【従業員の勤労意欲を高めるために】第925回:災害が経済成長を促すこともある?――復興とレジリエンスの違い

925回:災害が経済成長を促すこともある?――復興とレジリエンスの違い

前回は、パンデミックに強い社会をつくるためには、教育だけでなく電力インフラが重要であるという話でした。今回は、自然災害と経済成長の関係についてです。

地震、洪水、台風などの自然災害は経済に悪影響を与えると考えられています。しかし、実は研究によっては「災害後に経済成長率が高まる」という結果も報告されてきました。一見すると矛盾しているように見えますが、どちらが正しいのでしょうか。

拙稿では、1996年から2022年までの108カ国のデータを用いて、自然災害が経済成長に与える影響が、国のインフラ整備状況によって変わるのかを分析しました。特に注目したのは、電力アクセス率です。

分析の結果、電力インフラが極めて未整備な国では、災害の発生後に経済成長率が高まる傾向が見られました。しかし、これは災害が良い影響を与えているという意味ではありません。家屋や道路が破壊された後、それらを再建するために公共投資や援助資金が投入され、一時的にGDPが押し上げられている可能性があります。

一方で、一定以上の電力インフラが整備された国では、災害と経済成長との間に有意な関係は見られませんでした。災害が起きても経済全体への影響が限定的になり、「復興による成長」に依存しなくなるのです。

これは重要な違いです。

災害後にGDPが伸びたとしても、それは必ずしも社会が強くなったことを意味しません。むしろ、被害を受けたものを元に戻すための活動が統計上の成長として観測されているだけかもしれません。本当の意味でのレジリエンス(回復力)とは、災害が起きても経済活動や生活が大きく損なわれない状態を指します。

企業経営にも同じことが当てはまります。

トラブルや危機が発生した後、社員が懸命に働いて業績を回復させることがあります。しかし、それを成功体験として評価し過ぎると、「問題が起きてから頑張る組織」を強化してしまう危険があります。本当に重要なのは、そもそも大きな混乱が起きにくい仕組みを整えることです。

情報システムの冗長化、事業継続計画(BCP)、サプライチェーンの分散、人材育成などへの投資は、平時には目立たないかもしれません。しかし、危機が起きたときに企業の損失を最小限に抑えます。

災害後の急回復は目を引きます。しかし、より望ましいのは、回復を必要としないほど強靭な状態をつくることです。国でも企業でも、真の成長は「復興力」ではなく「レジリエンス」の上に成り立っているのかもしれません。

論文情報は以下。末尾のURLから全文をご覧いただけます。

Kokubun, K. (2026). Natural Disasters and Development Thresholds: Infrastructure, Nonlinearity, and Economic Resilience. Systems, 14(3), 243.
https://doi.org/10.3390/systems14030243

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

 

エアボルネオの運航トラブル、今後数日間続くと注意呼びかけ

【クチン】 サラワク州営航空会社のエアボルネオは、6月5日以降、サバ・サラワク州全域で運航上の問題が発生しており、今後数日間、遅延、欠航、スケジュール変更が発生する可能性があると利用客に注意を呼びかけた。機材整備に問題が発生したため一部の機材が運航できないという。

同社の声明によると、複数の航空機における予定外の技術的な修理作業、継続中の定期整備、および運航上の要件と乗務員の勤務体制が運航遅延の原因。安全を最優先に技術的な対応が必要な航空機は技術者が飛行可能と完全に判断するまで、予防措置として運航から外しているという。

複数の航空機が同時に整備および技術的な修正を受けているため、運航機材は一時的に制限されている。こうした航空機は順次復帰することになるため、今後数日間、さらなるスケジュール変更、欠航、遅延が発生する可能性があるという。

エアボルネオは影響を受ける旅客には直接連絡をとるなどし、早い代替便に振り替えるためチームが24時間体制で対応しているとした上で、旅客に対し空港へ向かう前にフライト状況を確認するよう呼びかけた。最新情報、予約変更、サポートについては、電話(1-300-22-1388=マレーシア国内、+60-82-537 555=国際電話)のほか、問い合わせフォーム(airborneo.com/en/contact-usからも受け付けている。
(ベルナマ通信、エッジ、フリー・マレーシア・トゥデー、マレーシアン・リザーブ、6月8日)

