セランゴール州の政治的安定性が重要、議選控え産業界が指摘

【クアラルンプール】 6州の州議会同時選挙が8月12日に行われるが、産業界は特に多くの産業が集積している経済圏であるセランゴール州議選の行方に注目しており、社会的・政治的安定性が重要と指摘している。

セランゴール州はこれまで与党連合・希望同盟(PH)が政権を掌握していたが、汎マレーシア・イスラム党(PAS)が構成党となっている野党連合・国民同盟(PN)が政権奪取を狙っている。

マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティエンライ会長は、特にセランゴール州の社会政治的安定は州と国にとって重要だと指摘。安定は同州をさらに前進させるための政府の政策や計画の継続的な実施を可能にするとした上で、「これによりセランゴール州は確実に繁栄を続け、既存の投資家を支援するとともに、主要産業に新たな投資家を呼び込んでより高い利益を獲得し、経済を成長させることができるだろう」と述べた。

マレーシア経営者連盟(MEF)のサイド・フセイン会長も、雇用主が事業拡大や成長を計画するには長期的な安定が必要だと指摘。雇用・労働政策は政府の経済成長にとって重要であるが、安定した政府であれば、試行錯誤を重ね確立された政策が継続されると述べた。

その上で「マレーシアの全登録企業の98%以上が零細・中小企業(MSME)だが、その多くは新型コロナウイルスのパンデミックの影響からまだ立ち直っていない。ビジネス政策に大きな変更を加えることは、ビジネスコストに直接的な影響を与えるため不適切。安定した環境を持つことが事業と成長を計画する上で最善だ」と強調。セランゴール州は巨大な経済エリアであり、最終的には国の経済にも影響を与えるため、政策変更によって企業が混乱に直面しないことを望んでいると述べた。

両氏によると、セランゴール州の人口は700万人を超え、昨年の経済成長率は11.9%と国内総生産(GDP、8.7%)を上回った。同州の製造業は9%成長し、国内製造業の約3分の1を占めた。サービス業も昨年は13.6%と他の州より高い成長を記録した。
(ザ・サン、8月1日)

6州議会の選挙戦がスタート、245選挙区に570人が立候補

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 先ごろ解散した6州の州議会同時選挙の公示が7月29日に行われ、合計245の選挙区で合計570人の立候補届けが選挙委員会(EC)に受理された。8月8日に期日前投票、8月12日に投開票が行われる。
選挙が行われるのは▽セランゴール(定数56)▽ネグリ・センビラン(同36)▽ペナン(同40)▽クランタン(同45)▽トレンガヌ(同32)▽ケダ(同36)ーーの6州で、立候補者はそれぞれ147人、83人、95人、96人、66人、83人。245の議席を争う。

立候補者数を党派別でみると、野党連合・国民同盟(PN)が168人で最も多く、次いで与党連合・希望同盟(PH)が137人、PHと共闘している国民戦線(BN)が108人、汎マレーシア・イスラム党(PAS)が77人と続いた。

無風選挙となった選挙区はゼロで、180の選挙区で一騎打ち、51選挙区で3つ巴、13選挙区で4つ巴、1選挙区で5つ巴の争いとなった。

解散前は▽セランゴール▽ネグリ・センビラン▽ペナンーーの3州は大連立政権を構成するPHとBNが、▽クランタン▽トレンガヌ▽ケダーーの3州は野党のPNとPASがそれぞれ保有しており、与野党の各陣営が州政権を維持できるかが注目される。アンワル・イブラヒム首相にとっては信任投票の意味合いもある。

このほか同一日程で、選挙違反によって当選無効となった下院クアラトレンガヌ選挙区の補欠選挙が行われる予定で、失職したPASのアハマド・アムザド氏(前副科学技術革新相)とPHのアザン・イスマイル氏(人民正義党=PKR)が立候補した。

