インド人会議が野党連合と協議、BN離脱を検討か

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム政権に協力する国民戦線(BN)所属のインド系政党、マレーシア・インド人会議(MIC)のヴィグネスワラン党首は、野党連合・国民同盟(PN)と非公式協議を行ったことを明らかにした。BN離脱及びPN入りを視野に入れた動きとみられる。

アンワル政権内における冷遇に対する不満やBNの中核である統一マレー国民組織(UMNO)に対する不満が党内部から噴出しているためで、同じくBN構成党である華人系政党、マレーシア華人協会(MCA)もBNからの離脱を仄めかす動きをとっており、かつては隆盛を誇っていたBNが分裂の危機を迎えている。

2022年総選挙では、過半数を取れなかったアンワル氏率いる希望同盟(PH)に対してBNが協力することでアンワル政権が誕生した。大連立の中心となったUMNOは閣僚ポストを7つも与えられたものの、UMNOは2議席しか取れなかったMCA、1議席しか取れなかったMICにはポストを分け与えなかった。

PH構成党から選出された華人閣僚は複数いるが、インド・タミル系の閣僚は1人しかおらず、MICは特に民族政党としての存在意義が問われる事態となっている。こうしたことを背景にこのままBNに属していてもジリ貧になるとの懸念の声が党内から上がっているという。

政治アナリストらはMCAとMICが揃ってBNを離脱した場合、それぞれ独立系政党として活動していく可能性もあるが、PNに合流する可能性も高いとみている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、シナル・デイリー、バイブス、8月16日)

ハラル認証プロセスの効率化で新システム導入、18日に説明会

【クアラルンプール】 マレーシア政府は、ハラル(イスラムの戒律に則った)認証プロセスの効率化に向け、新たなデジタルシステム「Myハラル・イングリディエンツ」を15日から導入する。

新システムはイスラム開発局(JAKIM)を通じ、全ての原材料を記録・評価するために開発された。これまでのハラル認証システム「MyeHALAL」と統合される。MyeHALALに比べ、登録の簡素化や原材料審査の迅速化、サプライチェーン管理の改善が期待されている。従来は書類の提出を何度も求められることが多かったため、そうしたやり取りを減らし、認証処理全体の時間を短縮。マレーシアのハラル分野の国際的な競争力の強化を図る。

18日に新システムに関するオンライン説明会が予定されており、政府は関係企業の担当者らに参加を呼びかけている。
(ビジネス・トゥデー、8月14日)

ペナン州、マグロの水揚げ専用の新港をバタワース近郊に計画

【バタワース】 ペナン州政府は、マグロの水揚げ量を増やすため、国際基準を満たす新たなマグロ・深海漁業港の建設を計画している。国営「ベルナマ通信」が10日、州農業技術・食糧安全保障・協同開発委員会のファミ・ザイノル議長(国政の閣僚に相当)の発言として報じた。

新港は、欧州連合(EU)の基準を満たし、マグロ漁業に特化した設備を備える。建設予定地としてバタワース近郊のバガン・アジャムが選定されており、ファミ氏は「新港開発のための土地はすでに確保されている。開発予算は1億5,000万―3億リンギで、資金調達について投資家らと協議中」と述べた。民間からの資金提供と並行して、土地管理局やその他の関係機関からの技術承認が必要で、港の完成は1年半から2年以内の可能性があると付け加えた。

マレーシア水産局のデータによると、昨年ペナンで水揚げされたマグロの総量は43万1,000キログラム(kg)で、775万8,000リンギ相当だった。今年の水揚げは外国船籍も含めすでに145万kg、2,600万リンギ相当に達しているという。またマレーシア船籍がアフリカのモーリシャスで55万kgのマグロを水揚げしている。

こうした状況を踏まえつつ、新港は国際基準を満たし外国船が寄港しやすく、かつ民間商業港より安価で利用できるよう図る。ファミ氏は「新港は稼働開始から5年以内にマグロの水揚げ量を30―50%増加させる」との期待を示した。将来的には、ペナンをマグロ加工拠点として位置付け、外国漁船が水揚げしたマグロを加工し、台湾や日本などの市場に輸出できるようにしていく方針。
(マレーシアン・リザーブ、ペナン・トゥデー、8月11日、ベルナマ通信、8月10日)

