改正SST制度が7月施行、高級品や6つのサービスに課税拡大

【クアラルンプール】 財務省は9日、売上・サービス税(SST)の適用範囲拡大を7月1日から施行すると発表した。リース、建設、金融、民間医療、教育、美容の6つの分野が新たにサービス税の課税対象となり、6―8%の税率が課される一方、売上税は生活必需品に関して非課税のままとし、低所得層や中小企業向けにさらに免税の規定を設けるなど、国民の負担に配慮した。

売上税に関しては、米、食用油、砂糖、牛乳、医薬品、書籍などの生活必需品、さらにセメントや砂といった建築資材も0%に据え置かれる。一方で、高級品は増税し、輸入果物やサーモン、絹などは5%、競技用自転車や絵画などは10%が課せられる。

サービス税の新たな対象となったリースでは、年間収入が50万リンギ超の事業者に対して、8%の課税となる。ただし、住宅や海外資産、特定のファイナンスリースなどは免除される。

建設サービスについては、年間収入が150万リンギ超の事業者に対して、6%が適用される。ただし、住宅建設や公営住宅関連工事は免税となり、二重課税を回避するため、企業間取引(B2B)も免税となる。

金融サービスでは、手数料を伴うものには8%が適用される。ただし、標準的な銀行取引、イスラム金融、為替差益、対外送金などは引き続き非課税となる。ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)、ラブアンを拠点とするサービス、企業間取引についても減税措置を講じる。

民間医療サービスとしては外国人には6%の課税が課され、マレーシア人は非課税で据え置かれる。

教育分野では、生徒1人当たりの年間授業料が6万リンギを超える私立幼稚園、小中学校に6%の課税が課される。高等教育の場合、留学生が対象になる。マレーシア人学生は完全に免除される。

フェイシャルトリートメントやヘアスタイリングを含む美容サービスは、年間収入が50万リンギを超える事業者には8%が課される。

財務省は6月中に拡大範囲の詳細なガイドラインなどを発表する予定だが、年内は懲罰措置は講じない方針。SSTの拡大は、2025年度予算案演説の際に発表され、当初は5月に施行が予定されていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、エッジ、6月9日)

印紙税免除の基準額大幅引き上げ、製造業連盟が政府に要請

【クチン】 雇用契約に対する印紙税納が今年から義務化されたことについて、マレーシア製造業連盟(FMM)は、印紙税免除規定における適用基準額が現状にそぐわないとして大幅な引き上げを盛り込んだ「1949年印紙法」の包括的改正を政府に要請した。

FMMのソー・ティエンライ会長は、現在の経済・ビジネスの実態を反映させるため、1949年印紙法の第一条を正規化・改正することを検討するよう政府に要請。現代の賃金水準と業界標準に合わせ、雇用契約に対する印紙税免除の基準額を現在の月額賃金300リンギから同1万リンギに引き上げるよう求めた。

雇用契約に対する印紙税は「1949年印紙法」で定められているが、これまで違反に対する摘発は行われていなかった。同法によると、1件当たり10リンギの印紙税の納税義務は雇用契約においてフルタイムかパートタイムかに関わらずいずれの国籍の従業員にも適用されることになっている。

今年に入ってから監査体制を強めていた内国歳入庁(IRB)は今月6日、今年いっぱいは罰金は科さないが2026年1月1日からは、納税義務を怠り雇用契約締結から30日内に納税しない場合には罰金が課されると改めて発表していた。
(ボルネオポスト、6月7日)

500万リンギ未満の中小企業の電子インボイス、来年以降に延期

【クアラルンプール】 内国歳入庁(IRB、LHDN)は5日、今年7月1日付けで完全導入義務化が予定されていた電子インボイスについて、年間売上高が500万リンギ未満の中小企業(SME)を対象に導入期限の延期を発表した。

