国民生活を支援、アンワル首相が6つの緊急措置を発表

【プトラジャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は独立記念日を控えた8月30日、プトラジャヤ国際会議センターで演説し、国民にのしかかる生活費負担を軽減するため、来年度予算の上程を待たず、6つの措置を9月1日付で導入すると発表した。アンワル氏は「生活費の圧力は10月まで待てない。企業も成長の必要があり、10月まで待てない」と緊急導入の理由を述べた。

レギュラーガソリン「RON95」補助金支給の制度では、購入上限を月200リットルから、当初の300リットルに戻す。補助ディーゼル油の上限は月300リットルから400リットルに増やす。

学校保守のための来年の予算枠は15億リンギと、50%増やす。公立校、中国語・タミル語の国民学校、宗教学校、イスラム教の寄宿制学校が対象。

「国民のためのAI」プログラムでは、18-30歳の国民に支援対象を広げ、必要課程を修了した者に3カ月間、チャットGPTなどAIツールの無料利用権を与える。

公共医療機関には10億リンギの予算を充て、診療記録の電子化、インターネット接続改善を推進し、病院での患者の待ち時間の削減を図る。

デジタルインボイス導入が免除される事業者を、年商100万リンギ以下から、300万リンギ以下に変更する。

零細事業者に対する少額金融の基金を50億リンギから60億リンギへ増やす。露天商、ナイトマーケットの店舗経営者、自宅作業の女性などを支援するため2億リンギの予算を新たに組む
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・サン電子版、マレー・メイル、8月30日)

ヘイズが悪化、クチンなどサラワク州6カ所で「危険」レベルを観測

【クアラルンプール】 ヘイズ(煙害)がサラワク州を中心に各地で悪化しており、マレーシア大気汚染指数管理システム(APIMS)のデータによると、1日午前8時時点でサラワク州の観測地6カ所で大気汚染指数(API)が「危険」レベルに達した。中でもセリアンでは、最高値の「408」を記録した。

APIは、▽0ー50が「良好」▽51ー100は「中程度」▽101ー200は「不健康」▽201ー300は「極めて不健康」▽300以上の数値は「危険」ーーとなっている。
セリアンのほか「危険」レベルを計測したのは、▽クチン(407)▽サマラハン(372)▽スリ・アマン(361)▽サリケイ(333)▽シブ(309)――の5カ所。また「極めて不健康」も▽ムカ(234)▽ビントゥル(232)▽サマラジュ(225)――の3カ所で観測した。

「不健康」は、サラワク州及びラブアンでは▽ミリ工業訓練校(187)▽ミリ(180)▽カピット(178)▽ラブアン(167)▽リンバン(166)――の5カ所で観測。サバ州でも▽キマニス(156)▽ケニンガウ(156)▽タワウ(132)――の3カ所、半島部ではセランゴール州のジョハン・セティアで「123」を観測した。
(マレー・メイル、ボルネオポスト、9月1日)

【総点検・マレーシア経済】第554回:アンワル首相は「台湾武力統一」を容認したのか

第554回:アンワル首相は「台湾武力統一」を容認したのか

8月16日、カタールの放送局アルジャジーラがアンワル首相のロングインタビューを放送しました。タイトルは「偽善的な世界秩序における独立外交 (Independent Diplomacy in a Hypocritical World Order)」。この中で、アンワル首相が中国の武力による台湾統一を容認するかのような発言をしたことがニュースになっています。

タイトルの通り、インタビューのテーマは、マレーシアが米中対立の中でどのように中立的な外交姿勢を保っているか、という点です。この中で、インタビュアーが次のように問いかけました。「世界の多くの国は台湾を中国の一部と認めていますが、台湾の人々は北京による統治を望んでいません。これをどう考えますか」と。

アンワル首相は、そこには歴史的な経緯がある、と答えます。しかし、結論として「台湾は中国の一部と考えています。以上。(I see Taiwan as part of China, period.)」と述べています。

インタビュアーが食い下がります。「中国は、平和的な再統一がうまくいかない場合には武力行使の権利を留保するとしています。それを非難しますか」と。

アンワル首相は答えます。「マレーシアを例に答えましょう。1つの州が離脱を決めたと。我々は軍事力(force)を使うか?私は国の尊厳と統一を守ると思いますよ」

インタビュアーが確認します。

「つまり、あなたは軍事力を使うと?」

「はい。そうしなければ、国は分裂する……あなたは私に何を言わせたいのですか?」

これは日本人が一般的に考えるような「インタビュー」ではありません。かなり強い主張をインタビュアーがぶつけ、回答に反論し、矛盾を突き、相手を追い込むような世界標準のスタイルです。

その後、この件について、アンワル首相は8月20日に記者団に対し、「一つの中国政策は(国交を回復した)ラザク時代からだ。この政策は維持されており、われわれはそれを実践している。そして当然、平和的な道を探すべきだと考えている」と述べました。

マレーシア政府の台湾に対する立場は、政権によって揺れてきました。

2016年にナジブ首相が訪中した際の共同声明では一つの中国という政策を維持し「両岸関係の平和的発展と中国の平和的統一を支持する」と述べました。

2018年のマハティール首相の訪中では、一つの中国という政策を維持するとだけ述べ、統一については語りませんでした。

2024年のアンワル政権下での李強首相の訪馬では一つの中国という政策の維持に加えて「マレーシアは、中国が国家統一を実現するためには、台湾が中華人民共和国の不可侵の一部であることを認識しており、台湾の独立を求めるいかなる主張も支持しない」と踏み込みました。2025年の習近平国家主席訪馬の際の声明でも、ほぼ2024年の立場を繰り返しました。

つまり、「一つの中国」というマレーシアの立場自体は一貫しています。ただし、その先の表現は政権ごとに異なり、ナジブ期には「平和的統一の支持」が語られ、マハティール期には統一への言及が消え、アンワル期には「平和的」の語が落ちています。

今回のアンワル首相の発言は、2024年および2025年の共同声明と整合的です。中国の台湾武力統一に直接的に言及したのではなく、もしマレーシアならば、と語ったものです。それでも言い過ぎたと思ったのか、直後に「何を言わせたいのですか?」と言葉を濁しています。

では、なぜアンワル政権は2024年に中国に対して一歩譲歩したのでしょうか。2024年は台湾で頼清徳総統が就任、2025年にマレーシアと中国の国交樹立50周年を控えていました。。

アンワル首相は、台湾問題での立場変更を比較的コストの低いカードとみていた可能性があります。こうした大国への譲歩は、小国マレーシアのバランス外交において不可避な代償です。実際、2025年の米馬相互貿易協定(ART)でも、経済安全保障面で大幅な妥協を行っています。

以上のように、今回のアンワル発言は従来の立場から逸脱したものではなく、譲歩自体は2024年の時点で行われていました。中立外交は「孤高」に映りがちですが、実際には全方位に適切に「媚びる」技術こそが求められるのです。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

 

【イスラム金融の基礎知識】第599回 バンク・イスラムの会長が交代

第599回 バンク・イスラムの会長が交代

Q: バンク・イスラムの新会長に就任した人物は?

A: マレーシアのバンク・イスラムが証券取引所に提出した書類によると、6年間会長を務めた元財務省・運輸省事務次官のイスマイル・バカール氏が8月22日に退任し、新たにワン・モハマド・ファズミ氏が27日付で独立非執行会長(independent non-executive chairman)に着任した。

ファズミ氏は60歳のマレーシア人で、オーストラリアのRMIT大学で経済学の学士号を取得、その後は米ペンシルベニア大学やオックスフォード大学では経営学を学んだ。その後、30年以上にわたりマレーシアの金融業界に携わってきた。主要な経歴としては、民間ではメイ・バンクやRHB銀行の上級管理職、チューリッヒ・タカフル・マレーシアやチューリッヒ・ゼネラル・タカフル・マレーシアなどの取締役、日系銀行のマレーシア現地法人の会長などを歴任した。政府系金融機関ではアグロバンクの社長兼CEO、マレーシア開発銀行の独立非執行取締役、さらにラブアン金融サービス庁の会長の経験もある。

長年のキャリアの中でもイスラム金融への関わりが深く、イスラム金融専門家公認協会のイスラム金融公認専門家の資格を有する。また、アグロバンク在籍中の2016年には、グローバル・イスラム金融アワードの最優秀CEO賞を受賞した。このときは、アグロバンクも農業分野におけるイスラム式のマイクロファイナンスを推進した功績で最優秀イスラム金融事例賞を授与されている。

独立非執行会長とは日本ではあまり聞きなじみのない役職だが、取締役会の議長であるが会社や株主から独立しており、会社の日常的な業務を行わない非常勤的な立場である。バンク・イスラムのウェブサイトでは、すでに同氏について経営陣の紹介ページにて最初に取り上げている。同職が最高職であることを示すものである。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

国交省、KLで老朽水道管の更新を実証展開

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 国土交通省は27日、道路を大きく掘り返さずに老朽化した水道管を更新する「非開削管更生技術」の実証事業をクアラルンプール(KL)などで実施すると発表した。

事業では、非開削管更生技術の一つであるCIPP(現場硬化管)を用いる。既設管の内側に樹脂を含ませたチューブ状の素材を挿入して硬化させ、新しい管を形成する方法となる。道路の大規模な開削工事が不要なため、都市部での施工に適しており、事業費の削減も期待できる。

今回、上下水道の大手建設コンサルタントの日水コン(本社・東京都新宿区)と、横島(本社・茨城県常総市)で構成する共同事業体を通じて実施。マレーシアの都市部における有用性などを検証するとともに、普及を促進する。

同事業は、「上下水道技術海外実証事業(WOW TOJAPAN プロジェクト)」の一環。2017年度から実施するプロジェクトで、従来は下水道技術を対象としていたが、今年度から上水道技術も対象に追加された。

ASEAN特別気象センター、煙霧で「レベル3」警報を発動

【クアラルンプール】 東南アジア諸国連合(ASEAN)特別気象センター(ASMC)は27日、長期的な乾燥状態を背景に、ASEAN南部でホットスポット(火元)と煙霧の状況がさらに悪化したとして、越境煙霧に対する最高レベルとなる「レベル3」警報を発動した。マレーシアでは南西季節風の影響により、サラワク州西部や半島部西側で煙害や視界不良が続く可能性がある

ASMCによると、24日に米海洋大気庁(NOAA)の人工衛星「NOAA-20」が確認したホットスポットは、インドネシア領カリマンタンで287カ所、同スマトラ島で65カ所で、翌25日にはそれぞれ190カ所、81カ所が確認された。

カリマンタンではホットスポットの集中地域から中程度から濃い煙霧が広範囲に発生しており、特に西カリマンタンから北方向へ移動する越境煙霧が確認されている。南部・中部スマトラでも広い範囲で同様の煙霧が観測された。

マレーシア気象局は、今週は南西風が強まると予測。インドネシア側で発生した煙や煙霧が風に運ばれ、サラワク州西部およびマレー半島西部の一部で視界が悪化する可能性があるとしている。ASMCの最新の煙霧・気象報告でも、西カリマンタンのホットスポットから発生した中程度から濃い煙の帯が北上し、サラワク州西部へ流入していることが確認された。

カリマンタン各地とスマトラ島中・南部のホットスポットからも煙の帯が発生している。西・南カリマンタン、スマトラ島中・南部、西サラワクの複数の大気質観測地点では、「不健康」から「危険」水準の大気汚染が記録された。

マレーシア気象局は、対象地域の住民に対し気象状況や警報について同局の公式ウェブサイトやSNSで最新情報を確認するよう呼びかけている。また、気象情報を提供するスマートフォンアプリ「myCuaca」の利用も推奨している。「不健康」レベルは28日午前11時時点で20カ所で観測されている。
(ベルナマ通信、ビジネス・トゥデー、8月27日)

KLIA2で羽田発航空機の車輪格納部内から若い男性遺体

【クアラルンプール】 27日午前6時55分ごろ、クアラルンプール新国際空港ターミナル2(KLIA2)に駐機していた航空機の車輪格納部内で身元不明の若い男性の遺体が発見された。午前6時半ごろ到着した羽田発のエアアジア便とみられ、警察が身元や死亡原因などを調べている。

警察によると、機体右側の格納部付近を点検していた整備担当者が、異臭に気づき、うつ伏せで倒れている男性を発見したという。死後72時間以上経過しているとみられ、腐敗が進んでいたものの、目立った外傷はなかった。司法解剖を行い、詳しい死因を調べている。

