科学技術革新省、米エヌビディアと共同でAI導入支援を開始

【クアラルンプール】 科学技術革新省(MOSTI)は18日、半導体大手の米エヌビディアと共同で、人工知能(AI)サンドボックス試験プログラムを開始すると発表した。

チャン・リーカン科学技術革新相によると、同プログラムは、政府機関の国家技術革新サンドボックス(NTIS)がエヌビディアと協業し、AI人材の育成や概念実証などにより、AI技術の導入促進を目指すもの。AI技術の具体的な利点や実行可能性を明らかにし、AI投資で得られるリターンや利点を示す。

同プログラムでは、2026年までにAIスタートアップ企業900社の設立、AI人材1万3,000人の育成、経済成長の10%向上を目標に掲げている。知識集約型経済に向け、政府が掲げる「2030年までに売上高10億リンギのAI企業を100社育成する」という目標にも合致しているという。

具体的には、マレーシア技術革新研究加速機関(MRANTI)が事務局を務め、プログラム第1期をオンラインで開始する。参加対象はAIスタートアップ企業。エヌビディアは、専門ラボの提供やAIソリューションのテストなどの面でプログラムを支援する。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、TNグローバル、4月19日、ザ・スター電子版、4月18日)

化学・エネルギーの韓国OCI、KLに地域本部を開設

【クアラルンプール】 化学・エネルギーの韓国OCIホールディングスは、クアラルンプール(KL)に地域本部を正式に開設したと発表した。

同社はすでに製造拠点をマレーシア国内に構えているが、KL本部では、マレーシアに加え、日本、中国、フィリピンにおける予算、事業計画、投資計画の策定機能を統合する。また、複数の国にまたがる子会社を管理し、東南アジア以外の世界的な投資事業にも関与する。

OCIのイ・ウヒョン会長は、地域全体の利害関係者、パートナー、顧客企業との協力関係を促進することを目指しKL本部を開設したとし、今後、重要拠点として機能させていくと述べた。

OCIはサラワク州で太陽光発電用多結晶シリコン生産施設や水力発電によるエピクロロヒドリン(ECH)製造工場を設立しており、2023年12月には日本の総合化学工業メーカー・トクヤマとの間で、マレーシアにおける半導体用多結晶シリコンの半製品の共同生産に関する契約を締結し、合弁会社を設立すると発表している。
(ザ・スター、4月22日、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、4月19日)

第20回国際ハラルショーケース、9月17-20日に開催

【クアラルンプール】 国内最大のハラル(イスラムの戒律に則った)製品見本市「マレーシア国際ハラルショーケース(MIHAS)2024」の開催が18日、オンラインで正式発表された。今年で20回目となるMIHASの会期は9月17―20日で、会場はマレーシア国際貿易展示センター(MITEC)。

主催者代表のテンク・ザフルル投資貿易産業相は、世界のハラル市場におけるマレーシアの主導的役割を強調し、ハラル製品の輸出額が2022年に600億リンギに達したと強調。マレーシアの経済発展と雇用創出に対する貢献を称えた。

投資貿易産業省などと共にMIHASを主催するマレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)のリーザル・メリカン長官は、今後数年のうちにMIHASを中国や欧州でも開催する計画があると言明。「これらの地域に進出することで我々は貿易と協力の新たな機会を創出し、MIHASをこれまでにないレベルに引き上げることを目指す」と述べた。

MIHAS2024では、マレーシアを含む45カ国・地域から2,000のブース出展、4万人以上の来場者を目標に掲げている。前回のMIHAS2023には44カ国・地域から1,040のブースが出展。来場者は100カ国・地域から3万8,566人に上り、延べ2,788回の商談が行われた。成約額は約32億リンギに達した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、4月19日、ビジネス・トゥデー、4月18日、MIHAS公式サイト)

GDEXがIT事業に多角化へ、宅配事業の競争激化で

【クアラルンプール】 宅配サービスのGDEXは、情報技術(IT)サービス・ソリューション事業への多角化を計画している。

GDEXが16日付けでブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)に宛てた声明によると、同社は2023年度までの3年間、売上高の85%以上を占める宅配事業に依存してきたが、外資系宅配業者との競争激化の影響を受け、赤字が継続している。そのため、IT事業への多角化に向け、2022年にウェブ・バイツ、スイートマグ・ソリューションズ(M)、アノン・セキュリティというIT企業3社の株式をそれぞれ38%、51%、60%取得した。GDEXは3社を通じ、Eコマースやウェブサイト開発、業務用ソフトウェア、サイバーセキュリティ・コンサルティングなどのITサービス・ソリューション事業に参入する。多角化は今年第2四半期までに完了する予定で、UOBケイヒアン・セキュリティーズ(M)がアドバイザーを務める。

