が物価上昇に追いつかない、昇給が少ない、人手が足りないといった声が目立ちました。

2023年には、待遇面の不満に加え、従業員の提案を経営陣が十分に聞いていない、報奨制度が公平でないといった指摘が見られました。

2025年には、給与や職場環境への要望が続く一方、従業員同士の交流を増やしたい、会社の業績と賞与を連動させたいといった意見も見られました。

つまり、待遇への不満が消えて、別の要望に置き換わったわけではありません。給与や労働条件への不満は残りながら、職場の人間関係、経営への参加、会社の将来など、関心の対象が広がっていたのです。

もちろん、これは一社の事例なので、心理的安全性が高まったから意見が多様化したとは断定できません。

それでも、人材管理について一つの示唆があります。

従業員から不満が出ることは、必ずしも会社が悪くなっていることを意味しません。安心して意見を言えるからこそ、それまで表に出なかった問題が見えてくる可能性もあります。

不満がどれだけあるかだけでなく、何に不満を感じているのか。

従業員の声を評価するときには、その「内容」に目を向けることが大切なのではないでしょうか。

論文情報は以下。末尾のURLから概要をご覧いただけます。

Kokubun, K., Ino, Y., Shibahara, N., & Ishimura, K. (2026). When good organizations still face employee concerns: Psychological safety and the content of employee concerns in a Japanese subsidiary in China. Asia Pacific Business Review.

https://doi.org/10.1080/13602381.2026.2754528

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)