東京都、8月に「マレーシアエコシステム連携プログラム」を開催

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 東京都は、マレーシア・デジタル経済公社(MDEC)と共同で8月に「東京都・マレーシアエコシステム連携プログラム」を開催すると発表。参加企業の募集を開始した。5社程度の参加を見込んでいる。

テーマはデジタル関連(AI、スマートマニュファクチャリング、ヘルステック、グリーンテック、グリーン・トランスフォーメーション、ロジスティック)で、東京のエコシステムの魅力を発信するとともに、マレーシアのエコシステムへの理解を深める。またピッチ登壇機会や現地パートナー獲得に向けたエコシステム訪問・マッチング等を通じて、マレーシア市場への進出を目指す東京のスタートアップを支援する

開催地はクアラルンプールなどで、講演、パネルディスカッション、スタートアップによるピッチのほか、企業訪問ツアー(デジタル関連大手企業、VC、研究機関等)、マッチング(事業連携先になりうる現地大手企業、VC、研究機関等)を予定している。

スズキ「ジムニー」26年版2種と「フロンクス・スポーツ」発表

【クアラルンプール】 スズキ・カーズ・マレーシアと、販売代理店ナザ・イースタン・モータースは、小型多目的スポーツ車(SUV)「ジムニー」の2026年モデル2種と、コンパクトSUV「フロンクス・スポーツ」を発表した。

ジムニーの2種は「オールグリップ・プラス」と、オフロード装備を強化した上位グレードの「ライノ・プラス」。いずれも3ドアで、ジムニーのタフな走行性能を支える「K15B型」1.5リッター直列4気筒エンジンを搭載。4速オートマチック・トランスミッションを採用し、最高出力は102PS、最大トルクは130Nm。また今回、ADAS(先進運転支援システム)が初めて搭載された。

オールグリップ・プラスのボディカラーはツートン仕様2パターンと単色4色の計6パターンを用意。ライノ・プラスはピュアホワイトパール、キネティックイエロー、シフォンアイボリーの3色のみの限定展開となる。

日本からの完全輸入(CBU)で、本体価格(保険料別)はオールグリップ・プラスが15万8,900リンギ、ライノ・プラスが17万3,900リンギとなる。

フロンクス・スポーツは、昨年11月にマレーシア市場初投入された標準モデルのフロンクスに、スポーティな外観を加えた。専用フロントバンパーにブラックアクセントなどが強調されたデザインになっている。標準同様のマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を採用し、K15C型1.5リッター4気筒エンジンに、12ボルトのリチウムイオンバッテリーと統合型スタータージェネレーター(ISG)が組み合わされている。前輪駆動の6速オートマチック・トランスミッションで、最高出力は103PS、最大トルクは138Nmを発揮する。

インドネシアからの完全輸入(CBU)で、本体価格(保険料別)は13万888リンギ。また今回標準モデルの価格(同)も見直し、11万8,888リンギへと約3万リンギ引き下げた。
(カーシフ、6月6日、ポールタン、モタオート、6月5、6日)

大型開発「KL360@メナラGD」が着工、中断案件を再生へ

【クアラルンプール】 クアラルンプール(KL)中心部における複合開発プロジェクト「KL360@メナラGD」の起工式が6日、行われた。10年近く工事が中断していた開発計画が再始動するもので、総開発価値(GDV)13億7,000万リンギと見込まれている。

対象用地は、ジャラン・トゥン・ラザク沿いのMRT(大量高速輸送)ラジャ・ウダ駅隣接地。もともと「M101スカイホイール」として計画され、52階に観覧車を設置した78階建てのツインタワーとなる予定だった。1,511戸の住戸を備え、総開発価値は15億リンギと見込まれていた。開発会社M101ホールディングスが2017年に着工したが、新型コロナ禍による建設遅延や資金難などの影響で、2022―2023年にかけて工事が中断。337人が売買契約(SPA)を締結済みで、契約総額は3億600万リンギ超となっていた。

今回、ネグリ・センビラン州に拠点を置く不動産開発会社GDプロパティーズが開発を引き継ぎ、計画を見直した。新たな開発計画は61階建てで、サービスアパートメント785戸、オフィススイート221室、商業施設20区画に加え、ウェルネス施設などを整備する。中国建築集団のマレーシア法人、チャイナ・ステート・コンストラクション・エンジニアリング(M)(CSCEC)が建設を担当し、2030年の完成を目指している。

マレーシア国内では、同様の放棄開発が社会問題化しており、住宅・地方行政省は2030年までにゼロにするという目標を掲げている。2023年以降、全国で1,576件以上のプロジェクトが再始動され、総開発価値1,482億1,000万リンギ相当の再生に成功したという。
(マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、ザ・スター、6月6日)

マラッカ州選挙、ジョホール州とNセンビラン州の選挙後に実施か

【アローガジャ】 州議会が今年12月30日に任期満了を迎えるマラッカ州のアブドル・ラウフ・ユソー首相は、解散・選挙をジョホール州とネグリ・センビラン州の州議会選挙終了後に行う可能性が高いと述べた。ジョホール州議会は今月1日、ネグリ・センビラン州議会は同5日に解散しており、60日内に選挙が実施される。

アブドル・ラウフ氏は、マラッカ州では急いで州議会を解散する必要はないとした上で、「我々(国民戦線=BN)は両州に追随して解散することはせず、両州の選挙を支援するために党組織を投入する」と言明。「マラッカ州議会解散の時期を決定する前に、両州の選挙の結果を精査する」と述べた。

2021年のマラッカ州議会選挙では、BNが21議席を獲得して州政府を樹立し、希望同盟(PH)は5議席、野党連合・国民同盟(PN)は2議席を獲得した。
(ザ・スター電子版、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月6日)

ショッピングモールへのリサイクル施設設置、6月から義務化

【プトラジャヤ】 ショッピングモールへのリサイクル施設(FPS)の設置が今月から段階的に義務化される。住宅・地方行政省が6日、発表した。

同省によると、FPSの義務化は循環型経済への移行を加速させるための政府の戦略的な取り組みの一環。5日の閣議で合意された。地方自治体は、義務要件を満たさないショッピングセンターに対し、営業許可の保留または取り消しなどの措置を講じることができる。

ただし実際には段階的に導入される。統一的なガイドラインを策定すると同時に、ショッピングモール運営者を対象とした啓発活動や意識向上プログラムを展開。その後、選定された地方自治体で先行パイロット事業を行い、制度の有効性や運用方法を検証したうえで、全国に拡大していく。

国内では1日当たり約3万9,000トンの固形廃棄物が排出されており、政府はリサイクル率向上に向けた取り組みを強化している。
(ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、6月6日)

【総点検・マレーシア経済】第548回:プロドゥア、ハイブリッド車を現地組み立てへ

第548回:プロドゥア、ハイブリッド車を現地組み立てへ

マレーシアの自動車市場でEVの存在感が急速に増しています。2025年のバッテリーEV(BEV)車の販売台数は30,848台と前年から倍増しました。もっとも、自動車販売全体に占める比率は約4%で、タイの20%、インドネシアの15%と比較すると低い水準に留まっていました。

しかし、2026年に入ってその勢いはさらに増しています。4月のBEV販売(登録)台数は5,894台、前年同月比104%増と、文字通り倍々ゲームで伸びています。自動車販売全体に占めるシェアは7%台に達しました。

その立役者がプロトンです。コンパクトハッチバックEV のe.MAS 5の売れ行きが好調で、3月にはBEVとしてマレーシアの月間車種別販売ランキングで初の5位入りを果たし、4月も1,772台を販売して、1〜4月の販売で7位の座を維持しています(表1)。

これに対して、EV市場で苦戦しているのがプロドゥアです。2022年8月にAtiva Hybridの限定的なモニタリングを開始したものの、その後の動きは鈍く、EVに関する大きなアナウンスがあったのは2025年12月、純国産BEV「QV-E」の発売でした。QV-Eはバッテリーを月額RM300程度のサブスクリプションとすることで本体価格をRM80,000に抑えたのが特徴で、ダイハツではなくプロドゥア主導でオーストラリア企業と共同開発したものでした。

ところが問題が生じます。2026年第3四半期に月産3,000台を目指していましたが、実際には4月までの累計販売台数はわずか102台、月間では4月の52台が最高という惨状となりました。背景には生産上の問題があります。2月にザイナル・アビディンCEOが、主に中国の部品サプライヤーが品質基準を満たしていないことを原因として挙げています。

