【従業員の勤労意欲を高めるために】第911回:中小企業の両利き経営(14)中小企業へのアドバイス

第911回:中小企業の両利き経営(14)中小企業へのアドバイス

前回は、中小企業におけるデジタル化の導入意義とその時期についてでした。デジタル化は企業間や大学などとの連携を強化し、オープン・イノベーションの成果を高める可能性があります。

さて、これまで見たように、中小企業は、財政的制約に直面しながらも、既存の技術を活用し続けることで短期的な業績を維持すると同時に、限られた資源が許す範囲で、世界的な課題であるグリーンイノベーションに向けた探求力を強化することが求められています。そのために、中小企業はデジタル化、オープン・イノベーション、人材を組み合わせた戦略を採用する必要があります。

例えば、デジタル技術の導入に伴うコスト増加によるマイナス効果は、高度なスキルを持つ人材が日常業務から解放され、専門知識を必要とする業務により多くの時間を割くことができるようになるというプラスの効果によって相殺される可能性があります。同様に、オープン・イノベーションの実施に伴うオーケストレーションコストの上昇による悪影響は、グリーンサプライチェーンの整備による潜在的なビジネスパートナーの拡大によるプラスの効果によって相殺される可能性があります。さらに、AI テクノロジーの進化と普及は、社内外のネットワークとコラボレーションを再構築することで、組み合わせ戦略を根本的に変革する可能性があります。各戦略の有効性を個別に評価するのではなく、戦略の複合的な有効性を評価することで、費用対効果の閾値が低くなり、中小企業は深化戦略への過度の依存から、動的なエコシステムを活用した探索戦略により積極的に移行できるようになります。

多くの中小企業は、ビジネスパートナーや消費者を含むステークホルダーの期待に応えるために、グリーンイノベーションを受動的に導入する傾向があります。しかし、これが探索モードへの転換を誘発し、同時に高い企業業績につながるかどうかは、まだ実証研究がほとんど確認されていません。したがって、グリーンイノベーションを性急に導入すると、探索戦略に過度に焦点を合わせて過剰投資が発生し、失敗の罠につながる可能性があります。したがって、中小企業は、グリーンイノベーションによる持続可能性の理想的な追求と、既存のテクノロジーを自社の能力に合わせた方法で活用する段階的なイノベーションの現実的な追求との間で、両手利きを活用して慎重にバランスを取る必要があります。

 

Kokubun, K. (2025). Ambidextrous SMEs for a sustainable society. A narrative review considering digitalization, open innovation, human resources and green innovation. Next Research, 100839. https://kwnsfk27.r.eu-west-1.awstrack.me/L0/https:%2F%2Fauthors.elsevier.com%2Fa%2F1lqFZArcH5v%257EhR/1/010201997bdd92dc-2f55d85f-3f6a-4e09-a50f-d2029cba34fb-000000/-j2abMH3tXcKZD4AoMaphgExEJk=445

 

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

新パンタイ高速道路の延伸、IJM傘下企業が14億リンギで受注

【クアラルンプール】 新パンタイ高速道路(NPE)の延伸区間の設計・建設を、IJMコンストラクションが14億リンギで受注した。NPE事業を手掛ける親会社の大手コングロマリット、IJMコーポレーションが5日、発表した。

延伸区間は、NPEのパンタイ・ダラム料金所からジャラン・イスタナ・インターチェンジを結ぶ全長15キロメートル(㎞)の高架区間になる。同じくIJM傘下のニュー・パンタイ・エクスプレスウェイとの間で契約が締結された。2025年第4四半期に着工し、48カ月以内の完成を目指す。

現在のNPEはスバンジャヤとクアラルンプール(KL)を結ぶ19.6㎞の高速道路で、2004年に開通。IJMの完全子会社のロード・ビルダー・ホールディングスが所有・運営している。2011年ごろから延伸案が浮上していたが、2012年に政府が中止を通知。今年5月になり、再承認された。

延伸区間の完成により、バングサ地区からKL中心部への交通量が最大40%分散され、KL南部の渋滞の大幅な緩和が見込まれている。またバングサ地区の開発促進などで56億リンギの経済波及効果が期待されている。

IJMグループにとっては、ジョホール州の14億リンギのデータセンター(DC)、セランゴール州エルミナの21億リンギのDCの建設プロジェクトに続く、今年3件目の10億リンギ超の大型プロジェクトになる。
(エッジ、11月6日、ニュー・ストレーツ・タイムズ、マレーシアン・リザーブ、11月5日)

AI導入済み企業、前年比35%増の240万社=AWS報告書

【クアラルンプール】 クラウドサービス大手の米アマゾン・ウェブ・サービシーズ(AWS)は4日、AI(人工知能)に関する2025年版の報告書を発表。マレーシアでは約240万社がAIを導入済みで、前年比35%増となった。

