パイプライン火災によるガス供給が全面再開、火災原因は軟弱地盤

【クアラルンプール】 ガス・マレーシアは2日、セランゴール州プトラハイツで4月に発生した送電パイプラインの大規模火災に関し、ガス供給を全面的に再開したと発表した。

再開に先だって、労働安全衛生局(DOSH)が第三者機関とともに現地の安全性を確認。事故で損傷したパイプの代替として、長さ約210メートルの仮設パイプラインが設置され、漏洩や圧力低下などもみられなかったことから、供給制限が解除された。

またDOSHは事故原因について、地盤の不安定性によるものと説明。軟弱で湿った地盤によってパイプラインが適切に支えられず、物理的に破損が生じたため、ガス漏れが発生し発火・爆発に至ったとしている。セランゴール州警察も過失などは認められなかったとして、捜査を打ち切った。

一方、ペトロナス・ガス(PGB)は2026年第3四半期を目標に、仮設パイプラインを改めて交換する作業に入る。長期的な安全性と耐久性を確保するため、複数の地質工学調査に基づき、コンクリートスラブ構造上に敷設する予定で、現在エンジニアリング設計の最終調整中という。DOSHはPGBの親会社の国営石油会社ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)に対し、緊急時にガスの迅速な遮断を可能にする追加の安全対策も指示した

火災により、住宅81棟が全焼、81棟が一部損壊。復旧に2年以上かかると見込まれている住民もいて、一部の住民からは、独立機関によるさらなる原因調査を求める声も上がっている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、7月2日、ザ・スター、6月30日、7月1、2日、ベルナマ通信、7月1日)

セルコムDigi、電子インボイスの発行開始

【クアラルンプール】 携帯電話サービスのセルコムDigiは、内国歳入庁の規定に準拠した電子インボイスの発行を開始した。ユーザーの利便性を考慮した。

電子インボイスが発行されるのは、セルコムDigiのホームページを通じた買い物、モバイルアプリを利用した買い物を含むセルコムDigiとの直接取引。ディーラーや再販業者、第3者プラットフォームを通じた取引の場合、購入者は当該事業者に電子インボイスの発行を要求しなければならない。

セルコムDigiユーザーのうち後払い方式(ポストペイド)の場合、毎月電子メールで電子インボイスを送ってもらうためには、自身の課金アカウント番号を使いセルコムDigiの電子インボイス用ポータルサイトで事前登録する必要がある。

プリペイドのユーザーや商品購入・単発の取引で、電子インボイスが必要な場合、ユーザーは取引があった翌月の3日までにポータルを通じ、電子インボイスの発行を請求する必要がある。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、7月2日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第903回:中小企業の両利き経営(6)両利きとオープンイノベーション

第903回:中小企業の両利き経営(6)両利きとオープンイノベーション

前回は、両利きであることが一企業の短期的な売上に直接つながらないとしても、国全体、あるいは地球規模で取り組むことが合理的な場合があるというお話でした。今回からは、中小企業が両利きを達成するための条件について検討します。今回は、オープンイノベーションによる両利きについてです。

内部リソースの不足を克服し、両利きになるために、中小企業は外部リソースに依存する必要があります。外部リソースを活用したイノベーションは、オープンイノベーションと呼ばれます。オープンイノベーションの目的は、大企業と中小企業とで異なることが多く、大企業はパートナーの資産や能力を活用するためにオープンイノベーションを採用するのに対し、中小企業は内部資産の不足を補うためにオープンイノベーションに頼る傾向があります。中小企業は通常、財務および人的資本リソース、管理および技術スキル、ノウハウ等の重大な不足に悩まされており、そのため、ネットワーキングを、技術力を拡大する手段と見なしています。外部とのコラボレーションを活用することで、中小企業はイノベーション投資に関連するコストを削減し、イノベーションプロセスをうまく適応および再構成することができます。オープンイノベーションを含む外部組織との協働は、イノベーション活動のポートフォリオを拡大し、知識の補完性を高め、生産性を向上させるための優れたアプローチであり、ひいては中小企業のイノベーション能力にプラスの影響を与えます。オープンイノベーションを導入することで、中小企業は既存の能力、資源、組織構造を活用し、既に信頼されている関係ネットワークを強化し、財務的な利益を得ることができます。

