東海岸への高速電車サービス延伸計画なし=運輸相

【クアラルンプール】 アンソニー・ロ―ク運輸相は、現在半島西海岸を縦断している高速電車サービス(ETS)を東海岸地域に延伸する計画は当面ないと明言した。

東海岸地域における既存の鉄道路線が単線で電化されていないためで、現在マレーシア国鉄(KTMB)がディーゼル機関車(DMU)による客車運行を行っている。

ローク氏は「その代わり東海岸鉄道線(ECRL)プロジェクトによって、この地域が高速鉄道サービスを受けることになる」と言明。ETSについては引き続き西海岸に重点を置き、ペルリス州パダン・ベサルとジョホール州ジョホールバルを結ぶ路線を運行すると述べた。

ローク氏はまたKTMBの通勤、ETS、貨物サービスは未だ完全な収益性を達成していないため、改善の必要性があると言明。ただ政府系企業(GLC)であるKTMBは、利益よりも社会責任を最優先に考えていると指摘した。
(ザ・スター電子版、ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、7月14日)

 

6月の新車販売、プロドゥアが2万2328台でトップ維持

【クアラルンプール】 道路運輸局(JPJ)の統計によると、2025年6月のブランド別自動車販売台数はダイハツ系プロドゥアが2万2,328台でトップを維持した。プロドゥアの年初6カ月の販売台数は16万6,188台となった。

7位までは前月から順位に変化はなかった。6月の2位はプロトンの1万638台で、年初6カ月は6万9,771台となった。3位はトヨタの9,946台(累計5万7,370台)で、4位はホンダの4,495台(累計3万5,471台)、5位はJAECOO(チェリー自動車傘下ブランド)の1,609台(累計9,175台)、6位は電気自動車(EV)専業のBYDの1,045台(累計5,400台)、7位は三菱の888台(累計6,724台)、8位はチェリーの884台(累計4,991台)が続いた。中国の奇瑞汽車(チェリー)傘下ブランド「JETOUR(捷途)」が初登場で18位(270台)に入った。

車種別で6月単月トップはプロドゥア「ベザ」(6,150台)で、2位は「アジア」(5,207台)。3位にはプロトン「サガ」(5,195台)が入った。4位以下はプロドゥア「マイヴィ」(4,183台)、プロドゥア「アルザ」(2,807台)、プロドゥア「アティバ」(2,675台)、トヨタ「ヴィオス」(2,273台)、トヨタ「ハイラックス」(2,196台)、ホンダ「シティ」(1,643台)、トヨタ「アルファード」(1,490台)となった。

EVでは最も売れたプロトン「e.MAS7」(604台)もトップ20に入れなかった。
(ポールタン、6月11日)

米国製AIチップ、輸出・積み替えなどに許可義務づけ=MITI

【クアラルンプール】 投資貿易産業省(MITI)は14日、米国製高性能人工知能(AI)チップの輸出、積み替え、通過すべてに戦略貿易許可の取得を義務づけ、即時発効した。

新規制は、2010年戦略貿易法(STA2010)第12条(キャッチオール規制条項)に基づくもの。同法は本来、兵器などに転用される恐れがある製品を「戦略物品リスト(SIL)」で管理するものだが、第12条では、リスト以外の製品でも、当局が定めるものに対しては、輸出・積み替え・通過を手がける企業や個人は、少なくとも30日前までに当局に通知し、許可を得る必要があると定めている。AIチップを正式にSILに入れるかどうかも引き続き検討されるという。

今回の規制の背景には、米国の輸出規制対象であるAIチップが、マレーシア経由で中国へ迂回輸出された疑惑がある。この疑惑が米国による関税措置の交渉にも影響する可能性があり、規制強化に踏み切ったとみられる。

マレーシア半導体産業協会(MSIA)のウォン・シューハイ会長も「積み替え問題を抑制するために政府が講じるべき必要な措置」とし、支持を表明している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、7月14日)

【イスラム金融の基礎知識】第572回 IFSB総会、モロッコで開催

第572回 IFSB総会、モロッコで開催

Q: 今年のIFSB総会は?

