【イスラム金融の基礎知識】第584回 CIMBが手がけたスクークをめぐる訴訟

第584回 CIMBが手がけたスクークをめぐる訴訟

Q: 高速道路建設の遅延をめぐり、CIMBが訴えられたようですが?

A: CIMBが1月、ブルサ・マレーシア(証券取引所)に提出した書類によれば、CIMBの子会社であるCIMB投資銀行が起債を手がけた高速道路運営会社のスクークをめぐり、出資者から利払いや損害賠償等を求めて民事訴訟を起こされたことが明らかになった。高速道路運営会社の社長も、すでに背任やマネーロンダリングなどの罪で起訴されており、問題が拡大している。

報道などによると、高速道路の運営を手掛けるマジュ・ホールディングス社は、プトラジャヤとKLIAを結ぶ高速道路の延伸工事を計画、資金調達のため特別目的会社であるMEX II社を立ち上げた。同社は、額面13.8億リンギ、期間15年、年利6.1%のスクーク・ムラーバハを2016年に発行した。発行に際しては、CIMB投資銀行はプリンシパル・アドバイザーなどの役割を担った。工事は同年に始まり、2019年に完成予定であった。ところが資金不足等で工事が頓挫、2023年の調査段階でも10%以上の未完成部分を残しており、現在も状況は改善されていないとみられている。工事に加え、利払いも2021年以降滞っており、2022年にMEX II社は破産管財人の管理下に入った。さらに2025年9月マジュ社のアブ・サヒド・モハメドCEOが、背任やマネーロンダリングなど複数の罪状で起訴された。

こうした状況を踏まえ、スクークの43%を保有する政府系信託会社や保険会社など14社が原告となり、未払い利息の支払いや損害賠償を求めて、MEX II社、マジュ社、同社CEO、CIMB投資銀行など12の会社・個人を被告とする訴訟を起こすに至った。対象プロジェクトの契約不履行によってスクーク購入者に損害が生じた場合、起債を手がけたイスラム銀行に責任がどう及ぶか、注目の訴訟といえよう。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

【イスラム金融の基礎知識】第583回 中央アジアでのイスラム金融の課題

【イスラム金融の基礎知識】第583回 中央アジアでのイスラム金融の課題

Q: 中央アジアのイスラム金融の現状と課題は?

A: 昨年12月8日から11日まで4日間の日程で、UAEのアブダビで「アブダビ・ファイナンシャル・ウィーク」(ADFW)が開催された。中東湾岸諸国の金融機関や監督官庁、ビル・ゲイツなど欧米の財界人などが登壇する大規模なフォーラムだが、最終日には「イスラム金融サミット」と題する2時間のパネル・セッションが組まれた。会場の様子は2026年1月現在、YouTubeのADFW公式チャンネルで視聴可能だが、注目は「基準化とシャリアの規制」と題するセッションだ。登壇したのは、ユーラシア開発銀行(EDB)、アスタナ国際金融センター(いずれも本部はカザフスタン)、フィリピン中央銀行の担当者である。まさに「イスラム金融市場への本格参入はこれから」という国のイスラム金融担当者が登壇して、30分ほどの意見交換を行った。

この中でEDBのアザマット・チュレウベイ氏は、中央アジアのイスラム金融の現状について、イスラム金融に関する法律やイスラム法の解釈が各国でまちまちなため、国際開発金融機関としてのEDBの国境を超えた取り組みを困難なものにしていると指摘した。そのため、このような分断は関係各所の参加によって統一していく必要があるとした。

これに対して、フィリピン中央銀行のアリファ・A・アラ副総裁は、「ムスリムがマイノリティの国でイスラム金融を実践したことから得られた教訓」として、①ビジネスを実施可能にする法律、②立法だけでなく行政や規制当局、会計の専門家など利害関係者の協力、および③存在意義を国家の課題に結び付けること、という三つの必要性を挙げた。チュレウベイ氏も、EDBが各国の規制当局と基準機関であるAAOIFI、IFSBなどと協力体制を築くことで、中央アジアのイスラム金融は次の段階に進めるだろうと答えた。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。