脱炭素目標達成に向け原子力導入は不可欠=エネルギー副相

【クアラルンプール】 エネルギー移行・水利転換省(PETRA)のアクマル・ナスルアー副大臣は、既存のロードマップでは2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロの目標を達成するのは困難だとし、原子力発電の導入が不可欠との見方を示した。

「エナジー・アジア会議2025」のパネルディスカッション「マレーシアのエネルギー転換を推進する」に登壇したアクマル氏は、将来のエネルギー需要を満たすため、エネルギーの3つの要素(手頃な価格、持続可能性、安定供給)を再評価する必要があると言明。「石炭、石油、ガスの段階的削減を進める中で、化石燃料に代わる安定したベースロード電源を何で代替するのか。これは真剣に検討しなければならない問題だ」と問いかけた。

またアクマル氏は原子力エネルギーは再生可能エネルギーには分類されないものの、クリーンな発電源であると主張し、「原子力は再生可能エネルギーとは見なされないが、クリーンなエネルギー生産源の一つである。私見では原子力がなければ2050年までのネットゼロ目標達成は難しいだろう」と述べた。

その上でアクマル氏は政府と国民に対し、国家のカーボンニュートラル目標達成のために原子力発電を導入する現実的な側面を認識するよう促し、「我々には独自の計画があるが、政府が本格的に原子力に舵を切る際には、政府だけでなく国民もネットゼロ目標を達成するためには原子力エネルギーが不可欠であるという現実を受け入れる準備ができていることを願う」と述べた。

2023年に発表された国家エネルギー転換ロードマップ(NETR)では、2050年までにマレーシアのエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー比率を70%とし、太陽光と水力が主要な貢献源、天然ガスが移行期の燃料として位置づけられている。
(ビジネス・トゥデー、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、6月17日)

マレーシアは5年内にエネルギー純輸入国に転落=ペトロナスCEO

【クアラルンプール】 国営石油会社、ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)のムハンマド・タウフィク社長兼最高経営責任者(CEO)は、マレーシアは電力需要の増加に伴い、今後5年以内にエネルギー純輸入国になる可能性があると述べた。

タウフィク氏は「エネルギー・アジア会議2025」に合わせて行われた記者会見で、「電力需要増加は急速な経済発展、中間層の増加、そして人工知能(AI)などの技術への依存度の高まりによって引き起こされている」と指摘。現在の電力供給インフラでは、年率6.5%と急増している需要に対応しきれない可能性があると警告した。

タウフィク氏は、「電力需要はもはや産業界や一般家庭からだけでなく、データセンターやAI駆動システムからも増加しており、既存の供給だけではこれを支えることは不可能だ」と言明。ペトロナスは既にこのシナリオに備えており、マラッカとジョホールに続く3番目の再ガス化ターミナルの建設に取り組んでいると述べた。

さらにタウフィク氏は、マレーシアが東マレーシアから液化天然ガス(LNG)を輸出し続けているものの、半島マレーシアでの需要がいずれ供給を上回ると指摘。「現在、半島マレーシア東海岸沖のガス田だけでなく、タイとの共同開発地域からも安定的にガスを供給できているが、沿岸部や電力・非電力需要を満たしてきた約20億立方フィートのガスもやがて不足するだろう。今後4―5年で期待されるガス改革にもよるが、我々はLNGへの依存度を高めていくことになる」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、6月17日)

「GST再導入は時期尚早」首相が貧困層に重荷との見解

【ルムット】 アンワル・イブラヒム首相は、現時点で物品・サービス税(GST)を再導入することは不適切であり、貧困層を含む全ての国民に負担を強いることになるとして、現時点で実施する考えのないことを改めて強調した。

アンワル首相は15日、ペラ州で開催された国民参加型イベントの閉会式で演説し、GSTは一律6%の広範な課税であることから、漁師や小規模農家、清掃員など所得の低い人々にも平等に課税される点を問題視。「GSTは効率的で単純な仕組みだが、失業者や貧困層にも6%の税が課されるのは公正とはいえない」としたうえで、野党がGSTの導入を主張していることについても、「経済状況が改善し、最低賃金が月額4,000リンギを超えるようになれば再検討の余地はあるが、今はその時期ではない」と述べた。

政府は現在、特定の商品に絞って課税する売上・サービス税(SST)制度を継続しており、特に高所得者層が消費する高級輸入品に焦点を当てている。アンワル首相は「地元産のバナナには課税しないが、アボカドやタラのような高価な輸入果物・魚介類には課税している」と説明。これにより得られる税収は、病院や学校、国防といった国民全体に恩恵をもたらすインフラ整備に充てられていると述べた。

さらにアンワル首相は、政府の税収は単に行政運営費に充てるだけでなく、国民生活の向上を目指した開発・福祉政策に活用していると強調。一方でSST制度には改善の余地があることも認め、「政府は国益の観点から、制度の見直しや強化について常に前向きだ」と述べた。
(ベルナマ通信、エッジ、マレーシアン・リザーブ、6月15日)

