シネコンのGSCが3月中に3館を閉鎖、競争激化で

【クアラルンプール】 シネコン大手のゴールデン・スクリーン・シネマ(GSC)が3月中に3店舗の営業を終了すると発表し、ネットユーザーの間で波紋を広げている。

7日にセランゴール州のショッピングモール「3ダマンサラ」内店舗を17日付けで営業終了するとした後、20日にも同州「クラン・パレード・モール」、ジョホール州コタティンギの「ヘリテージ・モール」内店舗を31日付けで営業終了すると発表した。インスタグラムなどでは短期間での多店舗閉鎖について不安の声が上がっている。

英字紙「ニュー・ストレーツ・タイムズ」によると、GSCは年内にさらに店舗を閉鎖する見通しだ。同紙は業界関係者の話として、ネットフリックスやアマゾン・プライムビデオ、ディズニープラスなどといったオンライン・ストリーミングとの競争激化が閉鎖の理由だと報じた。新型コロナウイルスの感染拡大が、自宅で視聴できるストリーミング・サービス利用拡大につながったという。

映画館でも独占公開作品の確保や鑑賞体験の充実に向けた様々な取り組みを行っているが、チケット価格の高騰などにより顧客を呼び戻すには至っていない。同紙はGSCに問い合わせを行ったが、回答は得られていないという。
(ハイプ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、3月20日、GSC発表資料)

環境団体、日本とマレーシアに対しCCSの取りやめを要求

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 国際環境ネットワーク「フレンズ・オブ・ジ・アース(FoE)インターナショナル」のメンバーである、環境団体サハバット・アラム・マレーシア(FoEマレーシア)とFoEジャパンは21日、日本政府とマレーシア政府に対し、炭素回収貯留(CCS)技術を促進しないよう求める公開書簡を提出した。

二酸化炭素(CO2)の排出量が多い日本では、マレーシアを含む他国へのCO2輸出を積極的に検討しており、海外CCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書の締結などを行っている。

両団体は、マレーシアのようなグローバル・サウスの国々にCO2を投棄することは、「歴史的に多くの温室効果ガスを排出してきた国々がより多くの気候変動対策への責任をとる」という気候正義の原則に根本的に反しており、 またCCSはリスクが大きく、コストも高い有効性の立証されていない技術であり、長期的な責任を伴うと主張。このような技術に依存することは、日本の気候変動対策を遅らせるだけだとして、輸出を行わないよう求めている。

FoEジャパン事務局次長で気候変動・エネルギーキャンペーナーの深草亜悠美氏は、これまでも多くのCCS事業が高いコストと技術的困難により失敗してきたとし、日本にはまだ商業規模のCCS事業は存在せず、技術的・財政的な障壁があると説明。日本政府が公然と、他国にCO2を輸出する方が安価な選択肢であると主張しているのは恥ずべきことであり、日本政府は気候変動への公平性の原則とその歴史的責任に基づいて、より高い排出削減目標を設定し、こうした誤った解決策の推進をやめるべきだと述べた。

FoEマレーシアのミーナクシ・ラーマン代表は、他国から輸出されたCO2を受け入れることは、マレーシア自身の排出削減努力を台無しにすることになるとし、マレーシア政府に対し、富裕国からの廃棄物をこれ以上受け入れないよう要求すると言明。マレーシアは、世界のあらゆる廃棄物の投棄場所となるべきではないと述べた。

デジタル分野に関する競争政策セミナー、JICAと公取委が共催

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 国際協力機構(JICA)と公正取引委員会(JFTC)は21日、マレーシア競争委員会(MyCC)の職員を対象に、デジタル分野における競争政策をテーマとするオンラインセミナーを共同で開催した。

MyCCがデジタル分野における競争上の問題点の把握を目的とする実態調査を計画する中、MyCCの職員にJFTCの知見を提供し、当該実態調査を充実させることを目的としたもの。セミナー当日は、デジタル分野における競争上の問題に関するJFTCと他の政府機関との連携のあり方やJFTCによって実施されたデジタル分野における各種実態調査の内容についてJFTCが紹介した。セミナーにはMyCCの職員約40人が参加した。

