近大、マレーシアの大学と共同で「雷・災害シンポジウム」開催へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 国際協力機構(JICA)は、JICAの支援のもとで近畿大学がマラッカ技術大学及びのテナガ・ナショナル大学と共同で6月23日にマラッカで「第3回国際雷・災害シンポジウム」を開催すると明らかにした。

2023年6月に開始された「持続可能なエネルギー供給と極端気象災害の早期警報のための電荷分布リアルタイム3Dイメージングと雷活動予測(RTL-3D)プロジェクト」の一環で、シンポジウムではプロジェクトの研究者、マレーシア政府、学術機関、民間パートナーによる雷及び極端気象災害に対する早期警報システムの構築に関する発表が行われる。

RTL-3Dプロジェクトは、マレーシアにおける雷や極端気象による被害の低減を目的とし、先端技術を開発・活用するもの。技術革新により、雷災害が発生する前の予測を可能とし、マレーシアの防災対応能力を向上させることを目指す。目標達成に向け、雷および雷の電荷分布を精度数百メートル以下精度でマッピングする高度なアルゴリズムが開発されている。

RTL-3Dプロジェクトは、JICAおよび科学技術振興機構(JST)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の支援及びマレーシア高等教育省(MOHE)によるマレーシア政府予算の支援を受けており、2028年6月まで5年間実施される。

ジェトロKL、「エナジー・アジア2025」にブース展示

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール(KL)事務所は、 アジアのエネルギー移行に関するシンポジウム・展示会「エナジー・アジア2025」(会期6月16日―18日)に、「マレーシアの脱炭素化に貢献する日系企業の製品・サービスカタログ」の広報ブースを出展している。

脱炭素分野における日本企業の製品・サービスの販路拡大を目的としたもので、同カタログには、各社のウェブサイト、プレスリリース、報道、展示会情報などの公開情報および各社へのヒアリングをもとに収集した、マレーシアで脱炭素化に貢献する日系企業47社の製品やサービスを、マレーシア政府が2023年に発表した脱炭素政策の柱である国家エネルギーロードマップ(NETR)で指定する重要6分野10基幹事業に合わせて、主要カテゴリーごとに分類して掲載している。

同ブースでは、日本企業の製品のマレーシアでの販路拡大を目的として、オンラインカタログサイト「Japan Street」についても紹介している。「Japan Street」はジェトロが招待した海外バイヤー専用のオンラインカタログサイトで、バイヤーは登録するだけで日本企業1万25社・7万2,330製品(6月13日時点)を閲覧、希望に応じてオンライン商談が可能。

経済相のポートフォリオ、現職閣僚が兼任=アンワル首相

【クアラルンプール】 6月17日付で辞任するラフィジ・ラムリ経済相の後任人事について、アンワル・イブラヒム首相は閣外から新たに起用せず、現職閣僚のいずれかに兼任させる方針だと明らかにした。

アンワル首相は記者団に対して、「現時点で内閣改造の必要はないが、どの閣僚に兼務させるか決定する必要がある」と言明。また経済省が元々首相府経済企画局(EPU)の下にあった機能を独立させ省に格上げしてできた経緯から、「解散するのではないか」との憶測が浮上していることについては全面否定し、「内閣の決定権は私が握っており、こうした問題は発生しない」と述べた。

一方、アンワル首相は7月1日付で辞任予定のニック・ナズミ・アハマド天然資源・環境持続可能性相の後任については、最終決定は出ていないと言明。「私は常にニック・ナズミ氏に時間を与え、機会を与えている。可能であれば留任すべきだという私の見解を伝えてきた。」と述べ、留任の可能性が残されていると強調した。

ラフィジ氏とニック・ナズミ氏はそれぞれ、5月23日に行われた人民正義党(PKR)副党首選、党首補選で敗北し、辞表を提出していた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、6月16日)

持続可能なパーム油認証製品の拡大、日本市場でイオンなどと協力

【クアラルンプール】 持続可能なパーム油の基準策定機関マレーシア・サステナブル・パームオイル(MSPO)は、日本のイオンなどと、MSPOの認証を得た製品の認知度向上に向け協力することで合意した。投資貿易産業省(MITI)が13日、こうした取り組みを例に、認証製品の日本市場への展開拡大を目指す方針を発表した。

