インドネシア大統領が訪馬、関係強化に向け協定6件を締結

【クアラルンプール】 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領がアンワル・イブラヒム首相の招きにより、7ー8日の日程でマレーシアを訪問した。ジョコ大統領のマレーシア公式訪問は2019年以来4年ぶり。

両首脳は8日、経済や安全保障分野における両国関係を強化する二国間協定6件を締結した。具体的には、▽国境警備▽海上安全保障(2件)▽国境貿易▽投資促進▽ハラル(イスラムの戒律に則った)認証の相互承認ーーに関する協定となった。

両首脳はまた、欧州連合(EU)が昨年12月に発表した、パーム油、牛肉、大豆、コーヒー、ココア、木材などの森林破壊に関連する製品に対する輸入規制は不当な差別だとし、両国のパーム油産業保護に向け協力関係を強化すると言明。EUは、パーム油に対する差別的措置の公正かつ公平な解決に向けて努力する必要があると述べた。

ジョコ大統領は8日、アンワル首相の案内でクアラルンプールのチョウキット市場を訪問。マレーシアで働くインドネシア人を中心とした大勢の人が大統領を一目見ようと詰めかけた。

(ザ・スター、6月9日、ボルネオポスト、ベルナマ通信、6月8日)

ペナン州議会が6月8日に解散へ、15日から郵便投票受付開始

【ジョージタウン=マレーシアBIZナビ】 ペナン州のチョウ・コンヨウ首相は8日、同州議会(定数40)を6月28日に解散する意向であることを明らかにした。州議会解散に伴う州議会選挙の日程を協議するために近くアハマド・フジ・アブドル・ラザク知事と面会する方針だ。同州議会の任期は8月2日までとなっている。憲法の規定で解散後60日以内に選挙を行う必要がある。

ペナン州議会は現在、連立与党の中核である希望同盟(PH)が33議席、連立相手である国民戦線(BN)の中核政党である統一マレー国民組織(UMNO)が2議席、野党・汎マレーシア・イスラム党(PAS)が1議席をそれぞれ確保しており、4議席が空席となっている。

PHペナン支部長であるチョウ氏は、与党連合の議席配分を巡ってBNとの全国レベルでの交渉が進んでいると述べた上で、最終決定は中央が行うと述べた。
今年はペナン州のほか、PHが政権を握るセランゴール州とネグリ・センビラン州、PASが政権を握るケダ州、クランタン州、トレンガヌ州も州議会選挙を行うことになっており、すでにこれら6州が同時開催で合意している。州議会の同時開催時期は7月になるとみられる。

なお選挙委員会(EC)は、6州の州議会選挙に先立ち、6月15日から郵便投票を受け付けると発表した。

国家産業計画など3つの政策、下半期に発表=アンワル首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は、5日に行われたアブドラ国王誕生日の祝賀会で演説し、世界の課題に立ち向かうためにより強力な3つの政策を今年下半期に発表する意向を明らかにした。

3つの政策は、8月に開始される国家産業計画、9月末に予定している第12次マレーシア計画(12MP)の中間見直し、10月に予定しているの第2次マレーシア「マダニ(MADANI)」予算で、アンワル首相は「これらの政策は覇権争いや戦争、世界経済の減速、気候・環境危機など、世界が直面する課題に対処するために必要だ」と説明。 経済回復努力に加えて、連立政権は世界的な問題となっている生活費、物価上昇、食糧安全保障の問題への対応にも注力していると述べた。

その上でアンワル首相は、国民生活に対する支援の一環として、慈悲(ラーマ)保護構想やハリラヤ・セールス・カーニバル、起業家育成プログラムなど、いくつかの取り組みが実施されたと言明。マレーシアが特に国の主権、人道主義、安全保障、災害管理などの問題において、国際的なフォーラムで自らの立場を表明し、国家の利益を守るためにより積極的な役割を果たし続けるだろうと述べた。
(ザ・サン、6月6日、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ、6月5日)

スウォッチを家宅捜索、LGBT権利運動支援が理由か

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マレーシア内務省が5月13、14日の両日、レインボーカラーのプライドコレクションを巡ってスイスの時計メーカー、スウォッチの全店舗を強制捜査したことが明らかになった。マレーシア政府が認知していないLGBT権利運動を支援していると判断されたためとみられるが、強制捜査はやり過ぎだとの声が上がっている。

▽パビリオン・クアラルンプール▽ワン・ウタマ▽サンウェイ・ピラミッド▽セティア・シティ・モール▽ミッドバレー・メガモール▽ミッドバレー・サウスキー▽サンウェイ・プトラ・モール▽そごうKL▽クイーンズベイ▽ファーレンハイト88▽スリア・サバーーの各店舗でレインボーカラーのコレクションが押収され、▽KTCC(トレンガヌ)▽イオンKB▽アマン・セントラル・ケダ▽シティ・スクエア▽ビバシティ・クチンーーの5店舗が警告を受けた。

