シンガポール大手行のUOB、一部業務をマレーシアに移管

【クアラルンプール】 シンガポール大手銀行の大華銀行(UOB)は、利益率維持を目的として、バックオフィス、ミドルオフィス業務の一部をマレーシアに移管する。

リー・ワイファイ最高財務責任者(CFO)の発表によると、2026年まで費用対収益比率の40%維持を図る。主にクアラルンプールに業務を移管する。シンガポールの経費が高いための決断だ。バックオフィス業務は顧客に直接、接する機会が特にない事務管理部門を、ミドルオフィスは経営企画や広報、マーケティングなど、直接部門がより高い成果を生むためにサポートする部門を指す。

東南アジア諸国連合(ASEAN)業務の拡大、金利収入以外の業務の拡大と合わせ、株主資本利益率(ROE)も同年まで14%前後の維持を図る。

UOBはASEANではインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムに注力しており、2026年には連結決算に占める利益の割合が30%に達すると予想している。また資産管理、トレードファイナンス、財務管理サービス部門の収益増を計画している。

(シンガポール・ビジネス・タイムズ、フィンテック・ニュース、8月15日)

中銀がメイバンクとCIMBに罰金、長期のシステム中断で

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は14日、長期にわたるサービス中断が金融サービス法違反にあたるとして、国内大手銀行であるメイバンクとCIMBにそれぞれ432万リンギ、76万リンギの罰金を科したと発表した。

BNMは声明で、全金融機関が業務中断に対する高レベルの技術的回復力を維持し、金融サービスの継続的な利用を保証することを期待しているとし、金融機関が規制当局の期待に達しない場合には、適切な監督および執行措置をためらうことなく講じると強調した。また、ダウンタイムへの適切な対応やコンプライアンス違反回避の失敗、サービス中断の深刻度や影響、過去の執行措置の履歴などを考慮し、罰金額を定めたとしている。両行はすでに罰金を支払ったという。

BNMによると、今回は、「2013年金融サービス法」、「2013年イスラム金融サービス法」、「テクノロジー・リスク管理(RMiT)規約」への違反となる。RMiT規約では、予定外のダウンタイムを12カ月間累計で最大4時間、1回あたり120分以内までに抑えることが義務づけられている。

CIMBは2024年4月にシステム障害によるサービス中断が発生し、オンラインバンキングやATM、デビットカード、クレジットカードが一時使えなくなった。メイバンクは2023年6月―2024年5月にかけ、複数回のシステムダウンを発生させていた。両行は、システム強化によりシステムダウンを最小限に抑える措置を講じたとしている。

(エッジ、マレー・メイル、マレーシアン・リザーブ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、8月14日)

物流のテレポート、サバ州に輸出向け冷凍貯蔵施設を設立

【コタキナバル】 キャピタルAの貨物・物流部門であるテレポートは、サバ州で輸出向けの冷凍貯蔵施設を設立したと発表した。今回が1カ所目で、同州内で合計3カ所の建設を予定しているという。

キャピタルAのトニー・フェルナンデス最高経営責任者(CEO)は、新施設は、サバ州の農家や漁業従事者が中国や日本の市場に農産物・水産物を販売するのを支援するものだと説明。サバ州がブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピンから成る東ASEAN(東南アジア諸国連合)成長地域(BIMP-EAGA)における物流の中心になり、アジアと豪州間の物流を促進できると述べた。生産拠点である同州タワウやサンダカンにも冷凍貯蔵施設を建設していくとしている。

フェルナンデスCEOはまた、サバ州内に航空機の保守、修理、オーバーホール(MRO)施設を設置する計画もあるとし、ジョホールバルには14ベイの格納庫があるが、さらに28ベイが必要であるため、サバ州での設置に向け、州政府と協議すると述べた。
(マレー・メイル、8月13日)

技術革新指数の順位引き上げを推進、独自の指数を作成へ

【クアラルンプール】 政府はグローバル・イノベーション・インデックス(GII)の順位引き上げを目指し国全体での取り組みに着手する。チャン・リーカン科学技術革新相が12日、マレーシア商業化サミットで発表した。

