半島部の電気料金、来年上半期は据え置き

【プトラジャヤ】 マレーシア半島部の電気料金は、不均衡価格転嫁(ICPT)制度の実施に伴い、2025年上半期(1―6月)中は据え置かれることが決まった。

エネルギー移行・水利転換省(PETRA)は、対象を絞った電気補助金の実施を通じて国内消費者が引き続き保護されるようにするために、政府が2023年12月13日に下した決定だと指摘。「2025年1月から6月までの政府による電力補助金の総額は23億8,800万リンギに上る」とした。

現在の料金体系では、家庭向けは600キロワット時(kWh)未満または月額請求額220リンギ未満の消費者690万人に対しては1kWhあたり2センの割引、1,500kWh未満の消費者130万人に対しては据え置き、1,500kWhを超える消費者8万5,000人に対しては1kWhあたり10センの割増し料金を課している。

一方、商業および工業ユーザーに対しては、中電圧および高電圧ユーザーには16セン/kWh、低電圧ユーザーや特定の農業セクターのユーザー、および上下水道事業者に対しては2.7セン/kWhの割増料金を課している。

政府はまた、 2025年から2027年までの第4次規制期間(RP4)の平均基本電力の設定にも同意した。インセンティブベース規制(IBR)の枠組みの下で、政府系電力会社、テナガ・ナショナル(TNB)の半島部における電気料金が引き上げられる。
(エッジ、12月20日)

子供の安全へソーシャルメディアの行動規範を発表=MCMC

【クアラルンプール】 マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)は20日、ソーシャルメディア向けの行動規範を公表した。サービスプロバイダーがオンラインの安全性とセキュリティを維持するためのベスト・プラクティス(最良の事例)などを規定したもので、子供らの安全確保を重視し、年齢確認措置などが盛り込まれた。

MCMCは今年8月から、800万人以上のマレーシア国内ユーザーを抱えるすべてのソーシャルメディアおよびメッセージ・サービスを対象に、ライセンス制導入を開始したが、行動規範でも改めて2025年1月1日からの正式施行を明記。表現の自由とプライバシーの権利を十分に考慮しつつ、有害コンテンツをタイムリーに特定、評価、削除するための明確なシステムや手順を確立するよう求めている。

また、親が子供のオンライン活動を監視および管理するためのツールを実装することも求められる。これらのツールには、画面時間を制限し、有害または年齢にふさわしくないコンテンツをブロックするオプションが含まれている必要がある。

サービスプロバイダーは、有害コンテンツの削除記録を保持し、コンプライアンスを評価するために定期的な監査を実施し、MCMCに半年ごとの安全性レポートを提出することも義務付けている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、エッジ、12月20日)

【総点検・マレーシア経済】第511回 データセンター市場で飛躍するマレーシア

第511回 データセンター市場で飛躍するマレーシア

12月6日付けのThe Edge Web版に「躍進を続けるマレーシアのデータセンターハブ(The rise and rise of the Malaysian data centre hub)」と題した記事が掲載されました。2018年から23年にかけて年率70%で成長するASEAN5カ国(マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)のデータセンター市場の中でも、マレーシアはその成長を主導しているとのことです。

マレーシアには過去2年間で990億リンギット(217億米ドル)のデータセンター投資が発表され、さらに1,490億リンギットの投資が計画されていること、アマゾンは2038年までに292億リンギの投資を表明し、GoogleとMicrosoftもそれぞれ20億ドル以上の投資を計画しているとThe Edgeは伝えています。

マレーシアがデータセンターのハブとして選択される最大の理由は、運用コストの安さです。図はシンガポールを100とした場合のASEAN各都市の電気料金、水道料金、工業団地賃料、中堅エンジニアの賃金を示したものです。各都市には一長一短がありますが、クアラルンプールは総合的にコストが安く、特にデータセンターの運用コストの30〜40%を占めると言われる電力料金の安さが目立ちます。

旺盛なデータセンターの建設需要に対し、ジョホール州は今年1月~5月に申請された14件の建設申請のうち4件を電力・水の節減策が不十分として却下したと伝えられています。マレーシアのデータセンター建設はより良いものを選別するフェイズに入っています。

さて、マレーシアのデータセンター誘致を仕切っているのはマレーシア・デジタルエコノミー公社(Malaysia Digital Economy Corp.: MEDC)ですが、この組織は以前はマルチメディア開発公社(Multimedia Development Corp.: MDC)と呼ばれていました。1996年に開始されたマルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)計画を統括していたためです。プトラジャヤに隣接するサイバージャヤもこの時に情報産業の中核都市となるべく建設が開始されました。その後、MSCは必ずしも最先端のIT企業を誘致することはできていませんでしたが、ここにきて地域のデータセンターハブというかたちでその努力は花開くことになりました。

もう一つ、アジア通貨危機で半島部の光ファイバーを持つTime dotCom社が破たんしたとき、SingTelによる資本参加をマハティールが認めず、結局、政府系のカザナ・ナショナルが買い取ったという経緯があります。光ファイバーを自国資本で確保したこの時の判断は、今となっては間違いではなかったと言えるかもしれません。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【人生の知恵・仕事の知恵】Why are you in Malaysia ?

