売上サービス税の適用拡大、自動車販売への影響は限定的

【クアラルンプール】 CIMBセキュリティーズは、7月施行の売上・サービス税(SST)の適用対象拡大の自動車販売への影響は限定的との見解を示した。自動車販売には既に10%の売上税が課せられており、整備・修理も8%のサービス税の対象だ。

ショールーム賃貸料の上昇といった間接的影響は考えられるが、影響はごくわずかだという。しかし下半期に予定されているレギュラーガソリン補助の合理化が消費者心理に影響する可能性はあり、通年の新車販売台数は昨年比7%減の76万台が予想されるという。マレーシア自動車協会は4.5%減の78万台を予想している。

CIMBは、燃料補助の合理化で電気自動車(EV)の販売に勢いがつくとみている。第1四半期のEVの販売台数は前年同期の2倍近い5,394台。EVにハイブリッド車を加えた同期のシェアは7.3%。輸入電気自動車に対する関税100%免税措置は今年末で期限を迎える。
(ベルナマ通信、エッジ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、6月20日)

マレーシアで今年初の新型コロナ関連の死者、感染者は14%増

【クアラルンプール】 保健省は、2025年第24疫学週(6月8日ー6月14日)に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の死者が報告されたと発表した。マレーシアで新型関連死が報告されたのは2024年5月26日以来。2024年の死者は57人だった。

死者は糖尿病や心臓病などの基礎疾患があり、ワクチンの2回目の追加接種を受けていなかった。重症化して集中治療室に収用された患者数は6人で、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、ダウン症候群などの基礎疾患(ハイリスクグループ)を持っていた。うち4人はすでに退院し、2人は一般病棟に移っているという。

一方、感染者数は前週から14%増加して3,379人となった。累計感染者数は2万1,738人に達し、週平均で約900人となっている。

保健省は予防対策として、高齢者、基礎疾患のある人、免疫不全の青少年、妊婦、医療従事者などのハイリスクグループに対し、COVID-19ワクチンの追加接種を推奨している。また18歳以上は任意でワクチン接種を受けることができる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレー・メイル、6月19日)

KLIAエアロトレイン、7月1日に運行再開へ

【セパン】 老朽化に伴う改修工事のため運休していたクアラルンプール国際空港第1ターミナル(KLIA1)のメインターミナルとサテライトターミナルを結ぶKLIAエアロトレイン・サービスは、7月1日午前10時に運行を再開する予定だ。

アンソニー・ロ―ク運輸相はメディア向け説明会の中で、システム試験の最終段階に入ったと述べ、空港運営のマレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)の職員と緊急対応チームが参加する緊急対応計画(ERP)訓練もすでに実施したと公表。「今後数日間にわたり最終テストを数回実施する。中でも最も重要なのは緊急事態発生時の対応を確認するための緊急対応訓練だ」と述べた。

新しいエアロトレイン車両は3両編成で、1回の運行で270人の乗客を運ぶことができる。2編成の列車を交互に運行し、3編成目は予備となる。オフピーク(深夜零時―午前5時)は1編成のみの運行となる。

1998年に建設されたエアロトレインは老朽化のために度々故障を起こしたことから改修工事が行われていたが、工事は再三にわたって遅延。運行は2023年3月から停止されていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月21日)

エネルギー委、7月からの新電気料金体系を発表

【プトラジャヤ】 エネルギー委員会は20日、マレー半島部における今年7月1日から2027年12月までの第4次規制期間(RP4)の新たな電気料金体系を発表。電圧使用量に基づいて消費者区分を家庭用と非家庭用に分類したことなどで、電力消費量が1,000キロワット時(kWh)以下の家庭消費者は値上げの影響を受けないとしている。

今回、新たな消費者区分として、電圧使用量に基づいて低電圧、中電圧、高電圧の3分類が設定された。低電圧とは1,000kWh以下で、一般家庭や小規模商業などが該当する。

加えて家庭用と、200kWh以下の非家庭用には、省エネインセンティブ(EEI)が導入され、オフピーク時間帯に電気を利用すると、ピーク時に比べて電気料金を節約できる。オフピーク時間帯は、土日の終日、および月―金曜の10―14時に拡大された。

一方、基本料金は1キロワット時(kWh)あたり45.40センとなり、昨年12月の45.62センから引き下げられた。前期間のRP3の39.95センと比較すると、値上げではあるものの消費者区分の導入などで全体としては最大19%の削減になるという。

また従来は、基本料金に加え、燃料価格の変動に合わせて料金を調整する不均衡価格転嫁(ICPT)メカニズムにより、半年に1度料金が調整されてきたが、今後は新しい自動燃料調整(AFA)メカニズムを導入。AFAは市場燃料価格と為替レートに基づいて自動的に調整されるもので、今後は毎月見直されることになる。