チャン氏は省としてマレーシア独自のイノベーション・インデックスの開発に取り掛かっていると明らかにした。戦略策定を支援するツールとし、GII順位の上昇につなげる。行政部門、産業界、学術界にイノベーションを促す。世界知的所有権機関が2023年末に発行したGIIでマレーシアは36位だった。GIIでは132の経済圏のイノベーションエコシステムを調査し、ランキングを作成している。1位から5位は、スイス、スウェーデン、米国、英国、シンガポール。

アンワル・イブラヒム首相は「順位はマレーシアの潜在性を反映していない。あらゆる方法を講じ順位を上げるとの決意、努力が必要だ」と言明。さらにスタートアップのためのビジネスエコシステムでマレーシアはまだ多くの機会をとらえていないとし、科学技術革新省に国内だけでなく、国外でのネットワーク構築も促した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、8月13日、ベルナマ通信、8月12日)

サバ州の電力供給業者、25年1月から同州の適格証明のみ有効

【コタキナバル】 サバ州エネルギー委員会(ECoS)は12日、ECoSが管轄する電力供給や太陽光発電などの事業登録について、2025年1月からECoSが発行する適格証明書のみを有効とすると発表した。

同措置は「2024年電力供給法(EBE)」および「2024年電力供給規則(PPBE)」に沿ったもので、同規則では2024年1月3日以降、ECoSがマレーシア・エネルギー委員会から電力供給活動の規制権限を引き継ぐことになっている。

エネルギー委員会(EC)または持続可能エネルギー開発庁(SEDA)発行の適格証明書を保有している場合でも、ECoSから認定を取得する必要がある。

「EBE2024」と「PPBE2024」の研修コースを受講し試験に合格すれば、認定を取得できる。現在、16の認定トレーニングセンターで受講が可能となっている。

これにより、急速に設置が進められている電気自動車(EV)充電施設の運営事業者(CPO)も、サバ州内ではECoSが発行する適格証明書を取得する必要がある。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、モタオート、8月12日)

フォレストシティのジョホール経済特区への統合、州政府が提案

【イスカンダル・プテリ】 ジョホール州政府は、ジョホール州沖で開発中の人工島プロジェクト「フォレスト・シティ」を、ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)に組み入れることを提案している。

同州投資・貿易・消費者問題委員会のリー・ティンハン委員長は声明で、提案は内部で議論されているもので、今後さらなる検討に向け、JS-SEZ作業委員会に提出される予定だと述べた。

フォレスト・シティは中国の一帯一路構想のもとで提案されたプロジェクトで、ジョホール海峡を埋め立て造成した4つの人工島(面積は合計30平方キロ)でコンドミニアム、学校、オフィスビル、ショッピングモールなどを総合的に開発するもの。経営難にある中国の不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)と、ジョホール州政府と州のスルタンを後ろ盾とするエスプラネード・ダンガ88の合弁事業だが、先行きが不透明であることから2023年8月にアンワル・イブラヒム首相が投資誘致に向け、金融特区を設けると発表していた。

リー委員長は、フォレスト・シティはシンガポールに近接しているため利便性が高いとし、JS-SEZに統合されることで、JS-SEZへの優遇措置を同様に受けられるよう提案していくと述べた。

JS-SEZは、9月にマレーシアとシンガポールの間で正式に協定が締結される見込みとなっている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、8月12日)

物流サービス用車両の刷新を奨励する政策を検討=運輸相

【レンバウ】 アンソニー・ローク運輸相は12日、運輸省が物流企業の車両の刷新を奨励する政策を検討していると明らかにした。

ローク運輸相は、民間部門、特に物流・運送会社が新しいトラックに投資しやすくなるよう、包括的な政策を導入する予定だとし、どのような政策が最善であるのかを検討していると言明。環境に優しく持続可能な車両の普及に向け、自動車業界が電気バスや電気トラックの組み立てを行うことを奨励する政策が必要だとした。

ローク運輸相は、道路を走っている多くの旧型車が交通安全に重大なリスクをもたらし、維持費や燃費も高くつくため、新型車両への入れ替えを促進する新たな政策やインセンティブを導入すると述べた。自動車製造業者が新型バス・トラックの組み立て事業に参入することを期待するとしている。
(エッジ、ベルナマ通信、8月12日)

ペナンの「シリコン島」、初の工場が27年に操業開始へ

【ジョージタウン】 建設が進められているペナン島南岸沖の人工島「シリコン島」プロジェクトについて、ペナン州政府は同人工島初の工場の建設が2026年中に開始され、2027年に操業を開始する見通しだと明らかにした。

2023年9月に着工した「シリコン島」の総面積は2,300エーカー。埋立作業全体は2032年までに完了する予定で、プロジェクト完了までには25年かかる見通し。
ペナン州政府によると、これまで40エーカーの埋立工事が終わっており、2025年末までに埋立面積が1,000エーカーに達すると見込まれる。近く最初の建物が建設される予定だ。

先ごろ同州のチョウ・コンヨウ首相は、最初の建物が2026年までに完成する予定だと述べていた。
(ビジネス・トゥデー、8月9日)

AI開発・利用の指針、科学技術省が年内に発表へ

【ジョージタウン】 科学技術革新省とデジタル省は共同で、人工知能(AI)の開発・利用に関する行動規範の策定を進めており、年内に発表の予定だ。チャン・リーカン科学技術革新相が9日、ペナンAI教育ハブの開所式で明らかにした。

行動規範の名称は「AI統治・倫理」で、AIの産業利用に関する規範とし、責任ある開発・利用を確保するという。チャン氏はマレーシアがAI関連投資先としての魅力を増していると強調した。米マイクロソフトや、ティックトックを運営する中国系バイトダンスによる投資計画が好例だという。

半導体製造の米エヌビディアはAI開発につながるデータセンターの建設を計画しており、最近では米バンテージ・データセンターズがサイバージャヤにアジア太平洋地域最大のデータセンターを建設すると発表した。クラウドとAIに注力する見通しだ。

チャン氏は「こうした投資は重要な技術移転をもたらし、マレーシアの基盤整備、人材育成につながる」と期待を表明した。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、8月9日)

テスラ代表と22日にも投資計画について会合=投資貿易相

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 米テスラがマレーシアを含む東南アジアでの電気自動車(EV)工場建設計画を断念したと報じられたことを受け、テンク・ザフルル投資貿易産業相は、8月22日にテスラ本社代表とマレーシアにおける投資計画について話し合うと明らかにした。

10日の声明の中でザフルル氏は、テスラ代表との会談後に公式声明を発表し、これまでの公約の継続を確認すると言明。「テスラの今後の計画を知りたい。現時点でテスラの既存のサービスセンターは通常通り営業を続けている」と述べた。

ザフルル氏の声明に先駆けてアンワル・イブラヒム首相は9日、ザフルル氏がテスラの最新状況に関する直接の情報をテスラから受け取ったことを公表した上で、テスラの計画見直しの理由が中国との競争に勝てないからであって、マレーシア側に問題があったわけではないと説明。そもそもテスラがマレーシアで計画していたのは充電設備事業の拡大であって、EV工場の建設計画があったというのは誤解だと主張した。

ただ昨年のテスラによる一連のマレーシア投資に関する政府発表に関しては、創業者のイーロン・マスク氏との直接会談も含めアンワル首相が大々的に成果として喧伝していたのは事実であり、テスラに対し輸入許可証(AP)制度の適用を免除するなど特別扱いしていた経緯もあり、ネット上では「マスク氏に完全に騙された」、「投資欲しさにテスラにおもねったものの見返りは得られなかった」などと嘲笑する声も上がっている。「成果」として発表したマスク氏とのネット会談もわずか25分間で、大した内容はなかったと指摘されている。