ムヒディン元首相を起訴、職権乱用や資金洗浄などで

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マレーシア汚職摘発委員会(MACC)は10日、野党連合・国民同盟(PN)を率いるムヒディン・ヤシン元首相(75、統一プリブミ党=PPBM党首)を、政権時代に行われたプロジェクトに関わる4件の職権乱用と2件の反資金洗浄法違反でクアラルンプール(KL)初級裁判所に刑事告発した。ムヒディン氏は罪状を否認。裁判所は200万リンギで保釈を認めた。

4件の職権乱用はPPBMを代表して▽ブカリー・エクイティから2億リンギ▽マムフォーから1,950万リンギ▽アズマン・ユソフ氏から1,200万リンギ▽ネプチュリスから100万リンギーーの合計2億3,250万リンギを受け取ったというもの。有罪になれば1件につき20年以下の禁固、もしくは受け取った金額の5倍の罰金が科される。

2件の反資金洗浄法違反は、ブカリー・エクイティからPPBM口座に入金された金の中から2回にわたり1.2億リンギ、7,500万リンギの合計1億9,500リンギを受け取ったというもので、1件当たり15年の以下の禁固刑、もしくは受け取った金額の5倍の罰金が科される。

ムヒディン氏は前日、MACCに任意出頭し、拘束の上8時間に渡る事情聴取を受けていた。釈放後にムヒディン氏は、自身に対する告発は政治的意図に基づくものだとした上で、「閣議決定した内容を実行しただけであり、財務省の決定を歪めるなどの違法行為はしていない」と主張していた。

ムヒディン政権は2020年11月、新型コロナウイルス「Covid-19」流行によりダメージを受けたブミプトラ(マレー人と先住民の総称)請負業者支援のためのプログラム「Jana Wibawa」を実施したが、昨年11月の総選挙を受けて発足したアンワル・イブラヒム新政権下で財務省が6,000億リンギもの公的資金の取り扱いに関する手続き違反を発見したと発表し、MACCが捜査に乗り出していた。

MACCは、ムヒディン政権時代に随意契約で5,000万ー5億リンギのプロジェクトを請け負った業者からPPBMに3ー5%の率で総額3億リンギの手数料が流れたとの疑惑について捜査を進め、先ごろPPBMの口座を凍結し、続いてPPBMのワン・サイフル広報部長を690万リンギの収賄罪で起訴した。同氏は広報部長職を辞任している。口座凍結の際に4,000万リンギの残額があった。

2023年度予算案を再提出、歳出規模は前政権から上乗せ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相(兼財務相)は24日、下院議会に2023年度(2023年1月1日ー12月31日)予算案を再提出した。

予算案のテーマは「マレーシア・マダニ(持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやりという6つのコアバリューに基づく枠組み)の推進」。予算規模は、国内総生産(GDP)が4.5%成長するとの見通しから3,881億リンギとし、緊縮予算となるとの予想を覆してイスマイル・サブリ・ヤアコブ前政権が昨年10月に発表した予算規模を158億リンギ上回った。

歳入予想は2,915億リンギで、原油価格低迷による非税収入減少で前年の2,944億リンギを下回る見込み。国家債務総額は1.2兆リンギに達し、GDPの60%を突破する見通しだが、財政赤字の対GDP比率は前年の5.6%から5.0%に下がる見込み。アンワル首相は2025年までに3.2%に引き下げたいとしている。

一般歳出は全体の74.5%を占める2,891億リンギで、前政権の2,723億リンギを上回った。開発予算は990億リンギで、これも前政権の950億リンギを上回った。640億リンギを補助金や社会保障、優遇措置、一時金支給に充てる。省庁別では教育省が552億リンギで最も多く、保健省が363億リンギで続いている。

零細企業の法人所得税率を、15万リンギを上限に17%から15%に2%引き下げる。年収3万5,000ー10万リンギの中間所得層を対象に個人所得税を2%引き下げる。240万人が恩恵を受けるとみられる。一方で年収10万ー100万リンギの高所得者層の個人所得税を0.5%ー2.0%引き上げる。

電子タバコ製品に対して物品税を導入する。徴収した物品税の半分を、世代別に段階的に禁止するたばこ世代終焉(GEG)計画の実施に向けて保健省に割り当てる。また今年から高級時計やファッションブランドなどを対象に贅沢税を課税する。不動産利得税については、2024年からの導入を目指すとしている。