そのほか、最貧困層世帯には毎月40リンギの補助金が提供される。また農業、水道、下水道、鉄道事業者向けには特定の料金が設定され、登録済みの高等教育機関、学校、福祉施設、礼拝所には10%の割引が適用される。

エネルギー委員会は、2,360万人以上の家庭ユーザーが、より公平で累進的な電気料金の恩恵を受けるとしている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月20日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第902回:中小企業の両利き経営(5)両利きと、長期的・地球的視点

第902回:中小企業の両利き経営(5)両利きと、長期的・地球的視点

前回は、中小企業の多くが深化を好むというお話でした。しかし、特定の技術に依存し、深化に特化することは、イノベーションと研究開発が牽引する産業において、時代の変化への対応を困難にし、競争優位性を低下させる可能性があります。今日、産業構造の転換により、ニーズの細分化、複雑化、予測不可能性が高まる中、中小企業にとって、下請け構造からの脱却や、既存のネットワークにとどまらない幅広い情報源の活用、技術シーズを機動的に新規事業に繋げるイノベーション活動がますます重要になっています。さらに、コロナ禍を契機としたICT化の波や、持続可能な開発目標(SDGs)を契機とした地球環境意識の高まりは、企業経営者に変化を迫り、従来のやり方に固執することのリスクを高めています。さらに、リスク分散、すなわちポートフォリオ投資の観点からは、国内で多くのイノベーション活動が展開されることが必要です。言い換えれば、両利きであることが一企業の短期的な売上に直接つながらないとしても、国全体、あるいは世界規模で取り組むことが合理的な場合があると考えられます。

さらに、両利きであることは中小企業にとって短期的には有益とは考えられないとしても、長期的には有益となる場合があります。深化と探索を組み合わせることで、中小企業は既成概念にとらわれず、短期的ではなく長期的な視点でイノベーションを起こし、最終的にプラスの結果を生み出す可能性があります。これは、両利きであることが、深化と探索という相反する要求を統合する上で重要な役割を果たすためです。両利きの中小企業は、斬新なアイデア、製品、プロセスを開発する能力を失うことなく、深化と探索を管理し、効率性を向上させる能力を持っています。

こうした中小企業は、財務構造に関する重要な意思決定を迅速かつ柔軟に行うことができます。例えば、国際化を通じて新たな市場を開拓したり、新製品や新ブランドを立ち上げたりすることができます。したがって、中小企業が両利きを達成できる方法を見つけることは、中小企業の回復力を高め、マクロ的または長期的な視点から、中小企業、国、そして世界が納得できる解決策に到達するために役立つ可能性があります。そこで、次回からは、中小企業が両利きを達成するための条件について検討します。

 

Kokubun, K. (2025). Digitalization, Open Innovation, Ambidexterity, and Green Innovation in Small and Medium-Sized Enterprises: A Narrative Review and New Perspectives. Preprints. https://doi.org/10.20944/preprints202504.0009.v1

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

JS-SEZは今後の日馬関係に戦略的に重要=アンワル首相

【クアラルンプール】 ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)に日本からの関心が高まっていることに関し、アンワル・イブラヒム首相はマレーシアとシンガポールの強固な基盤に基づく信頼性を強調。日本からの投資を通じ「JS-SEZは今後の日本とマレーシアにとって戦略的にますます重要になる」との見方を示した。

アンワル首相は19日、ジョホール州で開かれたフォーラム「メディニ・ジョホール2025」で発言した。同フォーラムはイスカンダル・インベストメント(IIB)などが主催した。

またフォーラムに登壇した四方敬之 駐マレーシア日本大使は、今後の両国関係においてグリーンテクノロジー、交通インフラ、教育交流の3つの主要分野の重要性を指摘。同州で急増するデータセンターに付随するエネルギー関連での投資や、問題化している交通渋滞解消に向けた協力、共同学術プログラムの創設などの可能性について語った。

州政府傘下の投資誘致機関「インベスト・ジョホール」のナタザ・ハリス最高経営責任者(CEO)は「日本からの投資に必要な枠組みと支援体制は整っている」と述べ、より多くの投資獲得に向け対策を強化していくとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、フリー・マレーシア・トゥデー、6月19日)

輸入果物等へのSST導入計画を見直しへ=副首相

【クアラルンプール】 アハマド・ザヒド副首相は、7月1日施行を予定しているリンゴやミカンなどの果物を含む特定の輸入品に対する売上・サービス税(SST)の導入について、業界関係者や消費者からの不安の声を受けて、一部品目を対象に再検討すると明らかにした。

