対シンガポールドルのリンギ相場、さらに上昇の可能性

【クアラルンプール】 マレーシア通貨リンギの相場がここ数カ月、シンガポール(S)ドルに対し値上がりしており、年末までには1Sドル=3.43/3.45リンギまで上昇すると著名エコノミストが予想している。

バンク・ムアマラット・マレーシアの主任エコノミストであるモハマド・アフザニザム氏は、リンギ需要増大の要因として、外国直接投資(FDI)のマレーシアへの流入、特にジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)への流入を挙げた。

アフザニザム氏は「著名企業が同特区などへ投資し、マレーシア資産への関心が高まっている」と述べた。現在、相場は1Sドル=3.4868リンギ前後で推移している。

ただリンギ上昇が持続するかは外部要因、特に米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に左右されるという。

米労働市場の重要指標である非農業部門の賃金は伸びに加速が見られており、FRBが早期に利下げするとの観測が後退した。利下げ延期は世界の外為市場に影響を及ぼすという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月12日、エッジ、マレーシアン・リザーブ、6月11日)

景気後退にあると考えるマレーシア国民が68%=イプソス調査

【クアラルンプール】 成人の68%はマレーシアが景気後退にあると考えていることが、市場調査・世論調査のイプソスの調査で分かった。

イプソスは3月下旬から4月上旬にかけマレーシアで18歳かそれ以上の成人500人余りから意見を聞き取り、ほかに33カ国で75歳以上の2万4,801人をオンラインで調査した。マレーシア人の3人に1人は、国内インフレ危機はほかの国より深刻だと回答。何とか家計をやりくりしているとの回答は半数に達した。

調査報告は「経済状態に関する国民の受け止め方と経済統計が一致していない。国民に正確な情報が伝えられ家計についての懸念を和らげることが重要だ」とした。

国内経済は昨年通年で3.7%成長し、今年第1四半期は4.2%の成長だった。消費者物価上昇率は昨年が2.5%で、今年は2-4月までの3カ月間、1.8%の低水準を維持している。

不自由なく生活できている、との回答はマレーシアが26%だったのに対し、インドネシアは39%、シンガポールは45%だった。自国が景気後退にあるとの回答も、タイは66%、インドネシアは50%、シンガポールは32%で、マレーシアの68%が東南アジアでは最高だった。
(エッジ、マレー・メイル、6月13日)

建設業界、資材運搬車両へのディーゼル補助金適用を要請

【クアラルンプール】 今月開始されたディーゼル補助金の合理化について、建設業界が補助金対象を建築資材の運搬車両にも拡大するよう訴えている。

40社が加盟するマレーシア建設請負業者協会(MBAM)とマレーシア・ブミプトラ建設請負業者協会(PKBM)は、対象を絞った補助金制度の実施が昨年末に発表されていたことを認めた上で、建設業界を支える物流業者への影響を緩和するための明確な説明が必要だと強調。連邦政府に対し、ディーゼル補助金の対象となる輸送手段のリストに、建築資材やクレーンを輸送する車両を含めるよう訴えた。

MBAMとPKBMによると、採石製品や生コンクリートなどの建設資材のコストが上昇し、建設契約の大半が固定価格の一括払いであるため業界に影響を及ぼしているという。

その上でMBAMとPKMBは、建設資材やクレーンの運搬車両にも割引価格で燃料を購入できるフリートカード(営業車用法人カード)を発行するよう要請。これにより建設業者、特に小規模建設業者における将来の建設コストの管理が可能になり、燃料補助金合理化との間のバランスをとることができるようになると指摘した。

ディーゼル価格は対象を絞った補助金制度の実施に合わせて、今月10日付けで1リットル当たり2.15リンギから3.35リンギに引き上げられたが、これを受けてコンクリート生産者が早速値上げに踏み切ったという。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、6月13日)

ダイハツ系プロドゥア、半島東海岸で部品ハブ設立を計画

【クアラルンプール】 ダイハツ系プルサハアン・オトモビル・クドゥア(プロドゥア)は、建設が進められている東海岸鉄道線(ECRL)を活用し、半島東海岸にスペアパーツの地域ハブを設立する計画だ。

ザイナル・アビディン社長兼最高経営責任者(CEO)は、13日に開催された国家投資セミナーの「ECRL@セランゴール―経済的利益と機会」と題したパネルセッションに出席。ハブの開設場所はパハン州クアンタンになる可能性が高いが、東海岸の他の場所も検討中だとした上で、「新車のハブというだけでなくスペアパーツや中古車のハブとしても、東海岸の顧客にとって有益なものになるだろう」と述べた。