航空宇宙産業に対する優遇税制を2025年末まで延長する。製造業者がマレーシアに移転する際の優遇税制を2024年まで延長する。グリーン投資税控除(GITA)およびグリーン所得税控除(GITE)を2025年末まで延長する。医療費の税控除の上限を8,000リンギから1万リンギに引き上げる。年初から大企業を対象に値上げした電気料金については、一般世帯や中小企業に対しては据え置く。

クリエイティブ産業の振興を図るために1.02億リンギの「デジタル・コンテンツ基金(DKD)」を設立する。

2025年を「ビジット・マレーシア・イヤー」(マレーシア観光年)とし、観光客2,350万人の誘致を図り、観光収入768億リンギを目指す。サバ・サラワク州にそれぞれ65億リンギ、56億リンギの開発予算を割り当てる。

従業員積立基金(EPF)「口座1」の残高が1万リンギ以下の40ー54歳(約200万人)に対して、政府が500リンギを支給する。また月収2,500リンギ未満の低所得者「B40」に対して「慈善」一時金を子供の人数などによって最大2,500リンギ支給する。

今年の州議会選挙、6月下旬の同時開催で6州首相が合意

【クアラルンプール】 今年州議会の任期が満期を迎える▽セランゴール▽ペナン▽クランタン▽トレンガヌ▽ケダ▽ネグリ・センビランーーの6州が、6月下旬に州議会選挙を同時開催する方向で基本合意した。

セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相とペナン州のチョウ・コンヨウ州首相がソーシャルネット上で明らかにした。今後は各州の与党内で州議会解散時期について話し合われることになる。なお選挙日程は最終的に選挙委員会(EC)が決定する。

アミルディン氏とチョウ氏によると、22日に開催された統治者会議のオブザーバーとしてクアラルンプール(KL)を訪れた他の4州の首相と話し合いを行い、州議会選挙の同時開催を検討する方向で合意。実施時期については、基本的に6月の第4週、もしくは第5週の線で検討することを決めた。余計な選挙コストをかけないためで、決定に当たっては各州の利害関係者で調整した上で、州スルタンもしくは知事の同意を得ることが必要となる。

州議会が解散されると、60日以内に選挙を実施しなければならない。各州の任期はセランゴール州が6月26日、ネグリ・センビラン州が7月2日、ケダ州が7月3日、ペナン州が8月3日、クランタン州が8月28日、トレンガヌ州が9月1日となっている。ただしネグリ・センビラン州議会は今年は議会が招集されないため、最後に開催された議会から6カ月後の6月2日に自動解散することになる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、2月23日)

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【クアラルンプール】 今年州議会の任期が満期を迎える▽セランゴール▽ペナン▽クランタン▽トレンガヌ▽ケダ▽ネグリ・センビランーーの6州が、6月下旬に州議会選挙を同時開催する方向で基本合意した。

大連立加盟のUMNOが大規模粛清、カイリー前保健相は除名

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相の大連立政権に加盟している統一マレー国民組織(UMNO)は28日、「規律違反」を理由に6人の幹部を含む合計48人の大量処分を発表した。

同日開催された最高評議会で処分が決定した。処分内容は、カイリー・ジャマルディン前青年部長(前保健相)とノー・オマル前セランゴール州支部長(前起業家開発共同組合相)及び党員42人が除名、ヒシャムディン・フセイン前総裁補(前国防相)、シャハリル・ハムダン前情報部長、サリム・シャリフ議員、モーリザン・ブジャン前テブラウ支部長の4人が6年間の党籍停止となった。ノー氏は当初、党籍停止処分となる見込みだったが、自ら進んで除名処分を選んだという。

処分理由は先の総選挙における対抗勢力への支援や、党大会におけるトップ2の無投票再選の決定への批判だが、事実上アハマド・ザヒド総裁らが率いる執行部批判に対する処分とみられる。懲罰委員会での審議などの手続きを経ていないこともあって、執行部に批判的な党員らの不満が一層高まることが予想される。
反対派への弾圧は、3月に行われる党役員選挙、今年半ばに6州で行われる州議会選挙を前に党内引き締めを図る狙いがあるとみられるが、さらなる党内分裂や州議選における議席減につながるとの懸念の声も出ている。

UMNOは政党連合・国民戦線(BN)の中核党として昨年11月の総選挙に参戦したが、汚職体質などのネガティブイメージのためわずか26議席と惨敗。敵方であった希望同盟(PH)を率いるアンワル政権に参加することで命脈を保つ状態で、党内からは党内刷新を求める声が上がっていた。