LGBT権利運動を巡っては、これを支援する英国のバンド、コールドプレイが11月に予定しているコンサートについてイスラム保守派が中止するよう要求しており、スウォッチ店舗の捜索との関連が疑われている。

スウォッチ・グループのニック・ハイエック・ジュニア最高経営責任者(CEO)は失望と懸念を表明する一方でイノベーションと多様性を擁護する同ブランドの精神を強調した。スウォッチグループは押収された時計の返還を求めている。

民主行動党(DAP)サラワク州支部のアラン・リン書記長は、警察には販売店がどの法律に違反したのか説明する義務があるとした上で、国民や観光客の間に不必要な恐怖を引き起こしていると指摘。虹のモチーフは子供の絵画にも見られるもので、虹がダメであれば学校までが強制捜査に遭う恐れがあると批判した。

マレーシア統一民主同盟(MUDA)のアミラ・アイシャ副党首は、何が「有害」と解釈されるか定義が曖昧だと懸念を表明。虹が描かれたものを販売している店舗をすべて捜索するのかと疑問を呈し、サイフディン・ナスティオン内務相に政府の見解を説明するよう求めた。

イスラム党支配の3州が6月にも解散へ、7月に6州同時選挙か

【クアラルンプール】 イスラム原理主義政党、汎マレーシア・イスラム党(PAS)のモハマド・アマル・ニック・アブドラ党首補(クランタン州副首相)は23日、PASが政権を掌握している▽クランタン▽トレンガヌ▽ケダーーの3州について6月末に州議会を解散する考えを示した。

アマル・ニック・アブドラ氏は、希望同盟(PH)が政権を握る▽セランゴール▽ペナン▽ネグリ・センビランーーの3州も6月に州議会を解散することで同意していると報告を受けていると述べ、これにより7月に6州で同時選挙が行われる可能性が高くなったと述べた。

同氏は「クランタン州に関しては6月下旬の解散を既に決定している。他の5州も段階的に解散すると聞いていたが6月に解散することになるだろう」と述べた。

セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は今年2月、今年半ばで任期が切れる6州が6月末の解散を検討する方向で合意に達したことを明らかにしていた。連邦憲法によると、選挙は議会解散から60日以内に行わなければならないことになっている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、4月24日、フリー・マレーシア・トゥデー、4月23日)

ASEANは中立維持を、米中覇権争いについてアンワル首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は米国と中国の対立が強まっている中、東南アジア諸国連合(ASEAN)は独立、中立を維持すべきとの認識を表明した。

中国公式訪問中、中国公共テレビ局の中央電視台との会見で述べたもので、会見の模様は7日夜に放映された。

ASEANは1967年に設立された東南アジア諸国が加盟する地域共同体で、地域の平和と安定、経済成長の促進が目的。

アンワル氏は「地域の平和と安定という目的は変わらない。われわれはすべての国と友好関係にある。地域が軍拡競争の基地となることを望まない」と述べた。
アンワル氏は米英豪の3カ国が21年に立ち上げたインド太平洋地域での安全保障協力の枠組み、オーカスに触れ、「地域の状況を悪化させるもの」と批判した。米英は豪州の原子力潜水艦配備を支援し、中国の軍事活動が活発になっている南シナ海などでの抑止力を高める。

アンワル氏は「オーカスが軍事的緊張になることを望まない」と強調。中国、米国は緊張緩和のため平和的解決法を模索すべきとした。内政については、汚職根絶に注力していると述べた。
(ザ・スター、4月9日)

死刑のみの刑罰規定を撤廃、下院で事実上の死刑廃止を可決

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 死刑のみが刑罰となっている殺人やテロなど11の犯罪について裁判官に減刑裁量を与える、実質的な死刑の廃止に向けた2つの法案が3日、下院議会で可決した。上院での審議を経て国王の同意を得て発効される。

「2023年強制死刑廃止法案」は、裁判官に死刑を義務付けた犯罪で有罪判決を下す際に死刑以外の刑を命じる裁量権を与えるもの。裁判官は死刑や終身刑の代替として、禁固30ー40年と12回以上の鞭打ちを選択することを可能になる。

また「2023年死刑および終身刑改正 (連邦裁判所の暫定的管轄権) 法案」は「2023年強制死刑廃止法案」に伴って確定している刑の見直し権限を連邦裁判所に付与するもので、3月31日時点で1,318人に上っている死刑囚に適用される見通し。死刑執行は政府が法案の検討に入ってから停止されている。

法案を提出したラムカーパル・シン副首相府相(法務担当)は、「死刑自体はある程度残るが、今後は以前とは異なる方法で実施されることになる」と言明。犯罪被害者に対して死刑は思ったほどの抑止効果はないと説明したとした上で、被害者の補償など司法制度改革にはまだ多くの課題があると述べた。