特定の地域に関心を持たず、最適な立地を求めて移動する多国籍企業とは対照的に、中小企業は、歴史的に特定の場所や地元住民と何世代にもわたって結びついていることが多いようです。例えば、世界的なドイツ中小企業の 70% が拠点を置く BW 州、バイエルン州、ノルトライン=ヴェストファーレン州の中小企業は、影響力のある特定の地域のソーシャルキャピタルの文脈に根ざし、周辺のコミュニティ、企業、大学とのつながりを活用して国際市場に効果的に参入しています。このように、中小企業は、地域ネットワークを活用してオープンイノベーションを実施できるという点で有利である可能性があります。例えば、タイの 6 つの地域の中小企業 615 社を対象とした研究では、オープンイノベーションの実施と両利きのイノベーションの実践との間に有意な正の相関関係が見つかり、オープンイノベーションの採用が両利きのイノベーションを強化できることを示唆しています。

しかし、オープンイノベーションはしばしばオーケストレーションを伴います。オープンイノベーションを展開するコストは、特に資金が限られている中小企業にとって重要な考慮事項です。オープンイノベーションは、内部資産の損失リスク、代理店コストと取引コスト、パートナーシップの管理コストを伴います。ヨーロッパの中小企業377社を対象とした調査の結果によると、オープンイノベーションは、少なくとも短期的には中小企業にとってコストがかかることが明らかになっています。

 

Kokubun, K. (2025). Digitalization, Open Innovation, Ambidexterity, and Green Innovation in Small and Medium-Sized Enterprises: A Narrative Review and New Perspectives. Preprints. https://doi.org/10.20944/preprints202504.0009.v1

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

プロトン、供給業者への未払金めぐり法廷闘争に

【クアラルンプール】 プロトン・ホールディングス傘下のプルサハーン・オートモビル・ナショナル(プロトン)は、202万リンギの未払金を巡って長年のサプライヤーであるUCMオートモーティブ・システムズとの間で法廷闘争となっている。経済紙「エッジ」が報じた。

プロトンにエアコン部品とトランスミッションクーラーを供給しているUCMは、2024年7月、プロトンに対し未払い請求書、利息、その他の費用として431万リンギの支払いを求める法定請求書(債務者に一定期間内の支払いを求める正式な文書)を提出した。こうした文書の提出は通常、債務が完済されない場合に債権者が債務者に対する清算を申し立てる前に行われる最初の法的手続きだという。

UCMがプロトンを相手取って裁判所に破産手続の開始を申し立てる構えを示しているのに対し、プロトンは欠陥部品が納品されたことなどを理由にUCMの主張する請求額に異議を唱え、裁判所が実際の債務額を決定するまでの間の清算申立ての差し止めを申し立てた。

係争中にプロトンは一部の支払いを行い、UCMは一定の相殺を認めたため、当初の請求額は約55万リンギに減額されたが、UCMはその後、さらに147万リンギを請求額に追加した。

2025年2月、シャアラム高等裁判所は、プロトンによる清算手続き阻止に向けた申し立てを却下。プロトンが追加分の147万リンギを含め202万リンギの債務を負っていることを認めた上で、UCMに対して遅延支払いに対する年10%の利息を請求する権利を認めた。

両社の紛争は、プロトンとサプライヤー間の緊張が高まる中で発生した。2023年11月、77社で構成されるプロトン・ベンダー協会はプロトンに対して部品製造コストの上昇を訴えた上で、プロトンが部品代金の値上げを拒否していることを批判する書簡を送付。その後、サプライヤーはプロトンが約束よりも少ない部品しか発注しなかったと主張した。
(エッジ、6月27日)

新電気料金体系に基づき請求書の様式を刷新=TNB

【クアラルンプール】 政府系電力会社のテナガ・ナショナル(TNB)は、7月からの新たな電気料金体系に基づいて請求書の様式を刷新する。また、公式サイト「myTNB」で新旧の電気料金を比較できる計算ツールを提供するなど、透明性を高め、ユーザーが電気料金の構成をよりよく理解できるよう図っている。