A: 中央銀行や通貨庁など、各国のイスラム金融の監督官庁が加盟する国際的なイスラム金融団体であるイスラム金融サービス委員会(IFSB、本部マレーシア)は、7月1日から3日にかけてモロッコのラバトで第23回総会と各種のフォーラムを開催した。ラバトは、首都カサブランカとジブラルタル海峡の中間に位置する大西洋に面した街だ。

モロッコは、イスラム協力機構(OIC)傘下のイスラム開発銀行(IsDB)の地域ハブ拠点が設置されている一方で、同国自体のイスラム金融の歴史自体は浅く、2014年に銀行法が施行され、初めてのイスラム銀行であるアムニア銀行が、カタール国際イスラム銀行などの支援を受けて2017年に創業した。以降、同銀行を中心にイスラム銀行5行とイスラム窓口を持つ複数の従来型銀行によって、市場が形成されている。現在の市場規模はおよそ24億米ドルで、国内金融市場の2%程度のシェアを占めている。

総会とフォーラムでは、イスラム法への準拠、流動性資産の管理、持続可能な金融の発展、およびデジタル化のリスクの4点が、主な議題として取り上げられた。これについてモロッコの中央銀行であるアル・マグリブ銀行のアブドゥルラティフ総裁は、「現在のイスラム金融はますます国際的な金融システムに統合されつつあるが、国によって経済発展やイスラムのあり方に大きな違いがある。そこでIFSBが提示する原理原則に基づき、各国の監督官庁が各国固有の事情を考慮した独自の規制を作ることが許容されている」と指摘した。モロッコにおけるこの具体例として、アブドゥルラティフ総裁は「ムスリム利用者からの信頼にこたえるため、最高ウラマー評議会がファトワ(法学裁定)を発行することによって、イスラム金融商品を認証している」という点を挙げた。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

観賞魚養殖のシアンロンがアジアアロワナ輸出へ、大阪万博通じ

【クアラルンプール】 観賞魚養殖を手掛けるシアンロン・アクアティック(祥龍魚場)は大阪・関西万博を通じて、高級鑑賞魚アジアアロワナの日本への輸出を目指している。

アジアアロワナは、アロワナの中でも色彩が豊かで、高級品種として知られている。野生のアジアアロワナは絶滅危惧種としてワシントン条約(CITES)で商取引が禁止されている。これに対し、1978年にジョホール州で創業されたシアンロンは、1994年からアジアアロワナの商業的飼育と輸出を行う世界初のCITES登録企業として、中国にも養殖場を設立するなど国際的に事業を展開している。

日本にもかつては販売代理店があったが、現在は販売代理店がない状態。今回、大阪万博を通じて日本市場再参入に向け、複数の会社と協議を続けている。飼育には生態系などに最大限の配慮をしているという。

ン・チャーリー取締役は「アロワナは癒しの存在。もし提携が成功すれば、6桁の輸出収入を生み出す可能性がある」と説明。今後、日本だけでなく、アジア各国で販売代理店の設置に取り組んでいく。
(ベルナマ通信、7月11日)

人材開発公社、半導体業界向け産業技能開発枠組みを発表

【クアラルンプール】 人材開発公社(HRDコープ)は、半導体業界向けの産業スキル・フレームワーク(IndSF)を正式に発表した。マレーシアが世界的な半導体人材拠点を目指す国家戦略の一環であり、同分野における初の体系的なスキル開発指針となる。

同枠組みはマレーシア半導体産業協会(MSIA)および主要業界関係者とのパートナーシップにより策定された。急成長する半導体業界の即時的なニーズに対応した職業経路と訓練基準を定めている。国家半導体戦略(NSS)に整合する形で設計されており、マレーシアの産業変革と人材育成の連携を意図している。