マレーシアでは2010年に競争法が制定され、翌年に競争法の執行機関であるMyCCが設置された。JICAは2021年1月から1年間、さらに2022年11月からは2年間、MyCCに競争法のアドバイザー専門家を派遣し、その後も支援を続けている。今年3月6、7日にもJFTC職員4人が講師として来馬し、「リニエンシー制度」をテーマとする競争法セミナーを共同開催した。

RHBが日清オイリオ現法に持続可能性融資、目標達成に奨励措置

【ペタリンジャヤ】 RHBバンクは日清オイリオグループのマレーシア法人、インターコンチネンタル・スペシャルティ・ファッツ(ISF)との間で、9,000万リンギの持続可能性融資を行う契約を交わした。

契約に基づきISFは、あらかじめ合意された持続可能性の目標達成に応じ、金利の割り戻しを受けることができる。ISFの業務、サプライチェーンへの関与などにおける、パーム油の持続可能性の向上に貢献する内容だ。ISFはパーム油由来の付加価値油などの製造・販売を行っている。

RHBバンキング・グループのラシド・モハマド最高経営責任者(CEO)は「今回の融資は、持続可能な開発に対するわが社のビジョンを体現するだけでなく、積極的変化の触媒というRHBの役割を強化する」と述べた。

ISFの石神高CEOは、RHBとの協働は持続可能性および環境・社会・企業統治(ESG)原則への両社のコミットを体現していると述べた。

IFSは2019年に、マレーシア三井住友銀行から環境配慮評価融資を受けた実績がある。銀行側の環境配慮評価基準に基づき、企業の環境配慮状況を評価し、評価結果に応じ融資条件が設定される内容だった。
(ザ・サン、3月22日)

NECマレーシア、イスカンダルプテリに新サービス拠点を開設

【クアラルンプール】 日本電気(本社・東京都港区)のマレーシア現地法人NECマレーシアは20日、ジョホール州イスカンダル・プテリにITサービス拠点である「インテリジェント・センター・オペレーションズ・オブ・NEC(ICON)」を開設した。

ICONは、サービスデスク業務、ネットワーク・オペレーション・センター、セキュリティ・オペレーション・センターの機能を統合した拠点。コールセンターとしてAI自動化ツールを活用しつつ、アジア顧客の多様なニーズに対応するため、8カ国語でサポートを提供する。知識移転の拠点としても位置づけられており、優秀な現地人材に対し、NECの技術に関する総合的なトレーニングを提供し、今後5年間での人材育成を目指す。

NECマレーシアは2021年にイスカンダル・プテリのサンウェイ・シトリン・ハブに東南アジア向けのカスタマーサポートセンターを開設しており、今回はその拡張移転となる。
(ビジネス・トゥデー、3月21日、NEC発表資料)

【人生の知恵・仕事の知恵】Delegating management

Delegating management

★経営のコツ
先日、仕事を一人で抱え込む年配のリーダーの方に、部下からの苦情が出ている旨を伝え、改善を促したところ下記のように反論されました。
「わかっています。でも任せる人間もいないし、私がいないとダメなんですよ」
その後、1時間話し込んだ上、以下のように諭しました。
「よいマネジメントはですね、〇〇さんがいないと回らない組織ではなく、〇〇さんがいなくても回る組織を作ることですよ」

★一生懸命の罪
生前、松下幸之助は、下記のように話していました。
「一生懸命やっている経営者が、やればやるほど、経営がおかしくなっていく。本人は一生懸命やけども、やり方が間違っている。自転車操業の社長ほど、一生懸命や」
本人は、別に一生懸命を否定しているわけではなく、周りが見えていない経営に対する注意を呼びかけたわけです。

★違う空気を吸ってもらう
いなくても回る組織は、どんなことからでも、任せることから始まります。
たとえば、いつも自分が参加している会議に部下にも参加してもらい、別の視点でものを見てもらうなどをして、本人の意識を変える機会を作るなどです。そして、部下の気づきを喜びと捉えることが、次世代リーダーを生むきっかけになるのです。

湯浅 忠雄(ゆあさ ただお)
アジアで10年以上に亘って、日系企業で働く現地社員向けのトレーニングを行う。「報連相」「マネジメント」(特に部下の指導方法)、5S、営業というテーマを得意として、各企業の現地社員育成に貢献。シンガポールPHP研究所の支配人を10年つとめた後、人財育成カンパニー、HOWZ INTERNATIONALを立ち上げる。
【この記事の問い合わせは】yuasatadao★gmail.com(★を@に変更ください)