近大、マレーシアの大学と共同で「雷・災害シンポジウム」開催へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 国際協力機構(JICA)は、JICAの支援のもとで近畿大学がマラッカ技術大学及びのテナガ・ナショナル大学と共同で6月23日にマラッカで「第3回国際雷・災害シンポジウム」を開催すると明らかにした。

2023年6月に開始された「持続可能なエネルギー供給と極端気象災害の早期警報のための電荷分布リアルタイム3Dイメージングと雷活動予測(RTL-3D)プロジェクト」の一環で、シンポジウムではプロジェクトの研究者、マレーシア政府、学術機関、民間パートナーによる雷及び極端気象災害に対する早期警報システムの構築に関する発表が行われる。

RTL-3Dプロジェクトは、マレーシアにおける雷や極端気象による被害の低減を目的とし、先端技術を開発・活用するもの。技術革新により、雷災害が発生する前の予測を可能とし、マレーシアの防災対応能力を向上させることを目指す。目標達成に向け、雷および雷の電荷分布を精度数百メートル以下精度でマッピングする高度なアルゴリズムが開発されている。

RTL-3Dプロジェクトは、JICAおよび科学技術振興機構(JST)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の支援及びマレーシア高等教育省(MOHE)によるマレーシア政府予算の支援を受けており、2028年6月まで5年間実施される。

ジェトロKL、「エナジー・アジア2025」にブース展示

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール(KL)事務所は、 アジアのエネルギー移行に関するシンポジウム・展示会「エナジー・アジア2025」(会期6月16日―18日)に、「マレーシアの脱炭素化に貢献する日系企業の製品・サービスカタログ」の広報ブースを出展している。

脱炭素分野における日本企業の製品・サービスの販路拡大を目的としたもので、同カタログには、各社のウェブサイト、プレスリリース、報道、展示会情報などの公開情報および各社へのヒアリングをもとに収集した、マレーシアで脱炭素化に貢献する日系企業47社の製品やサービスを、マレーシア政府が2023年に発表した脱炭素政策の柱である国家エネルギーロードマップ(NETR)で指定する重要6分野10基幹事業に合わせて、主要カテゴリーごとに分類して掲載している。

同ブースでは、日本企業の製品のマレーシアでの販路拡大を目的として、オンラインカタログサイト「Japan Street」についても紹介している。「Japan Street」はジェトロが招待した海外バイヤー専用のオンラインカタログサイトで、バイヤーは登録するだけで日本企業1万25社・7万2,330製品(6月13日時点)を閲覧、希望に応じてオンライン商談が可能。

経済相のポートフォリオ、現職閣僚が兼任=アンワル首相

【クアラルンプール】 6月17日付で辞任するラフィジ・ラムリ経済相の後任人事について、アンワル・イブラヒム首相は閣外から新たに起用せず、現職閣僚のいずれかに兼任させる方針だと明らかにした。

アンワル首相は記者団に対して、「現時点で内閣改造の必要はないが、どの閣僚に兼務させるか決定する必要がある」と言明。また経済省が元々首相府経済企画局(EPU)の下にあった機能を独立させ省に格上げしてできた経緯から、「解散するのではないか」との憶測が浮上していることについては全面否定し、「内閣の決定権は私が握っており、こうした問題は発生しない」と述べた。

一方、アンワル首相は7月1日付で辞任予定のニック・ナズミ・アハマド天然資源・環境持続可能性相の後任については、最終決定は出ていないと言明。「私は常にニック・ナズミ氏に時間を与え、機会を与えている。可能であれば留任すべきだという私の見解を伝えてきた。」と述べ、留任の可能性が残されていると強調した。

ラフィジ氏とニック・ナズミ氏はそれぞれ、5月23日に行われた人民正義党(PKR)副党首選、党首補選で敗北し、辞表を提出していた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、6月16日)

持続可能なパーム油認証製品の拡大、日本市場でイオンなどと協力

【クアラルンプール】 持続可能なパーム油の基準策定機関マレーシア・サステナブル・パームオイル(MSPO)は、日本のイオンなどと、MSPOの認証を得た製品の認知度向上に向け協力することで合意した。投資貿易産業省(MITI)が13日、こうした取り組みを例に、認証製品の日本市場への展開拡大を目指す方針を発表した。

MSPO認証の推進に関し、MSPOは大阪・関西万博で、日本の一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)と覚書を締結。これを受け、会員企業でもあるイオンとの協力が締結された。このほか、花王、味の素、明治などの会員企業の協力が見込まれているという。

マレーシアでは今年1月、持続可能なパーム油の新たな基準「マレーシア持続可能なパーム油基準2.0(MSPO2.0)」が導入された。MSPO2.0は、SDGs(持続可能な開発目標)などの国際基準に沿って、従来の基準を強化したもので、すでに日本の店頭でもMSPO2.0認証の製品が販売され始めているという。

