国内銀行の資本や流動性は健全、景気後退でも懸念なし=中銀

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)のノル・シャムシア総裁は29日、国内銀行は十分な資本や流動性を維持しており、景気後退を想定した場合にも損失を吸収できる能力を有していると明らかにした。また国内の全銀行は規模に関わらず厳しい規制下にあり、他国で起きたような銀行危機はマレーシアでは起こらないとしている。

ノル氏は、中銀が毎年実施しているストレステストを通じ、銀行や保険・タカフル(イスラム保険)事業者を世界金融危機や2020年のパンデミック時よりも厳しい運用環境でテストした結果、総資本比率は最低限必要な8%を大きく上回る結果となり、国内金融機関の強さが確認されたと述べた。

BNMの「2022年下半期金融安定性レビュー」によると、国内銀行の総資本比率は2022年6月時点で18.4%、同年12月時点で18.8%。資本バッファーは規制最低値を超える1,348億リンギだった。総資産利益率は1.4%、自己資本利益率は12.4%に改善し、2022年12月時点の株価純資産倍率および株価収益倍もそれぞれ0.9、12.2とパンデミック前水準には及ばないものの上昇傾向にある。流動性に関しても、2022年12月時点の安定調達比率(NSFR)は118.2%、流動性カバレッジ比率(LCR)は154.0%となり、健全性を維持した。
(ザ・サン、ザ・スター、3月30日、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、3月29日)

今年度予算案に追加の政策を発表=アンワル首相

【クアラルンプール】 2023年度予算案の第二読会が29日に行われ、アンワル・イブラヒム首相はいくつかの追加政策を発表した。

アンワル首相は、すでに発表した予算案に盛り込まれた政策で、恩恵を得ることができない人たちがいるとし、追加政策を導入することを決めたと説明。特にラマダン(断食月)やラマダン明けの祝日への支援が必要だとし、小規模ゴム農家や水田農家、漁師など85万人に対する追加の特別現金給付200リンギに1億7,000万リンギを割り当てると述べた。また自警団(RELA)や警察、消防のボランティアにも300リンギを支給するとした。

さらに28日にスティーブン・シム副財務相が打ち切りを発表していた国家教育貯蓄制度(SSPN)貯蓄者への最高で8,000リンギの個人所得税控除について、アンワル首相は国民からの反対や懸念の声が寄せられたとし、2024年まで延長することを決めたと述べた。今年度予算案は、全国民の幸福を確保するためにマレーシアを変えるという政府の決意を示すものであると説明した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月30日、ベルナマ通信、3月29日)

セランゴール国際ビジネスサミット、10月19ー22日に開催

【ペタリンジャヤ】 セランゴール州政府は、10月19ー22日に「セランゴール国際ビジネス・サミット(SIBS)2023」を開催すると明らかにした。

今年で7回目の開催となる「SIBC2023」は、クアラルンプール・コンベンションセンター(KLCC)において「セランゴール、東南アジア諸国連合(ASEAN)への玄関口」というテーマで開催する。

メインイベントとして、食品・飲料(F&B)および医療従事者向けの「セランゴール国際エキスポ」、「セランゴール工業団地エキスポ」、「セランゴールASEANビジネス会議」、「セランゴール・スマート・シティ&デジタル経済会議」、「セランゴール研究開発 (R&D)&イノベーション・エキスポ」を開催し、「セランゴール国際料理フェスティバル」や「セランゴール国際ヘルスケア会議」、「SIBSインビテーショナル・ゴルフトーナメント2023」などのイベントの紹介も行うという。

今年は、5万人の来場、1,050のブース設置、15億リンギの成約が見込まれている。今年は外国人の参加比率を昨年の10%から20ー30%に引き上げることを目標としているという。なお、ビジター登録の受付はウェブサイト(www.selangorsummit.com)で行っている。
(ザ・サン、3月28日)

今年のインフレ率は3.1ー3.3%に低下、経済相が予想

【ペタリンジャヤ】 ラフィジ・ラムリ経済相は、2023年通年のインフレ率について現在の下降傾向が続けば3.1ー3.3%程度に低下するとの予想を示した。

ラフィジ氏は2022年12月以降、インフレ率が安定水準を維持していると指摘した上で、「9月の4.5%をピークにその後の6カ月の統計局のデータをみると、価格上昇のピークを過ぎていることを示す兆候が表れている」と言明。「2カ月ごとに0.1%の割合でインフレ率が低下する場合、この下降パターンが今後数カ月間継続すれば、年末にはインフレ率が3.1ー3.3%になる可能性がある」と述べた。

一方でラフィジ氏は、インフレが国際的な地政学的要因や洪水などの地域的な混乱によって引き起こされる原材料の供給混乱など、制御できないものにも依存すると指摘。「生産コストが下がる兆候があることを示すデータからはインフレが下降傾向にあるように見えるが、他の要因もある。たとえば天候不順は原材料の供給に混乱を引き起こす」と述べた。

3.7%だった2023年2月のインフレ率に関して、ラフィジ氏は、主な要因が洪水によって野菜の価格が上昇した食品・飲料(7%)と、国内外からの観光客増加に伴う外食・宿泊(7.4%)にあると指摘した。
(ザ・スター、3月28日、ベルナマ通信、3月27日)