TNBによると、エネルギー委員会が6月20日に発表した新料金体系に基づき、新たな請求書では電気料金の内訳を、発電料金と電力網利用料金、小売料金の3項目に分けて表示する。発電料金には、電力料金、自動燃料調整(AFA)、容量料金の3つが含まれるという。また電力網利用料金はインフラの保守など電気供給にかかる費用、小売料金は口座管理や請求書発行にかかる費用と説明している。

7月は移行期間として、旧料金体系に基づく6月30日までと、新料金体系に基づく7月1日以降の2つの異なる期間の使用料金を記載した請求書が発行される。myTNBアプリか、公式サイトからユーザー自身で入手可能で、印刷された請求書は検針日から7営業日以内に届けられる。8月以降は完全に新請求書になる。

このほか新料金体系の主要なポイントとしては、「家庭用」と「非家庭用」という2区分と、電圧使用量に基づいて低電圧、中電圧、高電圧の3分類を設定。また「時間帯別料金(ToU)」制度として、料金が割安になるオフピーク時間を、土日の全日と平日午後10時―翌日午後2時(1日当たり計16時間)に拡大したほか、省エネインセンティブ(EEI)なども導入された。
(ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、7月1日)

ぴあがマラヤ大学との連携開始、言語学部の「花火大会」に協力

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 ぴあ(本社・東京都渋谷区)は、グローバルリージョン展開強化の一環としてマラヤ大学言語学部と連携していくことで合意覚書(MOU)を締結したと発表した。

まずは同大学主催イベントに対し、日本コンテンツの提供、出演者ブッキング、協賛営業、イベント運営支援等を通じて、日本文化の交流を行う。将来的には、ぴあが架け橋となり、日本とマレーシアの間での人材・文化交流を拡充していく予定。また、各国政府、文化機関、現地企業との連携なども視野に入れて活動を推進していく。

第1弾の取り組みとして、同大学の公認サークル「ジャパニーズ・クラブ・ユニバーシティ・マラヤ (JCUM)」が主催する学内イベント「花火大会」(6月28日開催)に協力名義で参画した。ぴあが落語協会、ホリプロインターナショナルの協力を得て、出演者をブッキング。落語家の柳家喬之助、林家楽一、歌手・作詞家の大木貢祐が登場し、それぞれ落語、紙切りといった古典芸能や、アニソンライブなど、日本ならではのカルチャーを披露した。

糖尿病重症化予防のセカンドハート、マレーシアで事業を展開

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 糖尿病重症化予防に取り組むセカンドハート(本社・京都府長岡京市)は6月30日、糖尿病による足切断をなくすことを目的とした足ケア管理アプリ「ステップライフ」が総務省の支援事業として採択されたと発表。今後、マレーシア社会保障機構(PERKESO)との連携など海外展開を加速させるという。

2019年創業のセカンドハートは、糖尿病に特化した予防事業を手掛けている。糖尿病の場合、神経障害や血流障害が発生し足にトラブルが出やすくなり、重症化すると切断が必要になる。日本では糖尿病患者約1000万人のうち年間約1万人が切断を余儀なくされている。このため同社は独自にアプリを開発し、足の状況を日々記録し、ケアにつなげている。

今回、このアプリを通じ、総務省の「安全性・信頼性を確保したデジタルインフラの海外展開支援事業」の地方枠に採択された。糖尿病が社会問題化しているマレーシアを皮切りに、官民連携体制を確立。英語やマレー語などアプリの多言語化や、現地の実情や文化的背景などを考慮した改良を図っていく。

イスラム銀がマスターカードと提携、送金解決法を導入

【クアラルンプール】 イスラム銀行のバンク・イスラム・マレーシアはマスターカードの送金ソリューション「マスターカード・ムーブ」の導入を発表した。国内送金のほか、マスターカードの世界ネットワークを利用した国外送金が可能だ。

利用できるのは法人客。第3四半期からeバンカー・プロのプラットフォームでサービスが利用できる。同ソリューションでは200カ国余りへの送金が可能で、利用通貨は150余り。資金の動きは追跡可能で、支払いも、銀行口座、カード、デジタル財布への入金、また現金など、市場により柔軟に対応できるという。

