【クアラルンプール】 米国が4日付けで鉄鋼・アルミニウムに対する関税を従来の25%から2倍の50%に引き上げたことを受け、マレーシアの産業界に懸念が広がっている。

マレーシア鉄鋼産業連盟(MISIF)のロシャン・M・アブドラ会長は「マレーシアは米国に大量の鉄鋼を輸出しているわけではないが、今回の関税引き上げは、下流鉄鋼メーカーに重大な影響を与えるだろう」と述べた。

また、米ASEANビジネス協議会(USーABC)のマール・ミーリー副会長兼最高政策責任者は「マレーシアにすぐに深刻な影響を与えるわけではないかもしれないが、将来的にはグローバルサプライチェーンの中でマレーシアの産業にも直接的な影響を与える可能性がある」と警鐘を鳴らす。

2023年のマレーシアの鉄鋼総輸出量820万トンのうち、米国市場は3.9%(32万2,282トン)だった。一方で、トランプ政権の関税措置の影響で、今年に入りマレーシア企業などに、中国を中心とした国々から鉄鋼の輸出オファーが急増。さらに今回の関税倍増措置で、これまで米国に輸出されていた鉄鋼がさらに東南アジアに流入し供給過剰を招き、マレーシアも価格圧力と貿易変動の影響をより強く受けると懸念する声が上がっている。

またマレーシア政府は先月、ブリキ製品に関し、日本などに反ダンピング関税を課したが、こうしたダンピングが激化し、対応に追われる可能性もある。

マレーシアと米国の関税交渉の一方で、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国としてどう対処すべきか、MISIFなどは政府に対し迅速な対応を求めている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月2日、エッジ、ベルナマ通信、6月4日)