JB・シンガポールRTSリンクの第1号列車が到着、7月から試験

【シンガポール】 2026年末までに開業予定のジョホールバル(JB)とシンガポールを結ぶ高速輸送システム(RTS)の第1号列車(4両編成、全長76.5メートル)の到着を祝う式典が6月30日にシンガポール鉄道試験センター(SRTC)で開催された。

式典にはマレーシアのアンソニー・ローク運輸相、シンガポールのジェフリー・シオウ運輸相代行、ジョホール州のオン・ハフィズ・ガジ首相らが出席した。第1号列車は中国中車(CRRC)株洲電力機車が製造したもので、4月3日にジュロン港に陸揚げされた。7月からSRTCで信号システムやホームドアなど、他のシステムとの連携を確認するためのオフサイト性能試験が行われる予定で、これらの試験は2025年第4四半期に完了する見通しだ。

SRTCでの試験後、RTSリンク本線に移され、実際の運行を模擬したオンサイト試験が2026年第3四半期まで実施される。CRRCは合計8編成を納入する契約を結んでいる。

他の7編成のうち4編成は現在、ペラ州バトゥ・ガジャにあるCRRCの工場で組立中。残りの3編成も同工場で組立される予定だ。これらは完成後にジョホールバルのワディ・ハナ車両基地へ直送され試験が行われる。最後の納入時期は12月までの予定となっている。

RTSリンクはシンガポールのウッドランズ・ノース駅とジョホール州のブキ・チャガル駅間、約4キロメートル(㎞)を最高時速80㎞で約5分で結ぶ。1編成当たりの定員は607人で、一度に最大1,087人を運ぶことができる。始発は午前6時、終電は午前0時で、運行間隔は最短3.6分。ピーク時には片道1時間あたり最大1万人を輸送できる。

シンガポールの交通運営会社SMRTとマレーシアの公共交通機関会社プラサラナの合弁会社、RTSオペレーションズ(RTSO)が運営する。RTSOによると、RTSリンクシステムの設置作業は56%完了しているという。
(チャンネル・ニュース・アジア、ストレーツ・タイムズ電子版、6月30日)

高速バスなどにシートベルトの着用義務化、違反罰金300リンギ

【ペタリンジャヤ】 道路交通局(JPJ)は1日から高速バスとツアーバスの運転手と乗客に対し、シートベルトの着用義務づけを導入した。

新規則では、バスの運転手は出発前に乗客全員がシートベルトを着用しているか確認する必要がある。JPJは監視カメラ(CCTV)の映像を通じて、注意喚起が行われたかどうかを確認するという。確認を怠った運転手やバス会社、指示に従わなかった乗客には300リンギの罰則が科せられる。

対象になるのは、車体へのシートベルトの設置が義務づけられた2020年1月以降に製造されたバス。それ以前のバスにはシートベルトを設置するための猶予期間が与えられる。

この新たな安全強化策は、先月発生した15人の大学生が死亡したバス事故を受け導入された事故を起こしたバスは2013年製でシートベルトが装備されていなかった。
(フリー・マレーシア・トゥデー、ポールタン、ラクヤット・ポスト、6月30日)

5月のマレーシア人訪日者数、前年同月比30.7%増の5.17万人

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本政府観光局(JNTO)が発表した2025年5月の訪日者数統計(推計値)によると、マレーシアからの訪日者数は5万1,700人となり、前年同月比で30.7%増、前月比では1.0%増となった。

査証免除措置による訪中旅行への人気の高まり等があるものの、祝日やスクールホリデー、マレーシア・リンギ高などの影響もあり、訪日外客数は5月として過去最高を記録した。1―5月の累計では29万5,900人となり、前年同期比で34.6%の大幅増となった。

5月の世界全体の訪日者数は、前年同月比21.5%増の369万3,300人。5月としては過去最高だった2024年の304万294人を65万人以上上回り過去最高となった。1―5月の累計では1,814万100人となり、前年同期比23.9%増となった。

桜シーズンと夏休みシーズンの間に挟まれ訪日需要が落ち着く時期であるものの、一部市場で祝日やスクールホリデーに合わせた訪日需要が高まったことにより、中国、フィリピン、米国を中心に訪日外客数が増加したことが全体の押し上げ要因となった。

アミル・ハムザ第2財務相、経済相を兼務

【プトラジャヤ】 ラフィジ・ラムリ経済相の辞任によって空席となっていた経済相職をアミル・ハムザ第2財務相が兼任することが、25日の閣議でアンワル・イブラヒム首相によって決定され、即時発効した。

シャムスル・アズリ・アブ・バカル政府首席書記官の声明によると、アミル・ハムザ新経済相は当面の任務として、7月31日に議会に提出される第13次マレーシア経済計画(13MP)について、各省庁から提出された追加情報や閣議からの意見・コメントを考慮に入れ内容を修正・再構築することに注力する。