MSPO認証の推進に関し、MSPOは大阪・関西万博で、日本の一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)と覚書を締結。これを受け、会員企業でもあるイオンとの協力が締結された。このほか、花王、味の素、明治などの会員企業の協力が見込まれているという。

マレーシアでは今年1月、持続可能なパーム油の新たな基準「マレーシア持続可能なパーム油基準2.0(MSPO2.0)」が導入された。MSPO2.0は、SDGs(持続可能な開発目標)などの国際基準に沿って、従来の基準を強化したもので、すでに日本の店頭でもMSPO2.0認証の製品が販売され始めているという。

政府はMSPO2.0を、今後の貿易・経済の中核として位置付けている。「スーパービタミンE」ともいわれるパーム油由来のトコトリエノールや、食用にも使われるレッドパームオイル、住宅・家具用途のMDF(中密度繊維板)、特殊油脂など、さまざまな認証製品を日本に拡大させていきたいとしている。

ジョハリ・アブドル・ガニ農園一次産業相は声明で「小規模農家から輸出製品にいたるまで、あらゆるレベルで認証を根付かせていく」とした。マレーシアのパーム油栽培の86%はすでに認証を受けており、2025年末までに認証率を95%にすることを目標としている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、エッジ、6月13日、報道発表資料)

ジェットスターアジアの運航停止、航空委が予約客に対策呼びかけ

【クアラルンプール】 マレーシア航空委員会(MAVCOM)は、ジェットスター・アジア航空の運航停止の影響を受ける予約客に対し、直ちに同社に直接支援を求めるよう勧告した。マレーシアでは、シンガポール―クアラルンプール線およびペナン線が影響を受ける。

ジェットスター・グループが6月11日、シンガポールに拠点を置く格安航空会社ジェットスター・アジアの運航を7月31日に停止すると発表したことを受けたもので、MAVCOMは13日に発表した声明の中で、影響を受ける旅行者に対し、専用のライブチャットサービスを通じてジェットスター・アジアに連絡するか、ジェットスターの連絡先にあるグローバルコンタクトセンターのリストを参照してさらなるサポートや情報を得るよう呼びかけた。

MAVCOMによると、2016年マレーシア航空消費者保護法に基づき、影響を受ける消費者は30日以内に元の支払い方法で航空券の全額(税金および手数料を含む)の払い戻しを受ける権利があり、もしくは同等の交通手段で最終目的地への経路を変更する権利がある。

ジェットスターは、今回の運航停止は、オーストラリアと東南アジア間の国際便を運航するジェットスタ―やジェットスター・ジャパンを含む、グループ傘下の他の航空会社には影響しないとしている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、6月13日)

交通違反の減点制度を抜本的に見直し=ローク運輸相

【シャアラム】 アンソニー・ロ―ク運輸相は、現用の交通違反の減点制度(ケジャラ)が効果的ではないことから、抜本的に見直す考えを示した。現状ではポイント減点は反則金を支払った後にしか差し引かれないこのため多くのドライバーが減点を避けるために反則金を支払わないという。

ロ―ク氏は現状制度の重大な欠陥を指摘した上で、政府はケジャラ制度を継続するものの大幅な改革を行うと強調。反則金納付状況に基づかないシステムになるとし、すでに法律と適用の観点から検討を進めていると述べた。

ケジャラ減点制度は2016年に導入されたもので、2018年9月、スコアリング方式とペナルティの適用レベルを変更した減点制度の改訂版が発表された。

連邦交通執行捜査局のモハメド・ユスリ・ハッサン・バスリ局長によると、9日に発生した15人が死亡する事故を起こしたチャーター・バスの運転手には、過去に18枚の交通違反切符が発行された記録があった。13枚は速度違反、1枚は事故関連の違反、3枚はシートベルト未着用、1枚は第3ブレーキランプの故障によるものだった。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、エッジ、6月13日)

