アジア太平洋の越境不動産投資、マレーシアへの関心に高まり

【クアラルンプール】 国際投資家によるアジア太平洋地域での越境不動産投資では日本、韓国、豪州への投資が主だが、マレーシアに対する関心が高まりつつある。不動産サービスのナイト・フランク・マレーシアが域内における商業不動産投資報告で明らかにした。

第1四半期の商業不動産に対する域内の越境投資は95億米ドルで、前年同期の2倍。キーツ・ウーイ代表によると、マレーシア経済の基礎的条件は改善し、不動産投資信託市場は進化し、規則も透明性を増している。投資家はマレーシアへの投資に依然、慎重だが、関心は見られ、特にクアラルンプール、ペナン州の工業回廊、ジョホール州の物流センター、住宅に関する問い合わせが増えているという。

報告書は取り組み課題として、不安定な為替相場、監督の枠組み、小売り施設・住宅の供給過剰を挙げており、政策面で投資歓迎の姿勢がより明確になれば、下半期にマレーシアへの投資が活発になると予想している。
(エッジ、ザ・スター電子版、ビジネス・トゥデー、5月6日)

岸田前首相が来馬、脱炭素化推進でアンワル首相らと会談

【クアラルンプール】 岸田文雄前首相が5ー6日の日程でマレーシアを訪れ、アンワル・イブラヒム首相、ファディラ・ユソフ エネルギー移行・水利転換相、ニック・ナズミ天然資源・環境持続可能性相と、それぞれ個別に会い、脱炭素化などをテーマに意見交換した。

石破茂首相の特使である岸田前首相は、首相在任時の2022年に自ら提唱した「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想の議員連盟最高顧問として来馬した。AZEC構想は、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)などが連携して、脱炭素化と経済成長を目指す取り組みで、今年10月にマレーシアでAZEC首脳会議が開催される。

アンワル首相への表敬訪問は、特産品のドリアンをアンワル首相がプレゼントするなど、和やかな雰囲気で行われた。アンワル首相はASEAN議長国としてAZECへの協力を強調。さらなる推進に向け、分野横断的なエネルギー協力センターをマレーシアに共同で設置することなどについても話し合われたという。

また、首相府相(サバ・サラワク州問題担当)を兼任するファディラ氏とは、サラワク―マレー半島間の送電網整備を含め、エネルギー分野などでの一層の技術協力の可能性を検討。ニック・ナズミ氏とは、二国間クレジット制度(JCM)の協力覚書への署名に向けた作業を加速させることなどについて議論した。
(ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、5月6日、外務省発表資料)

米国の関税措置の影響産業向け特別優遇措置を検討

【クアラルンプール】 政府は、米国の関税措置の影響を受ける産業を支援するための特別優遇措置を導入する方針だ。アンワル・イブラヒム首相が5日に発表した対応策に対し、さらなる追加パッケージとなるもので、テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相が6日、明らかにした。

ザフルル氏は、関税措置の撤廃に向け米国との交渉に注力していると断ったうえで、7月をめどに企業への影響範囲などを特定し、優遇措置を発表したいとした。詳細は明らかにされなかったが、電気・電子機器、医療機器、医薬品、自動車・航空宇宙、機械・設備、家具、パーム油・ゴム製品など、影響を受けやすい産業別に検討する模様。

ザフルル氏は「可能な限りの支援を目指しているものの、財政的にも慎重に評価する必要があり、よく検討して最終決定したい」と付け加えた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、エッジ、ベルナマ通信、5月6日)

米国の関税引き上げへの対応策を発表、中小企業への支援など

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は、5日に開催された特別国会で米国の関税引き上げへの対応策を発表。新市場開拓の取り組みを加速させるため、マレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)に予算5,000万リンギを追加で割り当てると明らかにした。

アンワル首相は、「実施する措置には、国際的な貿易博覧会・展示会への参加を通じて中小企業(SME)が新規市場へ進出できるよう支援することや、海外のバイヤーとのビジネスマッチングを促進することなどが含まれる」と言明。また人工知能(AI)などの国家優先分野において、一流大学の学者を含む世界的な企業や人材をマレーシアに誘致するための取り組みを引き続き支援していくと述べた。

アンワル首相はまた、投資家向けサービスとプロジェクト承認プロセスの監視のため、投資家のためのワンストップセンターであるマレーシア投資促進センター(IMFC)をペナン州とサラワク州に拡大すると発表した。IMFCは2023年12月にクアラルンプールに、2025年2月にはジョホール・シンガポール経済特別区(JS-SEZ)のフォレストシティにそれぞれ開設された。

アンワル首相はこのほか、米国の影響を受ける中小輸出企業が商業銀行から融資を受けられるよう、政府がビジネス融資保証会社の保証枠を10億リンギ増額することに合意したと公表。さらに中小企業の起業家を支援するため、開発金融機関を通じて提供される5億リンギのソフトローンの追加を承認したと述べた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、5月5日)