【ペタリンジャヤ】マレーシア政府はシンガポール政府に対し、クアラルンプールとシンガポール西部のジュロンを結ぶ高速鉄道(HSR)計画について、終着駅をシンガポールではなく、マレーシアのジョホールバルとする変更案を提示した。計画からシンガポールを除外するとの内容だ。
両国は2016年12月、首脳が出席して契約に署名しており、2国間協定として法的拘束力を持つ。
マハティール政権時代に、計画内容を変更したいとマレーシア側が申し入れ、着工は2回にわたり延期されており、3回目の今回が最後の延期で、年末が期限。
在マレーシア・シンガポール高等弁務官はフリー・マレーシア・トゥデーの取材に対し「12月31日までにマレーシア側との交渉妥結を目指し全力を傾ける。しかしマレーシアがHSR事業を推進しない場合、協定に基づきシンガポールに生じた経費をマレーシアは負担することになる」と述べた。
高等弁務官のコメントに対して、シンガポールの運輸省のスポークスマンも、HSR計画は双方にとり有益であると信じていると発表。妥結を目指し努力すると述べた。
ある筋によると、シンガポール政府は2.5億シンガポールドル(約195億円)の賠償を請求すると考えられる。
(フリー・マレーシア・トゥデー、11月25、26日)
来年度予算案が可決、EPF口座引き出しなどで譲歩

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン・ヤシン内閣が提出した2021年度予算案が26日、第2読会を経て下院議会を通過した。3月にムヒディン内閣が国会承認を経ないまま誕生してから初の予算案であり、事実上の内閣信任投票という側面もあって行方が注目されていた。
テンク・ザフルル財務相による総括演説に続き、午後3時半にアズハル・アジザン・ハルン議長の呼びかけで発声採決が行なわれた。立ち上がって反対を主張したのは13人だけで必要数の15人には届かなかったため、野党議員が激しく抗議する中、アズハル議長が記名投票なしでの可決を宣言した。法案は30日に委員会レベルでの審議が行なわれ、最終的に上院に回される。
修正内容には、与野党議員から要求のあった従業員積立基金(EPF)第1口座からの引き出しを1万リンギまで認める内容やローン返済期限の自動延長、医療関係者への支援、感染者が最も多いサバ州への支援などが盛り込まれた。また批判の的となっていた特別問題局(JASA)への予算8,550万リンギについても、30日の委員会審議で撤回される見通しだ。
ムヒディン内閣を支持する与党勢力の現有議席数が過半数をわずかに上回っているだけであった上、PNと共闘する国民戦線(BN)内からもムヒディン首相に批判的な議員が少なくなかったため予算案可決が危ぶまれていた。しかしBN所属議員らの要求に受け入れて予算案を一部修正。最終的にBN所属議員全員が予算案への支持に回った。
GST再導入を検討する委員会、財務省が設置

【クアラルンプール】 テンク・ザフルル財務相はメイバンク・インベストメント・バンク関係者との会見で、物品・サービス税(GST)再導入の得失を研究する委員会を設けたことを明らかにした。
テンク・ザフルル氏は、現行税制の弱点の分析、炭素税やデジタル税など新税の導入、新税を導入した場合の影響、税制優遇措置の再構築も研究する意向を示した。
テンク・ザフルル氏は、来年は危機から回復への転換の時になるとしたが、新税を導入する場合,経済回復を混乱させないためにも導入時期が重要になると述べた。
歳出面では経常支出の95%は、公務員賃金、債務返済、年金など削れない固定費で、歳出削減は限度があるため、歳入増を戦略の要とするという。
今年はゴム手袋メーカーの売り上げが激増したため法人所得税は過去最高の28億リンギが見込めるが、手袋メーカーに過剰利益税を課すことは控える。
(ベルナマ通信、11月24日)
サバ州補選が無期延期、国王の緊急事態宣言受け

