第915回:コロナ禍で職場はどう変わったのか?海外拠点3,600人調査で見えた「同僚支援・疲労・コミットメント」(後編)

 

前回は、海外拠点3,600人の調査から、コロナ禍で同僚支援と組織コミットメントが高まり、疲労感が低下していたという結果をご紹介しました。今回は、その結果から、海外拠点マネジャーや人事担当者が実務上、何を学べるのかを考えてみたいと思います。

まず重要なのは、変化の単位が「個人」ではなく「部署」だったという点です。同僚支援が増え、疲労が下がった部署ほど、組織への関与が大きく高まっていました。つまり、危機への適応は「優秀な個人」によって起きたのではなく、部署内の関係性がまとめて変化した結果だったのです。

この結果は、海外拠点マネジメントにおいて、次のような示唆を与えます。

・個人向け施策だけでは不十分
→ ストレスチェックや個別面談だけでなく、部署全体の関係性をどう支えるかが重要になります。

・「上司の支援」よりも「同僚の支援」が効いていた
→ トップダウンの統制やメッセージ以上に、横の助け合いが心理的資源として機能していました。

・疲労対策は、業務量調整だけではない
→ 疲労は単なる忙しさではなく、「孤立感」や「意味の喪失」と強く結びついています。
同僚との支援関係が回復することで、疲労も同時に下がっていました。

では、海外拠点で具体的に何ができるのでしょうか。

一つは、部署単位での対話の場を意識的につくることです。業務改善会議だけでなく、「困っていることを共有する」「助け合いの工夫を話す」といった、非公式なやり取りが重要です。

もう一つは、現地マネジャーを調整役として支援することです。指示を出す管理者ではなく、同僚間の協力を促すファシリテーターとしての役割が、危機下では特に効果を持ちます。

本研究の示唆はきわめて実務的です。危機の時代において、海外拠点の底力を決めるのは制度や制度変更の速さではなく、部署内の関係性をどう育ててきたかなのかもしれません。

コロナ禍は例外的な出来事でしたが、地政学リスク、サプライチェーン混乱、急激な市場変化は今後も続きます。その中で、同僚支援を基盤とした部署マネジメントは、海外ビジネスパーソンにとって、再現性の高い武器になると考えられます。

 

Kokubun, K., Ino, Y., & Ishimura, K. (2026). Changes in Workplace Attitudes Before and During COVID-19: A Multilevel Analysis of Employees in Japanese Manufacturing Subsidiaries in China. Thunderbird International Business Review. Early View.
https://doi.org/10.1002/tie.70074

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)