【イスラム金融の基礎知識】第568回 比・ダバオ市、イスラム金融普及のためマレーシア領事館と連携

第568回 比・ダバオ市、イスラム金融普及のためマレーシア領事館と連携

Q: ダバオ市でイスラム金融のフォーラムが開催されたようですが?

A: フィリピンでは5月12日に中間選挙が実施された。6年に1度の大統領選挙の中間に行われる各種の選挙の総称で、マルコス大統領派とドゥテルテ前大統領派の対立という構図で選挙戦が展開された。その中で注目されたが、オランダのハーグで身柄を拘束されているドゥテルテ前大統領が、古巣で人口およそ180万人の国内第3の都市、ダバオ市長選挙に立候補、当選を確実なものとしたことだろう。現職で息子のセバスチャン・ドゥテルテ氏も副市長選に当選(市長選挙と副市長選挙は別々に行われる)、国外の父に代わって行政の運営に当たるとみられている。

中間選挙が明けた5月15日、在ダバオ・マレーシア総領事館とダバオ市役所、市イスラム事務局、および地元の複数のイスラム団体が共同で、イスラム金融のフォーラムを開催した。主な出席者は地元企業やムスリム起業家たちで、イスラム金融の基本的な仕組みや融資のあり方などの説明が行われた。

ダバオ市は、ハラル条例を施行するとともにハラル産業評議会、さらには市役所内にイスラム事務局を設置している。いわば、ハラル産業を制度化したフィリピンでも数少ない都市の一つであることを、ダバオ市は標榜している。これは、セバスチャン・ドゥテルテの政策である「ムスリム・コミュニティに平等な経済的機会を与え、これを促進する」という考えに基づくものだ。

出席したガブリエル・ナカン事務局長は、「フォーラム参加者にはダバオ市がハラル産業振興の一環としてイスラム金融を推進していると理解してもらえただろう」と語った。またサーレフ領事は、ダバオ市でイスラム金融が導入されることを受けて、「イスラム金融を経験する機会は近いだろう」と語った。また、こうした取り組みを通じて、ダバオ市がフィリピンにおけるハラル産業の中心となることに期待を示した。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

フィッチグループのBMI、マレーシアGDP成長予想を下方修正

【クアラルンプール】 フィッチ・ソリューションズ傘下の調査会社、BMIはマレーシアの今年の国内総生産(GDP)増加率予想を5.0%から4.2%へ下方修正した。政府目標は4.5-5.5%。輸出減の懸念と投資の冷え込みが理由だ。

輸出は2、3月に増加したが、米政府の関税を回避するため電気・電子機器メーカーが前倒し輸出した結果で、輸出増の傾向が続くことはないとBMIは見ている。対米輸出の20%近くは半導体が占めており、これがマレーシアの脆弱性だという。
BMIは投資の減速も予想している。米トランプ政権の政策は世界の直接投資に影響し、投資家はデータセンター投資を減らすという。

マレーシア統計局によれば、建設投資の増加率は昨年第4四半期の23.1%(前年同期比)に対し今年第1四半期は16.6%に減速した。この傾向は続く見通しだという。
(ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、5月20日)

「キャンパススタイル」マレーシア1号店、開業1周年で記念企画

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 コクヨ(本社・大阪市)の直営店「キャンパススタイル(Campus STYLE)」マレーシア1号店がこのほど開業1周年を迎えることを受け、5月23日―6月30日に「オープン1周年記念企画」を実施すると発表した。

マレーシア1号店は2024年5月にセランゴール州ペタリンジャヤの「スターリング・モール」内にオープン。1年間で1万5,000人以上が来店した。女性顧客が多く、「イラストレーターノート」などのかわいいデザインのものや、マレーシアの絶滅危惧種であるマレーバクが描かれている「キャンパスノート・インデンジャード アニマルズデザイン」、機能的なペンケース「タカシャ ハコハコ」や「キャンパス スタンプマーカーペン」などが人気商品となっているという。

「オープン1周年記念企画」では、一定金額以上の購入者を対象に「オリジナルキーチェーン、オリジナルステッカー、キャンパスノート」セットをプレゼントする。またカラーや柄を揃えて文房具を購入する人が多いことから、プレゼントにも最適な「カラーコーディネート文房具セット」を用意した。

ドンキ、マレーシア産品の日本進出支援で国内取引物価省と提携

【クアラルンプール】 国内取引物価省(KPDN)は、日系ディスカウントストア「JONETZ by DON DON DONKI」(ドンキ)と提携し、マレーシア産品の日本市場進出を支援するプログラムを展開する。

プログラム名は「マレーシア産、日本の味」で、19日からドンキの首都圏クランバレーの4店舗でスタートした。地元の5社・ブランドによる、在庫保管単位(SKU)で計281品目が販売されている。今年8月には日本国内の同系列の「ドン・キホーテ」3店舗で、19社・ブランドの70品目(SKU)を加えた拡大展開が予定されている。

ドンキの親会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは日本国内で640店舗、アジアだけでも50店舗を展開。KPDNの貿易・流通・ビジネス部門のシニアディレクター、ロハイジ・バハリ氏は「ドンキの存在は、マレーシア企業にとって海外市場進出の戦略的な機会につながる」とし、単に商品を紹介して認知度を高めるだけでなく、日本人に好まれる包装や品質などを参考にしながら、生産力の向上を図るという。
(ベルナマ通信、5月19日)

三井化学と山九、クラン港にコンテナ輸送ハブ拠点開設

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 三井化学(本社・東京都中央区)は20日、山九(同)と協業し、セランゴール州のクラン港に海上コンテナ輸送用の物流ハブ拠点を設置したと発表した。

新物流拠点は4月から本格稼働。化学産業にとって重要な、危険品や温度管理品のコンテナを長期保管できる機能に加え、貨物をデバンニング(コンテナを開けてから貨物を荷下ろしすること)して倉庫に保管したのちに第3国へ再輸出する機能もあり、東南アジア・インド・欧州地区のさまざまなニーズなどにも柔軟に対応可能という。

新物流拠点に関しては、ウクライナ情勢などによる物流の不安定性への懸念を背景に、国土交通省が2022年度から実施した、国際物流の多元化に向けた実証実験に両社で参加。従来の日本向けの製品配送をメインとした海外物流拠点ではなく、主に日本からインド・中東・欧州向け輸出の「中継貿易拠点」としての機能と輸送ルート開発に取り組んでいた。