大型車両の速度リミッター設置義務化、10月から段階的に施行

【シャアラム】 アンソニー・ロ―ク運輸相は、大型車両への速度リミッター(SLD)設置の義務化を3段階に分けて実施すると述べ、第1段階は10月から実施されると明らかにした。来年7月までの完全施行を目指す。

第1段階では、2015年1月1日以降に登録された大型商用車を対象に、今年10月までに速度制限装置の設置確認を受けなければならない。対象はすべての観光バス、高速バス、最大重量3,500キログラムを超える大型車両となっている。

設置確認は、道路運輸局(JPJ)が認定する車両メーカー、技術サービス提供者、整備工場、サービス施設提供者から取得できるほか、JPJが認定する基準局認定機関からも取得できる。新規許可の申請時や更新時にも、この書類を車両検査センターに持参しなければならない。

第2段階では、2015年1月1日以前に登録された大型車両に速度リミッター設置を義務付ける。作動確認書類は2年ごとに更新し、取り締まり検査の際には常に車両に携行しなければならない。取締活動は2026年1月に開始される。

速度リミッター設置義務化は9日に発生した15人の大学生が死亡したバス事故を受けて決まったもので、同事故ではトレンガヌ州ジェルティからペラ州タンジョン・マリムへ向かっていたスルタン・イドリス教育大学(UPSI)の学生がチャーターしたバスがゲリックのタシク・バンディング近郊の東西高速道路で多目的車(MPV)に速度超過で追突。バスは横転大破し、学生15人が死亡したほか、バスの運転手と助手、事故に巻き込まれたMPVの乗員乗客3人を含む33人が負傷した
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、6月13日)

【総点検・マレーシア経済】第523回  7月1日より売上・サービス税の課税品目拡大、紆余曲折を振り返る

第523回:7月1日より売上・サービス税の課税品目拡大、紆余曲折を振り返る

 

7月1日より売上税(Sales Tax)とサービス税(Service Tax)、いわゆるSSTの課税品目の拡大が行われます。これは、昨年秋の2025年予算の段階で予告されており、また当初5月1日より導入される予定が、業界の反対に実施が延期されていたものです。

 

マレーシアの税制は過去10年間で大きく変遷してきました。2015年4月にナジブ政権がSSTに代わって6%の物品・サービス税(GST)を導入しましたが、これが物価上昇への国民の不満を招きました。2018年、マハティール政権はGST廃止を公約に掲げて勝利し、同年9月にSSTを復活させました。この政策転換により、非課税品目が5,443品目に拡大され、国民負担は軽減されたものの、政府は年間220億リンギという大幅な減収に直面しました。

 

その後、財政再建への要請からGSTを復活させる提言が各所から出され、2024年の予算文書には「SSTよりGSTが優れている」という記事が掲載されたこともありました。しかし、アンワル首相は最低賃金が3000〜4000リンギになるまで、つまり、おそらくはあと10年程度はGSTを復活させることはないと明言しています。

 

そうはいっても財政は苦しいわけで、代替案としてSSTの税率引き上げ・課税対象品目の拡大が行われてきています。2024年にはサービス税が6%から8%に引き上げられました。ただ、飲食や通信、物流サービスなどの税率は6%のままとなっていました。

 

今回のSSTの課税品目拡大は図のようなものです。売上税は一部の「任意購入・非必需品(discretionary and non-essential goods)」について5%、10%の税率で新規に課税が行われ、サービス税については6つの新分野について新たに課税が行われることになりました。

2025年予算を読み返すと、売上税は194億リンギ(24年)→208億リンギ(25年)に、サービス税は215億リンギから260億リンギへの増収が見込まれています。売上税分が14億リンギ、サービス税分が45億リンギの増収見込みなので、サービス税の引き上げの方が3倍程度影響が大きいことが想定されています。

 

こうした方向性は、アンワル首相が就任当初から繰り返している「選択的補助金(Targeted Subsidy)」政策と整合的です。要するに、所得上位階層には補助金を与えず、逆に所得上位階層から税金を取る、ということになります。図にあるように、マレーシアが国として振興している教育サービスや外国人向けの民間医療についても増税となるため、産業政策的にはマイナスになりますが、そうであっても財政再建が重要、というスタンスであると捉えることができます。

