
第574回 バングラデシュのイスラム銀行、合併に向けた動き
Q: バングラデシュでは、イスラム銀行の再編が行われるそうですが?
A: バングラデシュ中央銀行は6月、5行のイスラム銀行を対象とする合併を提案、8月には各銀行の幹部と中央銀行とで会合が行われた。合併の背景には、昨年8月に崩壊したハシナ前政権と強い関係をもち、その後経営悪化が発覚した銀行の救済があるとみられる。
バングラデシュにはイスラム銀行は10行あり、その総資産は同国の銀行資産の21.45%を占めている(2025年1月現在)。しかしながら、複数のイスラム銀行の経営母体であるSアラム・グループが、ハシナ前政権との結び付きが強いとされてきた。昨年の政変でハシナ政権の崩壊を受けて、今年に入りアジア開発銀行の支援を受けた著名な監査法人が各行の経営実態の調査を行った。その結果、複数のイスラム銀行で、不良債権比率が各行が公表していた20%程度ではなく、実際には90%を超えていたことが判明した。
そこで6月、中央銀行のアフサン・H・マンスール総裁は、国内金融部門の健全化のため経営不振のイスラム銀行の合併を提案した。対象は、ファースト・セキュリティー・イスラミ銀行、ソーシャル・イスラミ銀行、グローバル・イスラミ銀行、ユニオン銀行、バングラデシュ輸出入銀行の5行である。当初はもう1行加える予定であったが、外国人・企業の持株比率が高く交渉の難航が予想されるため、合併案から外れた。
合併案に対しては、各行とも素直に受け入れているわけではなく、ある銀行は「他の4行よりも経営が健全だ」と主張、8月の中銀との会合に頭取は参加しなかった。もしもこの5行が合併した場合、総資産の合計は約2兆1,960億タカ(約2兆6,600億円)、支店数は1,145となり、現在最大のソナリ銀行を超えて同国第1位の規模の銀行となる見通しである。合併作業は、政権や選挙の動向、各行の抵抗などから時間がかかるだろうと見られている。
福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |