【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 第15回総選挙が2選挙を除いて19日に行なわれ、即日開票されたが、定数222のうち過半数を獲得した政党連合はなく、政権樹立を向けた連立結成を巡る駆け引きが活発化している。

国民戦線(BN)、国民同盟(PN)、希望同盟(PH)の3政党連合による接戦が予想されていたが、PHが共闘先を含めて82議席を獲得して首位となり、続いてPNが73議席と躍進した。PHとPNはいずれも過半数に満たないため、連立相手を模索する必要がある。

連立政権結成に向けた動きの中でがぜん注目を集めているのは、22議席を獲得したサラワク政党連合(GPS)、6議席を獲得したサバ国民連合(GRS)といったサバ・サラワク州の地方政党で、PHとPNのどちらの陣営が取り込めるかが焦点となる。「キングメーカー」となることで今後は一層サバ・サラワク州の発言力が高まりそうだ。

イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相が所属するBNは30議席と惨敗したが、サバ・サラワク州の地方政党の動向しだいで連立政権への協力をちらつかせることで存在感を示す可能性がある。

アンワル・イブラヒム会長(人民正義党=PKR党首)率いるPHは、汚職を嫌う若者・知識層を中心としたマレー・リベラルや非マレー勢力の支持を集めたが、前回2018年総選挙から大幅に議席を減らし過半数に届かなかった。政権を樹立するためには他の党派との連立を組む必要があるが、PH構成党の民主行動党(DAP)がマレー系諸政党から敵視されていることがネックとなっている。ただアンワル氏は提携先を明らかにすることは避けた上で「連立を組む準備は出来ており、過半数を超えている」と述べた。

ムヒディン・ヤシン前首相率いるPNは、当初は劣勢が予想されたが選挙戦後半で挽回。特に構成党であるイスラム原理主義政党・汎マレーシア・イスラム党(PAS)が49議席と大幅に議席を増やしたことが寄与した。ムヒディン氏は王宮から政権樹立に向けた前提条件を知らせる手紙を既に受け取っていると公表。「PHやBNは歓迎しないがその他の政党は受け入れる」と述べ多数派工作に自信を示した。

批判を浴びながら早期解散・総選挙を強行した国民戦線(BN)は、改選前の41議席から30議席に大幅に議席を減らした。汚職で訴追を受けている身ながら傲慢な発言が続くアハマド・ザヒド総裁(元副首相)が居座っていることでかねてから指摘されてきた「汚職と古い体質」が変わらないと頼みのマレー有権者にもノーを突き付けられた格好だ。ザヒド総裁には所属する統一マレー国民組織(UMNO)党内からも批判の声が多く、辞任圧力が強まりそうだ。

マハティール・モハマド元首相が率いる祖国戦士党(ペジュアン)は116人もの候補者を擁立したにも関わらずマハティール氏本人やムクリズ党首も含めて全敗した。マハティール氏は97歳という高齢もあり引退を余儀なくされそうだ。