AI規制法案を検討中=科学技術革新相

【ペタリンジャヤ】 チャン・リーカン科学技術革新相は、マレーシアにおける人工知能(AI)アプリケーションを規制する可能性を検討していると明らかにした

チャン大臣は、英字紙「ザ・スター」の取材に対し、技術専門家、法律専門家、利害関係者、一般市民と協議し、強固かつ適切な法案を作成することを検討しており、AI規制強化に向けた世界的な傾向を考慮した上で検討を続けていると述べた。生成AIによって制作されたあらゆる素材に「AI生成」や「AI支援」と表示することが不可欠であり、AI制作コンテンツが明確に識別されることを義務づける政策を実施すべきだとし、具体的には、AIの透明性に関するグローバルスタンダードを採用し、AI制作コンテンツに対するラベル付与や、AIシステムの仕組みの説明に関するガイドラインの制定などに取り組むべきだと言明。AI法の制定により、データ・プライバシーやAI利用に対する認識向上といった面をカバーしていくと述べた。

また、AIが経済や社会に貢献し続けるためには、リスク管理とイノベーションの間のバランスをとることが重要で、AIや機械学習技術の研究開発を継続的に進め、倫理ガイドラインを推進し、誤報や有害コンテンツの検出や対策に役立つイノベーションを支援することが科学技術革新省にとり重要だとした。

一方で、誹謗中傷や誤報によって選挙でAIが悪用される可能性についてチャン大臣は、強力な法的枠組みや倫理ガイドラインが不可欠だと指摘。それには情報源の透明性を義務づける法律や、AIツールを使って虚偽の情報を広めた者に対する厳しい罰則などが含まれるとし、関係省庁やソーシャルメディア企業などと協力し、そのようなコンテンツを特定し、削除する取り組みを強化するよう働きかける必要があると述べた。
(ザ・スター、7月23日)

サラフディン国内取引相が死去、脳疾患で

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 サラフディン・アユブ国内取引物価相が23日午後9時過ぎ、脳疾患のためにケダ州アロースターの病院で亡くなった。61歳だった。

シャキリン・フスナル報道官によると、サラフディン氏は22日午後10時過ぎに吐き気と嘔吐を訴えてスルタナ・バヒヤ病院に緊急搬送され、脳出血が確認されたために緊急手術を受けていた。

現職の閣僚の突然の死ということで、アンワル・イブラヒム首相をはじめ政界から悲しみの声、お悔やみの声が次々とあがっている。アンワル首相は「長年一緒に働いた偉大な人物だ。彼は彼の重要な仕事の一つである慈悲(ラーマ)プログラムに注力し、国民の負担と生活費を削減するために精力的に全国を回った」と述べた。
サラフディン氏は1961年12月ジョホール州生まれ。1999年に汎マレーシア・イスラム党(PAS)に入党し、2004年にクランタン州から出馬して下院議会に初当選。2013年の総選挙では故郷のジョホール州から出馬したが敗北した。その後、PASを離党して新党・国民信任党(Amanah)に合流し、2018年の総選挙で当選。マハティール・モハマド首相率いる与党連合・希望同盟(PH)内閣で農業・農業関連産業相として初入閣した。2022年総選挙でも再選を果たし、国内取引物価相に就任していた。

首相府が紹介状の新ガイドラインを通達へ、悪用防止で

【クアラルンプール】 首相府は6日に声明を発表し、紹介状が個人的な利益のために悪用されないようにするための新たなガイドラインを策定し、公務員に通達すると明らかにした。

アンワル・イブラヒム首相が議長を務める汚職対策特別閣僚会議(JKKMAR)で合意された事項の一つで、「政府は汚職や権力乱用の要素を含む紹介状の発行を、政府のイメージを損なう問題だとして深刻に受け止めている」としている。

首相府によると、同会合ではより信頼性が高く効果的な苦情チャンネルを確保するため「2010年内部告発者保護法」 を改正する案について原則同意されたほか、国家汚職防止計画(NACP、期間2019ー2023年)の実施状況や、腐敗の防止に関する国連条約(UNCAC)第5条に沿った汚職防止の取り組み強化の方向性についても議論され、その結果、国家汚職防止戦略(NACS)と命名された国家レベルの新戦略によりNACPを継続すること、報告された各問題により効果的に対処できるよう、会計検査院報告書(LKAN)を定期的に閣議に提出することも決定した。

首相府は、あらゆる政府の取り組みから汚職、不正行為、権力乱用の要素を排除するためにガバナンス強化施策を可能な限り実行することに尽力していると強調。ガバナンスを強化し汚職と闘うという政府公約に基づいてJKKMAR会議の活動を継続するとしている。
(マレー・メイル、ベルナマ、7月6日)

6州議会同時選挙の公示は7月29日、投開票は8月12日

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 選挙委員会(EC)は5日、先ごろ州議会を解散した▽セランゴール▽ネグリ・センビラン▽マラッカ▽クランタン▽トレンガヌ▽ケダーーの6州について、選挙日程を発表。公示を7月29日、投開票を8月12日にそれぞれ同時に行うとした。期日前投票は8月8日となる。

解散前はセランゴール州とネグリ・センビラン州については、アンワル・イブラヒム首相率いる大連立政権の中核である与党連合・希望同盟(PH)、マラッカ州については同じく大連立に所属している政党連合・国民戦線(BN)が政権を掌握。一方、クランタン州、トレンガヌ州、ケダ州については、汎マレーシア・イスラム党(PAS)と統一プリブミ党(PPBM)が中核となっている野党連合・国民同盟(PN)がそれぞれ政権を掌握していた。

昨年11月の総選挙での辛勝の上に他派閥と連立を組むことで誕生したアンワル政権にとって初の大規模な選挙となるため、事実上の信任投票として注目される。

事実上の死刑廃止法、7月4日付けで施行

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 死刑以外の刑罰規定がなかったいくつかの犯罪について裁判官に減刑の裁量権を認める「2023年強制死刑廃止法」が6月30日に官報に公示され、7月4日付けで施行された。同法は4月の国会で可決成立していた。

マレーシアではこれまで33の犯罪に対して死刑が刑罰に含まれていた。強制死刑廃止法により、死刑以外の刑罰規定がなかった麻薬密売、殺人、誘拐、国家反逆罪、組織犯罪、銃火器犯罪、テロ行為やテロ支援を含む11の犯罪に対する強制死刑が廃止され、刑罰は30年以上、40年以下の禁固刑、および12回以上のムチ打ち刑に置き換えられる。また殺人未遂や誘拐など7つの犯罪に対する選択肢としての死刑を完全に削除する。終身刑についても、30年から40年の禁固刑に置き換えられる。

マレーシアで最後に絞首刑が執行されたのは2017年で、2018年7月以降は死刑執行を停止しているが、法律上、強制死刑の規定が維持されていたため死刑囚の数は増加していた。アザリナ・オスマン首相府相(法務担当)によると、法案提出時点で1,340人いる死刑囚、100人いる終身刑受刑者にも法改正が適用されるという。

下期の電気料金、大量消費世帯で増額も産業部門は減額へ

【プトラジャヤ=マレーシアBIZナビ】 ニック・ナズミ天然資源環境気候変動相は23日、今年下期(7ー12月)のマレー半島における電気料金について、消費量が月1,500キロワット時(kWh)、月額708リンギ以上の世帯に対し、1kWhあたり10センの割増料金を設定すると発表した。

ニック大臣によると、対象となる世帯に対しては1kWhあたり2センの割戻金も廃止されるため、電気料金は月額187リンギ(25%)増加することになる。セランゴール州、クアラルンプール、ジョホール州、ペナン州を中心に居住する8万3,000世帯が対象となるが、全体のうち1%に過ぎないという。なお割増料金が発生するのは1,500kWhを超えた月のみで、月1,500kWh未満となった場合には引き続き2センの割戻金が提供される。

一方、産業部門の中・高電圧契約(大規模電力利用者)を対象とした割増料金は1kWhあたり20センから17センに減額し、上下水道事業者に対しても20センから3.7センまで引き下げる。中・高電圧契約の場合には、電気料金が月額28ー35%引き下げられることになるという。中小企業など、低電圧契約の場合は、3.7センのまま据え置く。