プロドゥアの自動車販売自体は現在も好調で、1〜4月の車種別販売のトップはBezzaの32,386台、3・4・5位にもそれぞれAxia/Myvi/Alzaとおなじみの車種が並んでいます。しかし、プロトンも2位にSaga、6位にSUVのX50、7位にe.MAS、8位にセダンのS70が入っています。ホルムズ海峡危機で燃料補助金の先行きが危ぶまれる中、EV市場での空白はプロドゥアにとって大きな問題になりつつありました。

2026年5月14日、四方敬之マレーシア大使がラワンの工場を訪問した際、ザイナル・アビディンCEOがAtiva Hybridのマレーシア市場への投入を認めました。日本の経済産業省のグローバルサウス補助金を活用して工場を改修し、マレーシアでの生産が行われます。

Ativa Hybridはダイハツ・ロッキーのハイブリッド版で、ガソリンエンジン版は1〜4月にも6,514台を売り上げて12位に入っています。Ativa Hybridはダイハツのシリーズ・ハイブリッド技術を採用しており、街乗り中心のBEVであるe.MAS 5に対して、街乗りでの低燃費と長距離巡航をバランスよくカバーできる点が強みです。

一方、ダイハツの5月14日付プレスリリースでは、Ativa Hybridの現地生産について、ダイハツ独自のハイブリッド技術の生産・販売・顧客ニーズに関する「実証事業」という表現にとどまっています。

いずれにせよ、Ativa Hybridがどのように受け入れられるかは、来年にも予想される「国民車」Myviのフルモデルチェンジの試金石となりそうです。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

 

世界イスラム経済白書、マレーシアが12年連続トップ

【クアラルンプール】 米国のコンサルティング会社「ディナスタンダード」の「世界イスラム経済白書」の最新版(2025/2026年)で、マレーシアは12年連続の首位を維持した。

同白書は、7つの産業セクターを対象に、グローバル・イスラム経済指標(GIEI)を算出・評価する。マレーシアは、ハラル(イスラムの戒律に則った)食品、イスラム金融、ハラル医薬品・化粧品でトップ、メディア・レクリエーション分野で2位、旅行とファッション分野では4位となり、総合で1位になった。

2位以下は、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、インドネシア、バーレーンの順となった。

また白書ではセクターごとに、2024年を基準とした今後5年間の世界市場の成長見通しも示した。ハラル食品は2024年の1兆5,300億米ドルから、2029年には2兆600億米ドルに達すると予測。マレーシアにおける海外からの投資事例として、オタフクソースの1,230万米ドルの調味料工場や、ベーカリーチェーン「パリバゲット」を展開する韓国SPCグループによる2,900万米ドルの工場などが紹介された。

そのほかの分野の成長予測は下記の通り。
イスラム金融:資産5兆9,900億米ドル→9兆7,200億米ドル
ファッション:3,470億米ドル→4,440億米ドル
旅行:2,490億米ドル→4,240億米ドル
ハラル医薬品:1,120億米ドル→1,460億米ドル
ハラル化粧品:920億米ドル→1,240億米ドル
メディア・レクリエーション:2,760億米ドル→3,640億米ドル
(ザ・スター、6月5日、ビジネス・トゥデー、6月3日、発表資料)

米通商代表部の関税案、投資貿易産業省が説明

【クアラルンプール】 米通商代表部(USTR)が2日、強制労働により生産された可能性のあるモノの輸入を巡り、マレーシアを含む60カ国・地域に対し10-12.5%の関税を提案したことについて、投資貿易産業省(MITI)は4日声明を発表。「マレーシアで強制労働が行われているとの意味ではなく、強制労働により第3国で生産されたモノ、原料をより分ける輸入禁止法をマレーシアがまだ制定していないとの意味だ」と説明した。

マレーシアが12.5%ではなく、低い方の10%の税率を提案されたことは、米との相互貿易協定でマレーシアが強制労働品の輸入を禁止すると約束したことが評価された結果だという。

MITIによれば、10%の税率は最終決定ではなく、USTRの調査完了およびマレーシアと米側との交渉を経て最終的に決まる。施行は、通商法122条に基づく全世界一律の10%関税が7月24日に期限を迎えた後になるという。
(ビジネス・トゥデー、ザ・スター電子版、マレーシアン・リザーブ、エッジ、6月4日)