今回、年間売上高が2,500万リンギ未満50万リンギ以上のSMEを、さらに細かく3つのカテゴリーに区分。500万リンギ以上は予定通り7月から導入されるが、500万リンギ未満―100万リンギ以上は2026年1月、100万リンギ未満―50万リンギ以上は2026年7月にそれぞれ期限を延長し、50万リンギ未満は当面免除とした。加えて、各段階における義務化発効後6カ月間の猶予期間も認めている。

今回の延期について内国歳入庁は、SMEがより十分な準備期間が必要としているため、とする。これに対し、マレーシア華人商工会議所(中華工商聯合会、ACCCIM)や中小企業協会(SAMENTA)は歓迎しつつ、中小企業協会のウィリアム・ン会長は免除対象を100万リンギ未満からにするよう求めている

電子インボイスについては、昨年8月1日からの第1段階では1億リンギ以上、今年1月1日からの第2段階では2,500万以上と、段階的に導入された。当初は第3段階として2,500万リンギ未満は7月1日から一斉に導入される予定だったが2月に50万リンギ未満のSMEに対しては2026年1月1日への延期が発表されていた。
(ザ・スター、6月7日、ベルナマ通信、6月6日、エッジ、6月5日)

ペラ州、デジタル経済を基盤とする2つの戦略計画を発表

【イポー】 ペラ州政府は4日、「州デジタル経済行動計画2030」と「州スマートシティ・ブループリント2040」を発表。デジタル経済を基盤としたインクルーシブ(包摂的)で持続可能、かつ競争力のある州への変革を図る。

州政府は2021年に、デジタル経済など9つの主要課題からなる「州計画2030」を策定しているが、今回の2つの戦略計画はそれを補完するもの。特に、デジタル経済行動計画は技術や人材開発、ブループリントはインフラ整備を軸に、企業や研究所、地域社会など幅広い意見を採り入れ策定した。

サアラニ・モハマド州首相は「現在の需要に応えるだけでなく、将来の課題にもより効果的かつ持続的に対応できる弾力性を持つもの」と述べた。また州計画2030を主導する、州開発公社のレザ・ラフィク最高経営責任者(CEO)は「両計画を通じ州の競争力を強化し、州公共サービスの効率性、都市管理、そして住民の生活の質全体を向上させることを目指している」と付け加えた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、6月4日)

マハティール元首相、野党PPMB及びPASとの連携発表

【プトラジャヤ】 マハティール・モハマド元首相は、現政権が解決できずにいるマレー人が直面する問題の解決を目指し、野党・統一プリブミ党(PPBM、ベルサトゥ)及び汎マレーシア・イスラム党(PAS)と連携し、マレー人結束を目指す運動を立ち上げると発表した。

マハティール氏とPPMB及びPASは、すべてのマレー人が一つのグループに所属できるよう、「大きな傘(payung besar)」と呼ぶ非公式の運動を立ち上げることに合意した。運動に賛同する者は与野党を問わず超党派で受け入れる考え。4日の記者会見には、PPBMのムヒディン・ヤシン党首(元首相)、ハムザ・ザイヌディン副党首、PASのイブラヒム・トゥアン・マン副党首らがマハティール氏と共に出席した。

マハティール氏は、「マレー人民事務局委員会」と称する新たな運動について、「政治的動機に基づくものではなく、マレー人が直面する問題を解決するためのプラットフォームとして機能する」とした上で、「マレー人の権力回復という運動の目標は、最終的に政権を奪還した場合にのみ達成できる」と強調した。

マハティール氏は、「現時点では、マレー人にはまだ献身的な擁護者がいない。我々は今、他の問題には関心がなく、ただ一つ、マレー人を救う闘いに集中したい」と言明。「マレー人が直面している多くの問題は、政府がマレー人によって支配されなければ克服できないことを我々は知っている。だからこそ、我々は権力を取り戻し、マレー人が直面している問題に対処できる道を見つけるために闘っている」と述べた。

なお今後の運動の行方についてマハティール氏は、「マレー人の勝利を確実にするために準備を進める」とだけ述べ、政党化して次期総選挙に立候補するかどうかに関しては明言しなかった。
(エッジ、6月4日)

サラワク州、グリーン経済移行戦略を発表

【クチン】 サラワク州のアバン・ジョハリ首相は5月29日、マレーシアの州単位で初めてとなる「持続可能性ブループリント2030」を発表した。州主導による包括的なグリーン経済移行戦略で、同州エネルギー・環境持続可能性省(MEESty)が策定した。10の戦略的推進力、48の戦略、111の行動計画が含まれている。

再生可能エネルギーの推進に関しては、2030年までに再生可能エネルギーの比率を60%とし、水力発電容量を4,800メガワット(MW)、太陽光発電を1,500MWに拡大することを目指す。 炭素管理と市場の整備については、炭素捕捉・貯留(CCS)技術の導入や炭素市場の発展を支援する「カーボンプラン」の策定を進める。 森林・土地の保全については、自然資本の保護を強化し、生物多様性の維持と持続可能な土地利用を促進していく。循環型経済と持続可能な都市開発については、廃棄物の削減と資源の再利用を推進し、持続可能な都市の形成を目指していく。また人材育成と教育については、グリーン産業を支える人材の育成を目的とし、教育、研究、スキル開発への投資を強化していく。

具体的な数値目標については、包括的な温室効果ガス(GHG)インベントリの公開を2027年までに実施し、排出量の監視と炭素予算の管理を行う。 電気自動車(EV)インフラの整備に関しては、2030年までに400基のEV充電ステーションを設置し、持続可能なモビリティを推進する。またエネルギー輸出能力の拡大に関しては、再生可能エネルギーの輸出能力を130MWに増強するとしている
(ザ・スター電子版、エッジ、ベルナマ通信、5月29日)

プトラジャヤでスマート都市「マダニシティ」計画、26日に起工

【クアラルンプール】 連邦政府は3日、プトラジャヤにおける総面積102エーカー(41ヘクタール)のスマート都市開発プロジェクト「マダニ・シティ」(コタ・マダニ)計画を発表した。持続可能な生活とハイテクな暮らしの両方を推進することを目指す。起工式は2025年6月26日に予定されている。

ザリハ・ムスタファ首相府相(連邦直轄地担当)が明らかにしたところによると、3万人以上が住むことができる住宅1万戸が高層的かつ高密度に開発される予定で、人工知能(AI)、高効率デジタルインフラ、グリーンモビリティシステムを統合した設計となっている。

アンワル・イブラヒム首相によると、「マダニ・シティ」には高層校舎の学校、技術・職業教育訓練(TVET)機関、金融機関、診療所、消防署、警察署、モスクといった複数の施設が設置される予定で、約3,000戸の住宅と学校の建設を含む第1フェーズは2027年末までに完成し、全面的に運用開始される予定だ。

連邦政府はクアラルンプール、プトラジャヤ、ラブアンの3カ所の連邦直轄領を対象に、▽Clean(清潔)▽Healthy(健康的)▽Advanced(先進的)▽Safe(安全)▽Eco-Friendly(環境に優しい)―の5つの価値を基盤とした持続可能で先進的な都市づくりを目指しており、その構想を5つの頭文字をとって「CHASEシティ・ビジョン」と称している。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、6月3日)

ザフルル氏がUMNOからPKRに鞍替えへ、閣僚職は当面留任

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 テンク・ザフルル・アブドル・アジズ投資貿易産業相(上院議員)が、アンワル・イブラヒム政権と共闘する統一マレー国民組織(UMNO)を離党し、アンワル首相が党首を務める人民正義党(PKR)に入党する意向を表明した。

これを受けてアンワル首相は当面、ザフルル氏を留任させる考えを示しているが、UMNO内からは共闘相手への鞍替えに対する反発の声が上がっている。アハマド・ザヒド党首は「共闘先への移籍は非倫理的」と批判。UMNO党内ではこれまで通り7つの閣僚ポストを要求する意見が強まっており、アンワル政権を支える両党間の関係悪化の懸念が出ている。