今年新たにAIを導入した企業は63万社で、全体の導入率は前年の20%から27%に上昇した。産業別では、テクノロジー関連サービスが49%と最も高く、次いで金融サービス(42%)、製造業(39%)と続いた。

AI導入の効果として、65%の企業が売上が増加したと回答し、平均で19%の増収効果があったという。生産性に関しても、72%が著しく向上したとした。報告書では「回答者の67%が、平均15%のコスト削減を期待している」とした。

また報告書は、導入企業が拡大する一方で、その73%は基本的なアプリケーションに留まっていると分析。「完全に新しいAI駆動型製品を開発しているのは、スタートアップ企業の31%、大企業の15%に過ぎない」とした。

さらに、52%の企業がAIに精通した人材不足を課題に挙げた。AWSは、人材育成や、公共政策による導入促進などが不可欠であると指摘している。

報告書は、国内の企業トップ1,000人と一般市民1,000人を対象にした調査に基づいている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月4日、ベルナマ通信、TNグローバル、11月5日)

ベルジャヤが開発の沖縄高級ホテル、マレーシア輸出入銀が融資

【クアラルンプール】 マレーシア輸出入銀行は、ベルジャヤ・ランドのシンガポール子会社ベルジャヤ・オキナワ・インベストメント(S)に7,000万米ドルのイスラム式融資を実行した。ベルジャヤ・ランドが沖縄県恩納村で建設中の高級ホテル、「フォーシーズンズ・リゾート・アンド・プライベート・レジデンス沖縄」の建設費に充当する。

開発用地は13万平方メートルで、米軍恩納通信所跡地。ホテル127室、コンドミニアム124室、自分の別荘のように利用できる一棟貸し切りのプライベートビラ28戸で構成する。3月初旬に起工式を行っており、27年7月に完工の予定。総工費は約1,000億円。

輸銀は過去にもベルジャヤ・ランドの海外事業に融資を行ったことがある。輸銀はマレーシア企業の海外でのプレゼンス強化を後押しする役割を担っており、今後もマレーシア企業の海外事業を支えるという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、ビジネス・トゥデー、11月5日)

炭素税を1トン15リンギ、マレーシア政府が検討か=消息筋

【シンガポール/クアラルンプール】 マレーシア政府は、二酸化炭素を大量に放出する産業に課す炭素税の価格として、1トン当たり15リンギを検討しているもようだ。ブルームバーグが消息筋の話として報じた。これに対し政府は、価格は未定と否定している。

ブルームバーグによると、政府は利害関係者と協議を持っているが、まだ継続中の作業であり、計画は変わる可能性もあるという。東南アジアではシンガポールが先陣を切り2019年に炭素税を導入。最初の5年間は1トン5シンガポールドル(約16リンギ)に設定した。現在は同25シンガポールドル。マレーシアの炭素税の枠組みでは、企業は特定の排出枠を割り当てられ、上限を超えると炭素税を課せられる。

ブルームバーグの報道に対しアミル・ハムザ第2財務相は金融フォーラムで、炭素税額を決定するための詳細な調査をまだ行っていないと述べた。政府は炭素税の法的根拠として立法措置をまず取り、排出の枠組みを確定させてから税額設定の作業に進むという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、11月6日、エッジ、11月5日)

ソフト開発のネオジャパン、JACTIMの会員サイトを刷新

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 ソフトウェア開発のネオジャパン(本社・横浜市西区)は5日、同社製品が、マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)の会員ポータルサイトに導入されたと発表した。

導入されたのは、グループウェアの「デスクネッツネオ」と、ノーコード業務アプリ作成ツール「アップスイート」。マレーシア子会社のネオレカ・アジアを通じて行われ、10月から本稼働を開始した。

JACTIMは1983年に設立され、マレーシア経済振興に向けた日系企業のビジネスセンターとして、会員企業の交流やビジネス支援などを行っている。会員数は600社を超えるが、従来の会員ページは動作の重さや不具合などの課題を抱えていたという。今回の刷新で、複数のサービスに分散していた業務を集約し、情報共有の効率化と業務プロセスの改善を図った。

2019年創業のネオレカは今年6月、ジョホール州政府傘下の投資誘致機関「インベスト・ジョホール」と提携し、東南アジア地域における営業や人材育成などの拠点となるCoE(センターオブエクセレンス)を設立するなど、事業拡大を目指している。

マレーシアの児童人口は903万人、就学率と犯罪率は低下

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 マレーシア統計局(DOSM)が発表した「マレーシア児童統計2024年版」によると、2025年時点での推定児童人口(18歳未満)は903万人で、総人口3,423万人の26.4%を占めた。

総児童人口のうち、男児は466万人、女児は437万人、5歳未満の児童は231万人で6.7%を占めた。最も児童人口の割合が高いのはプトラジャヤ連邦直轄地で39.9%、これにクランタン州(33.5%)、トレンガヌ州(32.9%)、ラブアン連邦直轄地(30.2%)と続いた。一方、最も低かったのはクアラルンプール(KL)連邦直轄地(20.9%)で、ペナン州(22.1%)、ペルリス州(23.0%)が続いた。