GDEXの2023年度のITサービス・ソリューション事業の売上高は3,340万リンギ(総売上高の8.4%)だったが、人材採用の拡大に伴う人件費の増加により、税引き後損失100万リンギを計上した。GDEXは事業規模の拡大によりIT部門の業績が好転すると見込んでおり、IT部門は今後、グループの純利益の25%以上を占めると予想しているという。他IT企業への投資や買収、提携などについても検討するとしている。
(ザ・スター電子版、マレーシアン・リザーブ、エッジ、4月16日)

格安ホテル、運営コスト上昇で最大40%値上げも=業界団体

【クアラルンプール】 マレーシア・バジェット・ビジネスホテル協会(MyBHA)は、運営コストの上昇に伴い、格安ホテルが今後数カ月以内に宿泊料金を30ー40%値上げする可能性が高いと警告した。

MyBHAのガネーシュ・ミシェル会長は、ホテル経営者は、光熱費、ランドリーやメンテナンスの費用、ソフトウェア使用料などの運営コストに基づいて宿泊料金を調整するとし、3月にサービス税(SST)の6%から8%への引き上げが行われ、また今後電子請求書システムの使用義務も課されるため、運営コストは上昇すると述べた。格安ホテルの料金を維持するためには、電力会社テナガ・ナショナル(TNB)が特別料金を設定するなど、何らかの支援が必要だとしている。

ガネーシュ会長は、宿泊料金の値上げ幅はホテルの格付けによって異なるとし、コストをカバーするためにすでに料金を引き上げているホテルもあるとした。また、無許可の宿泊施設が格安ホテルを脅かしているとして、その規制について国内取引物価省に働きかけるとしている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・バイブス、4月15日)

近隣諸国とのグリーン電力取引を行う「エネルギー取引所」を設立

【クアラルンプール】 エネルギー移行・水利転換省(PETRA)は15日、近隣諸国とのグリーン電力取引を促進するため、「マレーシア・エネルギー取引所(ENEGEM)」を設立すると発表した。

PETRAの声明によると、ENEGEMではまず試験プロジェクトとして、マレー半島とシンガポール間の既存の相互接続インフラを利用し、シンガポールに対して合計100メガワット(MW)の送電を行う。入札が可能なのはシンガポールで発電・小売ライセンスを保有している再生可能エネルギー(RE)事業者で、入札開始前に資格審査が行われる。16日よりPETRAのウェブサイトなどから登録を受け付ける。

ENEGEM上での取引は、エネルギー委員会による「越境電力販売ガイド(CBES)」最新版に基づき行われる。また、ENEGEM管理のために、電力会社の政府系テナガ・ナショナル(TNB)から半島部の電力計画と調達を管理する機能を切り出し、電力供給全体を管理する唯一の組織(シングルバイヤー)として独立させる。

PETRAは、ENEGEMの設立は、マレーシアのエネルギー移行や、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国間で送電網をつなぐ「ASEANパワーグリッド(APG)構想」に沿ったもので、まずはシンガポールなど、二国間ベースで地域を接続し、その後徐々に拡大を図りながら東南アジア全域を統合した送電網を構築していくと述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、エッジ、フリー・マレーシア・トゥデー、4月15日)

半導体重要拠点としてペナンに脚光、WEFが評価

【ペタリンジャヤ】 世界経済フォーラム(WEF)がビジネス特化型SNS「リンクトイン」のページにペナンに関する動画を投稿し、半導体チップの新たな重要拠点と評価した。アンワル・イブラヒム首相は自身のフェイスブックアカウントでこの動画を共有し「技術革新を動力とする、ハイテクの未来を構築する」とした。

WEFは動画で「世界では1,000億個の半導体が日常的に利用されているが、半導体製造が特定の地域に集中しているためサプライチェーンがぜい弱性を増している。マレーシアは新たな選択肢を探している企業が目指す場所になっている」とした。ペナン州に対する2023年の外国からの直接投資は128億米ドル。うちインテルは新工場の建設に70億米ドルを投じた。

外国メディアもペナン州を取り上げており、過去数年、ペナン州に投資した企業として、米系ラムリサーチ、テキサス・インスツルメンツ、マイクロン・テクノロジー、独系インフィニオン・テクノロジーズ、ボッシュ、台湾系日月光半導体(ASE)を挙げた。マレーシアはチップ組み立て、テスト、パッケージングなど後工程で強みを持つ。設計では内資のオプスター・テクノロジーが注目を集めている。
(ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、4月12日)