またザイナルCEOは、周辺に鉄鋼製品の流通拠点や鉄鋼完成品の製造拠点が設立される可能性があるセランゴール州プンチャック・アラム駅に言及。同駅の鉄鋼ハブは、自動車産業で必要とされるスタンピングおよび射出成形プロセスのサブセットである工具、金型、ダイなどの自動車関連の鉄鋼ベースの事業活動に対する海外からの投資を誘致するのに役立つ可能性があるとし、トラック輸送から鉄道輸送への移行が可能になれば大幅なコスト削減が見込まれると述べた。

プロドゥアは10日、ECRL建設の推進母体であるマレーシア・レール・リンク(MRL)との間で、自動車・自動車部品の輸送に関する覚書(MoU)を締結した。自動車・自動車部品の輸送の可能性を検討するという。

ECRLは、クランタン州コタバル―セランゴール州ゴンバック統合ターミナル間は2026年12月までに建設が完了し、2027年1月から運用が開始される予定。ゴンバック―ポートクラン間は2027年12月までに完成する予定で、2028年1月以降に全面開通する見込みだ。
(ザ・スター、6月14日)

花王、蚊よけクリーム「モスブロックセラム」をマレーシアで発売

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 花王(本社・東京都中央区)は13日、独自技術を盛り込んだ蚊よけクリーム「ビオレガード・モスブロックセラム」を7月からマレーシアで発売すると発表した。

「ビオレガード・モスブロックセラム」は、独自のアンチ・ランディングテクノロジーを搭載した蚊よけクリーム。蚊の脚の構造に着目し、肌の表面を蚊がとどまりにくいように整えることで、蚊に刺されることを防ぐ技術を応用した。ボディローションのような軽いつけ心地で肌にうすく伸ばすことができ、べたつかず快適な使い心地だという。

香りはフレッシュラベンダーとスウィートブロッサムの2種類で、蚊よけ効果は8時間持続する。容量は100グラムで、価格は24.90リンギとなっている。

花王は、デング熱の発生が年々深刻となっているマレーシアでデング熱被害の削減に向けた「GUARD OUR FUTURE」プロジェクトを開始する。セランゴール州及び武田薬品のマレーシア法人と協同で蚊から「未来のいのちを守る」取り組みを行っていく。

リンギ相場安定のため一段の措置を模索=中銀副総裁

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)のアドナン・ザイラニ副総裁は12日、BNM主催のシンポジウムで、リンギ相場の安定を図るため、現在行っている以上の対策がないかを探っていると明らかにした。

アドナン氏は「相場が経済の基礎的条件を反映するよう、われわれの期待どおりのリンギ相場になることが重要だ」と語った。リンギが今年2月、26年ぶりの安値に落ち込んで以降、政策決定者はリンギを支えるため協調的措置を講じており、最近は相場が安定している。BNMは外貨収入のある企業に、国内送金とリンギへの両替を働き掛けている。両替を通じリンギ需要を増やし、リンギの価値上昇につなげる。

アドナン氏はまた、燃料補助合理化による補助の一部削減が物価、経済成長に与える影響について、金融政策面からの対処が必要かはこれからの検討課題だとした。

輸出収入の60-70%はリンギで保持されているが、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)のアブドル・ワヒド会長は「ほかの国と比べると低水準だ。多くの輸出業者は依然、外貨での保持を好む」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月13日、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、6月12日)

プロトンが新EVブランド「e.MAS」発表、5車種を発売へ

【スバンジャヤ】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスは12日、同社の新たな電気自動車(EV)ブランド名「e.MAS」とロゴを発表。同新ブランド名で、EV5車種を発売予定であることを明らかにした。

新ブランド名は「Electrifying Malaysia(マレーシアの電化)」の略で、EVを表す「e」と、マレーシアの略語である「MAS」を組み合わせたものだという。

5車種はいずれもグローバル・モジュラー・アーキテクチャ(GMA)プラットフォームを使用したもので、プロトン販社、プロトン・エダルのロスラン・アブドラ最高経営責任者(CEO)は、新ブランドの最初のEVモデルは2025年までに発売される予定だと言明。「発売時期はまだ決まっていないが、最初のモデルは2025年初頭かそれより早くなるかもしれない」と述べた。

その上でロスラン氏は、 「プロトンEVに対する一般消費者需要に基づいて、今後EVをさらに発売するかどうか決定する」と言明。「現在市場に出回っているEV車のほとんどが10万リンギ以上の価格であることに留意している」とし、「e.MAS」ブランドは適切な価格設定にすると述べた。
(ポールタン、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月12日)

燃料価格上昇で観光バス会社が悲鳴、政府が支援策を検討

【プトラジャヤ】 ディーゼル補助金合理化がスタートしたことにより6月10日から大幅に値上がりした燃料価格に観光バス会社が悲鳴を上げており、ファーミ・ファジル通信相は業界に対して何らかの支援策を検討する考えを示した。

ファーミ氏は、燃料価格高騰に対する観光バス事業者の懸念を政府は認識していると言明。「補助金廃止発表は観光バス事業者がある取り決めをしていた時期に行われたため、政府はこのグループを支援できる仕組みを新たに検討するつもりだ」と述べた。

観光バスが対象を絞った補助金制度の対象から外れたことにより、業界ではコストが15―30%上昇すると懸念している。すでに取り決めた旅行代理店との料金を簡単に見直すことができないため、損失を被る必要があるという。

約150社が加盟する半島部観光バス運行協会のスティーブン・チョン会長は、運営コストが最大30%上昇するとした上で、6月11日に観光芸術文化省に善処を求める陳情書を提出したことを明らかにした。

マレーシア観光連盟のタン・コックリャン会長は、半島部における観光サービスのコストが27%上昇すると予想した上で、「ツアーオペレーターは以前に旅行代理店と約束した料金を遵守することになるが、そうなれば我々の側が損失を被ることになる」と述べた。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月13日)

ガソリン補助金合理化、ディーゼルの影響みて実施=第2財相

【クアラルンプール】 ディーゼルに続いて予定されているレギュラーガソリン「RON95」の補助金合理化について、アミル・ハムザ第2財務相は、先に実施したディーゼル補助金合理化による影響が落ち着いた後になるとの見通しを示した。

アミル氏は実施後の影響を見る必要性から、現在は対象を絞ったディーゼル油補助金制度の完全実施に注力していると言明。「影響が収まれば次に為すべきことが分かる」と述べ、「RON95」の合理化はディーゼル油合理化プロセスが完了した後になるとの見方を示したが、具体的な実施日程には触れなかった。

「RON95」の補助金合理化については、先にメイバンク・インベストメント・バンクが、2024年度予算に基づき41億リンギの補助金歳出削減を達成したいのであれば、「RON95」の合理化を7月から開始する場合は補助金なしの小売価格を15.6%、金額にして1リットル当たり32セン、10月から開始する場合は31.7%、65セン、それぞれ引き上げる必要があると報告している。現在の補助金付き価格は2.05リンギ。

またアミル氏は、ディーゼル補助金合理化の影響について、公共交通機関の事業者が補助金価格でディーゼル燃料を購入できると強調。高速バス、スクールバス、救急車、物流輸送会社が含まれるとし、「彼らも補助金価格で燃料を購入しているため、価格への影響は限定的だ」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、6月13日、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、6月12日)

AIデータセンター建設に特別優遇措置、デジタル転換を加速

【クアラルンプール】 政府は11日の国家投資委員会(NIC)会合で、AI(人工知能)データセンターの建設に対し特別優遇措置を提供することを決めた。投資貿易産業省傘下のマレーシア投資開発庁(MIDA)が優遇措置の枠組みを決定する。NIC議長であるアンワル・イブラヒム首相、テンク・ザフルル投資貿易産業相がX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。

2021年から23年までのデータセンターおよびクラウド関連投資(認可ベース)は、1,147億リンギで、データエンジニア、サイバーセキュリティアナリストなど2,325人のハイテク領域の雇用機会が創出された。

特別優遇措置では現在の優遇措置に加え、電力や水消費の少ない機器の使用、データセンターに対する再生可能エネルギー(RE)の提供などの便宜を図る。
アンワル首相は投稿で「AIデータセンターへの投資誘致に政府全体で取り組むことを強調した」とした。投資はデジタル化の加速という政府目標の達成に役立ち、高所得経済への移行にも貢献するという。

AIデータセンターは、生成AIの開発や、そのほかのAI関連事業に活用される。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、6月11日)