米国の関税措置はマイナスの影響、調査で半導体企業

【クアラルンプール】 半導体、電気・電子機器業界は関税措置を含む米トランプ政権の貿易政策に懸念を抱いており、何らかの関税が課せられた場合、自社吸収は不可能と考えていることが、マレーシア半導体産業協会(MSIA)が実施した第1四半期企業心理調査から分かった。会員企業約300社を調査した。

企業の74%は米国の貿易政策・関税措置はマレーシアへの投資に障害となり、投資先としてのマレーシアの魅力を減じると回答。企業の65%は、貿易政策・関税措置はこの先12カ月間、マレーシアの電気・電子業界にマイナスの影響を与えると回答した。ほとんどの電気・電子機器、半導体は相互関税の対象外だが、現在、見直しが行われており、業界は警戒している。

MSIAはウォン・シューハイ会長名の声明で「関税率、輸出規制のたびたびの変更はサプライチェーンを混乱させ、コスト増、世界経済の減速をもたらした。混乱は世界的に需要を減少させ、マレーシアなどへの影響は必然だ」とした。

さらに、マレーシアが50年の長きにわたり米半導体大手の成長に貢献したことを考慮し、マレーシア政府がより良い関税条件を米国との交渉で引き出せることを望むとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、エッジ、5月16日)

第1四半期の経常収支、167億リンギの黒字を計上

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局によると、2025年第1四半期の経常収支は166億9,700万リンギの黒字で、前期の129億700万リンギから黒字幅が大幅に増加した。

モノの貿易収支の黒字が前期の369億3,500万リンギから384億9,100万リンギに増加。一方、サービス収支の赤字は前期の10億1,400万リンギから34億3,300万リンギに拡大した。第一次所得収支の赤字は前期の171億3,400リンギから171億3,500万リンギに微増、第二次所得収支の赤字は前期の58億8,000万リンギから12億2,700万リンギに減少した。

金融収支の赤字は前期の93億3,800万リンギから203億1,400万リンギに拡大。直接投資の純流入は前期の134億5,800万リンギから、120億9,400万リンギに減少した。一方、証券投資の純流出は前期の419億8,900万リンギから483億2,500万リンギに増加。金融派生商品は17億1,700万リンギの純流出(前期は26億7,900万リンギの純流入)、その他の投資の純流入は176億3,400万リンギ(同165億1,400万リンギ)となった。

第1四半期のGDP成長率はプラス4.4%、貿易は鈍化

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中央銀行バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)は16日、2025年第1四半期(1ー3月)の国内総生産(GDP)成長率が前年同期比プラス4.4%だったと発表した。4月に統計局が発表した事前予測値から変化はなかった。

堅調な消費者需要と設備投資に支えられて、14四半期連続でプラス成長を維持したが、鉱業輸出の減少が主な要因となって輸出の伸びが鈍化したことで前期の4.9%を下回った。サービス業が引き続き経済成長を牽引し、鉱業・採石業を除くすべてのセクターがプラス成長を記録した。需要面では、民間最終消費支出と総固定資本形成が成長を牽引した。

サービス業は卸売・小売業、運輸・倉庫、ビジネス・サービスの業績向上により、前期の5.5%には及ばなかったものの5.0%のプラス成長となった。セクター別の成長率が最も高かったのは建設業で、すべてのサブセクターの堅調な伸びに支えられ、前期のプラス20.7%は下回ったものの14.2%と大幅成長となった。

製造業は電気・電子・光学製品(7.8%増)、植物性・動物性油脂・食品加工(9.2%増)、石油・化学品・ゴム・プラスチック製品(2.6%増)が下支えし、前期(プラス4.2%)とほぼ同水準の4.1%のプラス成長となった。農業は前期のマイナス0.7%からプラス0.6%に改善したが、鉱業は原油・コンデンセートと天然ガスが減少したことから、前期のマイナス0.7%からマイナス2.7%に減速した。

国内需要は前期のプラス6.4%からプラス6.0%に下がり、民間消費と民間投資はそれぞれ5.0%、9.2%成長となった(前期はプラス5.3%、プラス12.7%)。公共支出は前期のプラス4.0%からプラス4.3%に加速。公共投資もプラス10.0%からプラス11.6%に加速した。前期はプラス8.7%だったモノとサービスの輸出はプラス4.1%に、輸入もプラス5.9%からプラス3.1%にそれぞれ減速した。

中銀は声明の中で、2025年の成長については、世界的な政策不確実性の高まりが世界需要を圧迫する中で、貿易摩擦の激化が国内の成長見通しに影響を与えるだろうと指摘。当初の予測である4.5―5.5%よりも若干低い成長率となる可能性が高いとした。その上で、米国の「相互関税」実施に先立ち、電気・電子などの輸出活動の前倒しや観光客の増加によってある程度緩和される可能性があるとし、底堅い国内需要も引き続き成長を支えるだろうとした。

第1四半期の出生数、11.5%減の9万人=統計局

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局は2025年第1四半期の人口統計を発表。出生数は9万3,500人で、前年同期比で11.5%減少した。第1四半期での出生数が10万人を切ったのは、2000年以降の25年間で初。