提案されている5―10%のSST課税が消費者にとって大きな負担となる可能性があるためで、ザヒド氏は「我が国はリンゴやミカンを生産していない。SST課税は地元の果物産業を保護するためのものだが、すべての果物が国内で生産できるわけではないことを理解する必要がある」と言明。SST課税対象となっている特定の品目については見直しが行われるだろうとし、財務省と経済省がこの件について検討を行っていると理解していると述べた。

政府は6月9日、SST税率の見直しを発表。売上税については米、食用油、砂糖、牛乳、医薬品、書籍などの生活必需品を除外し、輸入果物やサーモンなどの非必需品を対象として、5%または10%の税率が課される予定になっている。
(ザ・スター電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、ベルナマ通信、6月19日)

ペナンのチップデザイン学校、人的資源省が協力申し入れ

【ジョージタウン】 ペナン州が設立を計画しているチップデザインアカデミーに対し、人的資源省が技能訓練プログラム面で協力を申し入れている。半導体、ハイテク分野の人材育成を強力に推進する。スティーブン・シム大臣が19日、全国訓練週間(北部地域)開始式後の会見で明らかにした。

デザインアカデミーは先端技術センターとしてのペナン州の地位強化が狙いで、ICデザインの技術者を育成する。アカデミーは州が計画しているICデザイン・デジタル団地の中核組織になる。

シム氏は「省としてアカデミーに価値を付加したい。州における技能訓練をさらに優れたものにするために提携を希望している」と述べた。

シム氏は、社員の技能引き上げを行う企業に対する助成金計画も発表した。北部回廊実行庁(NCIA)との連携事業で、企業が高技術習得のための課程を採用、開発する場合、人的資源開発公社の助成金だけでなく、NCIAの助成金も利用できる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレー・メイル、6月19日)

「米国との関税交渉は順調」アンワル首相が強調

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相(財務相兼任)は、米国の一方的関税導入に関するマレーシアと米国の協議は順調に進んでいると述べた。協議のために訪米中のザフルル・アブドル・アジズ投資貿易産業相とアミル・ハムザ・アジザン第2財務相から、19日早朝に前向きな進展について報告を受けたという。

アンワル首相は第38回アジア太平洋ラウンドテーブルの基調講演の中で、「米国商務長官との会談が”素晴らしい”成果を上げたとの連絡を受けた」と言明。国際貿易は一方的な経済政策や強制的な経済措置ではなく、透明性あるルールと法的予測可能性によって統治されるべきだと述べ、「貿易とサプライチェーンの混乱は、企業に悪影響を及ぼし、経済成長を阻害し、国民の社会経済的幸福の確保に向けた取り組みにさらなる悪影響を及ぼすだろう」と述べた。またマレーシアと地域はグローバルサプライチェーンに深く関わっているため、米国による一方的な関税賦課は大きな課題であると指摘した。

ザフルル氏は、7月8日に90日間の暫定関税停止が期限切れとなるのを前に、米国との相互関税に関する協議を開始するため、17日に米国に到着した。米国は今年4月にマレーシアからの特定輸出品については24%の関税を課すと宣言しており、ザフルル氏は交渉団の優先事項を市場アクセスの改善に関する交渉と、サプライチェーン関連の課題に充てて対応にあたっている。
(ザ・スター電子版、エッジ、ブルームバーグ、6月19日)

豊田通商、サバ州のリチウム電池用銅箔製造会社に出資

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 豊田通商(本社・名古屋市)は、韓国SKグループでリチウムイオン電池部材の銅箔を製造するSKネクシリス(SKNX)と、マレーシア子会社、SK ネクシリス・マレーシア(SKNM)の株式譲渡契約を締結したと発表した。

車載用電池製造に欠かせない高品質の銅箔を安定的に調達・供給することを目的としたもので、出資金額は1億1,000万米ドル(約160億円)。SKNMはサバ州に年間5万7,000トンの生産能力を持つ工場を有し、豊富な水資源で発電された100%再生可能エネルギー由来の電力を利用し、車載電池用銅箔製造を行っている。

豊田通商は、同工場で製造された低炭素かつ価格競争力のある銅箔製品を、日本や北米を中心とする電池メーカーに供給していく予定。将来的には、豊田通商のグローバルなネットワークを活かし、市場ニーズを取り込みつつSKNMと連携し、次世代の車載用電池開発に必要な銅箔の開発も検討していく。

リチウムイオン電池は、電動車の普及に伴い、今後もさらなる需要の増加が見込まれている。豊田通商は、車載用電池関連ビジネスを次世代に向けた成長の柱として位置づけ銅箔をはじめとした車載用電池部材のサプライチェーン構築に注力していく方針だ。