あらゆる独占契約を見直し=アンワル首相

【ジェッダ/クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相は、政府が現在のシステム上に存在するあらゆる独占形態を見直し、国民が公正でより良いサービスを享受できるようにすると言明した。

サウジアラビアを訪問中のアンワル首相は、電子化自動車検査センター(Puspakom)の独占撤廃に関連して記者団から質問を受け、「独占問題について公正な評価が行われるよう、独占を許可している根拠についてすべての管轄省庁に調査を求めている」と言明。「透明性のある経済発展の原則は、既得権益を満たすための時代遅れのものから脱し、何らかの転換を行うことを保証するものだ」と述べ、Puspakom以外の独占状態についてもメスを入れる考えを示した。

その上でアンワル首相は、「ブミプトラ(マレー人と先住民の総称)企業を支援するという政府の約束は守るが、ブミプトラ企業間の公正な競争を可能にするために、透明性をもって行われなければならない」と述べた。

アンワル首相の発言に先立ち、アンソニー・ローク運輸相は、2024年8月31日にPuspakomとの契約が満了した後、資格のあるすべての関係者が車検サービスに参入できるようにすることを決定したと発表。民間参入に備えて、遅くとも2024年第1四半期に許認可手続きを開始する考えを示していた。

AMDマレーシアがペナン拠点を拡張、オフィスとラボ施設を新設

【ジョージタウン】  米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のマレーシア現地法人AMDグローバル・サービシーズ(M)は23日、ペナン州バヤンレパス拠点を拡張すると発表した。

ペナン開発公社(PDC)がバヤンレパスで建設中の2億リンギの「GBSバイ・ザ・シー」ビルの約70%にあたる約20万9,000平方フィートのスペースにオフィスとラボ施設を構え、グローバル・ビジネス・サービス(GBS)とエンジニアリング部門の人員を増強する。「GBSバイ・ザ・シー」は2024年に完成予定の9階建てのオフィスビルで、賃貸可能床面積は約30万平方フィート。

AMDマレーシアのデビンダー・クマール副社長は発表会で、ペナンは50年以上にわたって、半導体エコシステムおよびAMDの先端テクノロジー製品の組立・テストにおいて重要な役割を果たしてきたとし、今回の投資やペナン州政府の支援を受け、AMDはペナンでイノベーションを推進し、科学研究、データセンター、通信を発展させる新しい機能を提供することを約束すると述べた。

発表会に参加したチョウ・コンヨウ州首相は、ペナンではGBSを含むデジタルエコノミー産業が増加しており、ペナンのサービス部門の投資額(認可ベース)は、過去2年間で州投資総額の11%を占める100億リンギに達したと言明。州政府はペナン州政府系投資会社インベスト・ペナンやPDCとともにAMDのペナンでの事業拡大を支援していくと述べた。

AMDはペナンへの投資を拡大する方針で、AMDと中国・通富微電子の合弁会社であるTF-AMDマイクロエレクトロニクス(TFME)も昨年6月、約20億リンギを投じてバトゥカワン工業団地に製造工場を新設すると発表している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月24日、マレー・メイル、エッジ、3月23日)

「ハラル産業マスタープラン2030」がスタート、産業強化図る

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ハラル(イスラムの戒律に則った)産業の強化を図るための「ハラル産業マスタープラン2030(HIMP2030)」が23日にスタート。テンク・ザフルル通産相はマレーシアのハラル(イスラムの戒律に則った)産業が2030年までに1,132億米ドル(5,003.4億リンギ)規模まで成長し、国内総生産(GDP)に占める割合が2025年までに8.1%に拡大するとの見通しを示した。

HIMP 2030のテーマは「目立って可視化されグローバル化されたハラル・マレーシア」で、▽ハラルに配慮した政策や法律の強化▽国内ハラル製品・サービスのための大きな新市場空間の創出▽グローバルなニーズに対応できるハラル専門家やプロフェッショナルの確保▽質の高い統合的なインフラ整備の強化▽ソート・リーダーシップの育成▽ハラル・チャンピオンの輩出▽ハラル産業におけるブミプトラ(マレー人と先住民の総称)の競争力強化ーーの7項目の戦略的推進事項と合計23のイニシアチブからなる。

これらの政策は▽強固で多様な国内ハラル産業育成▽徹底したシャリア(イスラム法)遵守▽マレーシアにおけるビジネスのしやすさの向上▽競争力のあるビジネス・エコシステム育成▽「ハラル・マレーシア」の世界への発信ーーの5つの主要目標成果によって推進される。

テンク・ザフルル通産相は「通産省は世界のハラル市場における主要なプレーヤーとしてのマレーシアの地位を高め、世界全体で20億人に上るムスリム人口を活用するために、ハラル・エコシステムのすべての要素を強化することに全力を尽くす」と言明。通産省と下部機関は、ハラル産業を特に中小企業にとって有利かつ競争力のある産業として位置づけるための活動をすでに開始していると述べた。
HIMP2030の開始宣言を行ったアハマド・ザヒド副首相は、ハラル証明書発行の迅速化に向け新たなメカニズムやプロセスを導入する必要があると指摘。現状では官僚機構などの制約のために発行に約9カ月かかっていると述べた。