20歳前後とみられ、身元がわかるものは所持していなかった。薄青色のジーンズに、白いパーカーを着用しており、パーカーの前面に「Oakley」の文字、背面には龍の図柄が入っていた。茶色の革ベルト、靴下、黒いスポーツシューズも身に着けていたという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、エッジ、8月27日)

補助金なし「RON95」を3.82リンギに引き上げ、8月27日から

【クアラルンプール】 財務省は26日、8月27日―9月2日の1週間の燃料小売価格を発表。レギュラーガソリン「RON95」の補助金なし価格を、前週の1リットル当たり3.77リンギから5セン引き上げ3.82リンギにする。補助金適用外の「RON97」の価格は4.25リンギから15セン引き上げ4.30リンギとする。

補助金なし「ユーロ5 B10」および「B20」ディーゼルの小売価格も4.67リンギから5セン引き上げ、4.72リンギとする。「ユーロ5 B7」ディーゼル燃料も4.87リンギから5セン引き上げ、4.92リンギとする。

一方、新ガソリン補助金制度「ブディ・マダニRON95(BUDI95)」適用のガソリン価格は1.99リンギで据え置く。新ディーゼル補助金制度「ブディ・マダニ・ディーゼル」適用による「B10」および「B15」ディーゼル価格も2.10リンギで維持する。

財務省は声明の中で、値上げについて米国、イスラエル、イラン間の紛争に関連したホルムズ海峡を通る石油輸送の継続的な混乱によるものだと説明。「西アジアにおける紛争が解決されず、ホルムズ海峡を通る石油の流れが正常に戻らない限り、石油製品価格は今後も大幅に変動すると予想される」と述べた。
(ポールタン、フリー・マレーシア・トゥデー、8月19日)

ECプラットフォームへの監督強化、商品への苦情受け

【プトラジャヤ】 電子商取引(EC)サイトで販売されている商品に対し多数の苦情が寄せられていることから、アンワル・イブラヒム首相は26日の閣議で、通信省と財務省にECプラットフォームの監督強化を指示した。ファーミ・ファジル通信相が閣議後の会見で発表した。

マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)には25年1月以降、1,964件の苦情がECサイトに関し寄せられており、191件は電気・電子製品に関する苦情だった。消費者以外に、EC運営者、実店舗を持つ事業者からも苦情が寄せられた。

一部のECプラットフォームは国外に住所があり、マレーシア登録の法人を持たない。こうしたプラットフォームに対し登録義務付けなどの措置を検討する。

電気・電子製品の品質面では、工業標準の研究機関である省傘下のSIRIM認証を得ていること、ハラル製品は国内基準を満たしていることを確保する。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、フリー・マレーシア・トゥデー、8月26日)

イスマイルサブリ前首相の公判開始、巨額の資産隠しで

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 イスマイル・サブリ前首相が巨額の資産を申告しなかった罪に問われた裁判が27日、クアラルンプール下級裁判所で始まった。マレーシアで首相経験者の刑事訴追は、ナジブ・ラザク氏、ムヒディン・ヤシン氏に続き3人目となる。なおイスマイル氏は罪状を否認している。

発端はイスマイル氏の元上級側近4人の汚職事件。マレーシア汚職摘発委員会(MACC)は2025年2月に4人を逮捕すると共に、複数の住宅や「セーフハウス」と呼ばれる隠し拠点の捜索を行い、外貨現金約1億7,000万リンギおよび純金塊16キログラム(約700万リンギ相当)を押収した。

この捜査の一環としてイスマイル氏はMACCの要請に基づき資産申告を行っていたが、MACCおよび検察側は、「資産申告の中に実際には保有している膨大な資産が含まれておらず、故意に開示を怠った」としてMACC法違反で立件した。

押収された現金は、マレーシア通貨1,477万リンギのほか、613万シンガポールドル、146万米ドル、300万スイスフラン、1,216万ユーロ、3億6,300万円、5万250英ポンド、4万4,600ニュージーランドドル、3,475万UAEディルハム、35万2,850豪ドル――の多種の外貨に及ぶ。

初公判は当初8月7日に予定されていたが、イスマイル氏の体調不良のため延期されていた。有罪となった場合、最長5年の禁錮刑および最大10万リンギの罰金が科される可能性がある。イスマイル氏の保釈金は30万リンギ。