Why are you in Malaysia ?

★果たして日本の海外展開は成功だったのか?

1985年のプラザ合意による円高容認以降、海外に多くの日本企業が進出しました。特にマレーシアは、電器関係を中心として、日本に次ぐ第二の生産拠点の勢いで、生産移管が行われたことを、懐かしく思い出します。

赴任する日本人は青雲の志を抱き、また日本企業で働き始める現地社員は、日本企業から少しでも技術を覚えようという謙虚さに満ち溢れていました。その後、多くの生産拠点は中国に移管されるかもしくは縮小されました。

今、シャアラムやPJの周辺を車で移動していると往時を思い出しつつ、果たして日本企業の

海外展開は成功だったのだろうか、想いに馳せることがしばしばあります。

 

★日本企業が苦しんだマレーシアパターン

日本企業を苦しめたのは、マレーシア独特の、言って見れば、マレーシアパターンでした。日本人が大切にしてきたガンバリズムが最終的に否定され、現地社員自身から声の上がる「やはりマレーシアでは無理だ」という諦めというか割り切りにも似たような結論づけに、マレーシアの日本企業は、苦しめられてきた面があります。

また 「日本企業は自動的に給料が上がり、昇格できる」と信じている現地社員の声は、日本企業の貢献を考えると不当に軽んじられてきたように思います。

 

★日本企業にとってのマレーシア2.0

一方で、マレーシアの若い現地社員と話していると、上述したような日本企業を不当に軽んじる声は少なくなっているように映ります。

むしろ、どの企業で働くかよりも、自らの力を最大限に発揮できることに優先順位が高いという印象を受けます。そして、地元意識が高いです。

日本企業が迎えるマレーシア新時代は、意外と当初、多くの日本企業が思い描いたその国に貢献する産業報國にあるのかもしれません。

湯浅 忠雄(ゆあさ ただお) アジアで10年以上に亘って、日系企業で働く現地社員向けのトレーニングを行う。「報連相」「マネジメント」(特に部下の指導方法)、5S、営業というテーマを得意として、各企業の現地社員育成に貢献。シンガポールPHP研究所の支配人を10年つとめた後、人財育成カンパニー、HOWZ INTERNATIONALを立ち上げる。 【この記事の問い合わせは】yuasatadao★gmail.com(★を@に変更ください)

第3四半期の国内観光客数、前年比22%増=統計局

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局 (DOSM) は19日、2024年第3四半期の国内観光に関する調査を発表。国内観光客数は6,626万人となり、前年同期(5,417万人)から22.3%の増となったが、前期(6,844万人)からは3.2%減少した。

観光客の支出額は256億リンギで、前年同期(201億リンギ)から27.4%増加したが、前期(281億リンギ)からは9.1%の減となった。

観光関連産業の指標では、宿泊施設は前年同期比12.9%、前期比4.2%のともにプラスになった。特に4つ星ホテルの稼働率が前年同期比4.2%、前期比で0.2%プラスとなり貢献した。5つ星のホテルは前年同期比1.1%、3つ星は0.2%それぞれ増えたが、前期比では5つ星、3つ星ともに変わらずの維持だった。

また、テーマパークは前年同期比で7.2%のマイナスで、前期比では8.3%プラス。国内空港到着者数は前年同期から3.5%、前期から5.3%ともに増加した。燃料販売は前年同期比6.3%、前期比0.6%ともに上昇した。

新たな紙幣発行は今後も継続=中銀バンクネガラ

【ジョージタウン】 マレーシア中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は、国民の間でキャッシュレス取引が進んでいるものの、新たな紙幣発行を中止することはなく、今後も発行を続けていく意向だ。中銀が最後に新デザインの紙幣を発行したのは2012年。

中銀は、「消費者の間で電子財布やキャッシュレス取引が人気となっているが今後も現金はマレーシア経済における重要な決済手段であり続ける」と言明。新紙幣発行と適切な状態の紙幣の再流通を継続的に行うことで、国民の需要を満たすのに十分な貨幣が流通するようにする」と述べた。

マレーシア中小企業協会(SAMENTA)のSH・ヨー名誉事務局長は、「会員企業の多くがすでにキャッシュレス取引を実施しており、電子取引チャネル利便性の高さからデジタル決済が急速に普及している」と指摘。その一方で、「仮想決済には利便性、セキュリティ、コスト削減など多くの利点があるが、技術的な問題、セキュリティリスク、消費者保護の制限など、考慮すべきいくつかの欠点がある」とし、「キャッシュレス決済が物理的な通貨取引に完全に取って代わるとは考えていない」とした。

