太陽鉱工が触媒回収工場を起工、東南アジア初

【クアンタン】 希土類元素化合物、ジルコニウム化合物製造販売の太陽鉱工(本社・兵庫県神戸市)はパハン州ゲベン工業団地で使用済み触媒の回収工場を起工した。運転開始は2027年第1四半期の予定。この種の施設は東南アジア初。

建設に当たるのは東洋エンジニアリングのマレーシア法人、トーヨー・マレーシアで、太陽鉱工の鈴木一史社長は「工場建設のための戦略的提携であり、環境持続性の推進と循環経済の育成における重要な一歩だ」と述べた。石油精製プラントで使用済みとなった重油脱硫触媒からモリブデンとバナジウムを抽出し回収する。同社固有の技術で、環境への影響を抑制するだけでなく、そうした希少元素の安定供給にもつながるという。

太陽鉱工の海外工場は初めて。工場は効率的な触媒回収だけでなく、環境への配慮、持続可能性でも新たな基準となることを目指す。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、12月19,20日)

サバ州に中国向け水産物航空貨物ハブ設置を計画=運輸相

【クアラルンプール】 マレーシアは中国向け主要輸出品の出荷量増加を目指しており、サバ州に冷蔵航空貨物ハブを設置して中華圏への水産物輸出を増やす計画だ。アンソニー・ローク運輸相の話として「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

17日に開催された「マレーシア・中国サミット」に出席したローク氏は、航空貨物はサバ州の水産業を成長させるための次のステップであり、中国市場への迅速かつ直接的なアクセスを可能にすると指摘。「サバ州は多くの水産物を生産しており、中国に輸出できる水産物がたくさんある。我々は州都コタキナバルをより大規模な中国市場に商品を提供するコールドチェーン貨物ハブとして開発することを検討している」と述べた。

サバ州政府によると、同州はマレーシア国内の水産物生産高の約4分の1を占めている。サバ州水産局の最新データによると、中国本土は2022年に約1億7,400万リンギ相当の水産物を輸入し、香港は同年に4,360万リンギ相当を輸入した。
(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、マレー・メイル、12月18日)

軽油価格変動制、給油所3500カ所で1.8億リンギの損失

【クアラルンプール】 政府による補助金制度の見直しで、今年6月にディーゼル油(軽油)が変動制になって以降、半島部にあるガソリンスタンド計3,500カ所で1億8,100万リンギの損失を被ったという。英字紙「ザ・スター」が18日、ブミプトラ・ガソリンスタンド運営者協会(ブミペダ)の報告として報じた。

ブミペダのハニー・ジュリア・ハロン事務局長は、「半島部のガソリンスタンドの約98%で損失があった。ガソリンスタンドだけでなく、自動車整備工場や販売店など今後さらに長期的な影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

またマレーシアにおける燃料の価格は、1983年に導入された自動価格設定メカニズム(APM)を基に決められているが、これについてハニー・ジュリア氏はAPMの抜本的な見直しの必要性を指摘。「現在の経済の現実を反映するため、APMを国家の年間予算と整合させる必要がある」と強調した上で、コスト構造は米ドルに大きく影響され、ガソリンスタンドと石油会社の両方の利益率に影響を与えると付け加えた。
(ザ・スター、ポールタン、12月18日)

マレーシア人の対中感情、好意的が77%に倍増=ムルデカ調査

【クアラルンプール】 世論調査機関、ムルデカ・センターが発表したマレーシア人の対中感情に関する最新調査によると、マレーシア人の77%が中国に対して好意的だと回答し、2年前の調査の39%から大幅に改善したことが分かった。

同調査はマレーシア・中国国交樹立50周年を記念して行われたもので、全国の成人1,225人を対象に実施。内訳はマレー系52%、華人29%、インド系7%、イスラム教徒の非マレー・ブミプトラ6%、非イスラム教徒の非マレー・ブミプトラ6%だった。前回調査で67%が好意的だった華人は90%に上昇、前回28%だったマレー系も73%に大幅改善した。

