
第576回 顧客満足度に影響を与える要因
Q: 顧客満足度は何に影響を受けるかを分析した研究はあるか?
A: イスラム銀行の利用者の満足度は、何によって高まるのか。先行研究によれば、イスラム法を遵守するとともに、クオリティの高いサービスを提供することが肝要である。
バングラデシュ・ワールド大学のセリム・アフマド教授を中心とするバングラデシュ・カナダ・マレーシアの研究チームが2022年に発表した研究論文では、イスラム銀行に口座を保有するバングラデシュ在住の334名のムスリムを対象にアンケート調査が行われた。論文によれば、「コーランなどイスラムに基づいた経営」「損益共有や無利子の融資・預金のみを提供し、利子は扱わない」といったイスラム法への遵守が高まるほど、「最新の設備」「時間厳守」「接客態度」などのサービス品質を向上させるとともに、顧客によるイスラム銀行の「サービス・スタッフ・設備」への満足度向上に繋がるとしている。
また筆者らは、今回のアンケート調査の妥当性を測るため、インドネシアやオマーンのイスラム銀行利用者、マレーシアのハラル産業であるムスリム・フレンドリー・ホテルや医療観光の利用客に対するアンケート調査を行った各種の先行研究との比較を行った。その結果、今回の調査と同様イスラム法への遵守とサービス品質の高さは、顧客満足度の高さに繋がるという同様の傾向を見出した。
ただ、今回の調査はムスリムのみを対象としている。バングラデシュのムスリム人口比率やイスラム銀行の利用実態を踏まえれば、調査の方法と結果は妥当と言えるが、非ムスリムの利用者も多いマレーシアでは異なる結果が得られたであろう。またサービス品質の向上は、宗教によらずに高めることも可能だと先行研究を通じて示している。マレーシアでは、バングラデシュの傾向に加えて、宗教以外の要素も検討の必要があるといえよう。
福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |