【従業員の勤労意欲を高めるために】第892回:やりがい搾取(7)努力に見合った報酬が得られないと脳が混乱する

第892回:やりがい搾取(7)努力に見合った報酬が得られないと脳が混乱する

前回は、進化生物学のタームである「間接互恵性」がやりがい搾取や努力と報酬の不均衡(effort-reward imbalance, ERI)に関係する可能性があることを述べました。

一方、脳科学では、努力と報酬に関わる脳領域の解明が進められています。ERIモデルの支持者は、社会的交換の失敗による不平等の経験が脳の報酬回路、視床下部-下垂体-副腎軸を過剰に活性化し、体内のいくつかの調節システムにストレス過負荷の状態を引き起こす可能性があると主張しています。これと一致して、以前の研究では、努力と報酬の計算に関与する皮質-線条体ネットワークの障害が疲労と有意に関連していることが示唆されています。最近のメタアナリシスでは、より具体的に、補足運動野は努力と関連しており、腹内側前頭前野と腹側線条体は報酬の正味値から努力を引いたものと関連していることが示されています。同様に、最近の研究では、ERIが、左淡蒼球の灰白質体積の減少と、前頭前野、線条体、および小脳の機能的接続性の変化に関連していることも示されています。これらの研究は、ERIが、特に線条体において脳の報酬系を損ない、仕事へのモチベーションを低下させ、不健康な生活習慣を促進する可能性があることを示唆しています。

なぜ努力ではなく、努力と報酬の不均衡が心身の異常をもたらすのかについては直感的に理解し難いですが、このように、脳の報酬系が混乱を起こし不健康な行動への抑制が働かなくなると考えれば、生物学的に合理的な説明が可能です。

 

Kokubun, K. (2024). Effort–Reward Imbalance and Passion Exploitation: A Narrative Review and a New Perspective. World, 5(4), 1235-1247. https://doi.org/10.3390/world5040063

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
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第13次5カ年計画では政策の羅列から脱却、民間の力を活用

【クアラルンプール】 ラフィジ・ラムリ経済相は23日、産業界首脳との懇談会で、第13次マレーシア計画(13MP、対象期間2026-30年)では、政策、プログラムの羅列や、単なる公共事業の提供から脱却し、新たな奨励策を導入すると明らかにした。

ラフィジ氏によると、持続可能な、より競争力のある経済に移行するための政策推進が狙いで、行動の変化を企業に促すものになるという。公共事業などを通じた資金配分、単なる政策や事業の羅列から脱却し、経済構造の変化につながるような行動を促す政策を中心に据える。

民間セクターが経済成長の中心的役割を果たせるようにするためで、政府は政策、プログラムを通じこれを後押しする形をとる。このため民間セクターに重荷となっている規則の改正など、省間の調整を進めるという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、1月24日、ベルナマ通信、マレーシアン・リザーブ、1月23日)

世界各国からのムスリムのマレーシア観光を推進=副首相

【クアラルンプール】 2026年のマレーシア観光年(ビジット・マレーシア・イヤー)に向け、政府は世界各国からのムスリム(イスラム教徒)の観光に力を入れる方針だ。22日にあったイスラミクルーズ・インターナショナルと、サウジアラビアのアロヤクルーズの提携調印式に出席したアハマド・ザヒド副首相が述べた。

ザヒド副首相によると、2024年にマレーシアを訪れたムスリムは11月時点で482万人で、150億リンギを超える支出があったと推定される。前年通年の450万人、推定支出額147億リンギをこの時点で上回った。

インドネシア、ブルネイ、パキスタン、サウジアラビア、カザフスタンが上位5カ国を占めた。

イスラミクルーズとアロヤクルーズの提携は、そうしたムスリム観光の一環で、最大で4,500人の乗客を収容できるクルーズ船をチャーターし、ネグリ・センビラン州ポートディクソンとサウジアラビアのジェッダを結ぶ。オマーン、モルディブ、インドネシアに寄港しながら、ムスリム向けのプログラムを提供する。

ムスリム旅行客の観光インフラを評価する世界ムスリム旅行指数(GMTI)で、マレーシアは昨年、世界145カ国中のトップにも選ばれた。ザヒド副首相は「市場予測では、ムスリム観光は年間約1.2%の成長が見込まれる」とし、マレーシア政府観光局、イスラム観光センター(ITC)、マレーシア文化芸術省などと協力しながら、さらに促進していくとした。
(マレーシアン・リザーブ、1月23日、ベルナマ通信、1月22日)

KLIAエアロトレイン、再開は第2四半期中の見込み

【クアラルンプール】 故障続きで2年にわたって運休が続いているクアラルンプール国際空港(KLIA)のメイン・ターミナルとサテライトを結ぶ無人列車KLIAエアロトレインは、今年第2四半期中に運行再開する見通しだ。当初の計画ではシステム交換作業は1月31日に完了する予定だった。

空港運営会社マレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)のモハメド・イザニ・ガニ社長は24日に行ったエアロトレインに関する最新説明会の中で、「(エアロトレインの)すべてのテストを4月までに完了させる予定だ。第2四半期中に運行再開できると確信している」と言明。当初アンソニー・ローク運輸相が示した期限は「厳しすぎた」とし、技術的要件を順守すると特定のプロセスで遅延が発生することがあると説明した。

エアロトレインは運転中の故障を繰り返し、2023年3月から運転が停止され、バスによる代替輸送が行われている。システム交換の総費用は4億5,600万リンギ。最初の再開目標は2024年7月で、その後の業者との納入契約問題などの遅延が発生したことで先送りされており、ローク運輸相がMAHBの対応を非効率で遅れていると強く批判していた。
(マレー・メイル、エッジ、1月24日)

旧正月の有料道路は半額、27、28日のみ実施=公共事業相

【クアラルンプール】 連邦政府は、今年の旧正月連休の帰省ラッシュに合わせて有料道路の通行料金を50%割引すると発表した。半額となるのは27日深夜零時1分から28日午後11時59分までの約2日間のみ。

対象はクラス1の乗用車のみ。シンガポールとの国境を結ぶ有料道路は割引対象外となる。今回の割引により連邦政府が高速道路運営会社の利益補填のため2,008万リンギを負担することになるという。

アレキサンダー・ナンタ・リンギ公共事業相は、今後の祝祭シーズンについては全面的な通行料減免を行わず、「より的を絞ったアプローチ」に置き換えると言明。新たなシステムは後日発表すると述べた。祝祭シーズンの通行料免除を廃止することで、年間1億9,000万リンギを節約できるという。

政府はこれまで、旧正月、ハリラヤ(断食月明け大祭)、ディパバリ、クリスマスの期間中、有料道路の通行料を無料化し、有料道路運営業者に補助金を提供してきた。2023、24年は祝祭シーズンの通行料免除により、連邦政府が合計3億5,618万リンギを負担していた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、1月24日)