男児が6,318人減の4万8,124人、女児は5,795人減の4万5,376人だった。民族別ではマレー系が1.3ポイント増え68.8%で、ブミプトラ(マレー人と先住民の総称)全体で81.4%を占めた。華人は1.0ポイントダウンの8.6%、インド系は0.4ポイントダウンの3.8%だった。

死者数は前年同期比で2.0%減の4万8,130人となった。男性が548人減の2万7,533人、女性は439人減の2万597人だった。

総人口は3,419万2,800人となり、前年同期(3,390万人)比で0.9%の微増となった。マレーシア国民が全体の90.1%の3,080万人、非国民が340万人となった。

男性は前年同期から10万人増え1,790万人、女性も同じく10万人増の1,620万人となった。年齢別の比率では0-14歳が760万人、15-64歳が2,400万人、65歳以上が260万人となった。民族別では、マレー系が全体の58.1%にあたる1,790万人、華人は22.4%、インド系は6.5%、その他ブミプトラは12.3%を占めた。州別ではセランゴール州が全体の21.6%の739万6,900人で最も多く、これにジョホール州、サバ州が続いた。

アジア太平洋の越境不動産投資、マレーシアへの関心に高まり

【クアラルンプール】 国際投資家によるアジア太平洋地域での越境不動産投資では日本、韓国、豪州への投資が主だが、マレーシアに対する関心が高まりつつある。不動産サービスのナイト・フランク・マレーシアが域内における商業不動産投資報告で明らかにした。

第1四半期の商業不動産に対する域内の越境投資は95億米ドルで、前年同期の2倍。キーツ・ウーイ代表によると、マレーシア経済の基礎的条件は改善し、不動産投資信託市場は進化し、規則も透明性を増している。投資家はマレーシアへの投資に依然、慎重だが、関心は見られ、特にクアラルンプール、ペナン州の工業回廊、ジョホール州の物流センター、住宅に関する問い合わせが増えているという。

報告書は取り組み課題として、不安定な為替相場、監督の枠組み、小売り施設・住宅の供給過剰を挙げており、政策面で投資歓迎の姿勢がより明確になれば、下半期にマレーシアへの投資が活発になると予想している。
(エッジ、ザ・スター電子版、ビジネス・トゥデー、5月6日)

トヨタのハイラックス、昨年の盗難被害最多で370台

【クアラルンプール】 マレーシアで昨年最も盗難被害に遭った自動車はトヨタのピックアップトラック「ハイラックス」で370台だった。保険会社の統計に基づくものとして、英字紙「ニュー・ストレーツ・タイムズ」が報じた。

そのほか、▽ウィラ(プロトン)142台▽フォーチュナー(トヨタ)123台▽イスワラ(プロトン)92台▽サガ(同)92台――がトップ5になった。盗難被害件数は2023年の4,370台に対し、昨年は3,925台と約1割減少した。

自動車盗難・事故削減協議会(VTAREC)のコーディネーター、マス・ティナ氏は「国産車の場合、古いモデルが多く、盗難後に解体されスペアパーツとして国内で転売されるケースが多い。国産車以外は、国外に密輸されると考えられる」と分析する。

二輪車ではヤマハの「135LC」の528台が最多で、▽Y15ZR(ヤマハ)327台▽ウェーブ(ホンダ)194台▽125(ヤマハ)109台▽C100(ホンダ)105台――と続いた。

物理的な鍵ではなく、小型のリモコンキー(キーフォブ)が主流になっており、ハッキングしてロックを解除し、そのままエンジンを始動して盗み去る手口が多いため、車の場合はハンドルロックや、「ファラデーバッグ」などと呼ばれる信号遮断機能のあるものに鍵を保管するなどの対策が効果的という。二輪車の場合は、チェーンで車両を固定するよう呼びかけている。

また、事故に遭う頻度が高かったものとして自動車では▽マイヴィ(プロドゥア)2万4,628件▽サガ(プロトン)1万6,159件▽シティ(ホンダ)1万3,388件――となった。二輪車ではヤマハの135LCの約3,000件と、Y15ZRの2,154件で、バイク事故全体の3割近くを占めた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月5日)

世界報道自由度ランキング、マレーシアは88位に上昇

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 5月3日の世界報道自由デーに合わせて「国境なき記者団(RSF)」が発表した2025年度版の「世界報道自由度インデックス」で、マレーシアは前年(107位)から19ランク上昇し、世界180カ国・地域中88位となった。

同ランキングは、▽政治▽経済▽法律▽社会▽安全ーーの5指標に基づいて報道の自由度をランキング化したもの。マレーシアは「安全」は67位から90位に下がったものの、「政治」は106位から92位、「経済」が82位から60位、「法律」は156位から133位、「社会」が119位から81位にそれぞれ改善した。

昨年の34ランクの大幅ダウンから一転し大幅アップとなった。最新のマレーシアのスコアは56.09で、前年の52.07から改善した。

RSFはマレーシアについて、「政治」と「法律」のスコアが引き続き低いレベルにとどまっていると指摘。当局が調査報道記者を付け狙っていたり、王室問題が人種や宗教に関する議論と同様に極めてデリケートな問題となっているとし、「王室を批判しているとみなされるいかなる論評や報道も訴追の対象となる可能性があり、この問題に関する自己検閲につながっている」と批判した。

東南アジアでトップはタイ(85位)で、ブルネイ(97位)、フィリピン(116位)、シンガポール(123位)、インドネシア(127位)、ラオス(150位)、カンボジア(161位)、ミャンマー(169位)、ベトナム(173位)となった。全体トップはノルウェーで、日本は66位だった。

22年の女性企業数は21.9万社で、国内経済の3.6%を生産

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局の4月30日の発表によると、2022年において女性が所有する企業は国内の総事業所数の20.1%にあたる21万9,015社で、総生産額は1,369億リンギとなり国内経済の3.6%を占めた。

「2023年経済センサス」に基づき、事業、不動産、その他の資産に対し、全額または一部を女性が所有する事業所を抽出した。前回の2015年の調査に比べ、女性企業事業所数の年間成長率は2.3%、総生産額では7.0%増となった。また、総生産額の増加に伴い、女性企業の総付加価値としては、年間6.5%の成長率で、614億リンギに達した。

部門別では93.6%がサービス部門で、総生産額の60.7%にあたる830億リンギを生み出した。製造業は女性企業数の割合では3.9%だったが、総生産額では前回から13.8%増と最も高い伸びを示した。

州別の女性企業数では、セランゴール州(15.9%)が最も多く、サバ州(10.4%)、クランタン州(8.9%)が続いた。付加価値でみると、セランゴール州が182億リンギ(29.6%)、次いでクアラルンプール市107億リンギ(17.4%)、ジョホール州74億リンギ(12.1%)となり、上位3つで全体の6割近くを占めた。

昨年のインフレ率は1.8%、ナシレマは13年間で81%高騰

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局は29日、2024年通年の消費者物価指数(CPI=2010年を100として算出)の分析報告書を発表。CPIは全体で132.8となり、前年の130.4に対するインフレ率は1.8%となった。前年のインフレ率の2.5%からは鈍化した。

13の調査対象項目のうち、衣料・履物が0.3%、通信費が1.5%の下落で、それ以外の11項目では上昇した。そのうち、外食・宿泊(3.1%)、食品・飲料(2.0%)、保健(1.8%)、教育(1.5%)、交通費(1.0%)、家具・家庭用品等(0.7%)の6項目で前年の上昇率を下回り、インフレ率の鈍化につながった。一方、家賃・光熱費(3.0%)、雑品・サービス(同)、娯楽・文化(1.8%)、酒類・たばこ(0.7%)、保険・金融(0.3%)は前年を上回った。

州ごとにみると、1.8%を上回ったのは、ペナン州の3.0%を筆頭に、パハン州、サラワク州、セランゴール州の4州だった。東南アジア諸国連合(ASEAN)9カ国で比較すると、マレーシアのインフレ率を上回ったのは、ラオスの23.1%を最高に、ベトナム、フィリピン、シンガポール、インドネシアの5カ国だった。

さらに、マレーシアの定番食品11品目について2011年と比較。国民食ナシレマは11年の2.03リンギから24年には3.68リンギに、チキンサテーは11年の1本0.51リンギから24年に1.09リンギとなり、それぞれ81.3%、113.7%のアップとなった。

世界銀行、マレーシアの今年GDP成長率を3.9%と予測

【クアラルンプール】 世界銀行は、厳しい世界経済環境を理由にマレーシアの経済成長が2025年に鈍化すると予測。3.9%との低めの最新の成長予想を示した。2024年のGDP成長率は5.1%だった。今年第1四半期は速報値で4.4%となっている。

世界銀行のマレーシア担当、アプルバ・サンギ主任エコノミストは、「あらゆる留意点を踏まえた予測」だとしている。世界銀行はマレーシアを含むアジア太平洋諸国の成長率見通しを発表し、中国は4%、インドネシアは4.7%、フィリピンは5.3%、カンボジアは4%、タイは1.6%、ベトナムは5.8%、としている。

世界銀行は、世界環境の悪化に起因する外的要因により、輸出が大きな逆風に直面するだろうと指摘。国内需要と個人消費は引き続き成長を牽引し、また民間投資は複数年にわたる継続的な投資と、既に承認されたプロジェクトの実施によって引き続き支えられると見込まれるが、主に貿易と投資をめぐる不確実性の高まりに起因する、いくつかの重大な下振れリスクにさらされているとした。マレーシアについては、国内リスクは国内政策によるインフレ圧力と、悪天候による供給混乱の可能性に起因しているとした。

今年のマレーシアの成長率については、国際通貨基金(IMF)が先ごろ4.7%から4.1%に引き下げたが、世界銀行による予測はIMFの予測よりもさらに低くなっている。マレーシア政府も最近の国際情勢を踏まえ、4.5―5.5%としていた公式成長率予測を下方修正する意向を示している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、4月26日)