政府はMSPO2.0を、今後の貿易・経済の中核として位置付けている。「スーパービタミンE」ともいわれるパーム油由来のトコトリエノールや、食用にも使われるレッドパームオイル、住宅・家具用途のMDF(中密度繊維板)、特殊油脂など、さまざまな認証製品を日本に拡大させていきたいとしている。

ジョハリ・アブドル・ガニ農園一次産業相は声明で「小規模農家から輸出製品にいたるまで、あらゆるレベルで認証を根付かせていく」とした。マレーシアのパーム油栽培の86%はすでに認証を受けており、2025年末までに認証率を95%にすることを目標としている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ビジネス・トゥデー、エッジ、6月13日、報道発表資料)

ジェットスターアジアの運航停止、航空委が予約客に対策呼びかけ

【クアラルンプール】 マレーシア航空委員会(MAVCOM)は、ジェットスター・アジア航空の運航停止の影響を受ける予約客に対し、直ちに同社に直接支援を求めるよう勧告した。マレーシアでは、シンガポール―クアラルンプール線およびペナン線が影響を受ける。

ジェットスター・グループが6月11日、シンガポールに拠点を置く格安航空会社ジェットスター・アジアの運航を7月31日に停止すると発表したことを受けたもので、MAVCOMは13日に発表した声明の中で、影響を受ける旅行者に対し、専用のライブチャットサービスを通じてジェットスター・アジアに連絡するか、ジェットスターの連絡先にあるグローバルコンタクトセンターのリストを参照してさらなるサポートや情報を得るよう呼びかけた。

MAVCOMによると、2016年マレーシア航空消費者保護法に基づき、影響を受ける消費者は30日以内に元の支払い方法で航空券の全額(税金および手数料を含む)の払い戻しを受ける権利があり、もしくは同等の交通手段で最終目的地への経路を変更する権利がある。

ジェットスターは、今回の運航停止は、オーストラリアと東南アジア間の国際便を運航するジェットスタ―やジェットスター・ジャパンを含む、グループ傘下の他の航空会社には影響しないとしている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、6月13日)

交通違反の減点制度を抜本的に見直し=ローク運輸相

【シャアラム】 アンソニー・ロ―ク運輸相は、現用の交通違反の減点制度(ケジャラ)が効果的ではないことから、抜本的に見直す考えを示した。現状ではポイント減点は反則金を支払った後にしか差し引かれないこのため多くのドライバーが減点を避けるために反則金を支払わないという。

ロ―ク氏は現状制度の重大な欠陥を指摘した上で、政府はケジャラ制度を継続するものの大幅な改革を行うと強調。反則金納付状況に基づかないシステムになるとし、すでに法律と適用の観点から検討を進めていると述べた。

ケジャラ減点制度は2016年に導入されたもので、2018年9月、スコアリング方式とペナルティの適用レベルを変更した減点制度の改訂版が発表された。

連邦交通執行捜査局のモハメド・ユスリ・ハッサン・バスリ局長によると、9日に発生した15人が死亡する事故を起こしたチャーター・バスの運転手には、過去に18枚の交通違反切符が発行された記録があった。13枚は速度違反、1枚は事故関連の違反、3枚はシートベルト未着用、1枚は第3ブレーキランプの故障によるものだった。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、エッジ、6月13日)

大型車両の速度リミッター設置義務化、10月から段階的に施行

【シャアラム】 アンソニー・ロ―ク運輸相は、大型車両への速度リミッター(SLD)設置の義務化を3段階に分けて実施すると述べ、第1段階は10月から実施されると明らかにした。来年7月までの完全施行を目指す。

第1段階では、2015年1月1日以降に登録された大型商用車を対象に、今年10月までに速度制限装置の設置確認を受けなければならない。対象はすべての観光バス、高速バス、最大重量3,500キログラムを超える大型車両となっている。

設置確認は、道路運輸局(JPJ)が認定する車両メーカー、技術サービス提供者、整備工場、サービス施設提供者から取得できるほか、JPJが認定する基準局認定機関からも取得できる。新規許可の申請時や更新時にも、この書類を車両検査センターに持参しなければならない。

第2段階では、2015年1月1日以前に登録された大型車両に速度リミッター設置を義務付ける。作動確認書類は2年ごとに更新し、取り締まり検査の際には常に車両に携行しなければならない。取締活動は2026年1月に開始される。

速度リミッター設置義務化は9日に発生した15人の大学生が死亡したバス事故を受けて決まったもので、同事故ではトレンガヌ州ジェルティからペラ州タンジョン・マリムへ向かっていたスルタン・イドリス教育大学(UPSI)の学生がチャーターしたバスがゲリックのタシク・バンディング近郊の東西高速道路で多目的車(MPV)に速度超過で追突。バスは横転大破し、学生15人が死亡したほか、バスの運転手と助手、事故に巻き込まれたMPVの乗員乗客3人を含む33人が負傷した
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、6月13日)