通産省によると、2022年のマレーシアのハラル製品輸出額は594.6億リンギで、前年から231.6億リンギ、率にして63.8%の大幅増となった。セクター別では食品・飲料が引き続きトップとなり、総輸出額は278.4億リンギで、ハラル輸出全体の46.8%を占めた。これに▽ハラル原料(233.5億リンギ)▽化粧品・パーソナルケア商品(34.9億リンギ)▽パーム油派生商品(27.9億リンギ)▽工業用化学品(12.7億リンギ)▽医薬品(7.2億リンギ)ーーが続いた。

インフレ抑制のため金融引き締めを、IMFが提言

【クアラルンプール】 国際通貨基金(IMF)のマレーシア訪問団を率いるラミン・リー氏は、インフレを抑えるために現在の緩和的なスタンスを中立に戻して、金融政策をさらに引き締めるべきだと指摘した。

3月8日から20日までマレーシアに滞在したリー氏は、外部からの逆風により、2023年のマレーシアの経済成長率が約4.5%に減速すると予想。その中にあって、インフレ率は約3.25%で上昇し続けると予測されるとし、プラスの需給ギャップと需要側の圧力の高まりからコア・インフレ率が高止まりする可能性があると指摘した。

その上でリー氏は、「急速に変化する非常に不確実な環境では、マレーシア中央銀行バンク・ネガラは政策決定の根拠を引き続き明確に伝えることが重要」と指摘。「金利が上昇し経済成長の勢いが弱まっている現在の環境下では、家計や企業のバランスシートの監視を強化する必要がある。マクロプルーデンス政策(金融システム全体のリスクの把握を重視し安定を図る政策)のツールキットを拡大することは、こうした取り組みをサポートするのに役立つ。為替レートの柔軟性は、外的ショックに対する最前線の防衛ラインとして必要となる」と述べた。

マレーシア中銀は長く3.25%で維持していた翌日物政策金利(OPR)を2019年5月、2020年1月、3月、5月、7月に引き下げ、16年ぶりの水準である1.75%としていたが、利上げに転じ2022年5月、7月、9月、11月に利上げを実施して2.75%とし、その後は維持していた。

リー氏はまた、第12次マレーシア計画(12MP)と2023年度予算で設定された協調的な政策課題の実施に向けて前進する時が来たと指摘。これらの政策は広範な生産性推進と包括的な成長、気候変動への対処、デジタル化促進、ガバナンス強化、腐敗防止の強化に適切に焦点を当てていると評価した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月21日)

新型コロナで17万6千人の起業家が廃業=起業家開発相

【コタキナバル】 イーウォン・ベネディック起業家開発協同組合相は、新型コロナウイルス「Covid-19」パンデミックの影響で事業が立ち行かなくなったために廃業に追い込まれた起業家がマレーシア全土で17万6,000人に上ったと明らかにした。
ベネディック大臣は、2020ー2022年に廃業した起業家は17万6,426人だったとした上で、パンデミックがビジネスに大きな打撃を与え、多くの起業家が景気後退の中で会社を存続させようと奮闘していると強調。政府は起業家が事業再開したり他の事業で再出発することを後押ししていると述べ、「政府は助成金や融資、職業訓練、起業指導などの起業家支援を行っている」とした上で、厳しい状況に直面する起業家や協同組合が競争力を維持していくことを最終目標に掲げていると述べた。
また起業家開発協同組合省が下部機関やプログラムを紹介した「起業家精神プログラム2023」と題する冊子を作成したことを公表した。冊子はダウンロード(https://online.flippingbook.com/view/726095416/)可能。

インベストKLの投資誘致額、昨年は過去最高の27.9億リンギ

【クアラルンプール】 クアラルンプール(KL)における投資誘致活動を行っているインベストKLは16日、昨年の投資誘致額が前年比13%増の27億9,000万リンギとなり、過去最高となったと発表した。

外国直接投資(FDI)が貢献し、製薬会社の米アボットや、化粧品の米エスティローダー、医薬品の米バクスターなど13社のグローバル拠点設立への投資を獲得したことで、2,805人の熟練労働者向けの雇用を創出した。

2011年以降の累計投資誘致額は215億2,000万リンギとなった。大手多国籍企業や急成長企業120社がKLにグローバル拠点を設立し、1万9,000人分の高度スキルを有する幹部クラスの雇用が創出された。うち94%の平均月給は1万3,000リンギとなっているという。

今年の目標についてインベストKLは、20億リンギに設定していると説明。デジタル・エコノミーやフィンテック(金融技術)サイバーセキュリティなど、より影響や価値が高い投資を誘致するとした。昨年の投資誘致額よりも目標を低く設定した理由については、2030年までに年間投資誘致額を50億リンギに引き上げることを目標に掲げており、その最低基準として20億リンギという数字を割り出したと説明した。
(ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月17日、エッジ、3月16日)