IndSFは工学分野および技術分野の2つの主要領域に焦点を当てており、初級から専門職まで、9つの重要分野にわたるキャリア進展の道筋を提示している。これにより、教育機関や訓練提供者、現場の専門職が、業界の変化に応じた育成プログラムやキャリア開発計画を策定する際の基準として活用できるという。

MSIAのウォン・シュ―ハイ会長は、「この枠組みは国家半導体戦略の実現に不可欠であり、業界のニーズと人材育成のギャップを埋める鍵である」と述べた。
(ビジネス・トゥデー、7月11日)

関税率25%は最終決定にあらず、首相がルビオ国務長官と会談

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は10日、一連の東南アジア諸国連合(ASEAN)会議のため来訪したルビオ米国務長官の表敬訪問を受け、米政府がマレーシアに送付した、25%関税を盛り込んだ大統領書簡などについて意見を交換。関税について米側は「一般的手段であり、8月1日の施行までまだ交渉期間がある。マレーシアは域内で重要な貿易相手であり、マレーシアの意見を関税率決定に際し考慮する」との姿勢を示したという。

2国間関係全般についてアンワル氏は「マレーシアがすべての国との友好関係、貿易を望んでいることを米国は理解している。マレーシアはどちらかの味方をしなければならない、との意見もあるが、それは違う。米国は極めて重要な貿易相手だが、マレーシアは国民の利益のため、中国、ASEAN、そのほかの国との関係も強化しなければならない」と述べた。

中東ガザ情勢についてアンワル氏は「大虐殺は直ちに停止されなければならない」とルビオ氏に伝えた。ルビオ氏は停戦が実現するとの楽観的見通しを示したという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、ベルナマ通信、7月10日)

マレーシアの人口、2059年に4230万人でピ―クに到達

【クアラルンプール】 マレーシア統計局(DOSM)が2025年世界人口デーに合わせて発表した最新の報告書によると、マレーシアの人口は2059年に4,238万人でピークに達し、その後緩やかな減少期に入ると予想されている。
マレーシアの人口は着実に増加し、2030年から2060年にかけて年平均人口増加率は0.5%で緩やかに推移し、2059年にピークを迎えた後、減少に転じると予想される。2030年には3,649万人、2040年には3,978万人、2050年には4,179万人に達すると予想されるという。

民族構成にも大きな変化が見込まれており、ブミプトラ(マレー人と先住民の総称)比率は2030年の71.8%から2060年には79.4%に上昇すると予測される。一方、華人の割合は急激に減少し、2030年の21.1%から2060年にはわずか14.8%にまで減少する見込み。インド系の割合も30年間で6.3%から4.7%に縮小するとみられる。

2059年以降の人口減少の一因として男女比の不均衡の加速が挙げられており、男女比は2030年の女性100人に対する男性112人の比率から、2060年には女性100人に対する男性比率は114人に増加すると予想され、2060年にはマレーシアの人口は、男性2,250万人、女性1,980万人になるとみられる。

マレーシアはまた、急速な高齢化社会に直面しており、平均年齢は2030年の32.8歳から2060年には40.7歳に上昇する見込み。若年層(0―14歳)の割合が19.9%から16.0%に、生産年齢人口(15―64歳)が70.8%から65.7%にそれぞれ減少する一方、65歳以上の高齢者人口は、2030年の9.3%から2060年には18.3%へと急拡大する見通しだ。

州レベルでは、セランゴール州が2060年も810万人でマレーシアで最も人口の多い州になる見込み。これにジョホール州(499万人)、サバ州(489万人)が続く。クアラルンプールは、2060年までに若年人口の割合がわずか9.1%と最も低くなる見込みで、高齢人口の割合は26.2%と最も高くなると予想されている。
(ボルネオポスト、ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、7月11日)

【総点検・マレーシア経済】第525回  マレーシアへの相互関税は25%、これからどうなる?

第525回  マレーシアへの相互関税は25%、これからどうなる?