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アブドラ国王は18日、ムヒディン•ヤシン首相の助言の基づき、サバ州バトゥ・サピ地区を対象に緊急事態を宣言した。同地区では下院議員死去に伴う補欠選挙の公示日が23日に控えていたが、緊急事態宣言により無期限延期されることになる。
9月26日に実施されたサバ州議会選挙では新たな新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大の原因になったと指摘されており、そうした中での補選続行に対する懸念や疑問の声が上がっていた。ただ連邦憲法では下院及び州議会で空席ができた際には60日以内に補選を行なうことになっており、今後も各地で補選が予定されていることから補選を延期する法的根拠が必要だと判断したとみられる。
ムヒディン首相はバトゥ・サピ補選を延期すべき理由として、▽補選が国民に健康上の脅威をもたらす▽感染の懸念から選挙委員会(EC)が十分な臨時職員を集められない▽EC職員と有権者による他地区への移動が避けられない▽高齢者が22.3%を占めている▽感染爆発が起きた場合の他地区の社会経済活動への影響懸念——の5つの理由を説明した。
サバ州政府はさっそく、緊急事態宣言による補選延期の決定を歓迎するとの声明を発表。ゲリック選挙区補選が予定されているペラ州政府も延期を要請している。
ウイルス禍にかかわる紛争の仲裁センター、首相府機関として開設

【クアラルンプール】 政府は首相府直属機関として、新型コロナウイルス感染症「Covid-19」のため一方の当事者が契約を履行できなかった場合の紛争を仲介するセンターを開設した。
タキユディン・ハッサン首相府相(法務担当)によると、Covid-19の影響を軽減するための暫定措置法に基づく措置で、額が30万リンギかそれ以下の紛争を扱う。
企業、個人のだれでも利用が可能で、経費、時間のかかる裁判所に持ち込まず紛争を解決できるという。政府は中・低所得層および零細企業に対しては仲介手数料を補助する。
タキユディン氏によると、▽資材、機器、労働者の供給・派遣を伴う建設契約▽建設契約または供給契約に伴う契約履行保証状▽専門職サービス▽住宅以外の不動産のリースまたはレンタル▽ビジネス会議、報奨旅行、展示会、コンサート、パーティー、スポーツイベントなど場所、施設、娯楽、仕出しの提供を伴うイベント契約▽観光業者が結んだ契約▽巡礼旅行に関する契約ーーが仲裁対象。
(エッジ、11月11日)
アンワル野党代表が予算案を批判、反対する可能性を示唆

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 下院議会野党代表のアンワル・イブラヒム元副首相(希望同盟=PHリーダー)は、6日に発表された2021年度予算案について、国内総生産(GDP)や税収見通しの根拠が不明だとし、こうした疑問に対してきちんとした答えが得られなければ予算案に賛成できないと言明した。
アンワル氏は、政府がプラス6.5—7.5%と主張している来年の経済成長予想について、エコノミストの予想平均であるプラス5.35%と比べると非現実的だと指摘。法人所得税収予想を新型コロナウイルス「Covid-19」流行前の2019年の638億リンギを上回る646億リンギとしてしていることについても、「企業が直面している厳しい状況からみても40億リンギは減るはず。不合理で無責任」と批判した。また個人所得税収見通しについても、442億リンギと今年の359リンギより60億リンギも多くなっている点についても無責任だと批判し、「実際はせいぜい360億リンギ」と指摘した。
またワクチン購入費に充てるとされている30億リンギについても、予算案に詳細が記されていないと指摘。特別問題局(JASA)への予算8,550万リンギの撤回など野党側の修正要求に応じなければ採決において反対票を投じる可能性もあると警告した。
GST再導入提案、政府は細心の注意をもって調査

【プトラジャヤ】 ムヒディン・ヤシン首相はベルナマ通信、国内テレビ局との会見で、産業界や学術界の一部から物品・サービス税(GST)の再導入を求める声が上がっていることについて、現在施行されている売上・サービス税(SST)やほかの国で採用されている付加価値税と比較し、細心の注意をもって研究を行うと、検討に乗り出す方針を明らかにした。
ムヒディン氏は「GSTの方が税制として効率的でSSTより収入が多いとの意見があることは承知している。しかし検討には細心さが必要だ」と語った。
GSTは2014年に導入されたが、マハティール政権時代に廃棄され、SSTが代わりに再導入された。税制改正は、経済や国民生活に与える影響を考慮して決めることになるが、運用が容易で、事業経費の増加をもたらさないことが前提条件だという。
(ベルナマ通信、11月4日)
復興のための行動制限令、「見直す必要あり」首相

