【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 死刑のみが刑罰となっている殺人やテロなど11の犯罪について裁判官に減刑裁量を与える、実質的な死刑の廃止に向けた2つの法案が3日、下院議会で可決した。上院での審議を経て国王の同意を得て発効される。

「2023年強制死刑廃止法案」は、裁判官に死刑を義務付けた犯罪で有罪判決を下す際に死刑以外の刑を命じる裁量権を与えるもの。裁判官は死刑や終身刑の代替として、禁固30ー40年と12回以上の鞭打ちを選択することを可能になる。

また「2023年死刑および終身刑改正 (連邦裁判所の暫定的管轄権) 法案」は「2023年強制死刑廃止法案」に伴って確定している刑の見直し権限を連邦裁判所に付与するもので、3月31日時点で1,318人に上っている死刑囚に適用される見通し。死刑執行は政府が法案の検討に入ってから停止されている。

法案を提出したラムカーパル・シン副首相府相(法務担当)は、「死刑自体はある程度残るが、今後は以前とは異なる方法で実施されることになる」と言明。犯罪被害者に対して死刑は思ったほどの抑止効果はないと説明したとした上で、被害者の補償など司法制度改革にはまだ多くの課題があると述べた。