児童人口ではセランゴール州は181万人と最も多く、ジョホール州(109万人)、サバ州(110万人)が続いた。一方、ラブアンは3万人と最も少なかった。

保健面では、2024年の乳児予防接種率は主要5ワクチン全てで前年比(2023年)で低下した。ポリオ、三種混合ワクチン(DTP)、インフルエンザ様腸炎(HIV)、B型肝炎の接種率はそれぞれ6.1ポイント低下、BCGは0.3ポイントの微減となり、予防医療における懸念すべき低下を示す結果となった。

教育分野では、登録保育施設(TASKA)の数は全国で1.4%増加し、3,198施設となった。ジョホール州は29.4%で最も増加率が高く、一方、プトラジャヤはマイナス21.0%と最も大きな減少を示した。

就学率はマイナス0.2%の497万516人とわずかに減少した。最も減少が大きかったのは高等中等教育の生徒数で前年から3.0%減少し、71万6,700人となった。一方、初等中等教育の生徒数は1.2%増加した。

子どもの犯罪件数は前年比4.2%減の2,627件となった。犯罪件数の82.2%はブミプトラ(マレー人と先住民の総称)で、次いで華人が9.0%、インド系が4.9%をそれぞれ占めた。

 

来年から印紙税が申告制度へ移行、税制上の重要な技術革新

【クアラルンプール】 内国歳入庁(IRB)は4日、技術革新と誠実さを推進するイベントを開催し、組織としての方向性をまとめた5カ年計画(2026―30年)を発表した。計画の一環として26年1月から印紙税を申告納税制度に移行させるが、リム・フイイン副財務相は、税制改革における重要な進展だと強調した。

申告制度では、納税者が自身で税率を判断し、税額を算出し申告する。当局の手続きが短時間で済み、制度への信頼につながる。払いすぎた税の還付もより迅速になるという。

デジタルインボイスも2026年中に100%施行される。リム氏によると、デジタルインボイスを導入した事業体は10万6,000で、領収額は計6億7,500万リンギに上った。デジタルインボイスは効率改善に役立つだけでなく、透明性が高まるため、IRBおよび行政サービス全般に対する国民の信頼強化につながるという。
(マレーシアン・リザーブ、11月4日)

EV道路税、来年から出力別制度を導入し優遇措置を継続

【クアラルンプール】 投資貿易産業省(MITI)は、電気自動車(EV)の道路税免除が今年いっぱいで終了するのを受け、2026年1月1日から新たな道路税制度を導入し、EV普及を促進していく方針だ。

MITIによると、新制度ではモーター出力(kW)に応じた税率を適用する。税率を内燃機関車より低く設定することで、実質的なEV優遇にする見通しだ。

また普及に欠かせないEV用公共充電施設は9月30日時点で、5,149基に達した。内訳は、直流(DC)充電器が1,709基、交流(AC)充電器が3,440基となっている。DC充電器は急速充電が可能で、高速道路での需要増などを背景に、当初目標の1,500基を114%上回る結果となった。MITIは、現在登録されている約4万2,000台のバッテリー式電気自動車(BEV)に対応するのに十分としている。

一方で、今年中に1万基という政府の目標の51%にとどまっている。テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、DC充電器の設置やメンテナンスに多額の費用がかかることや、設置許可に時間を要していることなどを課題として指摘。承認期間短縮に向けた全国的なガイドラインの作成など、すでに対策を進めていることを強調した。
(マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、10月30日)

ジョホールバルのモール「シティスクエア」、大規模再開発へ

【クアラルンプール】 ジョホール州で四半世紀あまり親しまれてきたショッピングモール「ジョホールバル・シティスクエア」(JBCS)は新ホテル開設など大規模再開発を実施する。完成は2027年第4四半期の予定で、営業を続けながらの改修になる。

JBCSの運営会社によると、再開発後の床面積は現在の4%増の56万8,927平方フィートになる。4万1,300平方フィートのヘルス&ウェルネス施設や、1万5,000平方フィートの子供向けアドベンチャーパークなど50以上の新規テナントの誘致を目指す。また、2028年にはモール上部にホテル併設型アパートメントの開業を予定している。

JBCSは1990年代半ばに建設され、マレーシア国鉄(KTMB)のJBセントラル駅に近接。さらにシンガポールを結ぶ高速鉄道輸送システム・リンク(RTSリンク)の新駅も近くに開設予定で、アクセスに優れた立地となっている。

JBCSは、マレーシアの大富豪として知られるロバート・クオック氏のグループ企業がもともと所有していたが、約20年前にシンガポール政府系資産運用会社のGICリアルエステートに売却。しかし、昨年になりクオック氏のグループ企業、オールグリーン・プロパティーズが約8億5,000万リンギで株式を買い戻していた。
(ザ・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、エッジ、11月3日)