今年の新規株式公開、証取は60社を目標

【クアラルンプール】 ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)のムハマド・ウマル最高経営責任者(CEO)は27日、決算発表の席上、今年は60社による新規株式公開(IPO)を見込んでいると語った。同60社の上場時の時価合計は402億リンギを予想している。

昨年のIPOは55社で、資金調達額は計74億リンギ、時価合計は314億リンギだった。55社の上場は過去19年で最多。今年は健康、エネルギー、建設、貿易など多様な分野から上場が期待できるという。注目は国内最大の港湾運営会社MMCポーツの再上場だ。

アブドル・ワヒド会長によると、1部メイン市場には既に2社が上場許可を得ており、2部ACE市場には15社の上場が決まっているという。ウマル氏は3月をもって退任する。
(ザ・スター、1月28日、ベルナマ通信、ビジネス・トゥデー、1月27日)

防衛・資源での協力を深化、インドネシア大統領来馬

【クアラルンプール】 インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領が国賓として来馬し、27日にアンワル・イブラヒム首相と会談を持った。

会談後の共同記者会見でアンワル首相は、両国は防衛、石油・ガスなど多様な分野で互いの強みを活用することで合意したと明らかにした。一例として両国の国営石油会社ペトロナスとプルタミナとの協力関係を強化し、新たなビジネス機会を探る。アンワル氏は、協力強化は両国のリーダー間の相互理解に加え、親密さ、互いへの信頼が不可欠だと述べた。

プラボウォ氏は、多様な分野における協力をアンワル氏と話し合ったとした上で、国境、労働問題など2国間の問題を両国は解決できると確信していると述べた。プラボウォ氏はさらに、世界が緊張に満ち、地政学上の課題に直面する中、東南アジア諸国連合(ASEAN)の意見が、ASEANより巨大な勢力に耳を傾けてもらうためには、マレーシア、インドネシア、およびほかのASEAN加盟国間の一致団結が重要だと述べた。
(ザ・スター、ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、1月28日、ベルナマ通信、1月27日)

ブリッジ、日本企業のマレーシア進出支援で現地IT企業と提携

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 営業活動代行などを手がけるブリッジインターナショナル(本社・東京都世田谷区)は27日、マレーシアのITソリューションプロバイダー、EDXマレーシアとの業務提携を発表した。マレーシア子会社ブリッジインターナショナルアジアを通じ、マレーシアでITサービス事業を展開したい日本企業をサポートしていく。

業務提携第1弾として扱うのは、エナジー・ソリューションズ(本社・東京都千代田区)の「ドローンアイ」。太陽光発電所に設置されているソーラーモジュール全数の赤外線検査をドローンで行うサービスで、EDXを通じ、販売だけでなく、技術の導入から運用、保守まで提供していくという。

EDXは2024年7月創業で、セランゴール州ペタリンジャヤに拠点を置く。

第一生命経済研究所レポート「政策運営は外部環境次第」

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)による政策金利の3%据え置きに関し、第一生命経済研究所は22日、経済分析レポートを発表。主席エコノミスト、西濵徹氏は「ほかのアジア新興国では利下げの動きが広がるが、マレーシアは先行き不透明感を踏まえ慎重姿勢を堅持したとみられる」とした。

ほかのアジア新興国の利下げについて、インフレが鈍化していることに加え、昨年後半の米連邦準備理事会(FRB)による利下げで自国通貨安圧力が後退したことも重なり、景気下支えに舵を切る流れが広がったと分析した。

一方でマレーシアの場合、インフレは落ち着きを見せたものの、もともと外需依存度が極めて高い構造で、米のトランプ大統領の就任で、外需を巡る環境が厳しさを増していることや、内政では財政健全化が急務となっていることから、インフレにつながる材料が山積していると指摘。このため、現時点では物価動向を警戒して慎重姿勢を維持したと説明した。

さらに、プラス4.5―5.5%という政府と中銀の2025年成長率見通しについて、西濵氏は「内・外需双方に不透明要因が山積するなかで、ハードルは高いと見込まれる。しかし、今後も政策運営は外部環境に手足を縛られる展開が続くことは避けられない」と締めくくった。

