
【イスラム金融の基礎知識】第573回 ターキッシュ・エアラインズ、イスラム銀行経由でエアバス機を調達
Q: ターキッシュ・エアラインズがエアバス社の新機体を調達するようですが?
A: トルコのターキッシュ・エアラインズ(TK)とドバイ・イスラム銀行(DIB)は7月28日に記者会見を行い、TKがエアバス社よりA350を調達、その際DIBからリース契約を結ぶことを明らかにした。TKがイスラム銀行を利用することと、DIBがトルコで航空機のリースをてがけることは、いずれも今回が初めてとなる。
航空業界においては、単価の高い航空機の購入やリースをめぐり、中東や東南アジアの航空会社がイスラム銀行を活用する事例がしばしばみられる。中でも、航空会社がエアバス社やボーイング社から機体を購入する際、イスラム銀行から融資を受ける事例が多い。また、航空会社がスクークを起債して資金を調達し、機体購入を行った例もある。他方、コロナ禍で冷え込んだ業界に応えて、2021年にシンガポール航空(SQ)が機体を航空機リース会社に売却、さらにそれをSQがリースバックする一連の手続きをDIBがてがけた例もある(本連載396回参照)。
報道によると、TKとDIBは「リース契約を結んだ」としているので、おそらく活用されるのはイジャーラ契約であろう。融資は米ドル、ユーロ、トルコ・リラのいずれでもなくスイス・フラン建てで行われる。資金調達手段とともに用いる通貨も多様化させることも、今回の融資の目的となっている。なお、今回の契約では何機分の機体が契約の対象かは明らかになっていない。ただTKは2023年12月にエアバスA350を70機発注する計画を明らかにしており、おそらく今回はその一環であると考えられる。
記者会見でDIBのアドナン・チルワンCEOは、「世界でもっとも多くの国に路線を持つことでギネス・ワールド・レコードを有するTKがイスラム銀行を利用するのは、トルコの航空業界にとって大きな節目だ」と意義を強調した。
福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |