マラッカのホテル、競争激化で売却案件相次ぐ

【クアラルンプール】 世界遺産都市マラッカで、ホテル業界の競争が激化。新規開業の一方で、複数のホテルが売りに出されているという。

経済紙「エッジ」によると、売りに出されているホテルの一つが5つ星ホテルだった「エクアトリアル・メラカ」だ。コングロマリットのサイム・ダービーや、マラッカ州開発公社などが出資する会社(SMSI)がもともと所有していたが、政府系投資会社ペルモダラン・ナショナル(PNB)が2016年に買収。2019年6月末に大規模な改装工事のため閉鎖され、その後再開していない。22階建て494室で、敷地面積は13万6,077平方フィート。PNBはコメントを控えているものの、売却価格は1億3,000万リンギ前後とみられる。

ほかにも、▽エクアトリアルと同じく旧市街に位置するマコタ・ホテル(419室)▽アクテリア・メラカ・ホテル(241室)▽ミッドシティ・ホテル(96室)――などが売却対象とされている。

その一方で、▽パークロイヤル・Aファモサ ・マラッカ・リゾート(428室)▽デュシット・プリンセス・マラッカ(旧ラマダプラザマラッカ、294室)▽バーキン・インターナショナル・ホテル(526室)――などが開業した。

マラッカの観光業は、新型コロナパンデミック後、急速に復調しているものの、ホテルの平均稼働率は現在約50%で、2016年の66%を大きく下回っている。過去10年間の客室供給の大幅な増加と、民泊など代替宿泊施設の増加の影響とみられる。
来年のマレーシア観光年(ビジット・マレーシア・イヤー)を通じ稼働率の回復が期待されている。
(エッジ、12月16日)

KLセントラル―JBセントラル間の高速電車、1月から増発

【クアラルンプール】 マレーシア国鉄(KTMB)は、ゲマス―ジョホールバル(JB)間(全長192キロメートル)の電化複線化の完了に合わせて1日2往復の運行を開始したクアラルンプール(KL)セントラル―JBセントラル間を結ぶ高速電車運行サービス(ETS3)を1月1日から4往復に増便すると発表した。

運行スケジュールはKLセントラル発が7時55分、15時15分、17時35分、21時10分で、JBセントラル着は12時15分、17時35分、21時55分、1時30分。JBセントラル発は8時40分、12時45分、16時20分、20時30分で、KLセントラル着が13時00分、17時05分、20時40分、0時50分となっている。

また利便性向上のため、パダンべサル―JBセントラル間の直通運転も1日往復運転する。運行スケジュールはパダンべサル発が12時05分、JBセントラル着は22時30分、JBセントラル発は7時35分、パダンべサル着は17時53分となっている。

このほか東海岸線ゲマス―クアラリピス間の「シャトル・ティムラン」についても1往復増やして3往復とする。
(ポールタン、マレーシアン・リザーブ、12月16日)

ダイハツ系プロドゥア、新型BセグメントSUV「トラズ」を発売

【クアラルンプール】 ダイハツ系プルサハアン・オトモビル・クドゥア(プロドゥア)は17日、新型Bセグメントスポーツ車(SUV)「トラズ(Traz)」を発売した。

トヨタ「ヤリス・クロス」のリバッジモデルで、サイズは「アティバ」と「アルス」の中間。プロドゥアの既存SUVシリーズを補完する位置付けとなる。都市部のドライバーやファミリー層をターゲットとする。トランク容量は471リットルでライバルとなるプロトン「X50」より141リットルも大きい。

エンジンは2NR-VE型1.5リットルCVTを搭載。パワーはターボ付きの「X50」には及ばないものの最大出力106PS/6,000rpm、最大トルク138Nm/4,200rpmを発生する。燃費は1リットル当たり21.3キロメートル(km)で同16.4kmの「X50」を上回る。車体カラーは、▽クランベリーレッド▽アイボリーホワイト▽グリッターリングシルバー▽グラナイトグレー――の4色を用意した。グレードは「X」と「H」で、価格は保険料込みでそれぞれ7万6,100リンギ、8万1,100リンギとなっている。

プロドゥアのザイナル・アビディン社長兼最高経営責任者(CEO)は、1月以降の「トラズ」販売について、月間約1,900台を見込んでおり、独自のニッチ市場を確立すると予想していると述べた。

「トラズ」の12月の生産台数は最大で約1,000台で、来年1月からは月産1,900台に達する見込み。開発費は5億6,330万リンギ。セランゴール州ラワンのスンガイ・チョーにあるプロドゥア・マニュファクチャリングの工場で生産されており、部品の現地調達率は95%に達している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ポールタン、12月17日)

日本電気硝子、マレーシアで全電気溶融炉による医薬品容器用管ガラスを量産へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本電気硝子(NEG、本社・滋賀県大津市)は、グループ会社の日本電気硝子マレーシアが12月より世界で初めて全電気溶融炉による医薬品容器用管ガラスの量産を開始すると発表した。

NEGの全電気溶融炉は独自の電気溶融技術を活用したもので、ガラスに電極を挿入して直接通電し加熱・溶融する。主流であるガス燃焼炉に比べエネルギー利用効率に優れ、燃焼ガスによる排熱も減らすことができる。革新的な全電気溶融炉技術と再生可能エネルギーの活用により、医薬品容器用管ガラス製造におけるCO2排出量を最大90%削減することが可能となるという。

NEGは高い化学的耐久性を持つホウケイ酸ガラスで製造された医薬品容器用管ガラスの主要サプライヤーで、同社の医薬品容器用管ガラスは、ヒ素などの環境負荷物質を含まないのが特徴。バイアル・アンプル用途をはじめ、GLP-1製剤などのバイオ医薬品を中心に需要が拡大するシリンジ・カートリッジ用途にも広く使用されている。

GLP-1製剤市場は年間約33%成長しており、それに伴ってシリンジ・カートリッジの需要も急速に増加、欧米はもちろんインドや中国などの新興市場でも拡大が見込まれるという。

内閣改造人事を発表、投資貿易産業相にはジョハリ前農園相

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 アンワル・イブラヒム首相は16日、空席となっている4つの閣僚ポストの補填を含めた小幅な内閣改造人事を発表した。

上院議員任期満了に伴うザフルル・アブドル・アジズ氏の退任により空席となっていた投資貿易産業相ポストには、ジョハリ・アブドル・ガニ農園・一次産業相(統一マレー国民組織=UMNO)が横すべりで就任することが決まった。ジョハリ氏の後任の農園・一次産業相ポストには同じUMNOのノライ二・アハマド氏が就任する。

5月に行われた人民正義党(PKR)役員選に敗れて辞任したラフィジ・ラムリ氏の後任となる経済相ポストには、同じPKRのアクマル・ナスルラー氏が就任する。

同じくPKR役員選に敗れて辞任したニック・ナズミ・ニック・アハマド氏の後任の天然資源・環境持続可能性相ポストには、アーサー・ジョセフ・クルップ氏(サバ団結党=PBRS)が就任する。

歳入の40%の権利を巡るサバ州と連邦政府の対立から辞任したイーウォン・ベネディック氏の後任となる起業家開発協同組合相ポストには、スティーブン・シム人的資源相(民主行動党=DAP)が横すべりし、シム氏の後任となる人的資源相ポストにはR.ラマナン氏(PKR)が就任する。

青年スポーツ相のハンナ・ヨー氏(DAP)は、ザリハ・ムスタファ氏(PKR)に代わって連邦直轄地担当首相府相に横すべりし、青年スポーツ相の後任にはモハマド・タフィク・ジョハリ氏(PKR)が就任する。

