【総点検・マレーシア経済】第532回 2026年予算発表、その特徴は

第532回 2026年予算発表、その特徴は

10月10日、マレーシアの2026年予算が下院に上程されました。税収は2025年見込みより2.7%増の3431億リンギの見込みとなっています。経常支出は1.8%増に抑え、開発支出も810億リンギと前年の800億リンギからほぼ横ばい、結果として財政赤字のGDP比は2025年の3.8%から3.5%に減少する見込みです。

税収の伸びは、SST(11.6%増)、所得税(9.4%増)、法人税(6.5%増)の増収に支えられています。一方で、ペトロナスによる配当は前年の320億リンギから200億リンギへと大きく減少し、政府の投資収入全体でも504億リンギから367億リンギへと137億リンギの大幅減となる見込みです。それでも、税収全体としては経済成長や細々とした増税、優遇政策の廃止などの積み重ねで2.7%増を確保しています。

 

経常支出は3382億リンギと前年の3322億リンギから1.8%増に抑えられていますが、それに貢献したのが補助金の改革です。9月末のRON95の改革で一巡した補助金改革によって、補助金・社会扶助は前年の571億リンギから490億リンギと14.1%減となっています。2024年は674億リンギだったので、2年間で184億リンギを削減したことになります。一方で、公務員給与や退職金の支払い、債務の支払いなどはジワジワ増加しています。

 

開発支出はほぼ横ばいですが、金額として大きく増えているのは交通分野で、これはインフラ開発関連が増加するためです。一方で、大幅に減少しているのは農業分野で、前年の29.4億リンギから5.5億リンギに81.3%も減少しています。ただ、これは灌漑・排水事業が環境分野に、農業融資が金融分野の支出として再分類されたことが原因で、実質的な減少ではありません。

 

財政赤字を抑えるための、細かいやりくりに加えて、財政再建に貢献していると思われるのは治安(Security)部門への支出が117.4億リンギと前年の118.6億リンギから1%減少していることです。国防関連に絞っても78億リンギから80億リンギへの微増に留まっています。地政学的な変化にともなって世界中で防衛費が大幅に増加している中で、それがほとんど横ばいですんでいることは財政への負担を軽くしています。ASEAN諸国との友好関係、また、ASEAN自体の中立性が大きく貢献していると言えます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

家庭からの電子廃棄物、企業責任でリサイクル法制化

【クアラルンプール】 政府は、電子廃棄物(eーwaste)管理に関する法的枠組みを策定中だ。拡大生産者責任(EPR)を導入し、メーカーや小売業者などに一般家庭からの廃棄物の回収・リサイクルの責任を負わせる。

今回の枠組みでは、家庭から出されるテレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、パソコン、携帯電話の6つが主な対象となる。EPRは、製品の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたり、生産者(メーカー、小売業など)が責任を負う考え方。日本では、2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」などを通じ導入されているが、マレーシアではこれまで法的には盛り込まれていなかった。

電子廃棄物の処理業者には「1974年環境品質法」に基づくライセンス取得と、環境影響評価(EIA)の提出を義務づけるという。政府は今後、環境局(DOE)を通じ、企業や一般などからパブリックコメントを募るなど、最終的な法制化を進める。

また、天然資源・環境持続可能性相を兼任するジョハリ・アブドル・ガニ農園一次産業相は、電子廃棄物の輸入はすでに禁止されていることを改めて強調。加えて、国際協力機構(JICA)を通じて日本政府が技術支援を提供すると言明した。
(ビジネス・トゥデー、10月16日)

24年の出生数は41.5万人で9.0%減、80年以降で最低

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局は「2025年版マレーシア人口動態統計」を発表。2024年の出生数は41万4,918人で1980年以降で最低となり、2023年の45万5,761人から9.0%(4万843人)減少した。

男児は21万3,919人(51.6%)、女児は20万999人(48.4%)で、男児が女児を上回った。

民族別では2023年はマレー系が30万5,494人(全体の67.0%)だったが、2024年には27万2,718人(65.7%)に減少。インド系も2万64人(4.4%)から1万7,914人(4.3%)に減少した。一方、華人系は4万4,818人(9.8%)から4万4,914人(10.8%)に増加した。

出生数の減少により、粗出生率(CBR、人口1,000人あたり)は前年の13.6人から2024年には12.2人に低下した。CBRはすべての州で前年比で減少したが、トレンガヌ州は19.3人で最も多く、ペナン州は10.1人と最も少なかった。

合計特殊出生率(TFR)は、前年の1.7人から2024年には1.6人に減少。マレー系とインド系は前年比で減少したが、華人系は2024年に0.9人で横ばいだった。マレー系は1.9人で最も高く、インド系は1.1人だった。

2024年の死亡者数は19万8,992人で、2023年の19万6,965人から1.0%(2,027人)増加した。粗死亡率(CDR、人口1,000人当たり)も2023年の5.9人から2024年は5.8人に減少した。男性の死亡者数は11万3,866人(全体の57.2%)で、女性の死亡者数は8万5,126人(42.8%)だった。

民族別ではマレー系が2023年の10万1,829人(51.7%)から2024年には10万3,118人(51.8%)となった。華人系とインド系の比率はそれぞれ26.3%と8.4%で横ばいだった。

外食「シュガーバン」が半島部に進出へ、セダプリシャスと提携

【クアラルンプール】 東マレーシアで外食チェーン「シュガーバン」を展開するシュガーバン・コーポレーションは、マレーシア半島部への進出拡大に向けてセダプリシャスと地域フランチャイズ開発契約を締結した。

シュガーバン・コーポレーションの子会社で物流を担当するSBサプライズ&ロジスティックが、セダプリシャスとマスターフランチャイズ契約を締結した。セダプリシャスは10年契約に基づき、シュガーバンの店舗開設・運営、フランチャイジーの募集・サポートに関する独占権を持つ地域開発業者となる。2026年に500万リンギ、2027年に1,500万リンギ、2028年に2,800万リンギの各年間売上目標の達成を目指す。

親会社のボルネオ・オイルのジョセフ・アンブローズ・リー社長は、半島部が東マレーシアの人口の3倍を占める成長市場であることを強調。半島部への進出により「シュガーバン」を全国的な存在としグローバルなビジネスチャンスの基盤を築くことになると述べた。

「シュガーバン」は40年以上前にサラワク州で創業。ローストチキンやセイボリーライスのほか地元料理が看板商品で、現在はサバ州、サラワク州、ブルネイを中心に104店舗以上を展開している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ボルネオポスト、マレーシアン・リザーブ、10月15日)