グラフジェット、米ネバダ州にグラファイト生産施設を設立

【クアラルンプール】 マレーシアで設立されナスダックに上場しているグラフジェット・テクノロジーは8日、米国ネバダ州に黒鉛(グラファイト)生産施設を設立すると発表した。投資額は1億5,000万―2億米ドル(7億1,350万―9億5,134万リンギ)を予定しており、2026年の稼働を目指すとしている。

グラフジェットは農業廃棄物からグラファイトとグラフェンを製造する特許を保有しており、農業廃棄物であるアブラヤシ核殻を最大3万トン使用して、マレーシア国内でハードカーボンに加工し、ネバダ工場に輸送する。ネバダ州の生産施設は年間10万台のEVに供給できるバッテリーグレードのグラファイト1万トンを生産する。

中国は世界トップの黒鉛の生産・輸出国だが、米国は電気自動車(EV)用バッテリー部品の中国への依存を減らすことを目指している。

グラフジェットのエイデン・リー最高経営責任者(CEO)は、「グラファイトの商用生産の早期開始に向けて尽力しており、新生産施設における取引に関連して数社と協議している」と述べた。
(ザ・スター、4月9日、エッジ、4月8日、グラフジェット発表資料)

水素技術は成熟、120億リンギの収益目標達成は十分可能

【プトラジャヤ】 チャン・リーカン科学技術革新相は、マレーシアでは水素燃料自動車技術がすでに確立されており、「水素経済・技術ロードマップ(HETR)」の「2030年までに120億リンギの収益」という目標は、グリーン水素の輸出によって十分達成できるという期待を示した。

チャン氏は1日、同省で行われた移動式水素燃料補給ユニット及び水素燃料車のデモンストレーションに出席し、「水素燃料に関する技術はすでに成熟しており、車両も入手可能だ。我々がしなければならないのは需要と供給の両方を生み出すことだ」と言明。需給の創出や強固なエコシステム実現に向け、モビリティ分野での利用技術と供給側のグリーン水素生産の両方を促進したいと述べた。移動式水素燃料補給ユニットは年末までにプトラジャヤに設置される予定だという。
その上でチャン氏は、水素燃料車のメリットとして燃料補給時間が3ー5分と電気自動車(EV)より短いこと、航続距離が700―1,000キロメートルと長いこと、車両重量が軽いことを挙げた。

一方、チャン氏は、詳細な水素燃料車の実用化計画はまだ策定されていないと言明。水素が商用化され大量生産されるようになればガソリンと競合できるだろうが、マレーシアでは多額の

補助金が出ているためガソリンが非常に安価となっていると指摘した。
同日のデモにはアンワル・イブラヒム首相も出席し、チャン氏と共に首相府庁舎までトヨタの水素燃料自動車「ミライ」に試乗。チャン氏によると、アンワル首相は水素燃料自動車に大変関心を持っている様子で、第一印象としてエンジンがとても静かだったと述べていたという。
(マレー・メイル、ザ・サン電子版、ボルネオポスト、ベルナマ通信、4月1日)

ペナンLRTが閣議決定、2030年に完成予定

【プトラジャヤ】 アンソニー・ローク運輸相は3月29日、ペナン州政府から連邦政府が引き継いだ、ペナン軽便鉄道(LRT)の建設について、閣議決定が行われたと発表した。政府系MRTコープが開発運用を担当し、2030年までの運行開始を目指す。

ペナンLRTは3期に分け開発され、第1期は埋め立て工事中のシリコン島からジョージタウンのコムターまでの区間で、建設・エンジニアリング大手のガムダが60%所有するSRSコンソーシアムが工事を担当する。SRSは2015年8月に州政府が実施した公開入札で工事業者として指名されており、すでに環境影響・社会影響評価、予備技術調査や設計を自前の資金で実施している。今後MRTとSRSとの間で交渉を進め、半年程度で契約内容を確定させ、工事を開始するという。

ローク運輸相は、第2ー3期については別途公開入札を行うと言明。LRTの車両基地についてはスンガイ・ニボンのタパック・ペスタ統合型交通開発と共に建設するとし、運賃以外の追加収入を得ることを目指すと述べた。

ペナン州のチョウ・コンヨウ首相は、ローク運輸相の発表を歓迎するとし、州政府はスンガイ・ニボンの車両基地に加え、シリコン島内にもう1カ所車両基地を建設することを提案していると述べた。

ペナンLRTは全長29キロメートルで、ジョージタウンの市街地やペナン国際空港、埋め立て中のシリコン島を結ぶ。北の終点をコムターからタンジュンブンガまで延伸することも検討されている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、マレー・メイル、3月29日)