ナジブ元首相の再審請求、連邦裁が棄却

【プトラジャヤ=マレーシアBIZナビ】 政府系ファンド、ワン・マレーシア・デベロプメント(1MDB)に絡む複数の汚職で有罪判決が確定したナジブ・ラザク元首相(70)が出していた再審請求について、連邦裁判所は3月31日、同請求を棄却する判断を下した。この決定により国王の恩赦以外にナジブ氏が釈放される可能性はなくなった。

ナジブ氏の弁護団は、新たな証拠の提出申請を却下した連邦裁の決定、昨年8月23日に有罪判決を下した連邦裁のテンク・マイアム・トゥアン・マット首席判事の忌避申請の却下、主任弁護士交代に伴う審理延期申請の却下など、ナジブ氏に対して不公平な裁判が行われたとして再審請求を行っていた。

再審申請に基づき連邦裁は今年1月19日から2月28日にかけ延べ6日間にわたってナジブ氏の弁護団と検察の双方から聴聞を行っていたが、これを担当した連邦裁のラーマン・セブリ首席判事は、これまでの裁判過程でナジブ氏側が主張するような偏見や自然正義に対する違反はなかったと判断すると述べ、再審請求を棄却した。
同裁判は、1MDB子会社だったSRCインターナショナルからナジブ被告のAMイスラミック・バンクの個人口座に4,200万リンギが振り込まれた件で、ナジブ被告は背任(CBT)罪3件、マネーロンダリング3件、職権乱用1件の合計7件の罪状に問われた。一審、二審、三審共にナジブ氏は有罪となり、禁固12年、罰金2億1,000万リンギの刑で2022年8月24日に収監されていた。

ナジブ氏側は国王に対して恩赦請求を行っているほか、1月5日には国連人権理事会の恣意的拘留に関する作業部会(UNWGAD)に請願書を提出している。

強制死刑&終身刑を廃止へ、閣議決定

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム内閣は、一部の重大犯罪を除いた死刑廃止、及びすべての終身刑の廃止方針を閣議決定した。アザリナ・オスマン首相府相(法務担当)が23日の国会質疑の中で明らかにした。改正法案は3月27日にも国会に提出される見通し。

刑罰としての死刑は刑法121条、121A条(国王やスルタンに対する危害)、1952年危険薬物法39B条に基づく3つの犯罪を除き、死に至らない犯罪を対象に廃止される。また終身刑は全廃され、30年から40年の禁固刑と12回以上の鞭打ちに置き換えられる。アザリナ大臣によると、改正により未決囚476人に影響が及ぶだけでなく、すでに刑が確定した死刑囚及び終身刑囚957人についても刑が見直されることになる見通しだ。

マレーシアでは殺人、麻薬密売、テロを含む34の犯罪について刑罰として死刑が含まれており、うち殺人やテロなど11の犯罪に関してはこれまで死刑以外の刑罰はなかった。法改正により判決には裁判官による裁量権が認められることになり、死刑は殺人や国王・スルタンへの危害、麻薬犯罪に関してのみオプションとして残されることとなる。

ムヒディン元首相を追起訴、500万リンギの資金洗浄で

【シャアラム=マレーシアBIZナビ】 野党連合・国民同盟(PN)を率いるムヒディン・ヤシン元首相(75、統一プリブミ党=PPBM党首)が13日、500万リンギの資金洗浄に関与した罪でマレーシア汚職摘発委員会(MACC)よりシャアラム初級裁判所に追起訴された。

ムヒディン氏は10日、政権時代に行われたプロジェクトに関わる4件の職権乱用と2件の反資金洗浄法違反でクアラルンプール(KL)初級裁判所に起訴されており、同氏に対する起訴案件はこれで7件目となる。シャアラム裁判所に出頭したムヒディン氏は、他の6件と同様に無罪を主張した。

7件目の罪状は、2022年1月7日にブカリー・エクイティからセランゴール州ペタリンジャヤにあるPPBMの銀行口座を通じて500万リンギを受け取ったというもので、反資金洗浄法違反に問われている。有罪になれば15年の以下の禁固刑、もしくは受け取った金額の5倍の罰金が科される。

検察側は場所をKL裁判所に移して先の6件と共にまとめて審理を行うよう求めており、シャアラム裁判所もこれに同意する意向だ。

ムヒディン政権は2020年11月、新型コロナ流行によりダメージを受けたブミプトラ(マレー人と先住民の総称)請負業者支援のためのプログラム「Jana Wibawa」を実施したが、その際に随意契約で5,000万ー5億リンギのプロジェクトを請け負った業者からPPBMに金が渡ったとしてMACCが捜査を進めていた。