また今後は、ラフィジ・ラムリ氏がやり残した国民の議論の的となっている「RON95」レギュラーガソリン補助金合理化プログラムの策定、社会保障と補助金配分の合理化を目指す上で重要な包括的な中央データベースメカニズム(PADU)の運用などの課題に取り組むこととなる。

ラフィジ・ラムリ氏は5月23日に行われた与党連合・希望同盟(PH)の中核党である人民正義党(PKR)副党首選での敗北を受けて5月28日に辞任を発表。辞任は6月17日付けで、以降は空席のままとなっていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、6月27日)

振り込みなど基本的銀行サービス、サービス税の対象外

【クアラルンプール】 サービス税の適用対象が7月1日から拡大されるが、預金引き出し、振り込みなど当座・貯蓄口座に関する基本的銀行サービス(イスラム銀行サービスを含む)は、引き続きサービス税の対象外とされる。マレーシア銀行協会、マレーシア・イスラム金融機関協会、マレーシア投資銀行協会が共同声明で発表した。

適用外とされるのは、現金預け入れ、引き出し、決済、国内振り込み、および支店窓口とATMにおける取引。クレジットカード、チャージカードの年間手数料、利子(または利益)、罰金も適用外。

拡大サービス税(税率8%)の対象になるのは、資金運用サービス、証券引き受けを含む投資銀行サービス、貿易金融など手数料がかかるサービスで、銀行は7月に法人向けサービス、投資銀行サービスから適用を開始する。
(エッジ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、7月25日、エッジ、7月27日)

美容サービスを課税対象から除外、リース業の納税要件も変更

【クアラルンプール】 財務省は美容サービスを拡大サービス税の適用対象外とすることを決めた。また納税対象となるリース・レンタル、金融サービス業の年商要件を50万リンギから100万リンギに変更した。年商が100万リンギ超の事業者のみ、サービス税の収受・納入義務が生じる。中小零細企業を配慮した。

美容サービスに含まれるのは、マニキュア、ペディキュア(足爪のマニキュアや足のケア)、美顔、および理髪など理容師、美容師が提供するサービス。

財務省は、輸入リンゴとオレンジを拡大売上税の適用対象外とすることを既に発表しているが、ナツメヤシの実、みかん(マンダリンオレンジ)も適用対象から除外することを決めた。国民の声、業界の懸念を考慮したという。財務省は声明で「政府はコメ、鶏肉、牛肉、野菜、卵など必需品には売上税を課しておらず、魚も引き続き課税対象に含めない」と重ねて表明した。
(エッジ、ザ・スター電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、7月27日)

【総点検・マレーシア経済】第524回  経済複雑性指数(ECI)、その意味は?

第524回  経済複雑性指数(ECI)、その意味は?

6月24日、経済複雑性指数を提唱したヒダルゴ教授が興味深い論文をX(旧Twitter)に投稿していました。「経済的複雑性指数(economic complexity index: ECI)」は1国の輸出がいかに「複雑性が高い=高度」なものであるかを計算する指数で、マレーシアでは「新産業マスタープラン(NIMP2030)」の中で、「高い経済的複雑性を持った競争力のある産業」という目標として掲げられています。

経済的複雑性が高い国とは、1)多様な財を輸出している、2)輸出している財を生産できる国が限られている、3)同様の財を輸出している国の経済的複雑性もまた高い、という特徴を持つ国です。この指数が高い国は経済成長に有利であることなどが経験的に知られていましたが、ECIは経済学の概念と言うよりは物理学の概念に近く、なぜそうなのかという点については分かっていませんでした。

ヒダルゴ教授が紹介した「経済複雑性の理論(The Theory of Economic Complexity)」という論文では、ECIが実際に「その国がどれだけ多くの生産のための能力を持っているか」を正確に測定していることを数学的に証明しました。つまり、ECIが何を計測しているのかを突き詰めると、それは、半導体技術、材料科学、ソフトウェア開発力など、その国がどのような種類の能力を高い水準で持っている確率が高いのか、ということになると示したのです。

また、この論文では、経済の複雑性≒多様性であり、後進国:低多様性(農業・資源のみ)→中進国:高多様性(様々な産業に参入)→先進国:特化(最も得意な高複雑性製品に集中)、というようなパターンで経済が発展することを予測しています。必ずしも多様な財を輸出していないスイス、シンガポール、フィンランドなどの小規模な国が高いECIを持ち、高所得国であることと整合的です。 マレーシアのような人口規模が大きくない国にとって、この予測は希望が持てるものです。

図は1998年から2023年のマレーシアのECIと世界ランクの推移を示したものです。マレーシアのECIは2000年代に入って世界平均の0を超えて順調に上昇しましたが、2010年代に入ると1前後で停滞しています。同時に、世界ランクも50位前後から20位台に上昇しましたが、その後は横ばいとなっています。

2023年のマレーシアのECIは1.04で世界27位ですが、これが1.23まで上昇するとベルギーと並んで世界20位となります。マレーシアとしては、まずはこのTOP20入りを果たしたいところです。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【イスラム金融の基礎知識】第571回 湾岸諸国の観光産業をイスラム金融が下支えする

第571回 湾岸諸国の観光産業をイスラム金融が下支えする

Q: コロナ後の湾岸諸国の観光産業とイスラム金融の関係は?