サバ・サラワク州問題担当首相府相ポストには、アルミザン・モハマド・アリ氏(サバ国民連合=GRS)に代わってムスタパ・サクムド氏(PKR)が就任する。

宗教問題担当首相府相ポストには、モハマド・ナイム氏(上院議員)に代わって同じ上院議員のズルキフリ・ハサン氏が就任する。

大手ソーシャルメディア、1月から活動に国内法適用

【クアラルンプール】 マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)は15日、来年1月1日から、ユーザーが800万かそれ以上のソーシャルメディア、インターネットメッセージングプラットフォームはアプリサービス提供者として登録されると発表した。

これら大手ソーシャルメディア事業者は国内法の適用を受け、規制の枠組みの下に置かれる。通信マルティメディア法の一部条項の施行に伴う措置。ユーザー、特に子どもの保護について明確な責任を持たせるためで、ワッツアップ、テレグラム、フェイスブック、インスタグラム、ティックトック、ユーチューブが適用を受ける。

マレーシアでは今年初めから大手ソーシャルメディア事業者に対し国内でのサービス提供にMCMCからの免許取得を義務付けており、これに伴う措置だ。アプリサービス提供の免許保有者として登録済みの事業体は、免許が切れた時点で改めて登録する。
(エッジ、ザ・スター電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、12月15日)

ニトリ、KLの「マイタウン」にマレーシア13号店を出店へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 ニトリホールディングス(本社・札幌市)は、マレーシア13号店を12月19日にクアラルンプール(KL)のショッピングセンター「マイタウン」内にオープンすると発表した。ニトリグループの店舗としては1,052店舗目の出店となる。

ニトリの声明によると、「マイタウンショッピングセンター店」は「マイタウン」のレベル2に開店する。店舗面積は約340坪で、営業時間は午前10時―午後10時となっている。ニトリは現在マレーシアで、▽ららぽーとBBCC(KL)▽パビリオン・ブキジャリル(KL)▽IOIシティモール(プトラジャヤ)▽ワン・ウタマ(セランゴール州)▽ザ・モール・ミッドバレー・サウスキー(ジョホールバル=JB)▽トッペン(ジョホール州テブラウ)▽スリアKLCC(KL)▽ガーニー・パラゴン(ペナン州)▽NUセントラル(KL)▽パラダイム・モール(JB)▽アマン・セントラル・モール(ケダ州アロースター)▽i-シティ・シャアラム(セランゴール州)――に計12店舗を構えている。

「マイタウン」は、KL中心部に位置する大型ショッピングモールで、専門店や飲食店、エンターテインメント施設が揃っており、家族連れや若者を中心に幅広い客層に人気がある。

バティックエア、スバン空港発着の新規4直行便路線を開設

【スバン】 バティック・エアは、セランゴール州スバンのスルタン・アブドル・アジズ・シャー空港(スバン空港)からシンガポール、ジャカルタ、ジョホールバル(JB)、ランカウイへの4つの直行便路線を新たに開設した。

シンガポールとジャカルタへは12月8日、JB線は12月11日、ランカウイ線は12月12日から運航が開始された。運航はシンガポール、ジャカルタ、ランカウイがデイリー、JBは1日2便になる。チャンドラン・ラマ・ムティ最高経営責任者(CEO)は12日行われた就航式典で「今回の新規路線就航は政府のスバン空港再開発計画を支えるもの」と述べた。バティック・エアはスバン空港からこのほか、ペナン、コタバル、コタキナバル、クチン、バンコクへの路線を運航している。

スケジュールは、シンガポール線の「OD810」便がスバン発が7時30分、シンガポール着が8時35分。「OD811」便はシンガポール発が9時35分、スバン着が10時40分となっている。ジャカルタ線の「OD348」便はスバン発が9時、ジャカルタ着が10時10分。「OD349」便はジャカルタ発が11時、スバン着が14時05分。ランカウイ線の「OD1402」便はスバン発が11時30分、ランカウイ着が12時40分。「OD1403」便はランカウイ発が13時30分、スバン着が14時35分。

1日2便のJB線は、スバン発が14時45分と19時、JB発が16時25分と20時50分で、フライト時間はいずれも1時間になる。
(ザ・スター、ベルナマ通信、12月12日)

サンウェイ系11番目のサンウェイスクエアモールが正式開業

【ペタリンジャヤ】 サンウェイの小売部門であるサンウェイ・モールズは12日、セランゴール州に「サンウェイ・スクエアモール」を正式に開設した。

新モールは18億リンギ規模の大規模複合開発プロジェクト「サンウェイ・スクエア」の一角に位置。4階建てで、延べ床面積32万平方フィートとなる。人気カフェ「ケニー・ヒルズ・ベーカーズ」を併設した24時間営業の書店「ザ・ライブラリーbyブックエクセス」や、中国系雑貨店「KKV」、ボルダリング施設など130店舗で構成。すでに全店舗の賃貸契約が成立しており、現在95%の店舗が営業しているという。3,000台分の駐車場も備える。

中核となるスーパーマーケットとしては「ビレッジ・グローサー」が入店。スーパーを運営するザ・フード・パーベイヤーによると、同スーパーとしては今年4店舗目の新規出店になるという。

新モールは、サンウェイ・モールズにとって11番目のモールとなった。HCチャン最高経営責任者(CEO)によると、2025年には、全モールで新規・既存を合わせ計500店舗の改装・増築が行われたという。また今後、サンウェイ・イポー(ペラ州、2027年第4四半期)、サンウェイ・ピア(セランゴール州ポートクラン、2028年第1四半期)、サンウェイ・スレンバン・セントラル(ネグリ・センビラン州、2028年)、サンウェイRTS(ジョホール州ジョホールバル、2029年)の開業を予定しており、計15モール体制への拡大を目指す。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、12月12日)

【総点検・マレーシア経済】第536回 米マレーシア貿易協定解説(3)

第536回 米マレーシア貿易協定解説(3)

10月26日、ASEAN首脳会議に合わせてマレーシアを訪問したトランプ大統領とアンワル首相の間で「米国・マレーシア相互貿易協定(Agreement between the United States of America and Malaysia on Reciprocal Trade)」が締結されました。

この協定の中で批判の矛先となっている米国の経済安全保障へのマレーシア側の協力義務の中で目を引くのは、第5.3条3項に書かれている内容です。マレーシアが「米国の本質的利益を危うくする」相手国と新たな自由貿易協定または優遇経済協定を締結した場合、米国側は本協定を打ち切り、かつ米国が定めた相互関税を課す権利を持つというものです。

例えば、マレーシアがイランとFTAを締結しようとした場合、米国がイランを「米国の本質的利益を危うくする」相手と判断すれば、米馬貿易協定は打ち切りにできることを意味します。これは、マレーシアが自由貿易協定を結べる相手国を米国が実質的に制限できることを意味します。

ただ、この条文にもマレーシア側が交渉過程で書き込んだと思われる単語があります。「もしマレーシアが、米国の本質的利益を危うくする国と、新たな二国間の自由貿易協定または優遇的経済協定を締結した場合(If Malaysia enters into a new bilateral free trade agreement or preferential economic agreement with a country that jeopardises essential U.S. interests)」とありますが、「自由貿易協定」の前に「新たな二国間の(new and bilateral)」という限定がついているのです。これにより、既存のFTAの更新(newではない)や多国間協定(bilateralではない)は米国の干渉の対象にならないことになります。

実際、この協定が結ばれた直後の10月28日、クアラルンプールで「ASEAN・中国FTA3.0」への署名が行われました。この協定は既存かつ多国間の協定であるため、この条文の対象外となります。

ザフルル大臣は、米馬貿易協定についての様々な批判に対して、当初の草案は「さらに悪かった(worse)」と明かしています。マレーシア側が交渉過程で条文に細かな制約を付けて精一杯抵抗したと筆者は想像します。ただし、こうした条文上の努力が実施に問題となった際にトランプ政権に通用するかは疑問が残ります。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp