第914回:コロナ禍で職場はどう変わったのか?海外拠点3,600人調査で見えた「同僚支援・疲労・コミットメント」(前編)

 

前回は駐在員の「知性」についてでした。今回は筆者が元日に発表した最新論文の内容をご紹介します。本研究では、海外拠点で働く従業員の職場意識が、コロナ前とコロナ禍でどのように変化したのかを分析しました。

調査対象は、日本の製造業多国籍企業が中国に展開する6つの生産拠点で働く従業員3,600人超です。待遇満足、上司・同僚からの支援、仕事の裁量、研修、役割の明確さ、組織コミットメント、疲労感といった8つの側面について、コロナ前後を比較しました。

分析の結果、次のことが明らかになりました。

・同僚からの支援は、コロナ禍で有意に高まっていた
→ 困難な状況ほど、現場レベルの助け合いや情報共有が強まったと考えられます。

・疲労感は、意外にも低下していた
→ 単純な業務量ではなく、「心理的な余裕」や「意味づけ」が変化した可能性が示唆されます。

・組織コミットメントは、個人レベルでも部署レベルでも上昇していた
→ 特に、同僚支援が増え、疲労が減った部署ほど、組織への帰属意識が大きく高まっていました。

重要なのは、これらの変化が個人の性格や偶然ではなく、「部署」という単位でまとまって起きていた点です。現場で日常的に顔を合わせ、協力し合う関係性が、危機への適応を左右していました。

この結果は、特定の国に限った話というより、海外拠点や現場型組織に共通する示唆を含んでいます。危機の時代において、従業員の勤労意欲や組織への関与を支えるのは、制度やトップのメッセージだけではありません。日々の同僚関係や、部署内の支援のあり方こそが、組織の底力を形づくっていることが、データから確認されました。

次回に続きます。

 

Kokubun, K., Ino, Y., & Ishimura, K. (2026). Changes in Workplace Attitudes Before and During COVID-19: A Multilevel Analysis of Employees in Japanese Manufacturing Subsidiaries in China. Thunderbird International Business Review. Early View.
https://doi.org/10.1002/tie.70074

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)