A: コロナ禍で減少した観光客が世界的に回復している現在、観光産業をイスラム金融が下支えしようとしている。この状況を湾岸諸国のメディアが伝えている。

ドバイでは、2024年の観光客がコロナ前の2019年と比べて69%増加した。これはG20諸国の中で最も高かった。今日の観光客は、若い世代ほど旅先で両替したりトラベラーズチェックを使用したりはせずスマートフォンでの決済を好んでおり、変化の著しい分野でもある。

観光産業の拡大を下支えするのは金融である。観光施設建設のための大型融資、航空会社が航空機を建造する際の債券発行、リース形式によるホテルの運営など、金融への様々なニーズが生まれている。例えば、湾岸諸国の主要航空会社は今後5年間でボーイングとエアバスに780機の航空機を発注することになっているが、過去にはスクークで資金調達した例もある。また、ドバイで建設される5つ星ホテルは、アブダビ・イスラム銀行などの融資団から3億米ドルの融資を受けた。ホテルの建設ラッシュがサウジアラビアで起きており、複数のホテルグループが合計170軒ほどのホテル建設を計画している。

飛行機のファーストクラスやプライベートジェット、最高級ホテル等を利用する富裕層のラグジュアリーな観光も増加すると、プライベート・バンキングのニーズが高まっている。観光を兼ねて投資物件を物色したり、中には移住をする者も増えれば、富裕層の資産を管理するプライベート・バンキングの存在が重要となる。

もっとも、観光の拡大がイスラム銀行へのニーズを高めるものの、すでに湾岸諸国では金融機関が飽和状態となっており、今後は銀行間の生き残りのため合併あるいは市場の統一などが視野に入ってくるだろうと、メディアは同時に指摘している。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

政府サービス用アプリ「MyGovマレーシア」、7月から導入

【プトラジャヤ】 デジタル省は24日、政府サービスを統合したモバイルアプリ「MyGovマレーシア」を7月から導入すると発表した。

アプリは、公的デジタル身分証明書の「MyデジタルID」を通じた本人確認を経て使用する。当面は7つの主要サービスから開始され、パスポート申請、出生および市民権の登録、運転免許証および道路税の更新、医療予約、固定資産税および評価額などの住宅関連の手続きができるようになる。順次サービスの拡大が予定されている。

アプリは、行政機関の運営コスト削減と生産性向上を目的に、通信会社や銀行などの民間パートナーと共同で開発された。ゴビンド・シン大臣は「マレーシアをデジタル国家へと変革するという政府の計画の一環でマレーシア国民がさまざまな政府機関とシームレスにやり取りできるようになる」と述べた。

23日現在、MyデジタルIDには約260万人が登録している。
(ザ・スター、フリー・マレーシア・トゥデー、6月24日、報道発表資料)

サイド・サディク元青年スポーツ相、汚職裁判で逆転無罪判決

【プトラジャヤ】 若手リベラル政治家による政党、マレーシア統一民主同盟(MUDA)を率いるサイド・サディク被告(元青年スポーツ相)に対する汚職裁判の控訴審判決が25日にあり、控訴裁は同被告に対し逆転無罪を言い渡した。

同裁判は、サイド・サディク氏が2021年当時所属していた統一プリブミ党(PPBM)の青年組織(アルマダ)の責任者であった際、会計担当ラフィク・ハキム・ラザリ氏に指示して、資金約100万リンギを不正に引き出した罪で起訴された事件に関するもので、2023年に行われた一審の高裁判決はサイド・サディク氏を有罪として、禁固7年、罰金1,000万リンギ、ムチ打ち2回を言い渡していた。

控訴審では、サイド・サディク氏が資金引き出しの権限を有しており、また引き出した資金は正当な用途に使われたとする弁護側の主張を認め、ラフィク氏の証言に頼った検察側の主張は認められないと判断した。ラフィク氏は後に汚職摘発委員会(MACC)による苛烈な取り調べにより自身が虚偽の証言を行ったことを認めている。無罪判決を受けてサイド・サディク氏はMUDA党首に復帰する見通し。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月25日)