4月9日以降、トランプ政権が導入した「相互関税」の執行は10%のベースライン関税を除いて90日間停止されていましたが、その期限である7月9日前後に様々な動きが見られました。まず、トランプ大統領は相互関税の実施を8月1日からと発表し、実質的に猶予期間が約20日延長されました。

同時に、トランプ政権は各国に対して個別の相互関税率を通知しました。7月9日までに正式に交渉がまとまったのはイギリスとベトナムのみで、イギリスは米国製品の購入などを条件に相互関税率は10%に(他に自動車低関税輸入枠)、ベトナムは米国製品への関税を0%にすることを条件に、相互関税率は当初の46%から20%に引き下げられ、「積替輸出(Transshipment)」については税率40%で決着しました。

マレーシアには7月7日、相互関税率を25%とする旨を通知する書簡が届きました。この書簡は非常に攻撃的で礼節を欠くものでしたが、日本とマレーシアで国名以外は同一の内容が使い回されており、真剣なメッセージとして深読みする必要はありません。また、マレーシアと日本は共に相互関税率が24%から25%に1%上昇していますが、他の国も微妙に関税率が変更されており、これも特別な意味はなく、関税率を切りの良い数字に整理する一環と考えられます。

これに対し、ザフルル通商産業大臣は引き続き8月1日までの交渉を目指すことを表明し、合意に至る確率は50%と述べました。また、ザフルル大臣は国益を犠牲にしてまで合意にこだわることはないと明言しています。交渉の焦点となっているのはハラル食品で、マレーシアは米国産の牛肉や鶏肉の輸入を認めていませんが、「彼らが基準を守るのであれば」それを認めるとザフルル大臣は述べています。

一方で、譲歩しない「レッドライン」として挙げているのは「デジタル税」で、デジタル製品への課税は国家主権に関わるため譲れないとしています。その他のレッドラインには、電子商取引、政府調達、健康や技術に関連する基準に関する法律が含まれると発言しています。

マレーシア側はマレーシア航空がボーイング機30機を購入することに加え、さらに30機の購入を米国との交渉で提示していると報じられました。しかし、同時期に、エアアジアがエアバス機を70機、マレーシア航空が20機購入することが報じられるなど、米国に対して地道な「けん制」も行っています。

アンワル首相は米国との関税交渉を継続すると語り、7月10日には米国のルビオ国務長官と会談しました。一方で、それに先立つ7月9日、ASEAN外相会議の開幕に当たり、かつては成長を生み出すために使われていた関税が、今では圧力をかけ、孤立させ、封じ込めるために使われていると警告しました。

その後も、トランプ大統領は外交的に対立するブラジルに50%の相互関税を課すと発表するなど、現時点で提示されている関税率は実務的なものではなく「ディール」の道具となっています。8月1日に向けてさらなる紆余曲折が予想され、引き続き予断を許さない状況です。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

微細藻類のバイオマスプロジェクトでサバ州政府系企業など提携

【コタキナバル】 サバ州政府系企業SAIPと、CCEパワー・ホールディングスは10日、同州キマニスの農業工業地区における微細藻類を原料とするバイオマスプロジェクトの開発で覚書を締結した。

プロジェクトでは、まず日本企業と協力して、100ヘクタールの土地に微細藻類を栽培。日光を必要としない閉鎖タンク式で培養され、5―7日で収穫できるという。その後1,000ヘクタールへの拡大も予定している。

さらに主に2つの生産ラインを備えた施設を建設。1つは微細藻類から産出される油から、持続可能な航空燃料(SAF)などを生産するためのもので、もう1つは微細藻類を乾燥させてバイオマス燃料として30メガワットを発電する施設になる。バイオマス発電所は3段階に分けて進められる予定で、年内にも始まる第1フェーズではパーム油由来のバイオマスを100%使用。第2フェーズではパームバイオマスと微細藻類を混合し、第3フェーズでは微細藻類を70%、パームバイオマスを30%使用する予定という。

州産業開発・起業家支援相で、SAIP会長も務めるフーン・ジンジャ氏は「サバ州は国内で最も有数の藻類産業拠点の一つとなる可能性を秘めている」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ボルネオポスト、7月10日)