再提出する予算案、中小企業などに重点=アンワル首相

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相(兼財務相)は、2月24日に国会での再提出を予定している2023年度予算案について、昨年10月に前政権が提出した予算案にとらわれないものになると強調。特にグリーン技術、デジタル経済、中小企業 (SME)、農業、社会的弱者、低所得グループなどに重点を置いたものになると述べた。

17日に関係者を招いて開催した予算案ダイアログに出席したアンワル首相は、今月までに収集した新たなデータに基づき、再提出する予算案は昨年10月にイスマイル・サブリ・ヤアコブ前政権の下で発表された予算案より優れたものになると強調。前の予算案で提案された内容を考慮しつつ、中小企業、農業、天然ゴム採集業などの低所得層や障害者などの弱者層、技術、農業、再生可能エネルギー、輸出可能性が高い分野の中小企業を支援する内容が盛り込まれると述べた。

またアンワル首相は、中小企業は数十年にわたってマレーシアを背負ってきたが、ほとんど支援を受けていないと言明。中小企業は非常に多くの可能性と能力を持っており経済成長の牽引役になることが可能だとしたほか、ポスト・新型コロナでグリーン技術、デジタル経済、データセンターなど探求すべき新たな分野があると強調した。

■財政赤字拡大、財政健全化が急務■
一方、アンワル首相は、「長期的な経済成長のために持続可能性を考慮に入れなければならない」と財政健全化の必要性について言及。国債と借入金を合計した国家債務の合計が1993年当時の960億リンギから2022年には1.5兆リンギに拡大しているとして、早急に対処する必要があると述べた。
その上でアンワル首相は、2023年度の国債償還費は450億リンギに達していると強調。国家歳入の15%に相当する額であり、国が処理できる上限額に達していると述べた。

暫定予算が下院議会で可決、1077億リンギ規模

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相(兼財務相)は20日、見直しを行っている2023年度の本予算案の提出が年明けになることを受けて、1,077億1,868万リンギ規模の暫定予算案を下院議会に提出。即日可決した。

来年度予算案はイスマイル・サブリ・ヤアコブ前政権が10月7日に提出していたが、その直後の10月10日に国会が解散となり審議は行われないままとなっていた。新たに誕生したアンワル政権下で見直し中の本予算の国会提出は来年2月になるため、それまで必要な経費を暫定的に計上した。

暫定予算は2023年1月1日から本予算の可決までの間、公務員への給与支払いや公共事業、福祉、保健、教育、奨学金などの経常支出に主に充てる。2023年1月1日に発効する「2022年統合基金(支出勘定)法」に基づき、統合基金から支出を可能にする。暫定予算は進行中の開発プロジェクト、特に学校、道路、病院、診療所の修理とメンテナンス費用にも充てられる。

省庁別では財務省が281.2億リンギで最も多く、これに教育省(249.8億リンギ)、保健省(170.5億リンギ)が続いた。

アンワル首相は、先の来年度予算案に盛り込まれた低所得者900万人を対象とした一時金について、第1期支給を当初発表していた3月から1月に前倒しで開始すると明らかにした。支給額は世帯当たり300リンギ、一人世帯は100リンギとすると発表。また小規模ゴム農園主に対する支援金の追加支給を行うと述べた。

(エッジ、12月20日)

アンワル内閣が副大臣27人を指名、正副でバランス重視

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相は9日、保留となっていた副大臣人事について合計27人を起用すると発表した。アンワル首相は12月2日に副首相を含む正大臣28人の指名を行っており、これでアンワル内閣の閣僚人事が完了したことになる。

副大臣は正大臣と異なる政党から選ばれており、バランスを重視した人事となっている。また先の5人の女性の正大臣任命に続いて、8人の副大臣が女性となっている。正副大臣は合計55人となり、ムヒディン ヤシン政権時の70人、イスマイル・サブリ・ヤアコブ政権時の71人からは大幅に減らされている。

財務相を兼務するアンワル首相を支える重要ポストである副財務相ポストには、国民戦線(BN)率いる統一マレー国民組織(UMNO)のアハマド・マスラン書記長と希望同盟(PH)の構成党、民主行動党(DAP)のスティーブン・シム全国党書記の2人が指名された。UMNOからは6人の正大臣、5人の副大臣が起用されており、DAP(正大臣4人、副大臣6人)を上回るポストを獲得することとなった。