5Gを優先導入する工業地域67カ所、通信省が特定

【マラッカ】 通信省は、第5世代移動体通信(5G)インターネットサービスを優先して導入する全国の工業地域67カ所を特定した。ファーミ・ファジル通信相が明らかにした。投資貿易産業省(MITI)との協力を通じて決定したという。

マラッカで開催された通信省の2025年戦略作業方針会議に出席したファーミ氏は、「5Gは中小零細企業(MSME)に大きなメリットをもたらすため、これらの地域を優先することが我々の目標だ。工場が5Gによる高速接続を活用できるようにしたい」と述べた。ファーミ氏によると、一般市民の5G利用の普及率も毎月2―3%増加しており、全国で53.3%に近づいている。

一方で通信省は5Gへのアップグレードを進める前に、農村部のコミュニティが少なくとも第4世代(4G)サービスを教授できるよう取り組んでいると強調。「これまで進められてきた国家デジタル・ネットワーク(JENDELA)第1期の下で、今年6月までに通信塔1,661基が完成する予定で、第2期ではインターネットアクセスがない農村部の2,500―3,000カ所が通信塔設置対象になる」と述べた。
(ザ・スター電子版、ベルナマ通信、1月25日)

ペナン空港、昨年の旅客数がコタキナバル空港抜き2位に

【ジョージタウン】 マレーシア民間航空局(CAAM)のデータによると、2024年のペナン国際空港(PIA)の旅客取扱数は747万3,462人となり、2023年の697万9,748人から7.07%増となった。ペナン州観光・創造経済委員会のウォン・ホンワイ議長(国政の閣僚に相当)が明らかにした。

PIAはサバ州コタキナバル国際空港(KKIA)を抜き、クアラルンプール新国際空港(KLIA)に次いで国内第2位に浮上した。週当たりの便数は565便で、前年の523便から8.03%増加した。特に国際線は前年の259便から304便に17.37%も増加し、昨年8月以降は上海やドバイ、厦門、香港などの海外都市を結ぶ新たな12の直行便が開設された。現在、深セン、広州、シンガポール、バンコク、プーケット、ジャカルタ、台北、ドーハ、チェンナイ、重慶など20都市に直行便を運航している。

またPIAは航空機発着回数が6万4,507回で、コタキナバル国際空港の6万3,822回をわずかに上回って2位となり、5万9,929回だったセランゴール州スバン空港(スルタン・アブドル・アジズ・シャー空港)や、5万4,969回を記録したクチン国際空港も上回った。トップはKLIAで36万6,895回だった。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、1月24日)

事業サポートのDKSH、興和との提携拡大

【ペタリンジャヤ=アジアインフォネット】 DKSHマレーシアは興和(本社・愛知県名古屋市)との提携を拡大し、興和の高脂血症治療剤パルモディア(一般名ペマフィブラート)の流通を手掛ける。

DKSHマレーシアは、マーケティング・販売など市場拡大サービスを包括的に提供する。パルモディアは中性脂肪を減らし善玉コレステロールを増やすためのダイエットや、薬剤を用いない運動療法などの補助的療法との位置付けで、脂質異常症の人向け。DKSHのサンディープ・テワリ副社長(ヘルスケア担当)は「優れた医薬品をマレーシア人患者に提供する」と述べた。

DKSH(本社スイス)はアジアを中心に、企業向けに事業を包括的にサポートするサービスを提供する商社で、日本で創業された。興和は商社活動のほか、医薬事業部で医薬品、ヘルスケア、サプリメント、医療用医薬品、医療機器を開発・製造している。

【従業員の勤労意欲を高めるために】第892回:やりがい搾取(7)努力に見合った報酬が得られないと脳が混乱する

第892回:やりがい搾取(7)努力に見合った報酬が得られないと脳が混乱する

前回は、進化生物学のタームである「間接互恵性」がやりがい搾取や努力と報酬の不均衡(effort-reward imbalance, ERI)に関係する可能性があることを述べました。

一方、脳科学では、努力と報酬に関わる脳領域の解明が進められています。ERIモデルの支持者は、社会的交換の失敗による不平等の経験が脳の報酬回路、視床下部-下垂体-副腎軸を過剰に活性化し、体内のいくつかの調節システムにストレス過負荷の状態を引き起こす可能性があると主張しています。これと一致して、以前の研究では、努力と報酬の計算に関与する皮質-線条体ネットワークの障害が疲労と有意に関連していることが示唆されています。最近のメタアナリシスでは、より具体的に、補足運動野は努力と関連しており、腹内側前頭前野と腹側線条体は報酬の正味値から努力を引いたものと関連していることが示されています。同様に、最近の研究では、ERIが、左淡蒼球の灰白質体積の減少と、前頭前野、線条体、および小脳の機能的接続性の変化に関連していることも示されています。これらの研究は、ERIが、特に線条体において脳の報酬系を損ない、仕事へのモチベーションを低下させ、不健康な生活習慣を促進する可能性があることを示唆しています。

なぜ努力ではなく、努力と報酬の不均衡が心身の異常をもたらすのかについては直感的に理解し難いですが、このように、脳の報酬系が混乱を起こし不健康な行動への抑制が働かなくなると考えれば、生物学的に合理的な説明が可能です。

 

Kokubun, K. (2024). Effort–Reward Imbalance and Passion Exploitation: A Narrative Review and a New Perspective. World, 5(4), 1235-1247. https://doi.org/10.3390/world5040063

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

第13次5カ年計画では政策の羅列から脱却、民間の力を活用

【クアラルンプール】 ラフィジ・ラムリ経済相は23日、産業界首脳との懇談会で、第13次マレーシア計画(13MP、対象期間2026-30年)では、政策、プログラムの羅列や、単なる公共事業の提供から脱却し、新たな奨励策を導入すると明らかにした。

ラフィジ氏によると、持続可能な、より競争力のある経済に移行するための政策推進が狙いで、行動の変化を企業に促すものになるという。公共事業などを通じた資金配分、単なる政策や事業の羅列から脱却し、経済構造の変化につながるような行動を促す政策を中心に据える。

民間セクターが経済成長の中心的役割を果たせるようにするためで、政府は政策、プログラムを通じこれを後押しする形をとる。このため民間セクターに重荷となっている規則の改正など、省間の調整を進めるという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、1月24日、ベルナマ通信、マレーシアン・リザーブ、1月23日)

世界各国からのムスリムのマレーシア観光を推進=副首相

【クアラルンプール】 2026年のマレーシア観光年(ビジット・マレーシア・イヤー)に向け、政府は世界各国からのムスリム(イスラム教徒)の観光に力を入れる方針だ。22日にあったイスラミクルーズ・インターナショナルと、サウジアラビアのアロヤクルーズの提携調印式に出席したアハマド・ザヒド副首相が述べた。

ザヒド副首相によると、2024年にマレーシアを訪れたムスリムは11月時点で482万人で、150億リンギを超える支出があったと推定される。前年通年の450万人、推定支出額147億リンギをこの時点で上回った。

インドネシア、ブルネイ、パキスタン、サウジアラビア、カザフスタンが上位5カ国を占めた。

イスラミクルーズとアロヤクルーズの提携は、そうしたムスリム観光の一環で、最大で4,500人の乗客を収容できるクルーズ船をチャーターし、ネグリ・センビラン州ポートディクソンとサウジアラビアのジェッダを結ぶ。オマーン、モルディブ、インドネシアに寄港しながら、ムスリム向けのプログラムを提供する。

ムスリム旅行客の観光インフラを評価する世界ムスリム旅行指数(GMTI)で、マレーシアは昨年、世界145カ国中のトップにも選ばれた。ザヒド副首相は「市場予測では、ムスリム観光は年間約1.2%の成長が見込まれる」とし、マレーシア政府観光局、イスラム観光センター(ITC)、マレーシア文化芸術省などと協力しながら、さらに促進していくとした。
(マレーシアン・リザーブ、1月23日、ベルナマ通信、1月22日)