 

世界経済が不安定で原油価格も軟調な中、2027年後半には総選挙が見込まれるため、アンワル政権は早いうちに補助金改革と税制改革を済ませたいと考えているはずです。それらが2025年で打ち止めになるのか、26年も続くのかは景気次第ともいえるでしょう。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【イスラム金融の基礎知識】第570回 アンワル首相、タタールスタン訪問でイスラム金融を議論

第570回 アンワル首相、タタールスタン訪問でイスラム金融を議論

Q: アンワル首相の訪露の目的は?

A: アンワル・イブラヒム首相は、5月に4日間の日程でロシアを訪れた。この間、タタールスタン共和国で開催された国際フォーラムに参加し、イスラム金融やハラル産業などの分野での支援を表明した。

タタールスタンは、ロシア連邦を構成する国の一つで、人口およそ400万人のうち半数がムスリムである。2023年にロシアがイスラム金融制度を試験的に導入した四つの共和国の一つであり、ハラル産業のための16ヘクタールの工業団地「バルタチ」を2019年に建設するなど、この分野に力を入れている。

首都カザンでは、毎年「カザン・フォーラム」と題する展示会・講演会を開催している。これは、ロシアとイスラム諸国の経済連携の強化を目指して開催されるもので、今年で16回目の開催となった。マレーシアは、これまで閣僚級の人物を団長とする使節団が参加しており(本連載第446回参照)、今年はアンワル首相自らが一団を率いて現地入りした。フォーラムで講演を行ったアンワル首相は、この地域のイスラム経済の発展をマレーシアとして支援するという従来の約束を履行すると改めて表明した。

また、これに先だってアンワル首相は同国のルスタム・ミニハノフ首長(大統領)と会談を行った。この中でミニハノフ首長は、タタールスタンはイスラム銀行導入の試験対象地域であり、マレーシアから多くのことを学び最適な実践を採用して行きたいと表明した。対してアンワル首相は、イスラム金融やハラル産業について「議論する準備はできている」と答えた。また、タタールスタンには大きな潜在的な可能性があるので、多くの提案を行い協力して経済を発展させる必要がある点で一致した。

ハラル産業以外にも、今年の秋に両国の10代の若者200名による合同青年キャンプをクアラルンプールで開催する予定であるなど、多様な分野での関係構築を進めている。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

武田薬品など、デング熱の予防と管理の強化に向け地域連携

【クアラルンプール】 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)と武田薬品工業は12日、デング熱の予防と管理の強化に向けた地域連携「デング熱に対する団結(UAD)」を発足したと発表。15日の「ASEANデング熱デー」に合わせ、啓発キャンペーンを展開するなど、今後取り組みを強化していく。

デング熱は気候変動などの影響もあり、世界的に拡大傾向で、特に患者の7割がアジアで占める。マレーシアだけでもこの約1年で1万4,310件が確認され、16人が亡くなったという。2030年までに死亡者をゼロにするという目標が掲げられている
UADは、▽実際に罹患した人や地域に対する「支援」▽対策に向けた政策提言や医師らとの連携などの「アドボカシー」▽予防に向けた啓発活動などの「教育」――という3つの戦略的柱で展開される。

武田薬品は昨年からマレーシアでデング熱ワクチンを販売しており、インド・東南アジア地域責任者のディオン・ウォーレン氏は「UADを通じ、デング熱の発生をより適切に予測、準備、対応できるよう取り組みを強化していく」とした。

また、紙おむつなどを手掛けるユニ・チャームも、ASEANデング熱デーに合わせ、同社の取り組みを発表。マレーシアでは、蚊を寄せつけない成分を含んだカプセル搭載の紙おむつを販売しているほか、低所得者層1,500人に対するアンチモス紙おむつの寄贈、デング熱を媒介する蚊の繁殖を防ぐために地域清掃活動を実施するなど、今後も同社として引き続き啓発活動に取り組んでいくとしている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、6月11日、報道発表資料)