【従業員の勤労意欲を高めるために 】第870回:ライフスタイルとモチベーション(10)良いライフスタイルが良い健康、良い経営の基本

870回:ライフスタイルとモチベーション(10)良いライフスタイルが良い健康、良い経営の基本 

前回(注:Web上には未掲載、メールマガジンにのみ掲載)は、趣味を持つことで、気分がリフレッシュされ、また頭の働きが良くなるというお話でした。今回は、運動や食事とメンタルヘルスの関係についてです。

スペインの小学生567人を対象にした調査では、週に3時間以上の身体活動を行う参加者は、この基準を満たさない参加者よりも心の知性(自分や相手の気持ちを理解したり評価・制御したりする能力)のスコアが高いことが示されました(Melguizo-Ibanez et al., 2022)。また、システマティックレビューは、大学生の健康的な食事が、うつ病、不安、ストレスなどのメンタルヘルスの問題を軽減することを示しました(Solomou et al., 2023)。このように、健康的なライフスタイルは、心を良い状態に保つうえで大事といえます。

しばしば、駐在員の現地への適応が主要なテーマになります。しかし、現地のライフスタイルに適応していることと、健康的なライフスタイルを実践していることとでは、意味が全く異なります。例えば、先行研究では、糖尿病は、日本人や米国人よりも日系アメリカ人ではるかに多いことが示されています(Fujimoto, 2016)。このことは、現地のライフスタイルに適応することで、かえって健康を害する可能性があることを意味します。

駐在員のパフォーマンスを最大化させるには、ライフスタイルに着目する必要があります。良いライフスタイルを維持することで、良い経営の実践に活かしていきましょう。


Fujimoto, W. Y. (2016). 2015 Yutaka Seino distinguished leadership award lecture: the Japanese American community diabetes study and the ‘canary in the coal mine’. Journal of Diabetes Investigation, 7(5), 664-673. https://doi.org/10.1111/jdi.12539
Melguizo-Ibanez, E., Gonzalez-Valero, G., Badicu, G., Filipa-Silva, A., Clemente, F. M., Sarmento, H., … & Ubago-Jimenez, J. L. (2022). Mediterranean diet adherence, body mass index and emotional intelligence in primary education students?an explanatory model as a function of weekly physical activity. Children, 9(6), 872. https://doi.org/10.3390/children9060872
Solomou, S., Logue, J., Reilly, S., & Perez-Algorta, G. (2023). A systematic review of the association of diet quality with the mental health of university students: implications in health education practice. Health Education Research, 38(1), 28-68. https://doi.org/10.1093/her/cyac035

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、国際経済労働研究所理事、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

【総点検・マレーシア経済】第492回 中銀のコロナ禍への対応、マレーシアとタイの比較(2)

492回 中銀のコロナ禍への対応、マレーシアとタイの比較(2

前回に引き続き、バンク・ネガラとタイ中央銀行のコロナ禍への対応を比較していきます。図はタイの政策金利(青線)と消費者物価上昇率(CPI、橙線)、政策金利からCPIを差し引いた「実質金利」(灰棒)の3つについて、2020年1月から2024年1月までの状況を示したものです。

2020年、タイ中銀はコロナ禍がはじまるとともに政策金利を1.25%から0.5%まですみやかに引き下げます。2022年にはいるとCPIは4%を超える水準に上昇し、2022年8月のピーク時には7.66%に達しました。これに対して、タイ中銀が利上げを開始したのは2022年8月で、まさに物価がピークをつけた時点でした。
その後、タイ中銀は2023年9月まで1年1カ月にわたって2%ポイントの利上げを続けます。この時点でCPIは0.3%にまで低下しており、その後、タイのCPIはマイナスの領域に落ち込んでいきます。タイ中銀の利上げは開始が遅く、終了も遅かったように見えます。

結果として、現在は政策金利が2.5%と比較的低いにもかかわらず、CPIがマイナスなため、実質金利は3%台後半にまで上昇しています。これは、CPIが2%の状況を仮定すると5%台の政策金利に相当し、タイ政府が利下げを求めて苦言を呈するのも理解できます。実際、タイの2024年の経済成長率は2.8%と見込まれており、経済成長率は低い状況になっています。