ザフルル氏は銀行家出身で、1997年にUMNOに入党。2020年3月にムヒディン・ヤシン政権で民間から財務相に起用され、これに伴い最初の上院議員の指名を受け、上院議員の身分のまま2021年8月発足のイスマイル・サブリ・ヤアコブ政権でも財務相を務めた。2022年10月の国会解散を受けて辞職。その後の総選挙を受けて12月に発足したアンワル政権では再び上院議員として通産相に起用され、省庁改変で2023年4月から投資貿易産業相に就任していた。

ザフルル氏は5月30日、UMNO指導部に正式に辞表を提出し、PKRの指導部に入党の意向を伝えたことを公表。閣僚職については去就をアンワル首相に委ねると述べていた。アンワル首相はこれを認める意向を示している。

マレーシアの内閣閣僚は上下両院いずれかの議員(上院は指名制)である必要がある。ザフルル氏の上院議員としての2期目は今年12月に終了するが、上院議員は1期(3年)で最大2期までとなっており、補欠選挙などを通じて下院議員にならない限り12月で退任することになる。

閣僚2人辞任も「内閣改造の議論なし」=アンワル首相

【プトラジャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は、人民正義党(PKR)党役員選に敗北した閣僚2人が28日に辞表を提出したことに関連し、現時点で内閣改造や後任人事に関する議論は行われていないと述べた。アンワル首相は両閣僚の辞表を受け取ったこと、休暇に入ることを承認したことを公表していた。

辞表を出したのはラフィジ・ラムリ経済相とニック・ナズミ・ニック・アハマド天然資源・環境持続可能性相。それぞれ23日に行われた人民正義党(PKR)副党首選、党首補選で敗北していた。ラフィジ氏とナズミ氏の辞任はそれぞれ6月17日付け、7月4日付けとなっている。

アンワル首相は記者団に対し、辞表を出した2閣僚はまだ休暇中であることから制度上の問題から現時点で交代させることはできないと述べた。当面は2省では閣僚不在状態となる。

政治アナリストであるマレーシア科学大学のシヴァムルガン・パンディアン氏は、PKR内のラフィジ派の他の大臣や副大臣も辞任する可能性があると指摘。また上院議員としての任期が12月に満了するテンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相の地位についても検討する必要があると述べている。
(ボルネオポスト、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、ベルナマ通信、5月29日)

米国との関税交渉、「10%以下は困難」=投資貿易産業相

【クアラルンプール】 米国がマレーシアに課すと宣言している24%「相互関税」について、米国との交渉の先頭に立つテンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相はブルームバーグの取材に対し、これまでのようなゼロ関税に戻すことは困難との見方を示した。

米国は2025年7月8日までの90日間を猶予期間とし、10%の基本関税率を適用するとしている。マレーシアは報復関税措置ではなく交渉による解決を図っているが、ザフルル氏は「米国も公言しているように10%の税率については交渉の余地がなく、最低水準のようだ」とコメント。「我々にとって関税が24%を下回る、あるいは基本関税率の10%を下回れば、我が国の産業と輸出業者にとって朗報となるだろう」と述べた。

マレーシアは関税引き下げについて米国と断続的に協議を続けており、トランプ政権はマレーシアに対し、貿易不均衡や非関税障壁の是正、米国の技術が他国や投資に流出するのを防ぐことを要求している。米国はマレーシアに対し、中国への半導体積み替えと称する行為を取り締まるよう圧力をかけており、これを受けて投資貿易産業省は5月6日以降、米国向け非特恵原産地証明書の発行を同省のみで行うと発表している。

米国通商代表部(USTR)のデータによると、米国とマレーシアの貿易赤字は昨年248億ドルに達した。
(ブルームバーグ、ザ・スター電子版、エッジ、5月27日)