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン•ヤシン首相は4日、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染者が再び増加している地域があることから、復興のための行動制限令(RMCO)を見直す必要があるとの認識を示した。
RMCOは行動制限令(MCO)による第一波の封じ込めが奏功した6月10日に発令され、その後12月31日まで延長されたが、首都圏やサバ州など再び条件付き行動制限令(CMCO)が発令された地域もあって状況は改善していない。
ムヒディン首相は「RMCO適用のままとなっているネグリ・センビラン、マラッカ、ジョホール、ペラの各州でも感染者が増加傾向にあり、RMCOを再検討する必要があると思う」と述べた。
■ペナン南西12区、新たにCMCOに指定■
イスマイル・サブリ・ヤアコブ上級相(兼国防相)は4日、ペナン島南西12区が11月6日付けで新たにCMCOに指定されたと明らかにした。期間は19日までの2週間。
またサブリ上級相は、国家安全委員会(NSC)の作業部会が新たな標準的運用手順(SOP)のリストを作成しNSC会議に提出されたことを公表した。詳細は明らかにされていないが、現在実施されているSOPよりさらに厳格化したものになる可能性があるという。
マイセカンドホーム計画は見直し中=観光相

【クアラルンプール】 外国人の長期滞在が認められるマレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)計画において、最近の申請を受理しなかったことについて、ナンシー・シュクリ観光芸術文化相は、計画の取り止めではなく、内容を見直し精査するための凍結だと説明した。下院審議で議員の質問に答弁した。
現在、同省がMM2Hの条項を精査しており、改定を行う。このため申請書を受理せず返却したもので、証拠金は申請者に返すという。MM2Hの導入は2002年で、認可条件の改定はこれまで行われなかった。
2018年以降の申請者は6万6,458人で、最多は中国人。ほかに、日本、バングラデシュ、韓国、英国、香港、シンガポール、台湾、イラン、インドからも申請があった。
(ベルナマ通信、11月2日)
選挙延期のために非常事態宣言発出の可能性も=首相府相

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 タキユディン・ハッサン首相府相(法務担当)は、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が増加していることを踏まえ、近い将来行なわれる選挙の延期に向け非常事態宣言を出す可能性もあるとの考えを示した。
タキユディン首相府相は「新型コロナを理由として選挙延期を立法化するのは憲法に反する」と指摘。ただ非常事態宣言を出して憲法を一時的に停止すれば、改憲手続きなしに選挙の延期が合法的に可能になると述べた。憲法では議員死去や解散などで下院・州議会に議席に空白が生じた際には、2カ月以内に選挙を行なうことが定められている。
選挙日程を定めた憲法を改正するためには下院議会で3分の2の議員の賛成が必要だが、ムヒディン・ヤシン政権は過半数をわずかに超えた議席しか確保しておらず改憲は無理な状況。憲法を一時停止することで、12月1日に迫っている下院サバ州補選、来年上半期のサラワク州議会選を延期することが可能になるという。
非常事態宣言は、先ごろムヒディン首相が国王に提言したものの不要だとして却下されていたが、ムヒディン首相は「非常事態宣言が出されない限り新型コロナの中でも選挙を実施せざるを得ない」と非常事態宣言の理由を説明していた。
■国会審議時間、5日まで午後1時までに短縮■
2日に再開された国会だが、上院議会議員のスタッフから感染者が出たことを受けて2日に続き3—5日の審議も午後1時までとすることが下院議会で承認された。通常の審議時間は午後5時半までとなっており、野党が審議時間不足だとして会期延長を求めている。
タキユディン首相府相が出した緊急動議を受けたもので、6日に予定されている2021年度予算案については、一部から出されていたインターネットを使った発表でなく、通常通りに下院議会で発表されることも明らかにされた。