このようにみると、タイの中銀のコロナ禍への対応は、当初は迅速だったものの、物価上昇への対応は遅く、利上げの停止も遅れ、現在は利下げへの要求が高まっており、景気や物価の推移からやや遅れたものになっているように見えます。

熊谷 聡(くまがい さとる)
Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所海外調査員。専門はマレーシア経済/国際経済学。
【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【マレーシア・トレンド・ウォッチ】“新村”の世界遺産登録を巡る議論

“新村”の世界遺産登録を巡る議論

「新村(ニュービレッジ)」のユネスコ世界遺産登録を巡り、議論が起こっています。マレーシアの「新村」は、マレーシア史、特に華人社会の歴史を理解する上で重要な存在です。ただ、その割には、日本語のメディア報道に載ることは稀なため、あまり知られていないように感じています。この動きについては、3月18日付けのシンガポール紙The Straits Times(ST)電子版でクアラルンプール特派員のAzril Annuar記者が”Why an idea to nominate Chinese new villages as a Unesco site got Malaysians riled up”という良記事を配信しています。

そもそも、「新村」とは、1949年から1950年代のマラヤの地方部に強制移住で作られた華人系住民の村落のことです。1948年のマラヤ共産党の蜂起に対して、英国が非常事態宣言を発して鎮圧にあったことが背景にあります。華人系住民が共産党の支援にまわらないようにすることが目的でした。ST記事によれば631カ所の「新村」が形成され、数十万人が強制的に移住させられたことが判明しており、現在も少なくない数の新村が残っており低所得に悩まされている状況です。

ST記事によれば、世界遺産登録に賛成する地元村長は、マレーシアの歴史の一部であり、「新村」が歩んできた厳しい歴史を保存することになり、観光地となれば保全のための資金源ともなると述べています。ただ、マレー系政治家からは「新村」が世界遺産に認定されると、「先住民」の一つとして認められる余地が生まれてしまい、マレー人の権利への挑戦となり得るとして、むしろ、マレー系中心の「カンポンバル」の方が世界遺産に適切だという主張もでています。

今後、どのような形で落ち着いていくのか、まだ予断ができません。いずれにせよ、「新村」の存在はマレーシア史において忘却されてはならないものであり、これを機にその歴史と課題が広く知られることを望みたいところです。

※本連載の内容は著者の所属組織の見解を代表するものではなく、個人的な見解に基づくものです。

川端 隆史(かわばた たかし)
マレーシア研究者。1976年栃木県生まれ。東京外国語大学マレーシア専攻卒業。1999 年から2010年まで外務省に勤務し、在マレーシア日本国大使館、 国際情報統括官組織などを歴任。2010年11月から15年7月までは SMBC日興証券でASEAN担当シニアエコノミスト。2015年8月に ソーシャルメディアNewsPicksと経済・産業情報プラットフォームSPEEDAを手がけるユーザベースに転身、2016年3月から同社シンガポール拠点に駐在。2020年12月から2023年3月まで米国リスクコンサルティングファームのクロールのシンガポール支社に勤務。共著書に「マハティール政権下のマレーシア」、「東南アジアのイスラーム」、「東南アジア文化辞典」がある。この記事のお問い合わせ は、takashi.kawabata★gmail.comまで(★を@に変更ください)

米テスラ、第2四半期に全国5カ所に充電器設置へ

【クアラルンプール】 電気自動車(EV)メーカーの米テスラは20日、今年第2四半期に同社のEV充電網を拡充すると発表した。

急速充電器「スーパーチャージャー」およびテスラ車所有者が無料で利用できる充電器「デスティネーション・チャージング」を今年第2四半期から全国5カ所に設置する。内訳は、クアラルンプール(KL)に2カ所、プトラジャヤに1カ所、ペナン州セベラン・プライに1カ所、パハン州クアンタンに1カ所となる見込みだ。

テスラは同日、セランゴール州のタウンシップ「ガムダ・コープ」の駐車場にスーパーチャージャー6基とデスティネーション・チャージング18基を設置したと発表した。これにより同社がマレーシア国内に現時点で設置しているEV充電器数は、スーパーチャージャーが7カ所・36基、デスティネーション・チャージングが9カ所・55基となった。
(ポールタン、ビジネス・トゥデー、3月20日)