両国の関係については84%が「良い」と回答。前回の70%から大幅に増加した。「悪い」は9%にとどまり、前回の20%から減少した。過去2年間で中国への印象が良くなったとの回答は62%に上り、「変わらない、もしくは悪化した」は31%にとどまった。

両国関係の方向性については、「正しい方向」が77%で、「誤った方向」は12%にとどまった。

昨今急増している中国によるマレーシア投資については、「肯定的」が82%で、「否定的」は9%にとどまった。両国の協力分野については、「デジタル経済」が20.0%と最も多く、これにインフラ開発、観光、製造、電気自動車(EV)が続いた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、12月18日、ムルデカ・センター発表資料)

e-メタノール生産で東京ガスと協議、サラワク州首相

【東京】 サラワク州のアバン・ジョハリ首相は18日、東京ガスの技術開発拠点、横浜テクノステーションを視察し、木本憲太郎副社長から水素、e-メタノール生産について説明を受けた。州としてe-メタノール生産で東京ガスとの提携を模索するという。

e-メタノールは合成燃料の一種で、再生可能エネルギーによって得られた電力で水を分解し生成された水素と、大気中などから回収した二酸化炭素を合成した液体燃料で「二酸化炭素排出の削減に役立つ未来の重要燃料」(アバン・ジョハリ氏)として州は重要視している。

従来、メタノールは天然ガスを原料として生産される。アバン・ジョハリ氏によれば、日本におけるe-メタノール生産ではまず合成ガスの生産が必要だが、サラワク州は天然ガスが豊富で、製造工程を簡略化できるという。このためe-メタノール生産を望む日本企業は、サラワク州に工場を建設するだけでよく、複数の行程を省くことができる。生産コストもサラワク州が低いという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ボルネオ・ポスト電子版、12月18日)

来年の経済成長率、投資銀2行は4.9%を予想

【クアラルンプール】 投資銀行2行はマレーシアの2025年の国内総生産(GDP)成長率を4.9%と予想している。今年1-9月の増加率が前年同期比5.2%だったことを勘案すれば、やや減速の予想だ。

メイバンク・インベストメント・バンクは、強固な内需と、第2次トランプ政権下での貿易政策変更の可能性など外的要因との相互作用が経済の先行きに影響すると述べた。

内需面では設備投資の増加を挙げた。資本財の輸入が増加し、工業施設建設のための融資も増加している。公務員賃金引き上げなど2025年度予算に盛り込まれた所得増の措置が消費をけん引する。低所得層への交付金増額、最低賃金引き上げもプラス要因だという。

ホンリョン・インベストメント・バンクは、米国の貿易政策など外的要因をGDP予想の理由の1つに挙げた。しかし堅調な投資、補助合理化、政治状況が安定を増していることを挙げ、経済成長の基盤はより強固になったとした。
(ザ・スター電子版、ベルナマ通信、12月17日)

ゴーKL、新年から3路線を加え計7路線で外国人の運賃有料に

【クアラルンプール】 クアラルンプール市政府(DBKL)は15日、巡回バス・サービスの「ゴーKL」について、外国人の運賃有料化の路線をこれまでの4路線に加え、2025年1月1日からさらに3路線に拡大導入すると発表した。

ゴーKLは今年1月から、01(緑)、02(紫)、03(赤)、04(青)の4路線で、外国人を対象に1回の乗車ごとに運賃1リンギを徴収する。

新年からは、05(オレンジ)、06(ピンク)、08(マルーン)にも同じ運賃が適用されるという。12歳以下の子供については、外国人もこれまで通り無料。また、マレーシア国民は多機能身分証カード「MyKad」を登録すれば引き続き無料で利用できる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、12月16日、ビジネス・トゥデー、12月17日)

政府車両のEV化、来年段階的に実施=天然資源相

【プトラジャヤ】 天然資源・環境持続可能性省は17日、政府車両の電気自動車(EV)への移行に関する技術ガイドラインをまとめた文書を発表した。

ニック・ナズミ大臣は「EV移行は一度に行われるのではなく、段階的に行われる。すでに移行プロセスは開始されており、2025年に移行が開始される」と述べた。

移行がすべての政府レベルに適用されるのか、特定の部門に適用されるのかについては、ニック・ナズミ氏は、各省庁・下部機関の要件に基づき、最終的に財務省の決定に従うと言明。各ニーズに基づいて国産EVにするか外国製EVにするかも決まると述べた。

ガイドラインは各省庁、下部組織、政府機関、EV業界の技術専門家の意見を取り入れて作成されており、計画的かつ効果的な移行を実現するためのEVの選択、インフラ計画、充電およびコスト分析、二酸化炭素排出量削減に関する指針が盛り込まれている。

政府車両のEV化は、政府のエネルギー移転政策の一環として、昨年、アンワル・イブラヒム首相が2024年度予算案で公表していた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、12月17日)

マレーシアとタイ、27年までに相互貿易300億米ドルを目標

【プトラジャヤ】 タイのぺートンタン首相が15、16日にマレーシアを初訪問し、アンワル・イブラヒム首相と会談。両首脳は2027年までに相互貿易300億米ドル(約1,338億リンギ)の達成を目標に掲げ、両国貿易と投資の強化に向けたコミットメントを再確認した。

共同記者会見でアンワル首相は、タイ南部と同じくマレーシア北部地域への重点と投資を増やす必要があると強調。ぺートンタン首相は両国に相互利益をもたらすと期待されるゴム産業とハラル(イスラムの戒律に則った)産業における協力の可能性を強調。「経済協力の面で両国は貿易と国境の連結、デジタル経済、観光への投資に注力する」と述べた。

両首脳はまた、タイが域内観光推進向けて提案している▽タイ▽マレーシア▽ベトナム▽カンボジア▽ラオス▽ブルネイ――の6カ国を1つのビザで入国できる「6カ国・1目的地」構想について、両国の関係当局によるさらなる議論を歓迎した。
16日に外務省が発表した共同声明によると、マレーシアとタイは、ゴム、観光、ハラル、デジタル産業、エネルギーグリッド、ガス供給、国境管理を含む経済協力を強化することで合意。ゴムに関しては、マレーシア・ゴム協会とタイ・ゴム公社がゴムに関する覚書(MoU)を取り交わした。
(ザ・スター電子版、ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、ベルナマ通信、12月16日)

TRXで新オフィスビル建設、会計事務所のPwCが主要テナント

【クアラルンプール】 クアラルンプール(KL)の国際金融地区「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」内で新たなオフィスビルの建設が計画されている。世界的会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)・マレーシアが主要テナントとして入居する見込みだ。

TRXは70エーカーからなり、財務省所有企業のTRXシティーをメインデベロッパーに、約10年の開発期間を経て、今年2月に開所式が行われた。中核施設となるショッピングモール「エクスチェンジTRX」は先月末で開発開業1周年を迎え、にぎわっている。

新たなオフィスビルは、HSBCマレーシアの本社が入る「メナラIQ」に隣接する 「ロットC7-10」という区域で、総賃貸可能面積80万平方フィート。PwCは総賃貸可能面積の25%にあたる20万平方フィートのリース契約を結び、現在のKLセントラルにある本社を移転するとみられる。

これに対し、経済紙「エッジ」はTRXを含めKLではオフィススペースが余り気味で、新ビルの動きは注目されると報じた。例えば、TRX内の35階建てのメナラ・アフィンも入居率65%で、まだ30万平方フィートが賃貸可能とされる。

特に、2019年に完成した高層ビル「エクスチェンジ106」は苦戦し、総賃貸可能面積260万平方フィートのうち、まだ120万平方フィートの空きがあるという。デベロッパーのムリア・プロパティは、財務省が51%、インドネシアを拠点とする不動産開発業者ムリア・グループが49%を所有する。ムリア・プロパティによると、中国のフィンテック大手アント・インターナショナルが3フロア計6万2,000平方フィートに、来年前半に入居を予定。入居が完了すると入居率は52%になり、さらに2025年末までに70%に達すると見込んでいるという。
(ザ・スター、12月13日、エッジ、12月16日)