米国の半導体100%関税で、首相「影響の可能性低い」

【クアラルンプール】 トランプ米大統領が半導体に100%の関税を課すと発言したことに関し、マレーシア政府は米国政府に改めて説明を求めている。一方で、アンワル・イブラヒム首相は7日、「マレーシアの半導体産業が深刻な影響を受ける可能性は低い」との見方を示した。

トランプ米大統領の6日の発言を受け、テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は7日午前、米国通商代表部(USTR)と商務省の双方に連絡を取り確認しているとした。また「半導体」に具体的にどのような製品が含まれるのか明示される必要があると断りつつ、「現時点ではマレーシアの対米半導体輸出は関税の対象外になっている」と強調した。

トランプ大統領の発言で特に注目されるのが、「米国に生産拠点を設けると表明した企業などの製品は対象から外す」としている点だ。アンワル首相は「マレーシアの半導体輸出企業のほとんどは米国に拠点を置いているか、もしくは既に米国での投資と生産を継続する約束をしている。このため、深刻な影響を受ける可能性は低いだろう。ただ、例外もあるので、状況を注視していく」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、ザ・サン、フリー・マレーシア・トゥデー、8月7日)

ナンバー自動認識による料金徴収、南北高速道で10月から試験導入

【クアラルンプール】 政府は10月から、自動ナンバープレート認識(ANPR)を用いた通行料金支払いの実証実験を南北高速道路(NSE)で実施する。ANPRを活用し、2年以内に全国規模でのマルチレーン・フリーフロー(MLFF)料金徴収システムの導入を目指していく。

実証実験が行われるのは、NSEのフタン・カンポン(ケダ州)―スンガイ・ドゥア(ペナン州)区間の13カ所の料金所の計35車線。高速道路運営のPLUSマレーシアが提供するモバイルアプリ「JustGO」と組み合わせ、自動でナンバープレートを読み取って支払いを完了することになる。順次、PLUSが運営する高速道路への拡大を図る。

MLFFは、ANPRや、すでに導入されているRFID(無線自動認識システム)などを通じ、非接触式で料金を徴収するシステムで、料金所ブースや開閉バー自体が不要となり、一時停止することなく通行できるため、混雑の緩和が期待できる。

アレクサンダー・ナンタ・リンギ公共事業相は7日に行われた記者会見で、「ANPRは99.98%の検知精度を誇り、支払い回避の余地は極めて少ない」と説明。高解像度カメラとAIを活用し、ナンバープレートと車両のメーカーやモデルとの照合なども行われる。万が一ナンバープレートが判読できない場合でも追跡することが可能という。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・サン、ポールタン、8月7日)

FMMが早急な説明と支援要望、米国の半導体100%関税で

【クアラルンプール】 トランプ米大統領が半導体に100%の関税を課すと発言したことに関し、マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティエンライ会長は、政府に対し早急な説明とより強力な政策支援を求めている。

ソー氏は7日に声明を発表し、マレーシアに生産拠点を持つ米国系半導体企業に大きな影響を及ぼす可能性があると懸念を表明。特に、米国内に生産拠点がある企業などは関税対象から除外するとしていることから、「マレーシアでの事業が今回の新措置の対象となるのかどうか、緊急の正式な説明が必要」と強調した。

さらに、FMMは企業支援策として、規制緩和、専門的アドバイザリーの提供、二国間の協議による市場参入障壁の緩和、資金調達の支援などの実施を政府に求めた。
(エッジ、8月7日)

輸出支援や規制改革など3つの対策に注力、関税交渉合意受け

【クアラルンプール】 政府は、米国との関税交渉合意を受け、輸出業者支援など3つの対策に注力する。テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相が6日、明らかにした。

重点を置く対策は、▽輸出支援プログラム▽規制改革▽グローバルサプライチェーン強化――の3つ。輸出支援では大手や多国籍企業だけでなく、中小企業(SME)も含め支援の裾野を広げる。規制改革では、官僚主義を排除し、不要な規制や承認手続きなどを見直す。3つ目のグローバルサプライチェーン強化では、主要産業分野におけるすべての供給関係者を可視化する「サプライチェーン・マッピング・プロジェクト」を進め、構造的な課題などを特定し、供給網のレジリエンス(強じん性)向上を目指す。

またザフルル氏は数カ月にわたった交渉を振り返り、「最も重要なのは、我々にとって非常に重要な点で譲歩することなく、合意を達成できたことだ」と強調した。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、8月6日)

 