調査によると、オンライン銀行振込と電子ウォレットを最も多く利用しているのは25―35歳の年齢層。マレーシア人が最もよく利用する電子ウォレットは「タッチアンドゴー」で、通行料、駐車料金、飲食物や配達サービスのオンライン取引の決済で使われているという。
(ザ・スター、12月20日)

来年は自動車販売減の見込み、ガソリン補助削減が影響か

【ペタリンジャヤ】 金融機関は2025年の自動車販売台数が今年を下回ると予想している。ガソリン補助の部分撤廃と輸入価格(OMV)改定が影響するとみられるためだ。

CIMB証券は来年の販売台数を、今年(推定値)より4%少ない75万5,000台と予想している。一方で電気自動車販売は増加が見込めるという。

OMVは輸入された時点の自動車価格(輸送費、保険料、販売・引き渡しに伴うそのほかの費用を含む)で、マレーシア自動車協会(MAA)はOMV改定により、マレーシアで組み立てた車両の店頭価格は8-20%上昇すると予想していた。しかし改定は延期されている。

ガソリン補助の削減は電気自動車販売にはプラスで、BMW、ミニ、ポルシェ、BYD、ボルボなど多様なブランドを扱うサイム・ダービーは好業績が期待できるという。しかし政府はレギュラーガソリン消費者の85%について、補助を継続する方針で、価格が手ごろな国民車は人気を維持し、シェアはプロトン、プロドゥア2社で65%が予想されるという。

メイバンク・インベストメントは来年75万台の販売を予想している。今年の推定値(80万台)を下回るが、コロナ以前の60万―65万台を上回る。小売価格10万リンギ以下の手頃な価格帯の自動車が販売の中心になるという。
(ザ・スター電子版、12月18日、ポールタン、12月19日)

太陽鉱工が触媒回収工場を起工、東南アジア初

【クアンタン】 希土類元素化合物、ジルコニウム化合物製造販売の太陽鉱工(本社・兵庫県神戸市)はパハン州ゲベン工業団地で使用済み触媒の回収工場を起工した。運転開始は2027年第1四半期の予定。この種の施設は東南アジア初。

建設に当たるのは東洋エンジニアリングのマレーシア法人、トーヨー・マレーシアで、太陽鉱工の鈴木一史社長は「工場建設のための戦略的提携であり、環境持続性の推進と循環経済の育成における重要な一歩だ」と述べた。石油精製プラントで使用済みとなった重油脱硫触媒からモリブデンとバナジウムを抽出し回収する。同社固有の技術で、環境への影響を抑制するだけでなく、そうした希少元素の安定供給にもつながるという。

太陽鉱工の海外工場は初めて。工場は効率的な触媒回収だけでなく、環境への配慮、持続可能性でも新たな基準となることを目指す。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、12月19,20日)

サバ州に中国向け水産物航空貨物ハブ設置を計画=運輸相

【クアラルンプール】 マレーシアは中国向け主要輸出品の出荷量増加を目指しており、サバ州に冷蔵航空貨物ハブを設置して中華圏への水産物輸出を増やす計画だ。アンソニー・ローク運輸相の話として「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

17日に開催された「マレーシア・中国サミット」に出席したローク氏は、航空貨物はサバ州の水産業を成長させるための次のステップであり、中国市場への迅速かつ直接的なアクセスを可能にすると指摘。「サバ州は多くの水産物を生産しており、中国に輸出できる水産物がたくさんある。我々は州都コタキナバルをより大規模な中国市場に商品を提供するコールドチェーン貨物ハブとして開発することを検討している」と述べた。

サバ州政府によると、同州はマレーシア国内の水産物生産高の約4分の1を占めている。サバ州水産局の最新データによると、中国本土は2022年に約1億7,400万リンギ相当の水産物を輸入し、香港は同年に4,360万リンギ相当を輸入した。
(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、マレー・メイル、12月18日)

軽油価格変動制、給油所3500カ所で1.8億リンギの損失

【クアラルンプール】 政府による補助金制度の見直しで、今年6月にディーゼル油(軽油)が変動制になって以降、半島部にあるガソリンスタンド計3,500カ所で1億8,100万リンギの損失を被ったという。英字紙「ザ・スター」が18日、ブミプトラ・ガソリンスタンド運営者協会(ブミペダ)の報告として報じた。

ブミペダのハニー・ジュリア・ハロン事務局長は、「半島部のガソリンスタンドの約98%で損失があった。ガソリンスタンドだけでなく、自動車整備工場や販売店など今後さらに長期的な影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

またマレーシアにおける燃料の価格は、1983年に導入された自動価格設定メカニズム(APM)を基に決められているが、これについてハニー・ジュリア氏はAPMの抜本的な見直しの必要性を指摘。「現在の経済の現実を反映するため、APMを国家の年間予算と整合させる必要がある」と強調した上で、コスト構造は米ドルに大きく影響され、ガソリンスタンドと石油会社の両方の利益率に影響を与えると付け加えた。
(ザ・スター、ポールタン、12月18日)