バンク・イスラムのシャリファ・サラ最高事業責任者(CBO)によれば、顧客は15分で電信為替による外国への送金を遂行することができる。

今年2月、同行が扱った越境送金は3,919件で、額は計1億6,900万リンギ。マスターカード・ムーブの導入で20%の取引増を見込んでいる。
(フィンテックニュース、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、6月30日)

CEO信頼感指数、25年第2四半期は前年・前期比で低下

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 米ビステージの調査によると、2025年第2四半期の中小企業最高経営責任者(CEO)信頼感指数(CCI)は91.1ポイントに急落し、前年同期の106.9ポイント、前期(25年第1四半期)の104.2ポイントをいずれも大きく下回った。

企業経営者の間で経済の不確実性が高まっていることを反映し、2021年第3四半期以来最大の四半期の落ち込み率となった。ビステージ・マレーシアの会員数は1,336人で、91%に当たる1,219人から回答を得た。

現時点での経済状況指数は82.0ポイントで、前期の107.0ポイントを20ポイント下回り、最も下落幅が大きかった。また将来の経済状況指数(-17ポイント)、収益成長率見通し(-16ポイント)、投資計画見通し(-15ポイント)、利益成長率見通し(-14ポイント)、雇用見通し(-12ポイント)と指数全体で大幅に低下した。

懸念されている米トランプ政権の貿易政策の影響については、約70%が自社のビジネスには関係しないと考えており、「影響が少ない」(34%)、「まったくない」(35%)と予想している。大きな影響を予想しているのはわずか3%にとどまり、中程度の影響を予想しているCEOは28%だった。

影響緩和戦略については、57%が中国のサプライヤーとの協力を挙げ、49%がサプライヤーの多様化、12%が中国のサプライヤーへの依存減、11%が「備蓄を増やす」と回答した。

中国の米国向け輸出がマレーシアを含む他の市場に振り向けられる可能性については、40%が脅威よりも機会の方が大きいと考えており、36%が利益よりもリスクの方が大きいとの見方をやや上回った。主な懸念事項は、低価格の中国製品がマレーシア市場に流入する可能性で、33%が地元産業への悪影響を予想しているが、一方で58%が中立的な影響を予想しており意見が分かれている。

JB・シンガポールRTSリンクの第1号列車が到着、7月から試験

【シンガポール】 2026年末までに開業予定のジョホールバル(JB)とシンガポールを結ぶ高速輸送システム(RTS)の第1号列車(4両編成、全長76.5メートル)の到着を祝う式典が6月30日にシンガポール鉄道試験センター(SRTC)で開催された。

式典にはマレーシアのアンソニー・ローク運輸相、シンガポールのジェフリー・シオウ運輸相代行、ジョホール州のオン・ハフィズ・ガジ首相らが出席した。第1号列車は中国中車(CRRC)株洲電力機車が製造したもので、4月3日にジュロン港に陸揚げされた。7月からSRTCで信号システムやホームドアなど、他のシステムとの連携を確認するためのオフサイト性能試験が行われる予定で、これらの試験は2025年第4四半期に完了する見通しだ。

SRTCでの試験後、RTSリンク本線に移され、実際の運行を模擬したオンサイト試験が2026年第3四半期まで実施される。CRRCは合計8編成を納入する契約を結んでいる。

他の7編成のうち4編成は現在、ペラ州バトゥ・ガジャにあるCRRCの工場で組立中。残りの3編成も同工場で組立される予定だ。これらは完成後にジョホールバルのワディ・ハナ車両基地へ直送され試験が行われる。最後の納入時期は12月までの予定となっている。

RTSリンクはシンガポールのウッドランズ・ノース駅とジョホール州のブキ・チャガル駅間、約4キロメートル(㎞)を最高時速80㎞で約5分で結ぶ。1編成当たりの定員は607人で、一度に最大1,087人を運ぶことができる。始発は午前6時、終電は午前0時で、運行間隔は最短3.6分。ピーク時には片道1時間あたり最大1万人を輸送できる。

シンガポールの交通運営会社SMRTとマレーシアの公共交通機関会社プラサラナの合弁会社、RTSオペレーションズ(RTSO)が運営する。RTSOによると、RTSリンクシステムの設置作業は56%完了しているという。
(チャンネル・ニュース・アジア、ストレーツ・タイムズ電子版、6月30日)