ニック大臣は、平均燃料価格が低下したものの、石炭の平均価格は依然高止まりしていることから新たな電気料金体系を決定したとし、上期には価格上昇の影響を抑えるための補助金として約107億6,000万リンギを割り当て、下期にも52億リンギを割り当てる予定だと述べた。

マレーシア経営者連盟(MEF)は、下期の電力補助金52億リンギについて評価し、この補助金がなければ、レストラン、小売店、パン製造、小規模作業、農業・畜産業、植木業などに携わる零細中小企業(MSME)は、電気料金の値上げで負担を強いられることになっていたと述べた。MSMEの事業回復を支援し、労働市場の安定化を支援することが重要だとしている。

一方、サラワク州のアバン・ジョハリ首相は、サラワク州は水力発電ダムによる発電能力を有するため、電気料金の値上げは計画していないと述べた。値上げは投資誘致や請負業者に対し悪影響を与えるとし、ラワスのトゥルサン・ダムやカピットのバレ・ダムのような水力発電ダム数を増やすことで電力供給源を確保できると述べた。

6州議会同時選挙、8月中旬に実施の公算

【クアラルンプール】 6州の州議会選挙について、各州議会の解散時期や巡礼(ハジ)シーズンを考慮すると8月に行われる公算が大きくなっている。州議会選挙は憲法の規定により議会解散から60日以内に実施することになっている。

年央に解散を予定しているのは▽セランゴール▽ペナン▽ネグリ・センビラン▽ケダ▽クランタン▽トレンガヌーーの6州で、これら6州の首相はすでに同時選挙で合意しており、最終的に選挙委員会(EC)が決定することになっている。

すでに6月28日に解散すると発表しているペナン州のチョウ・コンヨウ首相は、遅くとも8月第2週、ペナン州議会の解散時期から5ー6週間後になる可能性があると予想した。

ネグリ・センビラン州はすでに6月30日に解散すると発表しており、クランタン州も14日に6月22日の解散を発表している。その他の州については、セランゴール州議会が6月25日に、トレンガヌ州が6月30日に、ケダ州が7月3日にそれぞれ州議会の任期が切れ、翌日付で自動的に解散となる。

野党側からも8月実施の可能性が高いとの見方が出ている。野党連合・国民同盟(PN)に所属する統一プリブミ党(PPBM)のラザリ・イドリス広報部長は、8月中旬になるとの見方を示した上で「平日でなく土曜日の実施を希望する」と言明。ハジ巡礼は6月28日に最高潮に達し、巡礼者は8月初旬までに帰国するとして、そのタイミングが望ましいとの考えを示した。

選挙アナリストのG.マニマラン氏は、ECによる選挙の準備には約4ー5週間を要することになるとした上で、「8月第2週の終わりがちょうどいい時期だろう」と述べた。
(ザ・スター、6月14日)

船舶入出港に関する行政手続きの一元化、第4四半期に運用開始

【シャアラム】 アンソニー・ローク運輸相は、マレーシアの港湾に寄港する船舶に義務づけられていた複数の関係機関での行政手続きを一元的に行える仕組みである、「マレーシア・マリタイム・シングルウインドウ(MMSW)」の運用が今年第4四半期に開始されると明らかにした。

これまでマレーシアの港に寄港する船舶は事前に12の関係機関に対して異なるプラットフォームを通じて入港許可を取得する必要があったが、MMSW導入で窓口が一本化されることで、手続きの簡素化が期待される。

手続きの一元化(シングルウインドウ化)は「国際海上交通簡易化条約(FAL条約)」に基づき加盟各国で取り組みが進められていたもので、2024年1月1日より国際海事機関(IMO)の加盟国すべてに実施が義務づけられる。

ローク運輸相は、ポートクラン港湾局(PKA)とジョホール港湾局が統一プラットフォームの開発を担当しているとした上で、MMSWにより入港船舶の許可プロセスが合理化され、官僚的なハードルが軽減され、港全体の効率が向上すると言明。データとプロセスを一元化し、不必要な仲介者を排除し、透明性を促進することにより、汚職を大幅に減らすことにも繋がると述べた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、6月8日)