このほか大物政治家からは元マラッカ州首相のアドリー・ザハリ氏(国民信任党=Amanah)が副国防相に、リム・チントン氏(DAP副書記長)が副通産相にそれぞれ指名された。

EV導入目標を発表、2025年までに公共充電器1万基設置へ

【クアラルンプール】 テンク・ザフルル通産相は8日、通産省の電気自動車(EV)導入目標について明らかにした。公共EV充電設備について2025年までに1万基を設置する。またEVおよびハイブリッド車が市場総需要量(TIV)に占める割合を2030年までに15%、2040年までに38%にする。

ザフルル通産相によると、これらの目標を達成するために、通産省を中心に関係省庁で構成される国家EVタスクフォース(NEVT)が、EV開発促進や国内EV産業の発展に向けた戦略を実行する。EV現地組立のための投資誘致やアフターサービス促進などについて、業界関係者との話し合いを続けていくという。

前政権が発表した2023年度予算案では、EVを対象とした売上・サービス税(SST)減免措置について、輸入完成車(CBU)に対しては2024年12月末まで、現地組立車(CKD)に対しては2025年12月末まで適用するとされた。新政権での予算案の国会再提出は来年1月になる見込みだが、アンワル・イブラヒム首相は詳細について改善予定ではあるものの、特定の項目を撤回することはないと発言している。
(ポールタン、12月8日)

通信デジタル省、ソーシャルメディア規制に向け法律見直しへ

【プトラジャヤ】 ファーミ・ファジル通信デジタル相は、ソーシャルメディアの法律順守に向け、現行法の見直しを開始したと明らかにした。

ファーミ大臣によると、動画投稿サイトのティックトックでは、11月12ー26日までの第15回総選挙(GE15)期間中に、2,113本の挑発的・過激な動画が自動削除された。このうち、857本は投票日前の11月12ー18日、130本は投票日当日の19日、1,126本は選挙後の11月20ー26日に削除された。自動削除はティックトックの人工知能(AI)システムが行うもの。また、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)が1月1日ー12月5日に合計202件の苦情をティックトックに提出したが、そのうち95件はコミュニティガイドライン違反、28件は国内法違反で削除されたものの、79件は何の措置も受けなかったという。

ファーミ大臣は、ソーシャルメディア運営者が投稿コンテンツに対してより責任を持つことを望むとし、5日開催されたティックトック担当者との会議で誤報や過激な内容の流通について協議したと言明。フェイスブックやインスタグラム、ワッツアップ、テレグラムなど他ソーシャルメディアに対しても働きかけているとし、政党によるソーシャルメディアでの世論誘導を規制する法律も検討していると述べた。12月1日に設立したフェイクニュース対策特別チームでは、公序良俗、経済、社会文化、宗教、治安に悪影響を及ぼすフェイクニュースを監視するとした。

ファーミ大臣はまた、省名称について、通信・マルチメディア省を通信デジタル省に改称したと発表。これまで通信・マルチメディア省傘下にあった芸術・文化関連機関は別の省の下に置かれることになるとし、後日、新しく管轄する省からの発表が行われると述べた。
(ザ・サン、ザ・スター、12月8日、マレーメイル、ボルネオポスト、ベルナマ通信、12月7日)

アンワル政権参加政党が近く連立協定締結、5年間は解散なし

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相率いる連立政権に参加する各政党・政党連合が近く署名する予定の連立協定について、ラフィジ・ラムリ経済相(人民正義党=PKR副党首)は、安定政権をつくるのが狙いだと説明した。与党に参加する各政党は19日に予定されているアンワル首相に対する国会での信任投票の前に署名を済ませる予定。

ラフィジ氏は連立協定の効力は1期5年のみであり、その間は国会を解散しないとの内容が盛り込まれると説明。署名の目的は連立に参加する政党の間に共通の政策基盤を形成し、連立内の意見の相違を管理するための意思決定構造を明確化することにあるとし、所属議員に対する党議拘束も含まれるとした。反・政党鞍替え法に基づき、政府の決定に賛成票を投じない場合には国会議員の資格が剥奪されることになるという。

一方、副大臣人事についてラフィジ氏は、既に人選に着手しているものの、決定には1ー2週間かかる可能性があるとした。アンワル政権はスリムな内閣にすると公言しており、正大臣はアンワル首相を含め28人が指名されている。内訳はアンワル首相率いる最大勢力の希望同盟(PH)から15人、国民戦線(BN)から6人、サラワク政党連合(GPS)から5人、サバ国民連合(GRS)から1人、民間から1人がそれぞれ起用されている。