原子力発電所建設、30年までは決定せず=ファディラ副首相

【クアラルンプール】 ファディラ・ユソフ副首相兼エネルギー移行・水利転換相は6日、原子力発電所の開発の決定は2030年以降になると表明した。

MBSB主催の「グリーンエネルギー転換の推進」イベントで講演したファディラ氏は、国際条約、国内規制、人材要件など、必要な枠組みをすべて検討するため原子力専門の組織(NPO)を設立したが、政府はまだ原子力発電所の建設を正式決定していないと言明。決定は2030年以降、規制や技術など全体を検討した後に下されるだろうと述べた。

ファディラ氏は、今後のあらゆる決定において国民の受容性、安全性、そして環境への配慮が中心となると言明。「国民の受容があって初めて、実施が可能になる。安全性、社会福祉、環境などあらゆる側面を考慮する必要がある」とし、原子力に関するあらゆる決定において安全性とセキュリティは譲らない考えを示した。

ファディラ氏はまた、マレーシアが将来原子力発電プロジェクトを進めることを決定した場合、現在海外に駐在しているマレーシア人の原子力専門家を呼び戻す意向を示した。

政府は7月31日に発表された第13次マレーシア計画(13MP、対象期間2026ー30年)で、2031年までに原子力発電を開始し、国のエネルギーミックスの一部に組み込むことを目指す方針を明らかにした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、8月6日)

RON95ガソリン補助金見直し、2025年9月末までに発表へ

【クアラルンプール】 財務省(MOF)は、7月23日のアンワル・イブラヒム首相の声明に基づき、新たな「RON95」レギュラーガソリン補助金制度の詳細な実施計画を2025年9月末までに発表すると発表した。

財務省は下院議会の質疑における書面による回答で、補助金の導入が円滑に進むよう、補助金の対象選定メカニズムを積極的に開発・検証していると言明。「これには国家登録局、道路交通局(JPJ)、マレーシア統計局(DOSM)などの機関から得られるデータの精査が含まれる」とし、「政府はRON95補助金が対象グループに確実に届くよう、より包括的なアプローチを採用することを目指している」と強調した。

財務省によると、新たな補助金制度が実施されれば、対象となるマレーシア国民は多機能身分証カード「MyKad」認証を通じて、1リットルあたり1.99リンギでRON95を購入できるようになる。外国人および補助金の対象外の人は、補助金なしの市場価格(現在の価格は2.61―2.69リンギ)で購入することになる。

アミル・ハムザ第2財務相兼経済相代行は、補助金対象選定メカニズムは3,040万人の個人プロファイルを持つ中央データベース(PADU)のデータも使用すると公表。データには人口統計、居住地、社会経済、職業、収入、教育、自動車の所有、貧困状態、現在受けている支援の種類に関する情報が含まれる。
(ザ・サン電子版、ポールタン、ベルナマ通信、8月5日)

米国製品の98%の関税引き下げ・撤廃、投資貿易相が説明

【クアラルンプール】 米国のマレーシアに対する相互関税の税率が19%に設定されたことを受け、テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は1日、記者会見で交渉内容について説明。関税対象の米国製品全体の98.4%について税率引き下げまたは撤廃で合意したほか、米ボーイング製航空機30機(95億米ドル相当)を追加購入するとした。

ザフルル氏によると、米国製品1万1,444品目のうち1万1,260品目の関税引き下げ・撤廃で合意。内訳は、4,349品目が関税引き下げ、6,911品目(合意品目の61%)が完全撤廃だが、すでに撤廃しているものが6,567品目あるため、新たに撤廃となるのは344品目になると説明した。米国は、191品目の農産物と1,347品目の工業製品に対し、新たに関税撤廃を求めていたと補足した。

ザフルル氏は、同省と米通商代表部は近く共同声明を発表する予定で、新たな関税品目の全リストも別途公表されるという。

ボーイング機に関しては、今年3月にマレーシア航空(MAS)の親会社、マレーシア・アビエーション・グループ(MAG)が30機の購入を発表していたが、さらに30機を追加購入するとした。

またザフルル氏は米国が問題視していたハラル(イスラムの戒律に則った)認証やブミプトラ(マレー人と先住民の総称)優遇の政策の見直し、自動車などへの物品税撤廃には応じなかったと強調。「マレーシアのレッドラインは越えておらず、主権も侵害されていない」と述べた。

さらに希土類元素(レアアース)の独占供給についても否定。一方、半導体および医薬品の米国への輸出税率は0%が引き続き維持される。さらにゴム、パーム油などを中心に関税撤廃を求め交渉を続けるとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、8月1日)